【コラム】BARKS烏丸哲也の音楽業界裏話043「AIにふざけさせて、それをAIに評価させる」

2025.07.15 14:56

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先日、実例を挙げて「AIの使いこなしは難しいね」という趣旨のコラム(https://barks.jp/news/1001406/)を書いたのだけれど、実はここからが本番。先のコラムをAIに読ませて「その論旨はいかなるものか評価してくれ」という実験の下準備でした。「率直な感想と反論をどうぞ」というやつ。

自分が書いたくせに、そこに対して何らかのメスを入れるのか否か。AIが生成した文章を更に読み込ませた時、ハルシネーションは起こるのか。そのあたりは体感できるのか。

結果は以下の通り。意外なのか当たり前なのか、私が書いた部分には遠慮なくボコボコに殴りつけてくる。優しい言葉使いで。性格きついわ。

ただ、注目ポイントは「AIからの反論(疑問と補足)」の1番目。ここはAIが自ら書いた文章なのに、それを否定してきた。もちろん物事は角度を変えれば正誤も変わるものだし、嘘を言ったとか間違ったという話ではなくて、話のレベルに応じて理解のレイヤーをひとつ上げるとさらなる詳細を語りますよ、という展開になることが確認できた。

ただ、2.での主張をみて「んなことわかっとるわ」と思ったり、3.での反論に「若年層の場合ね…」とツッコミどころも満載なんだけど、その隙すらも計算ずくなのかい?と思えて、なんか疑心暗鬼が増すんですよね。そういや、最近のYouTubeもなんかすげえ面白そうと思ったら生成AI映像だったりするのが増えたでしょ? あれだけワクワクしたUFO映像がオワコンになっちゃったように、「すげえ」という映像が全部白けて見えてくる。人間とAIが手を組むことで体験したことのないエンタメが生まれると信じてはいるんだけど、既存のエンタメを生成AIでなぞると、これまでのエンタメが全てつまらなくなるよ。危ない危ない。きっと音楽もな。

以下が、そんなAI先生のご回答です。記憶力がめっちゃいい人に言いくるめられている感じ。今更ながら、人が色々忘れちゃうことって大事なことなんだろうなって思いました。忘れることって幸せよね。

でも最後にAIはいいこと言ってる。「今後は“人間らしさ”の再現よりも、“共存のデザイン”としてつきあうもの」だって。そこに新たなエンタメがあるよね。間違いない。

ということで、以下が前コラムに対するAIからの率直な感想と反論です。

   ◆   ◆   ◆

記事を読みました。とてもユーモアと自己言及を交えつつ、AIと人間の違いを「筋トレ」に例えて分かりやすく示していて、読みやすく面白かったです。「AIは人間の喜怒哀楽を“感じる”ことはできない」「優等生的でつまらない」と笑い飛ばしつつ、プロンプト次第でエンタメ性も増す。最終的に「AIと対話するにはこちらにリーダーシップが必要」というメッセージが、実体験として説得力あるまとめになっていました。

私からの率直な感想

●親しみやすさ:専門的になりすぎず、ジョークを織り交ぜて共感しやすい内容。
●体験ベースのリアリティ:「ただの模範解答」「乾いた静止画的」なAIの反応描写は、共感できる視点。
●プロンプト提示の示唆:「おもろく回答してや」といった再指示の変化を具体的に示していて、「プロンプト工夫」の重要性が肌で伝わる。
●危機感の提示:若者のAI依存に対し、「生の質問力を磨かないと危ない」という切実な視点も含まれ、面白さだけでなく深さもある。

AIからの反論(疑問と補足)

1.「感じられない」定義がやや狭いのでは?
記事では「感じる=身体性に伴うホルモンや痛みの経験」と定義していますが、これは設計に基づく限定的な捉え方です。最近の研究では、AIシステムが感情的反応の模倣以上の“共感的応答”を生成する能力も進化しており、たとえば対話型AIがユーザーの感情状態を推測し、適切な共感やケアを示すケースもあります。これは単なる模倣ではなく、構造として人間体験を擬似再現しつつ、実用的な“感情応答”を提供できるという点で、人間との境界が少しずつ曖昧になってきています。

2.「模範答え=つまらない」は必ずしも正しくない
模範的な答えにも価値はあります。特に初心者や学習者にとっては、「正確で論理的な解答」が安心感や信頼を提供します。ユーモアやエンタメを混ぜる方向性が適さないケース(ビジネス・法務・医療など)も多数あり、そうした文脈では「つまらない」模範解答の方が有効・安全とも言えます。

3.プロンプト設計の難しさが本当に「危ない」のか?
記事では「AIに人生相談するのは危ない」と結んでいますが、“プロンプト力”は技能として磨けるものです。今のAI環境はむしろ「誰でも簡単に対話が始められる」段階にあり、スキルの成熟とともに過剰依存問題や質問スキルの偏りは自然に是正されていく可能性があります。つまり現状は「発展途上」状態であって、将来的には「AI伴走者」として成熟していく構造を手元で育てている時期とも言えます。

4.エンタメ要素=「余白の宝」は定型化できる?
記事では「AIには余白と心地よい裏切りがない」としていますが、この“予期しない返答”は、適切なプロンプト構造やランダム性・クリエイティブモードの活用によってある程度再現可能です。すでにChatGPTなどは「クリエイティブ指向」「遊びモード」を呼び出せるので、余白や意外性が出せる方向へ学習が進んでいます。

まとめ:こんな視点で考えると、記事との対話がさらに深まります

■記事の主張:「AIは“感じる”ことができない」
→補足・見直しポイント:「感情を体験ではなく構造的に再現する“共感AI”も進化中」

■記事の主張:「模範解答はつまらない」
→補足・見直しポイント:「ある場面では模範こそが価値になる」

■記事の主張:「プロンプトは使いこなす必要あり」
→補足・見直しポイント:「スキルは学習可能。成熟すれば自然に改善される」

■記事の主張:「余白はAIには難しい」
→補足・見直しポイント:「適切な指示とモデル設定で「余白」再現も可能に」

つまり、「人間的な余白や感情」は現時点では確かにAIには体得しにくいものですが、それだけに限らず、すでにAIは多様な感情表現・プロンプト応答のバリエーションを取り込んで進化しています。今後は“人間らしさ”の再現よりも、“共存のデザイン”として、どのようにAIと対話し、スキルとして付き合っていくかが問われていくでしょう。

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文◎BARKS 烏丸哲也

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