【インタビュー】高校の「南廊下」から始まった花冷え。結成秘話と10年のリアル

2025.07.15 22:00

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日本を拠点としながらも、活動エリアは国境を超え、アジアからヨーロッパ、アメリカ…と世界中から熱いラブコールを受けている花冷え。は、日本はおろか、もはや世界を代表するガールズ・ラウドロックバンドとして、大きな成長を遂げている注目のアーティストだ。

そんな花冷え。が、interfm「TOKYO MUSIC RADAR」にやってきた。「TOKYO MUSIC RADAR」は、Nagie Laneのmikakoがパーソナリティを務め、現役ミュージシャンならではのアーティスト・トークが好評を博している音楽ラジオ番組だが、番組で繰り広げられたのは、なかなか聞けない女子トーク三昧だった。

メタルコア、ハードコアから進化を遂げたオリジナルジャンル「HARAJUKU CORE」を掲げ世界を飛び回る花冷え。から、ボーカルのユキナとギター&ボーカルのマツリを迎え、花冷え。の誕生秘話から世界ツアーを繰り広げる現在の立ち位置まで、花冷え。の等身大をたっぷりとお届けしよう。

左からマツリ、mikako、ユキナ

──(mikako)花冷え。は、ヘッドライナーツアーから巨大フェスまで世界各国を飛び回っているバンドですが、2025年でバンド結成10周年を迎えましたね。どんな10年でしたか?

マツリ(G, Vo):いや、10年経っちゃったのか…っていう。

ユキナ(Vo):私たち、高校生の時に結成したバンドなんです。なので、学生の時もあり大学生の時もあり、バイトしながらっていうところを経て、今こうやってメジャーデビューもさせてもらって、海外に行って…みたいないろんな層があるんですよ。

マツリ:そうだね。でも、あっという間だよね。

──(mikako)高校の頃からの関係性ですから、その時の雰囲気のまま今に来れているんですね。

ユキナ:そうですね。つい一昨日ぐらいまで一緒に学校に行ってたんじゃないか(笑)みたいな空気感を感じる瞬間もあります。「そうか、マツリはこれも好きだしね」みたいな、お互いがわかるというか。

──(mikako)素敵。あっという間とはいえ色々あった10年とは思いますが、10年前に描いていた花冷え。の未来図と今を比べるといかがですか?

ユキナ:これ、マツリが覚えているかわかんないんですけど、高校生の時に私がノートに目標みたいなものを書いていたんです。マキシマム ザ ホルモンと対バンしたいとか、日本のフェスにめっちゃ出たいとか。それこそ、マキシマム ザ ホルモンとも対バンさせてもらえましたし、ありがたいことにSiMとかcoldrainとか私たちが憧れていたバンドの先輩と共演させてもらう機会が最近増え始めて、「言ったもん勝ち」じゃないですけど、そういえば書いてたなってふと思い出して。「日本のラウドロック界の女王になりたい」とも書いていたんで、それは今後も叶えていきたい夢なんですけど。

マツリ:怖いもの知らずだったので、なんでもできると思っていたよね。

ユキナ:でも、海外は行けると思っていなかった。

マツリ:海外はイメージができなすぎて話題にならなかった。だから、とんでもないことを経験させてもらえてるなって思います。

──(mikako)海外でライブが決まった時、最初はどんな反応を?

ユキナ:「いや、行けんの?」「ほんとに大丈夫?」って。YouTubeのコメント欄にはいろんな国の方からメッセージをもらっていてありがたかったのですが、会えてもないしライブもできてなかったので、実感が湧かない感じでした。

マツリ:「英語の歌詞あんまないけど…」って思いながら、不安はやっぱりありましたね。でもまさかちゃんと会いに行けるとは、と思ってすごい嬉しかったですね。

Photo by Victoria Sanders @Lollapalooza 2024

──(mikako)そうしてライブを重ね、2025年5月28日には結成10周年を記念して新曲「Spicy Queen」が配信リリースされましたね。

マツリ:結成10周年のタイミングで出したんですけど、実はそこに向かって作り始めていたわけではなくて、その直前の3~4月のアメリカツアーで受けた刺激で作った曲が「10周年にぴったりだね」って話になったんです。初期衝動とか海外に行けてなかった時代のことを思い出したりして、メンバー全員の思い入れががっつり入った曲になったので。

