【インタビュー】MADKID、世界基準のステージへ加速させる「Mad Pulse」

2ラッパー、3ボーカルによるダンスボーカルグループ、MADKIDから12thシングル「Mad Pulse」が届けられた。表題曲「Mad Pulse」(TVアニメ「DIGIMON BEATBREAK」オープニングテーマ)は、ミクスチャーロックの進化型と称すべきアッパーチューン。ヘビィな音像、スピード感に溢れたボーカルとラップを含め、幅広い音楽ファンに訴求できる楽曲だ。
さらに世界的な人気を得ているロックシンガー・ナノをフィーチャーした「Silence Shatter(feat.ナノ)」、“MADKIDのメンバーに送る手紙”をテーマにメンバー全員が作詞した「We Go」を収録。2025年12月30日にZepp Shinjukuでワンマンライブ「MADKID ONE MAN LIVE -BREAKNECK AXCELERATION-」を開催するなど、ライブの規模も確実に上げている彼らに本作「Mad Pulse」の制作について語ってもらった。
――2025年の1月から2月にかけてはアメリカ、カナダ、メキシコの11都市をめぐる北米ツアーを開催。ここ数年、海外での活動も増えていますが、みなさんにとって海外ライブの醍醐味とは?
YOU-TA:今年の北米ツアーも初めていく場所がほとんどだったんですけど、地域によってお客さんの雰囲気が違って。一歩引いて「どんなもんかな?」という感じで観ている方もいるし、最初から熱狂的な方いらっしゃるんですけど、いろんな反応があるのが面白いんですよね。MCでは英語で伝えたいことを伝えなくちゃいけないし、それも刺激になっていますね。
LIN:いちばん多いのはアメリカで、ヨーロッパに行かせてもらったこともあるんですが、お腹の調子を保つのが大事ですね(笑)。
YOU-TA:お腹壊したことあった?
LIN: YOU-TAが言った通り、反応が人や地域によって全然違うんですよ。「アメリカはみんなが“イエイ!”なんでしょ?」と言われるけど、自分らしさを大事にする国だから、シャイな人はシャイだし、ちょっとクールな反応が返ってくることもあって。僕はそういうとき気合いが入るんですよ。「よし、やってやろう」と思うし、ライブの中盤以降、みなさんをしっかり巻き込めたときはすごく達成感があって。いいパフォーマンスをすれば盛り上がるし、とにかく反応がダイレクトで。自分たちのステージを見つめ直す機会にもなってますね。
SHIN:まず、日本以外の国に僕たちを知ってくれてる人がいるのが不思議で。海外でライブをするたびに「国境を越えて知ってくれてるんだ」という嬉しさがあるし、生きててよかったって思いますね。
LIN:デカいな。
KAƵUKI:活動しててよかったじゃなくて、生きててよかったなんだ(笑)。
SHIN:そうそう(笑)。
KAƵUKI:僕はまず、入国審査に引っかからないようにしたいですね。
LIN:ちゃんと話したほうがいいよ(笑)。
KAƵUKI:僕、ぜんぜん英語が話せないんですよ。だから入国審査で何を質問されているのかわからなくて、後ろに並んでいたスタッフに声をかけたら怪しまれてしまって。あの時は大変でした(笑)。ライブに関しては、「本当に自由なんだな」といつも実感しますね。日本では歓声が起きないところでワーッ!ってなったり、声を出したいところで出して、盛り上がりたいところで盛り上がって。そのなかで気付くこともたくさんあるし、吸収したことを日本のライブでも活かせていると思います。

