【ライブレポート】<KOREA SPOTLIGHT Showcase TOKYO>開催。話題の韓国アーティストが大集結

韓国コンテンツ振興院(KOCCA)が主催する公式音楽グローバルショーケース/ビジネスプログラム「KOREA SPOTLIGHT」が10月6日~9日にかけ、東京と大阪で開催された。
概要としては10月6日に“Korea Spotlight Mini Forum 「Industry Deep Dive」”として日韓の音楽事情やファンダムについてなど、有識者を招いてのトークディスカッション行われ、10月7日にはShibuya Stream Hallでショーケースライブ<KOREA SPOTLIGHT Showcase TOKYO>が行われた(大阪公演は10月9日になんばHatchで開催)。
参加アーティストはDragon Pony、Dabda、CHEEZE、KARDI、Lee Seung Yoonという布陣。日本からのゲストミュージシャンとして、東京はDYGL、大阪ではPEDROが参加した。
さて、韓国産音楽と言えば、ダンス・ボーカルグループを連想する方が殆どだと思うが、もちろんバンドやシンガーソングライターなど、日本でもなじみのあるスタイルで活動するアーティストも多い。ここでは10月7日に行われた“KOREA SPOTLIGHT Showcase TOKYO”の模様をお伝えしたい。
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まず、トップバッターを務めたのはDragon Pony。メンバーはアン・テギュ(Vo)、グォン・セヒョク(G)、ピョン・ソンヒョン(B)、コ・ガンフン(Dr)の4人。オーディションを経て結成され、キャッチーなロックサウンドで注目を集めている。そんな彼らが登場すると、すかさず場内からは大きな声援が起こった。
アン・テギュは観客に手拍子を要求し、瞬く間に一体感を生んでいく。1曲目の「尾を食べる蛇」からバンドはフルパワーの演奏で圧倒。もちろん「モールス信号」や「地球少年」では、アン・テギュが甘い歌声でメロディアスな楽曲を表現。後半では「一緒に歌ってください! いいですか!」と煽りを入れ、最新EP『Not Out』からリード曲「Not Out」を披露。フロアからは歌声も起こり、まるでワンマン公演のような熱狂を生み出した。

ラスト曲には昨年9月にリリースしたデビューEP『POP UP』から同名のタイトル曲「POP UP」を披露。まだまだフレッシュな雰囲気を残しながらも、高い音楽性やメンバーのビジュアルの良さなど、強力な武器を持つ彼ら。今後、さらなる活躍に期待がかかる。

2番手は女性ギターボーカルを擁するDabda。日本人アーティストとの交流もあり、変則リズムでオリジナリティーのあるロックを作り出す4人組バンドだ。メンバーはキム・ジエ(Vo, G)、パク・ジョンウン(G)、ノ・ゴヒョン(B)、イ・スンヒョン(Dr)。まず、ドラムのイ・スンヒョンが「コンバンワ! 私達がDabdaです!」と自己紹介。

そして、バンドはフリーセッション風のアプローチで「intro 2024」へ。その見事なバンドアンサンブルで観客の心をつかんでいく。後半では最新シングル曲「DDDD!」を披露。圧倒的な演奏力で、クセになる独特なリズムを見事に表現していく。ただ、彼らは決して技巧派だけのバンドではない。キム・ジエの透明感に満ちたボーカルによって高いポップ性も兼ね備えている。そのせいか、日本はもちろん、海外でのライブ経験を通してグローバルな人気も高い。
ラスト曲「Polydream」の前に、ドラムのイ・スンヒョンは観客に「どうもありがとうございます!」と日本語で感謝の言葉を叫び、没入感のあるロックナンバーを熱演。鮮烈な印象を残した。

次に登場したのはCHEEZE。ボーカリスト・Dalchong(ダルチョン)がバンドスタイルで活動している。作詞作曲、アレンジなどをこなすDalchongはこれまでも多くの著名なアーティストとコラボを果たし、その才能は一目置かれている。良質のポップソングを得意とするCHEEZEは、まず心地良いミディアムチューン「How do you Think」でライブをスタートさせる。優しく甘い歌声が会場を温かく包み、これまで2バンドが作り出した空気感をガラリと変えてみせた。