ユキナ:ツアー中って毎日ライブがあるんですけど、ちょっと間にオフがあったりすると私は思いっきりショッピングとかに行くんです。けど、マツリは「ちょっと曲作りたい」ってなるんですよ。

マツリ:作ろうって思って作ってもダメなタイプで、波が来た時にやらないと進まないんです。その時もツアー中に、ふと作ってみようって日があって、そこで作りました。歌詞はまだなかったので「こういう曲にしたいんだよね」ってみんなに伝えたら、満場一致で「これは10周年だね」って。

──(mikako)素敵ですね。素晴らしい。

──(mikako)2025年7月末からは、アメリカやヨーロッパの各所を回る海外フェスツアーに繰り出しますが、準備のほどはいかがですか?

ユキナ:3~4月もアメリカに行っていた流れもあるんで、なんかまたちょっと名古屋に行くくらいの感じ(笑)。

マツリ:名古屋~大阪に行くぐらいの感じになれました。最初はほんとに長時間の飛行機とか環境の違いとか、慣れない部分があったんですけど、3年目となると慣れるんですね。

ユキナ:ライブも楽しみですけど、やっぱご飯とか(笑)。私、買い物とかも大好きなんですよ。最高ですよね。今からどこに何のお店があるかをチェック中って感じ。ぬかりなく行きたいですもん。

カナダ・トロントにて

──(mikako)今回はどこを回るんですか?

マツリ:ヨーロッパのフェスツアーは、ドイツ、ポーランド、スイス、イタリア、スペイン、チェコ、ハンガリー、セルビア、スロベニア、オランダ…

──(mikako)すごい、ヨーロッパ横断ですね。ユキナさん的には、どこのお店行きたいとか、この国だったらここに行きたいってあります?

ユキナ:大好きなのはアメリカのアーバンアウトフィッターズ。いろんなタイプの洋服があって雑貨とかも置いてあるんですよ。レコードとかも置いてあった。ヨーロッパだとMANGOとか。

アメリカ・ニューヘイブンにて

マツリ:MANGOめっちゃ好き

ユキナ:あと、街にあるローカルな古着屋さんっぽいとかにもいっぱい行きたいです。

マツリ:前にフランスに行った時に、すっごい可愛い雑貨屋さんがズラーって並んでいるストリートがあって…確かエッフェル塔の近くだったと思うんですけど、そこにもう1回行っていろんな雑貨買いたいな。

ユキナ:行きたいよね。前回、コーヒーカップのお皿だけ買って帰ってきちゃったんですよ。コップも買えばよかった、みたいな(笑)。

──(mikako)ファンにとってはそういうファッションや雑貨も気になりますよね。「この店がそれ」って、海外にユキナ・スポット、マツリ・スポットができるかもしれない。

ユキナ:確かに。前にもアーバンアウトフィッターズの写真がSNSでメンションされてきて「ユキナが好きな店」ってチェックされていました。

──ファンはちゃんとチェックしますよ。

ユキナ:伝わってるんだって思いました。

マツリ:今日は私、しれっと上下アーバンアウトフィッターズ(笑)。

コロラド州デンバーにて

──(mikako)可愛い。実際、海外のライブではお客さんの反応やノリに違いはありますか?

ユキナ:結構国によって反応違うなと思います。特にヨーロッパの中でもイタリアはやっぱ情熱的だったり熱いよね。その熱量、どこから出ているんですか?みたいな。

マツリ:なんか本当にすごいよね。

マツリ:ポーランドも結構熱い系だったんですよ、意外だなと思ったんですけど。みんなが帰った後もサウナみたいな熱量がフロアに残る感じ。ドイツとかは重たい音楽が大好きなので、みんな硬派な楽曲が刺さってくれたりします。

──(mikako)国によってセットリストも変えたり?

ユキナ:はい、変わります。アメリカも東と西では雰囲気違ったりしますし。何度かツアーを回るようになって、それがちょっとずつ分かってきたんですけど、初めて行った時はお客さんも私たちも顔色を伺いながらやるみたいな感じがあったんですけど、今は盛り上がり方とか日本のフロアと似てきているなって感じます。日本でのライブの映像とかを観てくださったりとかしてたりするのかもしれないです。

Photo by Victoria Sanders @Lollapalooza 2024

──(mikako)日本での盛り上がりの特徴って何ですか?

