【舞台裏インタビュー】<山人音楽祭2025>BRAHMAN「続けている限りは失敗なんてない。俺はそう断言できる」

スクリーンに映るモノクロームの映像。流れるのは精神に作用するような調べ。儀式の始まりのようでもあった。そして楽器陣による繊細な音使いとフレーズが広がる中、TOSHI-LOWが包み込むように歌声を聴かせながら「charon」からBRAHMANのステージは始まった。
雄大な響きを持った歌やサウンドをたっぷりと聴かせたと思えば、今度は真っ赤な照明で全身を浮かび上がらせながら、暴力的とも呼べる激しい音でも攻め立てる。そんなBRAHMANの様は、30年続けている生身の自分たち自身と音楽を、ストレートにピュアにダイレクトに体現しているようでもある。
怒るように声を張り上げ、吹き出す汗で全身を光らせるTOSHI-LOW(Vo)だ。高揚感以上に広がるのは緊張感。会場にいる全員の視線はステージ一点に集中し、BRAHMANの曲や音を浴びながら一人ひとり、鼓動を高めるのみだ。
だがライブが後半に差し掛かっていったとき、熱さと同時に、人間的な優しさや思慮深さがにじみ出る曲や歌が待っていた。歌い上げながら、今度は会場にいる一人ひとりにメッセージを染み渡らせるTOSHI-LOW。そして「最後の少年」のときだった。G-FREAK FACTORYの茂木が、ハーモニーやコーラスで加わる。茂木の肩に手をやり、笑顔が自然に出てしまうTOSHI-LOW。ところが、次の曲に入る前、こんなことを言い出した。
「またいるんだ、群馬に。ずーっと9月は群馬にいる。そしているんだ。アイツがずーっといる。原始人みたいな山人が……」
一緒にいることが長いと、ライブの動きや言うことも、お互いに似てくる、とも。だが、その前から二人は似ているという。なぜなら、二人の根っこにあるのはパンクやレゲエなどのレベルミュージック。社会の悪や不正に対する様々な怒りだ。
「俺たちは、形は違うが、似たようなバンドのスジを描いているんだよ。だからイヤがるヤツがどんだけいようが、世間を、社会を、風刺を、政治を、核の話を、戦争の話を、原発の話を、歌の中に入れるんだよ。そんなものなくなっちまったら、俺たちはバンドやっている意味がないんだよ。俺たちはずっとずっと立ててるんだ、中指を。だけど、一緒に小指も立てている」
いつかライブハウスに出ること、いつかステージに上ることを、音楽を始めたときに自分自身と約束して小指を立ててきたという。その約束を実現させている今、TOSHI-LOWは会場にいる全員に言葉を向けた。
「勝手に夢をあきらめる人がたくさんいる。見てみなよ、ステージに立って、好きなことを50歳にもなってやってるんだよ。まだまだあなたたち、できることあるでしょ。簡単にやりたかったこと忘れんなよ。捨てるなよ。やりたかったこと、簡単に捨てんじゃねえぞ。続けていくための魔法の言葉を…、全ての苦境に“順風満帆”!」
お互いに“兄弟”と呼び合うTOSHI-LOWと茂木。そんな兄弟分の茂木たちが立ち上げた<山人音楽祭>。あきらめないから、この10周年がある。そして、まだまだできることがあるとG-FREAK FACTORYは格闘を続けている。G-FREAK FACTORYと<山人音楽祭>、この<山人音楽祭>を愛するみんなに、最高の言葉と音楽と力を贈るBRAHMANだ。
◆ ◆ ◆

──ライブを終えたばかりですが、その手応えはいかがですか?
