【ライブレポート】ONE OK ROCK、日産スタジアム7万人熱狂、Taka骨折を乗り越えた奇跡の「DETOX」公演

8月最後の日曜日、横浜・日産スタジアムで<ONE OK ROCK DETOX JAPAN TOUR 2025>を観た。過去最大規模を記録した4月の南米、5~6月の北米ツアーに続く初の国内ドーム/スタジアムツアーは、新たなフェイズへ突入したバンドの力を示す試金石だ。7万枚のチケットはソールドアウト、見渡す限りの人の波が生み出す圧倒的スケール感が壮観だ。
「毒された思想に覆われたこの世の中を、音楽の力でデトックスするために…」
最新アルバム『DETOX』は、現在の世界と日本を覆う閉塞感をぶち破る強いメッセージ性と、多様な音楽的パワーが炸裂する作品だった。オープニング映像とナレーションでその意図をしっかり伝え、アルバム収録曲「Puppets Can’t Control You」でキックオフしたライブは、あっという間にテンションMAX。ヘヴィ&ラウドな重低音がスタジアムを揺るがし、巨大ビジョンと無数の照明が躍動し、ステージでは炎の柱が噴き上がる。スタジアムならではのド派手な演出に目と耳と心が奪われる。
「今日の俺らには何も守る必要はない。全力で行きます。覚悟してかかってきてください」──Taka
曲名を言わずともイントロで大歓声、歌えと言われずともサビは大合唱。アルバム楽曲「NASTY」のように現代的ヘヴィメタルと言える挑発的で重厚な曲が、7万人の心をひとつにしているのを見るのはある意味衝撃だ。エフェクトをかけたサイケデリックなライブ映像と、飛び交うレーザービームが視覚を刺激する。Toruがギターソロを決める。気合の入ったいい顔をしている。




「めっちゃ楽しい。ありがとう。気づいたら20周年。20年経って、この景色を見れるのが幸せです。そして今日は僕が加入してちょうど19周年です!」──Tomoya
「昨日よりも絶好調です。本番前に、メンバーがサプライズで、誕生日(9月4日)のケーキを持ってきてくれて。みんなに祝ってもらったので、昨日よりも暴れ狂ってやろうかと思ってます」──Ryota
「バンドを始めて20年。今までステージで言ったことないけど、一緒にここまで来れたメンバーにありがとう。こんな景色が見れてめちゃめちゃ嬉しいです」──Toru
「やめろよ、序盤でそういうこと言うの(笑)。俺もお前らと音楽できて、本当に嬉しいよ」──Taka




4人の関係がよくわかる、素顔のトークでほっこりさせてから再び音楽へ。Takaの言葉によると、このツアーのセットリストはアルバム『DETOX』の全曲披露に加え、バンドの20年間を振り返るメモリアルなもの。「Living Dolls」も懐かしい曲のひとつで、青くささを残した切ないメロディと、20年間で培った強靭なバンドアンサンブルががっちりとかみ合って時を超える。ステージを歩きながら「見えてるぞ!」とスタンドを指さすTaka。7万人の大合唱に「素晴らしい声をありがとう!」と叫ぶTaka。
「楽しんでますか? 7万人、凄いね。来てくれて本当にありがとうございます。感謝します」
「ここから少しだけ、静かな曲をやろうと思ってます」…ピアノのOsamu Fukuzawaを招き入れた「This Can’t Be Us」は、『DETOX』の中では異色のTakaのパーソナルな思いを綴った曲。幼い子供が描いたような、素朴なタッチのアニメーション映像とあいまって、しみじみと切なさを感じるメロディアスなスローナンバーを、耳を澄まして聴き入る7万人。そしてこの日のハイライトのひとつになったのが、ピアノと歌だけで披露した「Renegades」。歌の巧さはもちろん、強さと優しさを併せ持つTakaの人間性があふれ出す説得力と表現力に圧倒される。ステージ上にはシンプルなピンスポット、静かに燃えるかがり火の演出も素晴らしい。
しっとり聴かせる曲のセクションが終わると、ガラリと空気が変わった。Toru、Ryota、Tomoyaがそれぞれのソロをフィーチャーしたインストを経て、いきなりスポットを浴びて現れたのはPaleduskとCHICO CARLITO。「ここにこのメンツが集まったということは、やることは一個しかねぇよな!」とTakaが叫ぶ。曲はもちろん『DETOX』収録の「「C.U.R.I.O.S.I.T.Y.」。二つのバンドと一人のラッパーが合体した化学反応は凄まじく、音圧もスピード感もエネルギーも圧倒的。さらにもう1曲「One by One」を披露して、燃え上がる炎と度肝を抜く爆音の光玉の中で、7万人の興奮は頂点に達する。自動制御で発光するシンクロライトリストバンドが、光る波のようにスタジアムを埋め尽くす。ライブはいよいよ終盤だ。
「10年ぐらい前から海外に行き始めて、自分たちはどうあるべきか?を追求して、追求しまくって作ったのが『DETOX』というアルバムです」──Taka