マツリ:日本はとにかくサーフが多いです。人の上で泳いでステージの方に行くっていう。ヨーロッパやアメリカと比べても相当多いと思います。

ユキナ:しかもみんな顔つきが半端ないです。

マツリ:そういう意味では、やっぱ日本もものすごく情熱的だよね。

ユキナ:日本人は行動派なのかも。で、ヨーロッパは歓声が凄い。リアクションが大きいよね。

マツリ:確かに声のボリュームは凄いかも。

──(mikako)海外のお客さんって一緒に歌ってくれますよね。

ユキナ:みんなで歌えるとこもそうですし、私が超早口の日本語でラップしてるところとかも、女の子も男の子もみんなで一緒に完璧に歌ってて、すごくびっくりしました。「あなた歌えんの」みたいな(笑)。

マツリ:ちゃんと歌ってるんだよね。ノリじゃなくて完全に歌うの。

──(mikako)そして10月からは、さらに全22公演のヘッドライナーツアーも控えていますね。こちらも凄いスケジュールで、2025年10月31日イギリスから始まって11月30日にスペインで終わるんですけれど、イギリス、アイルランド、フランス、ベルギー、オランダ、ドイツ…オーストリアもありますね。

ユキナ:今回は結構イギリスが多めです。初めてのツアーの時は、イギリスでヘッドライナーをやったんですけど、2024年はフェスでしか行けていないので、今回は久しぶりです。アイルランドも初めて行きますし。

マツリ:ハンガリーも初めてだよね。

──(mikako)ハンガリーもすごく素敵な場所ですよ。私的おすすめがあって、ポガーチャという食べ物なんですけど、チーズを主材料としたちっちゃなマフィンみたいなパンで、人によってはビスケットだっていう人もいるんですけど、ちょうどいいしょっぱさと甘さで美味しいの。

ユキナ:スコーンみたいな感じ? 私、口の中の水分を持っていかれる小麦粉系のやつ、大好きで(笑)。楽しみ。

──(mikako)小ネタを失礼しました(笑)。この22公演、どんなツアーにしたいですか?

マツリ:さっきユキナも言っていたんですけど、UKツアーをがっつりやるっていうのは初めてなので、楽しさもあり、どういうフロアになるんだろうって思っています。2023年のワンマン以来行けていなかったので、今UKに行ったらどういう反応になるのかっていうのがすごい楽しみですね。

──(mikako)YouTubeにも「UKに来て」と書き込みがありましたから、みんな待ち望んでいる状況ですね。

ユキナ:前回のイギリス公演が初めてのヨーロッパツアーの最終日ですごい思い出に残っているというか、ソールドアウトして、達成感と味わったことない感覚が残っていたんで。馬鹿みたいに暑かったし。

マツリ:ほんとに暑かったね。

ユキナ:ステージの床も濡れてた。すごい激熱だったんで、今回もそれを超えるようなツアーにしたいですね。

photo by オカベメイ@KT Zepp Yokohama

──(mikako)そんなツアーを控えた花冷え。ですが、そもそもおふたりの音楽のルーツってそれぞれどういうものなんですか?

ユキナ:私は中学生ぐらいまでは、もう本当にJ-POPとかテレビ番組で流れているような音楽ぐらいしか知らなかったんです。歌番組とかはすごく好きでよく観ていたんですけど、中学生の時に、軽音部の先輩たちの定期ライブに遊びに行って、そこで聴いたのがマキシマム ザ ホルモンで、そこで出会うんです。「この曲は一体なんなんだ」っていう衝撃を受けて、そこから自分で色々調べていろんなバンドを知って、「なんかバンドってかっこいいな」みたいな。そこがルーツですかね。

──(mikako)そして自分も演るようになるんですね。

ユキナ:そういう音楽を楽しみたいなって思って軽音部に入部して…っていう感じです

マツリ:私は小学生の頃からギターは触ってはいたんです。父の影響でバンドもすごい好きで、ユキナがマキシマム ザ ホルモンに出会ったそのちょっと前、私が小学生の時に父がホルモンの楽曲をかけていて、「なんだこれは」って、もう全く同じ(笑)。そのシャウトを私は「怖い」って言っていたらしいんですけど、でも好奇心が勝ってお父さんのCDを勝手に漁ったりして、中学生になってCDレンタルショップに通って「10枚で安くなる」みたいな割引サービスを駆使して、いろんなものを借りてました。ルーツはマキシマム ザ ホルモンなんですけど、ちっちゃーい頃から東京事変とかHi-STANDARD、グリーン・デイやアヴリル・ラヴィーンとかもいろいろ聴いてました。

ユキナ:パンク系も私も好き。でも、私たち、中学で同じクラスにもなっているんですけど、マツリは運動部で私は美術部で。

マツリ:おはようとか会話はするけど、深い話はするタイミングがないって感じ。

──接触はなかったんですね。同じクラスだけ別のところにいるふたりという…なんかマンガの設定みたい。何がきっかけでバンドを組むようになるんですか?

