現在、世界のヒップホップ界最大のスーパースター、エミネム。政治家からセレブ、そして自分の母親までを天才的な話術でこき下ろし、アメリカの狂気じみた日常を徹底的にあぶり出す。そんな特異なキャラクターゆえ、2000年頃から既に欧米では大スターだった彼だが、ここ日本においても、先日公開された半自伝映画『8マイル』で人気が爆発!これまで「エミネムなんて?」と穿った見方をしていた人たちも、黒人中心のヒップホップの社会を白人ながら実力で勝ち上がった彼のラッパーとしての真の実力をド迫力で見せつけられ、改めてノックアウト。これにより『8マイル』のサントラは見事オリコン第1位。日本列島はたちまち“エミネム・シンドローム“に包まれた。 | ▲自慢の巧みなラップ・スキルでたたみかけるように観客を魅了するエミネム Photo/Jonathan Mannion/Idols | ステージには、3rdアルバム『エミネム・ショウ』のアートワークにも似た、巨大な遊園地のようなセットが。その観覧車の中から、エミネムは割れんばかりの大歓声の中、颯爽と登場。大スターとなってもストリートにいた頃と何ら変わらない等身大のヒップホップ・ファッションに身を包んだエミネムの甘いマスクがステージ上のワイド・スクリーンに映し出されると、広大なフロアからは「キャアアアア!!!!」という怒号のような黄色い歓声が。そして、タフなB-ボーイ風の出で立ちの男たちも熱いエールを送っていた。 そしてショウは『エミネム・ショウ』を中心にここ1、2年のナンバーを中心に展開。通常のヒップホップのライヴにありがちな、ターンテーブルの音が終ると同時にブチッと曲が終了してしまう拍子抜けな瞬間も一切なく、次から次へとテンポよく曲が裁断なく続いて行く。その音をバックに、エミネムは彼のサイド・ユニット、D-12の実力派ラッパーたちとラップの掛け合いを行なうのであるが、やはり圧倒的な存在感を示しているのはエミネム自身! 誰にもまして際立つ甲高い声でマシンガンのごとく言葉を詰め込む彼のその様こそが、観客の熱狂を煽っていた。 中盤では、エミネムの秘蔵っ子として現在全世界で話題を呼んでいる50セント、そしてこの夏にエミネムが送り込む話題の新人、オービー・トライスも登場。彼らも評判に違わぬラップ・スキルをいかんなく発揮してくれたが、こんな彼らを格下扱いすることなく、自分と同等に紹介するというイキな演出もクレヴァーなエミネムらしい。 | ▲熱いコール&レスポンスを呼び掛けるエミネム。甘いルックスも見逃せない Photo/Jonathan Mannion/Idols | そして終盤は映画の主題歌「ルーズ・ユアセルフ」、そして昨年の大ヒットナンバー、「ウィザウト・ミー 」で会場中が大合唱。そしてアンコールは、この日の出演キャスト全員で『8マイル』サントラに収録の「ラップ・ゲーム」を披露。世界トップの圧倒的なラップ・リレーを聴かせ、熱狂の渦と共に2時間近く繰り広げられたライブに幕を閉じた。 映画で見せつけた、生のヒップホップの醍醐味を思う存分たっぷりと堪能させてくれた貫禄のショウ。“エミネムはやっぱり本物”。そう思いながら帰路に着いた人が大半であることは間違いない。 取材・文●沢田太陽 |