YUKI:MADKIDを世界の方がどんなふうに見て下さっているかわからない部分もあるんですけど、ライブではしっかり気持ちを共有できて。海外でも闘えると思えることもすごい収穫だし、実際に現地の皆さんの反応でわかることがたくさんあると思ってます。最初からそうだったんですよ。初めての海外ライブがアメリカのコンベンションだったんですけど、YOU-TAがサビを歌った瞬間に「ウワーッ!」って盛り上がって。本当に待ち望んでくれてたんだなと実感したし、すごくうれしかったですね。
LIN:北米ツアーでメキシコに行ったときは、スタッフさんがステージに水を置きに行っただけで歓声が上ったり(笑)。
KAƵUKI:すごいテンションでした(笑)。
――では、12thシングル「Mad Pulse」について。表題曲「Mad Pulse」(TVアニメ「DIGIMON BEATBREAK」オープニングテーマ)の制作はどんなふうに進められたんですか?
LIN:タイアップのときは作編曲に関しては作家の方にお願いすることが多くて。イメージをお伝えしてデモを作っていただいて、さらにやり取りしつつ、歌詞を当てていくというのが自分たちのワークフローですね。今回もそういう形で、送っていただいたデモ音源に対して、僕がまず歌詞を書いて、それをYUKIに渡して、ラップパートを制作してもらいました。
YUKI:LINの歌詞は作品の世界観に寄り添っているし、大事なワードもちゃんと散りばめられていて。自分としてはLINのリリックと被らないようにしつつ、ビートにハマる言葉を書いていった感じです。こういうサウンドは個人的にあまり通ってなかったから、自分なりに知識を蓄えながら、どうアプローチしようか考えて。そこまでラップし過ぎず、平歌っぽい感じを盛り込んで制作しました。
――ミクスチャーロックの雰囲気もありますね。
LIN:そうですね。ロックを取り入れることは以前からやっていたし、ニューメタルも面白そうだなと思っていたので、この曲がその足掛かりになったらいいなと。
YOU-TA:今回の楽曲はドラムの音もキーになっていると思います。
――「DIGIMON BEATBREAK」の主人公・トモロウもドラム好きなんですよね。
YOU-TA:そうなんです。アニソンっぽさもあるし、爽快な感じもありつつ、しっかりエモーショナルに聴かせることもできる曲だなというのが最初の印象でした。MADKIDがやりたいことを全部入れられるんじゃないかなと思いました。たとえばLINとYUKIのラップのスタイルが全然違うことだったり、ボーカル3人のフェイクだったり。タイアップ曲のなかでそこをしっかり出せたのは良かったのかなと思ってますね。

SHIN:「DIGIMON BEATBREAK」の作中にも音楽の要素があるんですけど、それを踏まえて。「Mad Pulse」の歌詞にも音楽用語が要所要所に使われているのもポイントだと思います。アニメのファンの方にもさらに没入して楽しんでもらえるんじゃないかなって。レコーディングで意識していたのは、やっぱりリズムですね。特に2番のサビは、しっかりリズムにハマる歌詞をLINが作ってくれて。自分も歌っていて気持ちいいですね。
LIN:歌詞のハマりについては、作家さんとのコミュニケーションだと思っていて。デモを聴いて、「ここは譜割り的に〇文字がいいと思ってるんだろうな」みたいなことを意識して書くようにしてます。
KAƵUKI:最初に「Mad Pulse」を聴いたときは、自分のなかのデジモンのイメージとちょっと違っていた部分があって。でも、いざ出来上がってみるとアニメともめちゃくちゃマッチしてて、すごいなって思いました。ドラムはけっこう重めなんだけど、サビは疾走感があって、聴きやすさもあって。シンガロングできるパートもあるので、ライブで披露するのも楽しみです。
――バンドと一緒に撮影したMVもライブ感がありますね。
YOU-TA:そうなんですよ。あそこまでライブを意識したアプローチはたぶん初めてだし、ファンの方がエキストラで参加してくださったのもうれしくて。ダンスボーカルグループのライブって、ロックバンドのライブに比べるとちょっと熱さが足りないような気がしてたんですよ。僕らはそこを変えたくて、お客さんにもアプローチしてきたんですけど、それをいい形で映像にできたのかなと。バンドメンバーの方も本当のライブのような感じで力添えしてくれて。ロックバンドっぽい側面をしっかり見せられた、クオリティの高いMVになったと思います。
YUKI:前作(11thシングル「Resolution」)がストーリー仕立てのMVだったから、コントラストもいいですよね。ダンスパートはファンの皆さんに360度囲まれて撮影したんですよ。
YOU-TA:最初はお客さんもけっこう緊張してて。「いくぞ!」みたいに煽ったり、普通にライブみたいでした(笑)。撮ったのは夏だったので、暑かったんですよ。がんばってくれたファンの皆さんには感謝ですね。
――2曲目の「Silence Shatter(feat.ナノ)」は、MADKIDとも交流のあるナノさんをフィーチャー。
YOU-TA:最初にお話した北米ツアーはナノさんと一緒に回らせていただいたんです。以前も僕たちが主催したフェスに出てくださったんですけど、北米ツアーをご一緒したことで絆がさらに強くなって。3週間ずっとライブをし続けるようなツアーで、スケジュール的にも大変だったんですけど、ナノさんはすごく僕らに声をかけてくださって、それが本当にありがたくて。ツアー中に「一緒に曲をやれたらうれしい」とお伝えしたら、ナノさんも「絶対やろう」という感じで応えてくださったんですよ。一緒にツアーを乗り切ったからこそ、この曲が出来たんだろうなと思ってます。
LIN:制作もYOU-TAが主導してくれて。
YOU-TA:曲自体がちょっとダークで、闇を感じるような始まり方で。声に出せないような苦しみ、人に伝えられない想いを抱えている方を勇気づけられるような曲にしたいと思ったんですよね。MADKIDはこれまでにもそういう歌詞を歌ってきたし、ナノさんも同じようなメッセージの曲があって。ナノさんにもその方向性を共感していただいて、そこから本格的に制作に入った感じですね。
LIN:YOU-TAがしっかり進めてくれたので、僕は伸び伸びやらせてもらいました(笑)。サイドキック的というか、刺激を与えるような感じでリリックをかけた詩、そのことによって曲がもっとカッコ良くなったんじゃないかなと。
SHIN:ナノさんの歌唱の技術もそうですけど、改めて「すごいな」と実感しましたね。歌の語尾の処理だったり、発声の仕方とか、学ぶことが多かったです。YOU-TAはナノさんのレコーディングにも立ち会っていたんですけど、そのときの話も勉強になりましたね。