ユキナ:私が音楽にハマっていた時、周りにバンド好きがいなかったです。で、「どうやらマツリがバンド好きらしいぞ」みたいな話を小耳に挟んで、確かに体育祭で使っているタオルがめっちゃバンドのタオルで「おや?」みたいな(笑)。で、話しかけました。「なんかバンドとか聴くの?」みたいな。

マツリ:そん時のことすごい覚えてるよ。ユキナは覚えてないかもだけど。

ユキナ:え?「南廊下」だよ。

マツリ:そう(笑)。「南廊下」という名の廊下があったですけど(笑)、突然話しかけられて。でも、この話かけてくれた繋がりは「これ、1回きりじゃないな」って、ちょっと感じながら喋ってて。

photo by オカベメイ@KT Zepp Yokohama

──(mikako)花冷え。ストーリーがそこから始まったんですね。

マツリ:そうですね。中学の時はバドミントン部だったんですけど、高校はガチの部活だったので、ぶっちゃけどうしようかなと思ってて、文化部でも好きなところ行けたらいいなぐらいに思っていた時に、まさにユキナが「軽音楽部の見学に一緒に行かない?」って声をかけてくれて一緒に行きました。

ユキナ:軽音部に入る前に、マツリはちっちゃい頃からギターをやってたっていう情報も仕入れていたんで(笑)。ギターもやってて趣味も同じ音楽ジャンルだなんて「一緒にバンド組みたいな」って思ったから、部活に入れるしかないみたいな、もうそこからは私の計画的な犯行。

マツリ:大分練られてましたね(笑)。

──(mikako)すごーい。

ユキナ:結構取り合いになっていたんですよ。本人はあんま自覚してなかったんですけど、「マツリはリーダーシップも取れるしギターも弾けるんだから、メンバーに入れときゃ成功する」みたいな(笑)。

──(mikako)なかなかの逸材ですよね。

マツリ:いやいや、私は「誰と演ろっかな」ぐらいにしか思っていなかった。

ユキナ:本人はそんくらいぽわーんとしていたんですけど、周りのみんなは「ねえ、マツリちゃーん♡」みたいな感じだったんで、私が「マツリちゃん一緒にやろうよ」って。

──(mikako)ユキナ計画が実行されたと。

マツリ:まんまとハマりました。

photo by オカベメイ@KT Zepp Yokohama

──花冷え。は南廊下から始まったんですね。今更だいぶ素人みたいな質問をしちゃうんですけど、シャウトとかグロールと言われる声はどうやって出しているんですか?

ユキナ:それこそマキシマム ザ ホルモンのコピーバンドだったんですけど、独学で。中学の時に観て衝撃を受けた先輩に聞きに行ったりもしたんですけど、「えー、わかんなーい」「やればできるぅー」とか一蹴されちゃって、「あ、まじか」って(笑)。でもその気持ち、今となったらめっちゃわかるな、みたいな。

──(mikako)そうなんですね。

ユキナ:私も独学でちょっと演ってみようって、最初はいっぱい聴いてそれの声真似をしてみるみたいな。ネコの声を真似するみたいに。そこからでしたね。

──(mikako)喉は痛めないのか、心配しちゃうんですけど。

ユキナ:いや、そういうのは感じなかったです。そうなっちゃったら気をつけようとは思っていたんですけど、練習していった時に喉を壊すことがなかったんで。たまたま大丈夫だったのかな。

──(mikako)すごい。天性ですね。可愛らしい声からデスボイスへの自由自在な行き来をみて「声帯のプロやん」と思ってました(笑)。いろんなボーカル表現を持つ花冷え。ですけど、歌い方やおふたりの歌う箇所ってどうやって決まるんですか?

