【インタビュー】ACIDMAN、4年ぶり13thアルバム『光学』に凛然たる覚悟「本当に好きだと思うものを徹底的に」

2025.11.07 17:00

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■生きているだけでいいって思ってもらえるなら
■僕がその言葉を書いた意味も生まれると思う

──そういうメッセージや、結局は死んでいく人生の中で、最期は笑っていたいというメッセージをアルバム全体に散りばめながら、今現在の世の中をシビアに描いたり、神話の世界にアクセスしたり、ラブソングもあったりとさまざまな物語が歌われているんですけど、最後の「あらゆるもの」は“君が生まれた それだけは 正しい事なんだよ”という歌詞で終わるじゃないですか。そのメッセージは、どんなところから出てきたものなんですか?

大木:そうだなぁ。昔、僕は、正しいって何だろう?って思い悩む少年だったんです。見方が変われば、正しいも正しくないに変わってしまう。要は、善と悪なんて、見方や立場によって全然違うし、生き方や考え方によって変わってくるもの。俯瞰で見たら、人間の存在って地球において悪でしかないんじゃないか、と思っていたこともあって。結局、今も何が正しいのか正しくないのか、わからないんですけど。ただ、科学を学べば学ぶほど、この命が奇跡でしかないって思えるんです。もっとも、この世界が高度に進化した文明に作られた現実のシミュレーションなんじゃないか?というシミュレーション仮説という考えもあって、この世界も僕らの存在も、もしかしたら幻想かもしれないという可能性もあるんですけど、ただ幻想だとしても僕は僕であるという、デカルトの“我思う、ゆえに我あり”じゃないですけど、まずその存在は認めようと思っているんです。でも、それも含め、全ては終わるんです。どんな立派な銅像や石像を建てて、どんなに大きな国を支配しようとも、その人もいずれ死ぬし、それを残した歴史書もいずれなくなるし、いずれ地球も宇宙もなくなるんですよ。即ち全てなくなるところに生きているということは、とても儚くて、全てが無意味に思えてくるんです。その無意味の中に唯一正しいと思えるものって、自分しかないって僕は考えていて。どんな生命も、たとえば生まれてすぐに死んでしまった生命も、宿らないまま消えていったものも、実は宇宙のすべてを動かしているエネルギーのひとつなんです。生物学者の福岡伸一先生が提唱し続けている動的平衡です。あらゆるものはそれを保つために生きて存在している。どんなにちっちゃなものも、この大いなる宇宙のひとつの大事なエネルギーであると考えると、ただ生きてるだけで十分っていうところに帰結してくるんですよ。

──なるほど。

大木:長くなって申し訳ないですけど、“ただ生きているだけで大丈夫だ”──それが悩んでる人たちや苦しんでいる人たちに伝える言葉として合っているかどうかはわからないけど、僕がお伝えすることで少しでも楽になってもらえるなら。誰かに昔言われた一言、他愛もない一言を大事にしながら、人は生きていると思うんですね。おこがましいですけど、“君が生まれた それだけは 正しい事なんだよ”というフレーズを聴いて、生きているだけでいいんだって思ってもらえるなら、僕がその言葉を書いた意味も生まれると思うし、こういう曲を作るミュージシャンがいてもいいんじゃないかなって、自分のこともさらに肯定できるので。ちょっと大きく言っちゃいましたけど、そういう感じです。

──ようやく言い切ることができたという気持ちもあるんですか?

大木:そうですね。安易には言えない言葉だし、人の人生に立ち入る責任もあるし。ただ、それだけでいいんだよ、だから生きていてね、死ぬまで生きていてねって言われ続けていれば、不幸な人はたぶんいなくなると思うんです。僕自身、そう思うようにしているし、生きているだけで意味があるっていうのは、科学的にも検証されている。「光学 (introduction)」に続くアルバムの実質上の1曲目の「アストロサイト」は、“この世界は謎だらけだよ、わけわからないんだよ、僕らは何が本当かわからない世界で生きているんだ”って歌っているんですけど、最後、そんな世界でもあなたが生きていることだけは正しいっていうことが今回のアルバムにおいて、僕が言える最後の一言だったんです。

──“アストロサイト”って言葉、今回初めて聞きました。

大木:僕も最近知ったんですよ。

──脳の中に星があるそうですね。

大木:脳の中にあるグリア細胞のひとつで、星の形をしているんです。ただ、それが何をやっているか、まだわかっていない。わかっていないんですけど、近年の研究では実はそこが僕らの意思決定に関与している可能性があるらしい。つまり、そこが僕のアイデンティティになっているかもしれない。だったら、そこから始めてみようと思って、今回のアルバムのストーリーを考えていきました。

──アルバム最後の音と最初の音が同じで全体がループしていることも含め、興味深い話題ばかりで話が尽きないのですが、同時発売のトリビュートアルバム『ACIDMAN Tribute Works』についても聞かせてもらわないと。なぜ、このタイミングでトリビュートアルバムだったんですか?