YOU-TA:僕がディレクションさせていただいたんですけど、まずナノさんが「これでOK」というテイクが出るまで歌って。それに対してさらにやり取りさせてもらったんですが、そのやり方がすごくよかったんです。僕らもプリプロではそういう作業をやってるんですが、レコーディングの本番でも必要だなと思って。KAƵUKI、SHINにもぜひやってほしいですね。
――ボーカリストとしてもっと主張していい、と。
YOU-TA:そうですね。
SHIN:プリプロとレコーディングでは空気感が変わってくるし、本番でももっと提案していいのかも。今後はそういう形でやっていこうと思っております。
LIN:意思表明だ(笑)。
KAƵUKI:僕もナノさんの歌声を聴いて、やっぱりすごいなと実感しました。一緒にやっていただいたことで、僕らの歌声やハーモニーも際立っていて。北米ツアーの時と同じように、しっかり支えていただいたという印象が強いですね。
YUKI:僕はナノさんの後にラップしていて。あまりやり過ぎてもよくないな…と考えながらやっていました。そういう試行錯誤は毎回あるし、実際に曲になってみないとわからないこともあって。これまでにいろんな曲を作ってきて、自分のなかで「どんな曲でも対応できる」という自信も出来てきましたね。

――いつか「Silence Shatter(feat.ナノ)」をライブで観たい!と思っているファンも多いと思います。そして3曲目の「We Go」は今回のシングルのもう一つの主役と呼ぶべき楽曲。「MADKIDのメンバーに送る手紙」をテーマにメンバー全員で歌詞を書いたそうですね。
YOU-TA:そうなんです。実は自分たちから出てきたテーマではなくて、スタッフの方から「こういう曲を歌うのはどう?」と提案していただいたんですよ。去年が10周年で、今年は11年目なんですけど、タイミング的にもすごくいいんじゃないかなと。全員で作詞した曲はほとんどないし、僕らにとってはチャレンジだったんですけど、ライブのフィナーレで披露できるような曲をイメージしながら制作に入りました。
――力強さ、切なさ、煌びやかさが響き合う、すごくいい曲ですよね。作詞はどうやって進めたんですか?
YOU-TA:まずボーカル陣が一斉に書き始めて。それぞれテーマに沿って好きなように書いたんですけど、出てきたものを並べたら、上手くまとまらなかったんですよ。
LIN:そうなるよね(笑)。
YOU-TA:「手紙」というテーマだったから、みんなすごくストレートな歌詞だったんですよ。それをもとに表現を見直したり、テコ入れしながら仕上げた感じですね。
SHIN:僕自身はめちゃくちゃ書きやすかったんですけどね。いちばん最後に加入したメンバーだからこそ書ける言葉があるというか。MADKIDに入って、いろんな活動をさせてもらって。そのなかで感じた感謝の気持ちを綴りたいなと思いながら書きました。
KAƵUKI:僕は正直、めっちゃ苦戦しましたね。テーマ自体はすごく素敵だなと思ったですが、普段あまり歌詞を書かないし、文字数を合わせるのもかなり大変で。しかも他のメンバーがどういう歌詞を書くかわからないので、「全然違ったらどうしよう」とか「被ってたらどうしよう」とか。オチサビの前、SHINちゃんから僕が受け継ぐところは歌詞の内容をやり取りしてたんですけど、他のパートは完全に一人で書いてたので。
YUKI:ヤバいよね。どうなるかわからないっていう(笑)。
LIN:確かに(笑)。僕とYUKIはラップのパートなんですけど、順番をクジで決めたんですよ。ルーレットのアプリを使って、僕が先になりました。
YUKI:そうだった(笑)。
――改めてMADKIDに対して歌詞を書くって、めちゃくちゃエモくないですか?
LIN:そうですね。もともと僕は、自分が思っていることを人に伝えるのがあまり得意ではなくて。でも、メロディに乗せたり、オケがあれば言えるんですよね。MADKIDに対する手紙もそうで、普段は絶対にやれないと思います。