マツリ:それは楽曲制作段階で決まります。最初に私がデモを作るんですけど、その段階で「ここはユキナのパート」「私のパート」っていうのは決めちゃっていて、「ここはこういうシャウトをしてほしい」「ここはクリーンでラップをしてほしい」という大まかなニュアンスをユキナに伝えて、「はい、好きにしてください」っていう。

ユキナ:で、私が歌うところは私が歌詞を書いてメロも考えるんですけど、マツリが歌うところはマツリが歌詞を書いてメロを考えているんで、それぞれにお互いの作業をして、それを見せ合うみたいな。

──(mikako)2軸で走って、たまに交差して見せ合うという感じですね。ユキナさんのこだわりの中で、シャウトしやすい子音とか母音ってありませんか?

ユキナ:めっちゃあります。子音はシャウトしやすいんで、英詞の人が多いと思います。英詞のほうが子音が出やすいので。私の場合は日本語の歌詞が多いんですけど、言葉をうまく崩すと日本語でも子音っぽくなったりもするので、そういうので遊んでます。ちゃんと歌詞を見れば何を言ってるのかわかるというか、歌詞カードを見た時に「確かにこれ言ってるわ」って、また違う楽しみ方が得られるみたいな。

──(mikako)耳で楽しむパワフル感や爽快感と、歌詞カードを読んで意味や発音を楽しむ発見もあって2倍楽しめますよね。キャッチーな言葉遊びもあって、凄く練られていますから。

ユキナ:マツリが作るかっこいいサウンドを、歌詞でぶち壊しに行くっていう(笑)。「変な歌詞つけちゃおう」ってめっちゃ私がふざけるみたいな。

──(mikako)で、それに対して…

ユキナ:「やりすぎ」って言われます(笑)。

マツリ:いやいや、基本は持ってきてくれたアイディアは全部聞きたいので、プリプロとかでいろんなパターンを当ててもらって、ユキナも含めてみんなで聞いて「これかな」みたいなのを選ぶっていう作業ですかね。一旦聞いてみようかっていうことが大事です。

──(mikako)そうやって作られているんですね。子音/母音という音で選ぶ以外に、感情表現の面において意識しているポイントってありますか?

ユキナ:ふざけた歌詞でも気持ちはこもっているんですけど、魂で叫びたい時は、レコーディングでもマイクスタンドを使います。というか、スタンドの棒をぐっと掴んで歌います。マイクを掴んでライブをしているっていうのもあるんで、ライブの時のパワーをレコーディングでも出すには、棒を掴んだほうがいいんです。

マツリ:その棒があるかないかで本当にテイクが違うんですよ。なんか今日ちょっと喉調子悪いのかなって思ったら棒がない、とか。でスタジオに持ってくると変わって全然違うんですよね。棒があると、もう100点以上のテイクが出ます。すごいかっこいいシャウトが出る。

──(mikako)レコーディングって、ムーディーな曲だったら部屋を暗くしたりとか、いろんなアプローチがありますが、棒を持って魂を込めに行くんですね。

ユキナ:いろんな形でやってみたんです。座ってみたりとか、片足だけ椅子乗せてみたりとか、お立ち台に立ってるような感覚だとか、色々やってみた中で、今のとこマイクの棒に掴まるっていう(笑)。

マツリ:それが最適解だったね。

photo by オカベメイ@KT Zepp Yokohama

──(mikako)スタジオ音源でもライブさながらのパワフルさがある秘訣がわかった気がします。そんな花冷え。ですが、7月18日には新曲「かるガルEveryday!!」がリリースとなりますね。

マツリ:これはアニメ「あらいぐまカルカル団」の主題歌になっているんですけど、これは久しぶりにめっちゃふざけました。

ユキナ:てか、めちゃくちゃふざけました。初めて聴く人はどういう感情になるんだろう…みたいな。

マツリ:こいつら何言ってるの?っていう気持ちになるんじゃないかな。みんなでアレンジしてレコーディングして完成して、その音源を聴いた時、自分自身「なんだこれ」ってなった(笑)。

