【インタビュー】Ashley、1stミニアルバム『1999』で見せた“素顔の自分”と新章への決意

2025.12.07 18:00

Share

これまで精力的に自身の作品リリースを続けつつ、LuckyFesなどの大型フェスで確かな存在感を残し、とんねるず・木梨憲武の音楽バラエティ番組「木梨レコード」へのレギュラー出演、そしてドラマ「MOGURA」での役者デビューなど、ジャンルを超えて活躍の場を広げてきた次世代バイリンガルシンガー Ashley(アシュリー)。その突出したポテンシャル、明るく天性のキャラクター、表現者としての柔軟さは、多方面から熱い注目を集め続けている。

そんな彼女が遂に、新境地を示す待望の1stミニアルバム『1999』をリリースした。 そして本作に収録されている感動曲「泣いて feat. 柊人」のミュージックビデオが、12月7日(日)18時よりAshley公式YouTubeにてプレミア公開された。 これを記念し、BARKSではAshleyの“今”を深く掘り下げた独占インタビューを交え、アルバム制作の裏側と心の変遷に迫るストーリーをお届けする。

■ 3枚目の作品”で訪れたターニングポイント

Ashleyにとって、まとまった作品としては3枚目となる『1999』は、彼女のキャリアにおける確かな転機作だ。音楽界には“1stはデビュー前の集大成、2ndは模索、3rdで転機”という通説があるが、今回の彼女の作品はまさにその言葉の意味を体現している。これまでエネルギッシュに自身を押し出す“強さ”を前面にしてきたAshleyが、今作では初めて“素顔の自分”を正面から表現している。

「デビューの頃に見せてた自分は“こう見られたい自分”。強気な自分を見せたかったし、(「HIKIGANE」のMVで見せた)丸刈りAshleyなんて一番強気。でも強く見られたいということは、弱いところがあるってことなんだなって。自分には陰の部分もあるし、それをうまくバランス取りながら出せるようになったんじゃないかな」

1st EP「DRAFT ONE」は、いわば戦場に飛び込むような“攻撃のフェーズ”だった。まだ何者でもない自分を証明するために勢いの拳を振るい続ける時期。その後、ライブやメディア露出が増えたことで、周囲の声が急激に増えていった時期に制作された2nd EP「Focus」は、他者の意見に揺れながらも“自分にフォーカスする”という気付きが芽生え始めた作品だ。

「『DRAFT ONE』を出してからライブをするようになったし、イベントとかラジオとか、人前に出ることが増えたんです。人前に出るようになると他人の意見も増えるじゃないですか。もっとこうした方がいいよとか、次はこれやりなよとか。私はなんだかんだ言って、人の言うことに左右されちゃうタイプで、他人の意見にフォーカスし過ぎてわけわからなくなってきちゃったんです。それで自分にフォーカスしなきゃな、っていう意識が芽生えてきた。自分の内面を見始めた時期というか、自分と向き合うことが大切だなと思うようになったんです」

その変化を押し広げたのが、シングル「オトナって…」。25歳を迎えた直後の心境をつづったこの曲は、彼女が初めて“等身大の弱さ”を書き込んだ重要な作品となった。

「小さな頃に想像していた25歳の私は大成功してる大スター。欲しいものを全部手に入れて、考えをしっかりまとめられている大人というイメージ。でも実際、25歳になっても、飲み過ぎて携帯を充電し忘れて朝起きたら大変とか(笑)、ちょっとしたことで感情的になっちゃうとか、理想と現実の違いに気づかされれて。それで「オトナって…」の歌詞を書いていたときに、想像してた25歳とは違うけど、理想の大人になるために、こうして自問自答していくことが必要なんだろうなって思ったんです。自分と向き合うことをやめたら、それは私が好きな私じゃないなって。見たくないからって目を閉じてしまうような自分にはなりたくないって思ったんです」

■ 寄り添う視点が生んだ、感動曲「泣いて feat. 柊人」

この“内面を直視する姿勢”が新作『1999』に決定的な変化をもたらした。Ashleyは言う。「今までより、人に寄り添う気持ちが増えた。誰かの力になりたい気持ちを初めて出せた」と。 その象徴が 「泣いて (feat. 柊人)」 だ。 木梨レコードで共演する柊人の“涙もろさ”のエピソード、そして年の離れた弟との実際の相談事。それらが重なり、「泣きたいなら泣いていい」というメッセージが自然と形になった。

「一番下の弟から相談を受けたときになんか哀しい気持ちになって。男が人前で泣くのはみっともない、みたいな感じってあるじゃないですか。でも、泣きたければ泣けばいいじゃんって思うんです。感情を素直に出していいんだよって。“泣き止むまで隣で泣くよ”っていうフックの歌詞は、まだ私には完全に助ける力はないけど、助けたいと思ったらずっと隣にいるよ、それくらいしかできないけど……って気持ちをそのまま書いたんです」

また「SOS」ではR&Bの本場のエッセンスに触れた挑戦的なサウンドを展開し、歌の表現にも新境地を切り開いた。

「歌の面では「SOS」が一番チャレンジした曲。発声もそうだし、符割りもそうだし、R&Bなコーラスの積み方もそう。R&Bの人はこういうリフやフェイクを作るよなって意識しながら作りました」

