■知らないものを知っていく作業は
■ずっと続けていきたいですね

──フェスでは多くのバンドのベーシストと話す時間もあると思いますが、機材や音の話も頻繁にしますか？

NAOKI：ベーシストって機材の話を全然しないんですよ（笑）。機材の話をするのはドラマーばかりです。だから、打ち上げでもドラマーってわりと集まりがちですけど、他のパートはわりといろんなパートと混ざって話をしてたりして。

──では、このBARKSインタビューを読んで、初めてNAOKIさんの機材を知るベーシスト仲間も少なくないと。

NAOKI：足元のエフェクターボードまで見る機会は少ないけど、アンプやキャビはステージ袖から見ても分かるじゃないですか。今、使っているGR BASS AT410っていうキャビは、わりとベーシスト仲間からも珍しがられましたね。『コリンズ』のツアー中だったと思うんですけど、GR BASS AT410はもともとレンタルで使っていて、気に入ったから同じモデルを購入したんです。で、購入したものがツアー先のライブハウスに届いたので、レンタルしているAT410と新たに購入したAT410を交互に鳴らしてみたんですよ。そうしたら、“いや、購入したものよりレンタルしているAT410のほうが鳴り方が自分好みやん！”と。なので、“レンタル用のAT410を買うことはできませんか？”って、輸入代理店のオカダインターナショナルに交渉してゲットしたんです。ちなみにGR BASSはイタリアのメーカーで、当時AT410が日本に1台しかなくて、まだ買えなかったからずっとレンタルで使っていたんです。

──つまり、現在NAOKIさんが愛用しているのは、日本へ最初に輸入されたAT410であると。

NAOKI：そうなりますね。AT410を使う前は、アンペグのスピーカー4発入りキャビを使っていたんですけど。それと比べると、音の飛んで行き方が全く違ったんです。音が直線的に飛んでくるんですが、レンジの広さとミッド感があって、瞬発力もレスポンスも良かったんです。まだ他のベースでは試していないんですけど、ギブソンのサンダーバードとの相性がむちゃくちゃ良かったんですね。サンダーバードの音が、よりタイトに太く、立ち上がりも速い。

──相当こだわってますね。

NAOKI：僕は口で音色を説明されても分からないので。実際に自分で鳴らして、感じたものがむちゃくちゃ良かったら購入して。その結果、今の機材が揃っていったんです。わりと動物的な感覚ですね。

──どうやって機材の情報を得ているんですか？

NAOKI：対バン形式で細かくツアーをまわるときは、対バンの相手の機材を借りて、実際に鳴らしたりもするんですよ。自分のキャビと、対バン相手のキャビを比べてみて、このキャビはこういう特性がある、というのは情報として仕入れたりしてます。

──そういう知識と経験の積み重ねはご自身の血や肉になりますよね。

NAOKI：さっきも言ったように、20代の頃に比べると、ベースの音とか好みも含めて、今はだいぶ変わりましたし。昔はスティングレイのようなギラギラした音が好きだったけど、今はギラギラというより、骨太さのほうに好みが変わった気がします。

──NAOKIさんご自身の経験を通して得たものというか、“本物を目指すならこういうことを意識したほうがいい”など、ベーシストへのアドバイスはありますか？

NAOKI：僕もそうだったんですが、最初は良し悪しが分からないんですよね。ベース本体ひとつとっても、“フェンダーのジャズベースがいい”という人もいれば、“フェンダーのプレベがいい”という人もいるし。他にもサンダーバード、スティングレイ、ワーウィックのサムベースとか、ベースにもいろいろあって、結局、どれを選んだらいいのか分からないってことが最初は多いと思うんです。

──初心者は特にそうですよね。

NAOKI：でも最初のきっかけって、誰にもあると思うんですね。たとえば、レッチリみたいなバンドやりたいからとか、好きなアーティストやベーシストがいるとか。自分の好きなアーティストの真似して、同じ機材を使ってみるのもいいと思います。というか、僕はそうすべきだと思ってます。自分の好きなアーティストは、いろいろ機材を試してそこに辿り着いているわけだから、それを一度真似してみて、やっていくうちに“ここがもうちょっとこうなったらいい”とか、いろいろ自分らしさが出てくると思います。

──真似から始めて、その後、どう格闘していくかという過程も大事ですよね。

NAOKI：アンプのツマミひとつにしても、自分でいろいろイジり回さないと、どういう音になるのかも分からないじゃないですか。自分が手にしたベース、アンプ、キャビを追求するだけ追求して、そこから、どこかのタイミングで別のものに変えてみるとか。そうやっていったら自分の音はできていくんだろうなと思っています。

──NAOKIさんは2025年でどれぐらいのキャリアですか？

NAOKI：10-FEETが今年で結成28年目なんですけど、僕がベースをしっかりスタートしたのは結成1年前ぐらいで。その前のバンドはオリジナル曲が1〜2曲あって、あとはコピーをしていたので、キャリア30年いってるかいってないかですね。

──人生の半分以上をベースと共に歩んでいますね。

NAOKI：気づけばそうですね（笑）。でも、まだまだ使ったことない機材もあるので、そのときどきで興味持ったものは、全部触っていきたい。やってみた結果、それが10-FEETに反映されるのかされないのかっていうのは出てくると思いますけど。ただ、知らないものを知っていく作業はずっと続けていきたいですね。

──最終的に、これが美味いとか不味いとかは、自分の感性で決めるという。キャビにも“独断”という幕を付けてるぐらいですから。そういう面でもグルメな感覚が活きているといいますか。

NAOKI：そうです、僕はなるべく知らないような新しい店に入るようにはしているんで。この姿勢、一貫していますね。っていうか、この幕、怖い感じですよね（笑）。

取材・文◎長谷川幸信／梶原靖夫(BARKS編集長)
撮影◎堅田ひとみ(機材)／かわどう(ライブ)

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