ユキナ:いつもは完パケして改めて聴くと「おー」「良いの録れたね」「いいじゃん」ってなるじゃないですか。でも「かるガルEveryday!!」は、みんな爆笑。

──(mikako)花冷え。の新たな一面が見れる感じですか。

ユキナ:ポップさとカオスさがかなり。

マツリ:その「なんなんだ」感が、アニメにすごくマッチしてるんじゃないかなって思ってます。

──(mikako)変拍子もあるんですね。

ユキナ:最初の目的は、アニメサイズの29秒に詰め込むってことだったんです。

マツリ:29秒から作って、それをフル尺にするっていう珍しい作り方でした。

──(mikako)確かにアニメのオープニング/エンディングとなると、尺は限られますもんね。

マツリ:先方からの要望で「この曲とこの曲とあの曲の感じを全部入れてください」って、29秒に入んないよと思って(笑)。

──(mikako)それは厳しい(笑)。

マツリ:突然三拍子になるんですけど、あそこでちょっと落ち着いた感じを出して、イントロはド派手に「O・TA・KUラブリー伝説」っていう曲のイントロっぽいのを混ぜたり。でもサビはドキャッチーでポップにユキナの声がたくさん入っていたり…みたいなものを29秒にギュッてしました(笑)。

──(mikako)なかなかな大技ですね。

マツリ:そういう燃えることを言ってくれると「絶対いいのを渡そう」って思うタイプなんですけど、今回だけは「どうしよう」ってちょっとだけ頭抱えました(笑)。流れとしては普段通りな感じで作ったんですけど、29秒のオケを作って「こうしてああしてこうしたいんだけど、ここは私が歌うとこで、すいません」つってユキナに投げてね。細かくやらないとハマらなそうだったので、結構話し合ったよね。

ユキナ:話し合った。いつもは持ってきたものを選ぶって感じなんですけど、この29秒はその場で結構変えたりもしたもしたよね。ラリーも多かった。そういう面では、確かにいつもよりは違う気合いの入り方があったかもしれない。

photo by オカベメイ@KT Zepp Yokohama

──(mikako)激しい楽曲ですが、歌詞はどういう点を意識して書かれたんですか?

ユキナ:これは、毎日この社会を生きる皆さん、日常を毎日頑張って過ごす皆さんの応援歌というか、アニメの感じもちょっと入れたので、そういうちょっと日常っぽい感じを入れて、「仕事が終わんないよ」とか。

──(mikako)残業っていう言葉も出てきますね。

マツリ:「帰りたいよ」っていう気持ちをちょっと代弁できたら、ちょっとでもスッキリしてくれるかなと思って。

ユキナ:これを聴いて毎朝出勤/登校してもらったり、残りの仕事頑張ろう、勉強頑張ろうという、色んな方へ当てはまる応援歌じゃないかなと。

ユキナ:アニメの雰囲気に寄り添いつつカオスでポップで、他の曲に比べてもいろんな層の人が聞きやすい楽曲というかポップさはあるかなと思いますね。

──(mikako)アニメ主題歌でまた多くの方に花冷え。の音楽が届くことと思いますが、今後はどのような音楽を表現していきたいですか?

ユキナ:結構私たちは、「やりたいことをまっすぐやる」っていう音楽の表現の仕方をしているので、それを続けていって、その輪をどんどん広げてみんなで楽しんでもらえたらなと思いますね。

マツリ:ジャンルレスなバンドがもっとたくさんいてもいいと私は思っているんです。ひとつのジャンルを極めるっていうのがダメとかそういう話ではなくて、もし「これもやりたいしあれもやりたいけど、ジャンルって絞った方がいいのかな」って思っているバンドマンがいたとしたら「そんなことない」って思わせられる、そんな楽曲作りはすごい意識しているので、いろんな新しい面白い音楽が日本も世界も関係なく広まって、いろんなとこで生まれるといいなって思ってます。

photo by オカベメイ@KT Zepp Yokohama

──(mikako)素晴らしいですね。いつかこういう場所で歌ってみたいっていう夢はあります?

ユキナ:海外とか日本でもフェスに出させてもらったりとか、箱もちょっとずつ大きいのに挑戦したりとかあるので、中でも武道館はひとつの夢ですね。

マツリ:やりたい。登竜門というか、昔ながらの場所でいろんな先輩方が演ってきた場所で私たちもやりたいなっていうのは、ずっと頭の中にありますね。

──(mikako)ちなみに、個人的な野望とか目標は?