TOSHI-LOW:俺らはないよ。<山人音楽祭>に対しては、自分たちが一生懸命やるってこと以外ないから。手応えを求めにも来ていないし、自分たちが目立ちたいでもない。<山人音楽祭>が成功するために、そのひとつの人足であればいいなって。
──でもエンディングのMCも含めて、ものすごく響きました。“あきらめるな”という言葉。あきらめていないから、<山人音楽祭>の10周年があるし、ここに集ったバンドたちがあると思うんです。そして集まった人たちにも、すごく力のあるメッセージでした。
TOSHI-LOW:G-FREAK FACTORYの在り方だよね。もともとローカル、しかも遅れてきたルーキー。一度、メジャーにいっているけど、いろいろあって、もう一度、再出発せざるを得なかった。でも今、ここにこうやってアイツらは立っている。それを成功と取るのか、これぐらいしかできなかったと取るのか。受け取り方は人それぞれでいいと思うけど、田舎モンのクソガキがバンドやって、これを作り上げたってことは、ステージに立てば分かるけど、凄いなと思う。ただ、10年やるとひとつ区切りが付いてしまう。
──節目にもなりますから。
TOSHI-LOW:ここから<山人音楽祭>が変わらないと、多分、終わっていってしまうと思う。大事なのは続けることじゃないんだよ。もう一度、ちゃんと始めること。10年というのは、もう1回、始まりをできるタームだよね。
──気を引き締めるタイミングでもあると。
TOSHI-LOW:そう、<山人音楽祭>としての在り方の。10年やった。だったら10年から15年、15年から20年に関しては、どうするのかというのが明確に見えないと。ヴィジョンみたいなのがないと終わってしまうと思う。
──意志やスジが?
TOSHI-LOW:単純に人をいっぱい集めて盛り上げたいなら、地方の祭りでいいじゃん、と俺は思ってしまう。花火をあげて、バンドとかを出して、スポンサー集めて無料ライブをやれば盛り上がる。でも、そんなことやりたいのか?となる。何をやりたいのか、もう一度立ち返るために10周年があると思うんだよ。そこから20年目の<山人音楽祭>を俺は見てみたい。G-FREAK FACTORYが続けている限り、<山人音楽祭>があるのなら、バンドと一緒で変化しなきゃいけないと思うんだよ。厳しいこと言えば、10年やれたんだから、10年同じではもう無理なんだよねと思ってしまう。それを茂木がどう考えるのか。まだまだ可能性はあるし、もっともっとトライ&エラーをしてほしい。それだけ地力も体力もあるバンドだと思っている。
──TOSHI-LOWさんが気を引き締める役になっているかもしれませんね。去年の舞台裏インタビューでも、もっと個性あるフェスにG-FREAK FACTORYならできる、期待している、といった言葉を残していました。
TOSHI-LOW:せっかくローカルでやっているなら、大都市の劣化版はイヤで。東京でやっているヤツのちっちゃい版が群馬で見れますよ、とか。そうではなくて群馬でしか見れないものを、と思う。俺、オリジネーターが一番強いと思っている。0から1にする。そのオリジナルをどうやって引き起こすか。群馬でしかできないことをもっともっとやるために、11年目はもう1回、一から考えようって。せっかく一の位が“0”から“1”になるんだから。そういう区切りなんじゃないって思う。でも10周年を迎えたというのも、もちろん褒めるよ。凄い。
──意地も執念も情熱もずっと持ち続けているってことでもありますね。
TOSHI-LOW:自分たちも30年やっているから、そこに関しては熱くなるよ。

──30周年という節目の2025年、BRAHMAN主宰<尽未来祭 2025>を11月22日〜24日に幕張メッセで行ないます。TOSHI-LOWさんは、出演してくれるバンドマンに何を期待しています? そして観に行くお客さんには、どんな気持ちで臨んでほしいですか?