MCでは、観客から大声のレスポンスをもらっていたDragon PonyやDabdaのパフォーマンスに感動した彼女、「私にもその感じ(声援)もらえるかな?」と呼びかけ、場内から歓声を引き出した。これでフロアとの距離感をぐっと縮めていく。
「오늘의 기분」「좋아해 (bye)」など、洗練された楽曲で楽しませてくれたCHEEZEだが、あっという間にライブはラスト1曲を残すのみとなった。曲は代表曲のひとつである「Madeleine Love」。軽快なテンポのポップチューンに、場内からは手拍子が起こる。そんな彼女の癒しの歌は、多くの観客を笑顔にしてくれた。
このあと、ゲストアーティストとして海外でも活躍している日本のバンド、DYGLが登場。気合いの入ったガレージロックサウンドで、再び会場をロックらしいノリに塗り替えた。

熱い空気に変わった会場をさらに熱くしたのが、この後に登場したKARDI。メンバーはアニメなどのジャパンカルチャーを愛するファン・リン(G)、尖ったビジュアルとパワーボイスが魅力のキム・イェジ(Vo)、ライブ中のアグレッシヴなプレイが印象的なファン・インギュ(B)、そして伝統弦楽器コムンゴ奏者のパク・ダウルの4人。

ライブではサポートドラマーを迎え。観るものを鼓舞するパフォーマンスが特徴的だ。やはりステージにコムンゴがあると目を引くが、日本人的には見た目が琴に近い楽器なので親しみがわく(ただ、音色は全く異なる)。

まず1曲目の「Player 1」からバンドが叩き出すエナジーがすさまじい。ラウドロックに通じるパワーは圧巻だ。曲によってビジュアルが変化するキム・イェジはこの日、黒髪ショートヘアというキュートなスタイルでパンチの効いた歌声を披露。その後も「Not But Disco」や「No Need」など、ライブ人気の高い曲を連発。ラストの「Skybound」を前に、ファン・リンは流暢な日本語で「この曲は皆さんの助けが必要です!」と声援と拳のレスポンスを要求。短い時間の中、KARDIらしさを出し切った。

そしてこの日のトリを務めたのはLee Seung Yoon(イ・スンユン)彼は昨年、韓国音楽賞において3部門を受賞。実力派のシンガーソングライターとして知られる。サウンドを聴けば、UKロックから大きな影響を受けているのがわかるが、彼自身は幅広いジャンルの音楽を楽しんでいるそうだ。ただ、楽曲をバンドスタイルで演奏し、深いメッセージを込めた歌詞を大切にしているところに人気の要因があるのは間違いない。
彼は最新アルバム『Yeok Seong』の収録曲をメインに構成。1曲目にはうねりのあるロックナンバー「Anthems of Defiance」をセレクトし、ギターをかき鳴らしながら熱唱。背景のビジョンには歌詞が映し出され、“伝えたいこと”を大事にする彼らしいこだわりが伝わった。

その後も「POKZOOK TIME」や「Pricey Hangover」など、フェスのようなノリで観客を引きつけ、貫禄を見せつけた。「次の曲で最後の曲です。気をつけて帰ってね」と優しいMCから「Waterfall」へ。ミディアムテンポで聴かせる歌モノでのフィニッシュとなった。観客からは「アンコール!」の声も出たが、Lee Seung Yoonの持ち味は十分に伝わるパフォーマンスだった。
今回のショーケースを通して、韓国のロック、ポップスのアーティストも、グローバルな視点と、高い音楽性を持っているのが理解できた。この先、日本のアーティストやファン同士の交流も増え、お互いに刺激し合いながら、シーンをどんどん盛り上げていって欲しい──そう強く思わせるイベントだった。
Live photos ©KOREA SPOTLIGHT







