『RARITIES』 Warner Music Japan 2002年10月30日発売 WPC2-10001 3,059(tax in) 1 BLOW 2 君の声に恋してる 3 LOVE GOES ON(その瞳は女神) 4 HAPPY HAPPY GREETING (ORIGINAL DEMO VERSION) 5 MISTY MAUVE 6 TO WAIT FOR LOVE (IS TO WASTE YOUR LIFE AWAY) 7 好・き・好・きSWEET KISS! 8 潮騒(LIVE VERSION) 9 モーニング・シャイン 10 FIRST LUCK-初めての幸運(しあわせ)- 11 I DO 12 ヘロン(GUITAR INSTRUMENTAL) 13 JUVENILEのテーマ~瞳の中のRAINBOW~ 14 スプリンクラー(LONG VERSION) 15 いつか晴れた日に(STAND ALONE VERSION) | | 山下達郎の名作と呼べるシリーズに“ON THE STREET CORNER”というものがある。 これは、ア・カペラ(a cappella)、つまり伴奏がなく歌(コーラス)だけの曲を山下達郎がやっているのであるが、重要なのは“すべて彼一人”でやっているところである。 昨今のJ-POPア・カペラ・バンドを引き合いに出すまでもなく、ア・カペラのひとつの大きな魅力は、複数の人間が、同時に美しくハモるという部分にあるだろう。 しかしながら、山下達郎は、言わば“独力で探る”ような作業を経て、美しい「無伴奏のコーラス」を解体し、再構築しているのである。 そして、この“独力で探る”という方向性は、彼の表現する音楽の根底に流れている思想のようなものでもあると思う。彼は、寡作型アーティストとして知られているが、時間を要するのは、彼が独力で探る以上、当然の帰結として必要な時間であり、だからこそ僕ら聴き手は、彼の精緻にして芳醇な楽曲に酔えるのでもある。 今作『RARITIES』は、既発シングルのカップリング曲、未発表セルフ・カヴァー、未発表洋楽カヴァーを基軸ラインナップにしていることから、彼の“サウンド・アーキテクキチャー(音建築)”の側面が、それぞれの楽曲に強く感じられる作品であると思う。 無論、音建築士としての山下達郎の手腕は、キャリア上のすべてのアルバムに発揮されてはいるものの、オリジナルアルバムには―これはあまり指摘されないことだが―彼特有の時代に対するメッセージのようなものが暗喩として存在しており、それが希薄な分だけ、聴き手は、それぞれの楽曲に個別に入り込み、楽しむことができるだろう。 個人的には、既発シングルのカップリング曲がデジタル化されたことは大いなる喜びで、'85年のシングル「風の回廊(コリドー)」のB面に収録されたライヴ・ヴァージョンの「潮騒」などは、これまで、ドーナツ盤が擦り切れないようにカセットテープやDATに録音して何度も聴いてきたことが報われた気がして、感無量である。 そうした“素晴らしい時”を憶い出して感無量になれることも、今作の特徴かもしれない。 | |