ユキナ:ほんとに個人的なんですけど、私、めちゃくちゃサンリオが大好きで、サンリオがいろんな方とコラボする姿にも憧れているので、私もいつかそれになりたいな…っていう野望です。

マツリ:私は、今ESPのギターをカスタムしてもらって使っているんですけど、それをもっと極めて日本で発売できたらなぁって。それを、軽音楽部の高校生の子とかに使ってほしいなぁっていう願いがあります。

──(mikako)それはステキ。自分のモデルが発売されるってなったらすごく嬉しいですもんね。

マツリ:自分も高校生の時に、好きなギタリストが使っているピックを買ったり、機材を色々調べたりとかしていたので、そういう立ち位置になれたらなって思ってますね。

──(mikako)そのギターを持った子たちに、南廊下を歩いてもらって、そこからまた新たなバンドを始めてもらえたらエモいですね。

ユキナ、マツリ:それはエモいです。いいですね(笑)。

インタビュー◎mikako(Nagie Lane)
文・編集◎烏丸哲也(BARKS)

花冷え。「かるガルEveryday!!」

2025月7月18日(金)配信
https://hanabie.lnk.to/KaruGaruEverydayWN

<花冷え。国内ライブ>

2025年9月6日(土)FRONTLINE FESTIVAL 2025@川崎 CLUB CITTA’
2025年9月20日(土)山人音楽祭 2025 ~10th Anniversary~@日本トーターグリーンドーム前橋
2025年10月13日(月祝)大冠祭2025@川崎 CLUB CITTA’

<花冷え。海外ライブ>

夏フェスツアー
2025年7月26日(土)~7月27日(日)Vans Warped Tour@アメリカ
2025年7月30日(水)~8月2日(土)Wacken Open Air 2025@ドイツ
2025年7月31日(木) Pol’and’Rock Festival 2025@ポーランド
2025年8月2日(土) Open Air Granichen Festival@スイス
2025年8月3日(日) BILBAO OPEN AIR@イタリア
2025年8月7日(木) Leyendas Del Rock 2025@スペイン
2025年8月9日(土) BRUTAL ASSAULT 2025@チェコ
2025年8月10日(日) Sziget Festival@ハンガリー
2025年8月11日(月) HANABIE.Live in Belgrade@セルビア
2025年8月12日(火) HANABIE.Live in Ljubljana@スロベニア
2025年8月14日(木) SUMMER BREEZE 2025@ドイツ
2025年8月14日(木)~8月16日(土)Reload Festival@ドイツ
2025年8月16日(土) Dynamo Metal Fest 2025@オランダ

HANABIE.EU & UK 2025 全22公演のヘッドライナーツアー
2025年10月31日(金) Glasgow, UK – QMU(イギリス)
2025年11月1日(土) Manchester, UK – Academy 2(イギリス)
2025年11月2日(日) Birmingham, UK – O2 Institute(イギリス)
2025年11月4日(火) Dublin, IE – The Academy(アイルランド)
2025年11月5日(水) Belfast, UK – Limelight(イギリス)
2025年11月7日(金) London, UK – Electric Brixton(イギリス)
2025年11月8日(土) Paris, FR – Élysée Montmartre(フランス)
2025年11月9日(日) Brussels, BE – Ancienne Belgique(ベルギー)
2025年11月11日(火) Amsterdam, NL – Melkweg(オランダ)
2025年11月12日(水) Cologne, DE – Live Music Hall(ドイツ)
2025年11月14日(金) Warsaw, PL – Progresja(ポーランド)
2025年11月15日(土) Gdańsk, PL – B90(ポーランド)
2025年11月16日(日) Kraków, PL – Kwadrat(ポーランド)
2025年11月18日(火) Berlin, DE – Huxleys Neue Welt(ドイツ)
2025年11月21日(金) Vienna, AT – Gasometer(オーストリア)
2025年11月22日(土) Prague, CZ – Palac Akropolis(チェコ)
2025年11月23日(日) Budapest, HU – Dürer Kert(ハンガリー)
2025年11月25日(火) Munich, DE – Backstage Werk(ドイツ)
2025年11月26日(水) Frankfurt, DE – Batschkapp(ドイツ)
2025年11月28日(金) Toulouse, FR – La Cabane(フランス)
2025年11月29日(土) Barcelona, ES – Apolo 2(スペイン)
2025年11月30日(日) Madrid, ES – Sala Mon(スペイン)

その他
2025年12月6日(土) KNOTFEST 2025 in Mexico(メキシコ)
ライブ詳細 https://hanabie.jp/live/

花冷え。公式サイト:https://hanabie.jp
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