【ライブレポート】Hakubi「私の生きる言い訳になってくれて、ありがとうございます」

Hakubiが<“2017-2025 NOISE FROM HERE”>と題したツアーの最終公演を12月4日に渋谷CLUB QUATTROにて開催した。
本公演は11月19日の梅田CLUB QUATTORO、11月21日の名古屋CLUB QUATTROに続き3本目。ツアーとしては決して長いモノではないが、タイトルからもわかるように結成からこれまでを振り返りながら、進化し続けるバンドの未来像も提示してくれるライブだった。
幻想的なSE「Oats We Sow」が流れ、大きな拍手に迎い入れられる片桐(Vo, G)とヤスカワアル(B)。緊張感に包まれる中、決意の表れように片桐が右手で胸を叩き、始まりとして「しあわせ」を鳴らしていく。透明感のある歌とドリーミーな雰囲気が漂い、《生き延びて生き延びて/生き延びている》という印象的なフレーズが響く中、一気に覚醒するサウンド。片桐の叫ぶように歌い、上がるボルテージにヤスカワも連動。とてもドラマティックで惹きつける導入だ。

「最高の1日を!」と片桐が声を上げて「ハジマリ」へ。軽快なロックチューンにクラップや突き上げる拳で応えるオーディエンスに対し「いろんなことあるけど、その中でこの夜を選んでくれてホントにありがとう。最高の時間にします」と語りかけながら、パワフルで気迫に満ちた歌を放つ片桐。鮮烈で間奏のアンサンブルも秀逸な「Dark.」と続け、ラストのコーラスがとてもアンセミックに響くほど、会場はひとつとなっていく。
ギターを軽く鳴らし、厳かに歌い始めたのが「サイレンと東京」。漂うビートの上で呟くよう、思い出すよう、タイム感を絶妙に操る歌はポエトリーラップのようでもあり、生々しくリアルなモノとして響き、ゆったりとしながらほのかな興奮を誘う「Soumatou」もバンドとして底知れないポテンシャルを感じさせるモノだった。

「憧れてたバンドが活動休止してしまうんですよね。それが結構最近食らってて……っていう話をしたら重いね」と自分を戒めつつ、「対バンとか、どっかで関われたりとかしたら満たされてたのかなと考えたときに、その人に認められたとしてもたぶん自分は満足できずにいるだろうな、と思って。それは自分にとってめっちゃいいことやな、と。安心しました、自分がちゃんとアーティストでバンドマンで。でも、それと同時に、なんてしんどい道を選んでしまったんだろう、というか。一生、満たされないまま、何が自分を満たすのかわからないまま生きてしまうんだろうな、そういう苦しみと悲しみにも変わっていって。だから……この曲がまだ響いてくれる自分がいます」──片桐

そう思いの丈を話し、鳴らしていったのが「午前4時、SNS」。すんなりとは吐き出せない情念をこめた曲であり、ため息をこぼすように言葉を紡ぎながら、苛立ちをぶちまけるように歌い叫ぶ。正気と狂気の間を行き来する様は神聖さも感じさせてくれる。
必死に光へ手を伸ばす「Twilight」、フロアから自然とクラップが起こり、シアトリカルな歌も目覚ましかった「道化師にはなれない」と続け、ここでこのツアーでの感触を語っていく。

「2017年の結成から自分たちを振り返りながらセットリストを作ったツアーなんですけど、こんなこと思ってたんや、とか、いいこと言ってるやん、と自分を肯定できるキッカケにもなりました」──片桐
そこから「今、ここにあなたがいてくれること、心から喜んでます」と言葉を続け、どこか儚げだが力強い「intro」から、オーディエンスが盛大にカウントを叫び「夢の続き」へとなだれ込む。大きく揺らすビートにも引っ張られ、大きなシンガロングもフロアからは起こっていく。その熱気は「どこにも行けない僕たちは」でさらに上昇し、ヤスカワもグッと踏み込んでプレイ。イントロから炸裂し、終盤に片桐がギターのみで歌い上げつつ、そこからのバンドインが実に劇的だった「辿る」も揺るがないバンドの強度を感じさせる場面になっていた。