TOSHI-LOW:みんなへの感謝とありがとうしかないのは置いといて、俺たちのお祝いなんで、まずお祝いをしに来てほしい(笑)。“あのバンド呼んでない”とか“もっとこうだったらいい”とか、当日もああだこうだ言うヤツはいっぱいいると思う。バカ野郎! 人のお祝いの式に行って文句を言うヤツはいないだろ。ひとつのフェスとして捉えられちゃっているけど、俺らを祝いに来るものなんだよ(笑)。商業からかけ離れたいんだよ。俺の携帯に詰まっている付き合いから全てを生みたい。
──でもTOSHI-LOWさんの携帯に番号が入っていない人でも、会いたい、一緒にライブやりたい、BRAHMANを浴びたい、というバンドマンや音楽ファンは多いですよ。
TOSHI-LOW:俺、子どものころに会いたいと思った人と、全部会っているんだよ。ずーっと音楽雑誌『宝島』とか読んで、この人たちに会いたいって本気で思っていた。今日のMCでも話したじゃない。田舎のあぜ道で大きい声で憧れのバンドの曲を、俺は子どものころに歌ってた。ウォークマンは買えないから、そのパクりのクソみてえなプレイヤーで(笑)。しかも先輩から回ってきたダビングテープだから音もおかしくなっていて。それでも必死で曲を覚えて、チャリンコ乗りながら、夜道は怖いから、でっかい声で歌っていた。それで俺は強くなって、その曲を歌っていた人たちと、結局会えて。だから捨てたもんじゃねえな、と思ってる。
──今日のMCで言っていたことに帰着しますね。続けること、夢を捨てないこと、あきらめないことが大事ということに。
TOSHI-LOW:捨てられるもんなら捨てちまえよ、とは思う。だけど、俺は捨てられなかった。べつに優れていたわけでもないし、育ちが良かったわけでもない。でも俺には、あきめないという才能があった。あんたはどうですか、と。続けることぐらいなら誰でもできんじゃん? そう言うなら続けてみなよ。すごい未来が、10年後、もしくは30年後に待っているんだとしたら、まだやれるじゃん。勝手に自分の家にあるギターを捨ててしまうとか、イヤな人間関係でバンドやりたくないとか、なぜ、あきらめちゃうんだよ。やめてもいい、やめたらまた始めれば、続けるのと同じこと。毎日毎日、夜、1日が終わる。でも朝から1日がまた始まる。終わっても、また始めればいい。続けている限りは失敗なんてない。俺はそう断言できる。
取材・文◎長谷川幸信
写真◎淵上裕太
ライブ写真◎HayachiN
■G-FREAK FACTORY主宰<山人音楽祭 2025 ~10th Anniversary~>
9月20日(土) 群馬・日本トーターグリーンドーム前橋
9月21日(日) 群馬・日本トーターグリーンドーム前橋
〒371-0035 群馬県前橋市岩神町1-2-1
open9:30 / start11:00 / 終演20:00※予定
▼9/20(土)出演者
Age Factory / ENTH / かりゆし58 / 氣志團 / KOTORI / G-FREAK FACTORY / SHANK / 上州弾語組合 / SKA FREAKS / 高木ブー / DJダイノジ(大谷) / 10-FEET / TOTALFAT / 花冷え。 / HAWAIIAN6 / The BONEZ / locofrank / ROTTENGRAFFTY(※五十音順)
“能登半島応援企画 MAKE A PROMISE TO NOTO (Tokyo Tanaka×バカビリー×高橋ちえ)”
▼9/21(日)出演者
片平里菜 / G-FREAK FACTORY / J-REXXX BAND / JUN SKY WALKER(S) / 上州弾語組合 / 四星球 / 竹原ピストル / NakamuraEmi / バックドロップシンデレラ / ハルカミライ / Hump Back / BANYAROZ / 04 Limited Sazabys / FOMARE / BRAHMAN / HEY-SMITH / 山嵐 / LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS PLUS(※五十音順)
『山人MCバトル×戦極MCバトル』※開催は9/21(日)
Armadillo / bendy / DOTAMA / FCザイロス / GOMESS / KOOPA / 溝上たんぼ / NAIKA MC / 歩歩 / risano / Sitissy luvit
DJ:R da Masta
司会:K.I.G
『上州弾語組合』
9/20(土) 清水 明夫 / KIE Anderson / garb / 16号。 / 横山 ナオ / 上原梅弦
9/21(日) 高平 悠 / 山口 貴大 / 茂木 拳 / 鹿山 音楽 / ジュンペイ / 藤井 トモカズ
▼チケット
・各1日券 9,500円(税込)
・2日券 18,000円(税込)
・駐車場付 1日券(9/20)※SOLD OUT
・駐車場付 1日券(9/21)※SOLD OUT
・駐車場付 2日券 ※SOLD OUT
(問)DISK GARAGE https://info.diskgarage.com
主催:DISK GARAGE/BADASS/上毛新聞社
企画・制作:DISK GARAGE/BADASS