さらに今作では、“歌を聴かせるAshley”がより前面に出た。ダンサブルなヒップホップ要素を持つ楽曲も彼女の強みだが、歌い上げる曲こそ自身の本質だと気づいたという。

「もともとあったストックから半分以上入れ替えて作る中で、Y2K味のあるサウンドを軸にしつつ、これまでありそうでなかったR&Bシンガーとしてのスキルを発揮できる曲も入れていこうと。ダンサブルな曲をやってるAshleyと、がっつり歌ってるAshleyがあるとしたら、“これはAshleyだな”と自分自身で思うのは、がっつり歌ってるAshleyの方なんです。だから、今回はそっちを軸に作ろうと」

なかでも本人が推す「Lowkey」は、アマピアノ×R&Bの軽快なポピアノサウンドに乗せ、彼女特有の“遠慮がちな強さ”と“控えめな美学”を描いた楽曲だ。

「Lowkeyは海外の人が日常会話で使うスラング。たとえばLowkeyな奴はクラブのVIP席で座って誰かと飲みながら会話してる。Highkeyな奴はヘネシーのボトルを持ってソファの上に立ってる感じ。だからLowkeyな人は、自分の感情をコントロールできる人って感じかな。歌詞に出てくる“おろしたての真っ白なAir Force”を履いてるときの私はHighkeyなんです。だからと言って“見て、見て”ってやらない。その振る舞いがLowkeyなんです。常にHighkeyなことをやりたいし、求めてるけど、態度や振る舞いはLowkeyでいたい。どれだけ大きいステージに立つようになっても謙虚さは忘れない。そうありたいという自分の理想を歌ったんです」

そしてアルバム冒頭を飾る「Destiny」。ベートーヴェン「運命」をサンプリングした壮大なビートの上で、彼女は“自分の手で運命を切り開く”という強い意志を歌い上げる。MVではデビュー時を想起させる白タンクトップ姿や赤い衣装など、彼女が歩んできた感情と情熱を象徴的に表現している。

「パンチのある曲だし、ビートも強いから、オマエ負けんなよって自分に向けて言うファイトソングにしたんです。というのも、あるライブで全然納得いかないパフォーマンスをしてしまって。悔しさから帰りの新幹線のホームで涙があふれてきて、リリックに書いた通り、恥ずかしくてサングラスで目を隠してたんです。その翌日に一気に書き上げました。運命は決められているものじゃない。自分の努力や意志で決まるんだとメッセージしたかったんです」

ラストを飾る「Star」は、幼い自分に向けて“あなたはスターになる宿命を持っている”と優しく語りかける英語詞のナンバー。自己暗示であると同時に、悩みを抱える誰かの心をそっと包む応援歌でもある。

本作のタイトル『1999』は、Ashleyの生まれ年。フィルターのない“素の自分”を差し出す覚悟と、第二章の幕開けの意味が込められている。10曲入りでありながら“アルバム”ではなく“ミニアルバム”とした理由も、彼女の今のスタンスと未来への視線を象徴している。

「私にとって“アルバム”は、全曲通してストーリーが描かれていくもの。そのためにテーマやコンセプトを決めて作っていくものだと思うんです。そういう作品ではないからアルバムと呼びたくなかった。今後はバンドセットでワンマンをやってみたいし、ラッパー以外のいろんなジャンルの方ともコラボしてみたい。そうやっていろんなサイドクエストに挑戦して、勉強して、Ashleyの人格が全部出せるようになったときがフルアルバムのタイミングだと思うんです」

自分の弱さを隠さず、むしろ表現の武器として解放したAshley。“運命の扉蹴破り Top Speed”という「Destiny」のフレーズが示す通り、彼女は今まさにネクストステージへと踏み出したばかりだ。むき出しの想いを音に刻みながら、どこまで駆け抜けていくのか。その進化と深化は、まだ始まったばかりである。

「ミニアルバム『1999』のタイトルは、私の生まれた年。Y2Kの空気をまとった2000年代感のあるサウンドと、これまでにない王道R&Bを軸に、いろんな“私”を詰め込みました。悲しさも嬉しさも悔しさも、全部感じていい。歳を重ねて視野が広がる中で、身近な人の幸せを願う気持ちや、少しでも誰かの力になりたいという想い、大切な人たちへ届けたい魂を今作品に込めています。等身大に、そしてありのままに変化し続け、みんなの感情とつながっていたい。この作品中の一曲があなたの”今”に寄り添って、背中をそっと押せますように」──Ashley

取材・文◎猪又 孝

ミニアルバム『1999』

2025年11 月12日 配信中 https://linkco.re/gU29T5bD

1. Destiny
2. Lowkey
3. On The Island feat. AKLO
4. No Flex
5. Shut It
6. SOS
7. 泣いて feat. 柊人
8. オトナって…
9. Star

Ashley インスタグラム https://www.instagram.com/ashley.plus?igsh=YnRneXNjeG1pdW4z
Ashley YouTube https://www.youtube.com/@ashley114-official