大木:これもたまたまなんです。実はけっこう前から動いていたんですけど、レコード会社の権利関係の事情がいろいろあって、やっとまとまったのがこのタイミングだったんです。

──その過程で、ボカロPのじんさんやjon-YAKITORYさんという意外なアーティストも加わった、と。

大木:そうです。おふたりとは面識はなかったんですけど、ディレクターからの提案で。おふたりとも最高のアレンジをしてくれました。めちゃくちゃカッコいい。彼らを含め、全てのアーティストが期待を超えていて、素晴らしいトリビュートアルバムになりました。おべっかでも何でもなく、全曲がびっくりするぐらい良かった。ミュージシャンってすごいなって改めて思いました。特に僕らがずっと一緒にやってきた仲間たちの表現力の強さというか、ここまで長くやっている理由がわかるなってすごく感じましたね。

──トリビュートアルバムって正直、1曲か2曲かは、原曲のアレンジをなぞっただけの曲が入っているものですけど、今回、どの曲もちゃんとそのアーティストの個性が感じられるものになっていて。

大木:そうなんですよ。みんなが勝とうとしている。

──それと同時に、改めて原曲がすごくいいんだなと思いました。

大木:ありがとうございます。だから、僕が歌わなかったほうがもっと売れたんじゃないかなって(笑)。

──いやいや、そんなことはないと思いますけど、トリビュートアルバムも新しいアルバム『光学』と合わせて、ぜひ多くの人に聴いていただきたいですね。最後に今後の活動予定を教えていただけますか?

大木:まず、アルバム『光学』収録全曲を披露するライブを、12月7日と20日に大阪と東京でやります。普段のライブとは全然違った空気感になると思います。初めてライブで聴くわけだから、けっこう緊張感のある発表会みたいなライブになるのかな。前作の時にもやりましたけど、コロナ禍だったから、ちゃんとしたフルキャパでやるのは今回が初めてなんです。だから、どんなふうになるのか、僕自身もワクワクしているし、みんなにも楽しみに来てほしいです。終演後は、お客さんにステージに上がっていただいて、握手でお見送りするという、前回やって大好評だった<壇上交流会>をやるので、それも楽しみにしてもらいたいです。その後は、来年になりますけど、アルバムツアーももちろんやります。

取材・文◎山口智男
撮影◎TOYO

 

■13thアルバム『光学』
2025年10月29日(水)発売
販売リンク:https://acidman.lnk.to/kougakuWE
【初回限定盤(CD+Blu-ray)】
TYCT-69356 / ¥7,040(税込)
※デジパック仕様
※初回プレス分のみ:封入特典 (①「第2回壇上交流会」参加券 / ②「大木伸夫インタビューディレクターズカット版」動画視聴 / ③<ACIDMAN LIVE TOUR “光学”>CD封入チケット先行受付)
【通常盤(CD only)】
TYCT-60252 / ¥3,520(税込)
※紙ジャケット仕様
※初回プレス分のみ:封入特典 (①「第2回壇上交流会」参加券 / ②「大木伸夫インタビューディレクターズカット版」動画視聴 / ③<ACIDMAN LIVE TOUR “光学”>CD封入チケット先行受付)
▼CD収録内容 ※初回限定盤 通常盤 同内容
01 光学 (introduction)
02 アストロサイト 
03 go away  
04 輝けるもの
05 sonet
06 白と黒
07 feel every love ※9/12先行配信
08 1/f (interlude)  
09 青い風 
10 龍 
11 蛍光 
12 光の夜 
13 あらゆるもの 
▼Blu-ray収録内容
『scene of 光学』
・「輝けるもの」Music Video
・「白と黒」Music Video
・「sonet」Music Video
・「feel every love」Music Video
・Documentary2023-2025

 