世界を相手にするバンドへと成長した証として、今伝えたい主義主張を詰め込んだ『DETOX』について語るTaka。そして、「アルバムの中で一番大事な曲です」と前置きして演奏した「Delusion:All」。優しさと怒り、悲しみと攻撃、癒しといら立ちがゴチャマゼになった、壮大なスケールのヘヴィロック・バラード。Takaが英語詞に込めたメッセージは、それぞれが歌詞を読みこんで理解するべきだろう。ONE OK ROCKのメッセージは答えではなく、問いかけ。ネットで探すのではなく、一人で見つけるもの。
クライマックスは「Dystopia」を筆頭に、アルバム『DETOX』収録曲をずらりと並べて突っ走る。容赦ない爆音、レーザー、閃光、花火の攻撃に、歓声、合唱、ジャンプ、ヘドバン、手振りで応えるオーディエンス。そしてこのままエンディングへ、と思った時にアクシデントが起きた。Takaが左足を負傷し、ライブは一時中断。会場は一時騒然となるが、Takaは数分後に車いすに乗って復帰。「絶対やめねぇぞ!」と自らを鼓舞し、これまで以上に気迫のこもった歌声と瞳の輝きで、7万人の応援に応えて残りの楽曲を見事に完走。おそらくその場にいた人間にしかわからない、アクシデントが生んだ奇跡の一体感。これぞライブ、これがライブ。

鳴りやまないアンコールの声に応え、マイクスタンドを杖の代わりに、椅子の代わりにステージに置かれた台に足を乗せて歌うTaka。サポートするメンバー。絶え間なく声を送るオーディエンス。おなじみのアンセム「We are」が、今日はひときわ熱を帯びて響く。Toruの肩を借りて歌うTakaが「愛してるよ!」と叫ぶ。全曲を歌い終え、仰向けにひっくりかえったTakaに大歓声が降り注ぐ。終演と同時に上空で炸裂する打ち上げ花火。なんというエモーショナルなフィナーレ。

翌日の発表によると、Takaは左足の小指を骨折。それでも残り数曲を歌い続け、伝えるべきメッセージを伝え、片足で飛び跳ねながら7万人の歓声に応えていた姿は、超人的としか言いようがない。ジャパンツアーはこのあと9月6日に大和ハウス プレミストドーム(札幌ドーム)、13日、14日にヤンマースタジアム長居の2デイズでファイナルを迎え、10月からはヨーロピアンツアーが開幕する。Takaの負傷は気がかりだが、この日のステージで見せた不屈の闘志がきっとバンドを前へ進めてくれるだろう。ONE OK ROCKは止まらない。なぜなら、伝えるべき使命があるから。ONE OK ROCKは止まらない。

取材・文◎宮本英夫
<ONE OK ROCK DETOX JAPAN TOUR 2025>
2025年8月16日(土)
@大分・クラサスドーム大分
2025年8月17日(日)
@大分・クラサスドーム大分
2025年8月30日(土)
@神奈川・日産スタジアム
2025年8月31日(日)
@神奈川・日産スタジアム
2025年9月6日(土)
@北海道・大和ハウス プレミストドーム(札幌ドーム)
2025年9月13日(土)
@大阪・ヤンマースタジアム長居
2025年9月14日(日)
@大阪・ヤンマースタジアム長居
<ONE OK ROCK DETOX European Tour 2025>
2025年10月6日(月) Madrid, ES – Palacio Vistalegre
2025年10月8日(水) Nantes, FR – Zenith
2025年10月10日(金) Paris, FR – Accor Arena
2025年10月11日(土) Strasbourg, FR – Zenith
2025年10月13日(月) Manchester, UK – O2 Apollo
2025年10月15日(水) London, UK – The O2
2025年10月18日(土) Brussels, BE – Forest National
2025年10月20日(月) Amsterdam, NL – AFAS Live
2025年10月21日(火) Cologne, DE – Lanxess Arena
2025年10月23日(木) Hamburg, DE – Barclays Arena
2025年10月24日(金) Berlin, DE – Max-Schmeling-Halle
2025年10月25日(土) Munich, DE – Zenith
2025年10月27日(月) Warsaw, PL – COS Torwar
2025年10月29日(水) Prague, CZ – Forum Karlin
2025年10月30日(木) Budapest, HU – Budapest Arena