YUKI:僕は後半のラップだったので、自分の思いを書くというより、みんなが歌ってることの状況を整理することを意識していて。「こういう思い出があるよね、こういうことがあったよね」という感じのリリックになってます。
LIN:自分も「あんなこと、こんなことがあったね」という歌詞ですね。
――完成した曲を聴くと、メンバー全員が同じ方向を向いているという印象がすごくあって。最高を更新しながら、前進を続けるんだっていう…。
YOU-TA:僕もそう思いました。しかも熱い気持ちが前に出ていて。
LIN:最初のデモよりもキーを下げたのも大きいよね。全音下げたんだっけ?
YOU-TA:そうだね。キーが高いと、歌い切ることに必死になってしまって、エモーショナルに動ける余地が少なくなるんですよ。「We Go」は初めてのアレンジャーさんにお願いしたんですけど、アレンジャーさんの家に行って、「どういう思いを伝えたいの?」とヒアリングしてもらったんですよ。もともとのキーを1音分下げたらすごく歌いやすくなって、表現の幅も広がって。「これだ!」ってなったし、コミュニケーションの大切さを改めて実感しました。
――思い切り感情をぶつけられる楽曲になった、と。
YOU-TA:そうですね。ライブでエモーショナルに歌える曲にしたいという思いもあったので、早くファンの皆さんの前で披露したいですね。ぜひシンガロングしてほしいです。
――2025年12月30日にはZepp Shinjukuでワンマンライブ<MADKID ONE MAN LIVE -BREAKNECK AXCELERATION->を開催。来年の活動ビジョンは?
YOU-TA:来年に限ったことではないですけど、ずっと武道館を目指してがんばっていて。年末のZepp Shinjukuもそのステップのひとつだと思ってるんです。MADKIDは大きく跳ねたことがなくて、一歩ずつ積み上げてきて今があるグループなんですよ。来年も同じように、少しずつ進んでいくことが大事なのかなと。
LIN:武道館という目標のために、来年も着実に実力を上げたいですね。あとは健康に注意して(笑)、がんばります。
SHIN:大事だよね(笑)。僕も同じで、武道館に向けて、どれだけ自分たちのことを応援してくれる人を増やせるかをいろいろ考えていて。そのために出来ることをしっかりやっていきたいですね。
KAƵUKI:グループのなかの自分の役割もそうだし、自分が出来ること、強みを伸ばして。それが集まることでMADKIDの力になるんですよね。僕の場合だったら、野球、ゲームのYouTubeをやってるんですけど、そこで僕を知ってくれた方がMADKIDのリリースイベントに来てくれたり。そういうことを増やしていけたらなと。
YUKI:それぞれの個性を伸ばしながら、それを足し算ではなく、掛け算するのが大事なのかなと思ってます。僕はわりと現実主義的なタイプなんですけど、他のメンバーはすごくポジティブで。全員が僕みたいな性格だったらなかなか進まないと思いますけど(笑)、MADKIDはそうじゃないので、ときどき「それはどうなの?」みたいなことを投げかけながら、バランスを取って前進していきたいですね。
取材・文◎森朋之
「Mad Pulse」
2025年12月24日発売
Type-A:¥2200(tax in) CD+16Pブックレット封入
Type-B:¥1650(tax in) CD Only
1.Mad Pulse※TV アニメ「DIGIMON BEATBREAK」オープニングテーマ
2.Silence Shatter(feat.ナノ)
3.We Go
4.Mad Pulse (Instrumental)
5.Silence Shatter(feat.ナノ) (Instrumental)
6.We Go (Instrumental)


<MADKID ONE MAN LIVE -BREAKNECK AXCELERATION>
2025年12月30日
@Zepp Shinjuku
DAY 開場15:00 / 開演15:45
NIGHT 開場18:30 / 開演19:15
出演
DAY:MADKID ONLY
NIGHT:WITH BACK BAND(NAGAREDA PROJECT)
スタンディング¥7,700(税込) ※メンズエリアあり
MADKIDオフィシャルサイト:https://columbia.jp/madkid