■トリビュートアルバム『ACIDMAN Tribute Works』
2025年10月29日(水)発売
販売リンク:https://acidman.lnk.to/tribute_worksWE
【CD only】TYCT-60253 / ¥3,520(税込)
※初回プレス分のみ:封入特典 (①「第2回壇上交流会」参加券 / ②「大木伸夫インタビューディレクターズカット版」動画視聴 / ③<ACIDMAN LIVE TOUR “光学”>CD封入チケット先行受付)
▼CD収録内容 ※全13曲収録
01 ELLEGARDEN 「アイソトープ」
02 ストレイテナー 「world symphony」
03 東京スカパラダイスオーケストラ 「to live feat LEO (ALI)」
04 the band apart 「夜のために」
05 じん 「Rebirth」
06 jon-YAKITORY 「輝けるもの (Remix)」
07 downy 「風、冴ゆる」
08 10-FEET 「赤橙」
09 SOIL&“PIMP”SESSIONS 「at」
10 yama 「季節の灯」
11 THE ORAL CIGARETTES 「migration10⁶⁴」
12 BRAHMAN 「SILENCE」
13 Dragon Ash 「ある証明」

 

■『feel every love』歌唱動画投稿キャンペーン
▼応募方法
(1). ニューアルバム「光学」より、「feel every love」のラスサビ(02:45頃〜 60秒以内)を歌唱した動画を撮影。
※撮影いただく動画は60秒以内に収まるようご用意ください。
※歌唱の際にインスト音源をご使用いただく場合は、各音楽配信サービスにて配信中のインスト音源をご確認ください
https://acidman.lnk.to/feeleverylove_cpWE
(2). ハッシュタグ「#ACIDMANとステージ共演」をつけて、対象となるSNSへ自身のアカウントで動画を投稿。
・対象SNS:X, Instagramリール, TikTok, YouTube Shorts
※Instagram, TikTok, YouTube Shortsにご投稿いただく際は、「feel every love (サビver.)」または「feel every love」(02:45頃〜60秒以内)の公式音源の紐付けをお願いいたします。
(3). 応募規約を必ずご確認ご了承いただいた上で、必要事項をフォームに入力し送信。
▼募集期間
2025年11月9日(日)23:59 まで
▼審査の流れ及びスケジュール
SNSでの動画投稿による1次審査と、対面またはオンライン対面による最終審査の2段階で選考を実施いたします。
〜11月9日(日):1次審査応募期間(動画投稿)
11月中旬:1次審査結果のご連絡 
11月22日(土):最終審査(対面@都内某所 or zoom 審査)
12月上旬:最終審査結果のご連絡
12月07日(日):「ACIDMAN 13th ALBUM「光学」全曲初披露ライブ」 リハーサル&本番(大阪・Zepp Osaka Bayside公演)
12月20日(土):「ACIDMAN 13th ALBUM「光学」全曲初披露ライブ」 リハーサル&本番(東京・Zepp Haneda公演)
※審査過程、ライブリハーサル、ライブ当日の各会場までの交通費や宿泊費等は全て自己負担となります。あらかじめご了承ください。
詳細:https://www.universal-music.co.jp/acidman/news/2025-10-22/

 

■13thアルバム『光学』リリース記念トークイベント
日時:2025年11月7日(金)
open19:00 / start19:30
場所:タワーレコード渋谷店B1F CUTUP STUDIO
※集合場所:1F階段前
出演:ACIDMAN
内容:トークイベント
対象商品:『光学』
詳細:https://www.universal-music.co.jp/acidman/news/2025-10-06/

 

■<ACIDMAN 13th ALBUM『光学』全曲初披露ライブ&第2回壇上交流会>
12月07日(日) 大阪・Zepp Osaka Bayside
12月20日(土) 東京・Zepp Haneda
open16:00 / start17:00 / ライブ終了 18:30
壇上交流会スタート 19:00 ※予定
▼チケット
1Fスタンディング / 2F指定席 ¥6,500(税込)
学割(1Fスタンディング / 2F指定席) ¥4,500(税込)

 

■2026年全国ツアー<ACIDMAN LIVE TOUR “光学”>
4月09⽇(⽊) 神奈川・KT Zepp Yokohama
4月18⽇(⼟) 宮城・⽯巻 BLUE RESISTANCE
4月29⽇(⽔/祝) 静岡・LIVE ROXY SHIZUOKA
5月10⽇(⽇) 新潟・NIIGATA LOTS
5月15⽇(⾦) ⼤阪・NHK⼤阪ホール
5月22⽇(⾦) 埼⽟・ウェスタ川越 ⼤ホール
5月24⽇(⽇) 福岡・DRUM LOGOS
5月29⽇(⾦) 宮城・仙台 Rensa
6月06⽇(⼟) 岡⼭・CRAZYMAMA KINGDOM
6月14⽇(⽇) 沖縄・桜坂セントラル
6月27⽇(⼟) 千葉・幕張メッセ国際展⽰場 展⽰ホール9-10
詳細:https://acidman.jp/newsinfo/20251026-2/

 

関連リンク
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◆<SAI2022 PHOTO EXHIBITON -online-> 特設サイト

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