そんな中、少しだけ静寂を作り、夜へ沈み込むように奏でていったスローナンバーが「ワンルーム」。必要な部分だけを残し、削ぎ落としたアレンジが秀逸。片桐がフロアの奥まで目をやりながら歌っていった「栞」の浸透度も素晴らしい。
また、終盤戦で存在感が光っていたのが「光芒」だった。覚悟を決めたような精悍な佇まいから放たれ、荒々しくも聴こえる歌声や所作から伝わる情熱。その想いに共鳴したオーディエンスは会場中を埋め尽くすようにコーラスを重ね、この曲はそれぞれが抱きしめる曲になっていることを痛感させられたのだ。

「ライブをしてない日がしんどく感じました。だからライブに生かされているなって思ってたんですよね。私の生きる言い訳になってくれて、ありがとうございます」とオーディエンスへ気持ちを伝えながら「Heart Beat」と「mirror」といったハードなナンバーを連投した後、活力を与えるダンスチューン「Eeye」、さあ行こうと号令をかけるようなパワフルさを持つ「クロール」を投下。高まるフロアを見渡し、届いた感触を改めて手にしたのか、片桐が少し微笑んだようにも見えた。
「さっきも言ったように、ライブがない日、凄くしんどくなったりとか……ライブしたら凄く救われたり、幸せを感じたときに、次にやってくる暗闇がもっともっと深いモノになってしまうんじゃないか、と苛まれたりするんです。だから、幸せになることが怖くて。でも、私は幸せになることが怖いくせに、あなたには、大切な人には幸せであって欲しいな、と思うんです。そんな曲を書くことができました。あなたがどこにいても、守れるように」──片桐

耳障りのいい言葉に頼ることない、誠実な語りかけから始まったのが「何者」。互いを大切に思う気持ちがつながり、広がっていくことで辿り着ける世界がある。丁寧に重ねられた言葉と音が胸を打つ。
ヤスカワがクラップを誘い、その音を受け止めながら歌い上げる片桐の姿も麗しかった「悲しいほどに毎日は」を届け、「私たちなら大丈夫。この先も、この先も」という片桐の言葉からラストナンバーは「もう一つの世界(Alt ver.)」だった。ギリギリまで振り絞りながら音を重ね、張り裂けそうな想いを歌にする。オーディエンスはずっと高く手を掲げ、すべてがひとつになっていく会場。艷やかさがいつまでも残る光景だった。
自らの歴史を振り返りながら共に行く未来を提示してくれたHakubiは止まることなく、来年2月には『Hakubi winter short tour “seek”』と題したショートツアーを開催。このワンマンを経て、より輝きを増すに違いなく、今後への期待が高まる一夜だった。
取材・文◎ヤコウリュウジ

<Hakubi winter short tour “seek”>
2026年2月8日(日)
会場:心斎橋 火影
時間:開場16:30 / 開演17:00
出演:Hakubi
2026年2月25日(水)
会場:下北沢 SHELTER
時間:開場19:30 / 開演20:00
出演:Hakubi
▼TICKET
ADV.¥4,500 +1D
▼メンバーシップ”ゆるはくびの里”先行
https://hakubi-fc.jp/news/detail/yJKlOeWEgH5CsilKOP5s
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▼オフィシャル先行
https://eplus.jp/hakubi/
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受付期間:2025/12/4(木) 21:00 ~ 2025/12/14(日) 23:59
<京都藝劇2026 – 四条 冬の陣 –>
2026年1月19日(月)KYOTO MUSE
開場 18:00/開演 18:30
▼出演
Hakubi
日食なつこ
OA有
▼ticket
前売り ¥5,000+1D
<片桐ソロ弾き語りツアー「うたいたいこと vol.1」>
2026年2月14日 (土)
北海道 札幌 musica hall café
OPEN 13:00/START 13:30
2026年2月22日 (日) ※SOLD OUT!!
大阪 心斎橋 iiie
OPEN 17:00/START 17:30
2026年2月23日 (月・祝) ※SOLD OUT!!
愛知 名古屋 KDハポン
OPEN 18:00/START 18:30
▼TICKET
一般発売: 12月6日(土) 10:00〜
※応募はFanicon無料会員登録が必要







