クリエーション・レーベルのオムニバス、満を持して登場!

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クリエーション・レーベルのオムニバス、満を持して登場!


『Creation Records International Guardians of Rock 'n' Roll 1983-1999』

EPICインターナショナル
ESCA8251-2 3,780 (Tax in)

<DISC1>
1.
THE JESUS & MARY CHAIN "UpsideDown"
2.
THE PASTELS "Baby Honey"
3.
THE HOUSE OF LOVE "Shine On"
4.
SLOWDIVE "Slowdive”
5.
SWERVEDRIVER "Duel"
6.
PRIMAL SCREAM "Loaded"
7.
THE BOO RADLEYS "Lazarus"
8.
MEAT WHIPLASH "Don't Slip Up"
9.
RIDE "Drive Blind"
10.
FELT "All The People I Like Are Those That Are Dead"
11.
THE LOFT "Up The Hill And Down The Slope"
12.
THEJASMINE MINKS "Cut Me Deep"
13.
THE TELESCOPES "Flying"
14.
THE WEATHER PROPHETS "Almost Prayed"
15.
SLAUGHTER JOE "I'll Follow You Down"
16.
TEENAGE FANCLUB "The Concept"
17.
PRIMAL SCREAM "Higher Than The Sun (Higher Than The Orb Mix)"

<DISC2>
18.
SUGAR "If I Can't Change Your Mind"
19.
THE JESUS & MARY CHAIN "Cracking Up"
20.
LOVE CORPORATION "Give Me Some Love (Andy Weatherall Mix)"
21.
VELVET CRUSH "Drive Me Down (Softly)"
22.
ADORABLE "Sunshine Smile"
23.
OASIS "Wonderwall"
24.
PRIMAL SCREAM "Rocks"
25.
TEENAGE FANCLUB "Mellow Doubt"
26.
SUPER FURRY ANIMALS "The Man Don't Give A Fuck"
27.
BMX BANDITS "Serious Drugs"
28.
BERNARD BUTLER "Stay (Radio Edit)"
29.
HURRICANE #1 "Step Into My World (Radio Edit)"
30.
EDWARD BALL "The Mill Hill Self Hate Club"
31.
OASIS "Rock 'n' Roll Star"

'83年、ロンドン。

時代は華やかな化粧をしたMTV栄えのするアイドル・ニューウエイヴ・バンドが短い全盛期を謳歌し、スミスエコー&ザ・バニーメンといったバンドたちが閉鎖的で暗いインディ・ロックの世界でカリスマとして君臨している頃、アラン・マッギーは自身のレーベル、クリエーションとクラブ<リヴィング・ルーム>をスタートさせる。

当時アランは英国鉄道に勤務する傍ら自らのバンド活動も行なう20代前半の若者。そのレーベル名を'60年代の知る人ぞ知るB級モッズ・バンドから拝借してしまうほどの音楽フリークだった。

そんな彼は、郷里スコットランドでスターともカリスマとも演奏テクニックとも縁がないものの音楽への偏愛と美しいメロディに満ちた音楽活動を繰り広げるパステルズなどの素朴で手作りなスコティッシュ・ギター・ポップバンドなどの7インチ・シングルを中心にリリースしはじめ、自らもバンド、ビフ・バン・パウ!のメンバーとして音源を発表したりもした。 

JESUS & MARY CHAIN
そんなクリエーションがはじめて脚光を浴びるのは、スコットランドからの異才、ウイリアムとジムのリード兄弟率いるジーザス・アンド・メリーチェインのシングル「アップサイド・ダウン」を発表した'84年。

不気味にかかるエコーの中で放射される制御されることなくならされるフィードバック・ギターノイズの嵐。そしてその奥から浮かび上がる'60年代フレイヴァーのソフトでポップなメロディ。この特異性で以て、「セックス・ピストルズの再来」と言わしめたジザメリはこの後メジャーへ移籍してしまい成功を収めるところとなってしまうが、クリエーションはこのジザメリの輩出を起点として、独自のレーベル・カラーを強く打ち出すこととなる。

マイ・ペースに活動する素朴で美しいメロディのギター・ポップ・バンド、またはジザメリの登場に端を発したギターの轟音フィードバック・ノイズを前面にフィーチャーしたサイケデリックなロックバンド。クリエーションは'80年代後半からこの二つの要素を武器にインディ・ロック・シーンに怒濤の攻勢を仕掛けた。

Primal Scream
ギター・ポップなサイドからはロフト(後のウエザー・プロフィッツ)、フェルト、そして元ジザメリのドラマー、ボビー・ギレスピーが結成したプライマル・スクリームが、ノイズ・ギターなサイドからはマイ・ブラッディ・バレンタインライド、スロウダイヴ、スワーヴドライヴァーといったバンドを産み落とした。特にマイブラやライドといったバンドはイギリス全国区規模の人気を獲得し、彼等のようなサウンドは“シューゲイザー”と称された。

The Stone Roses
そんなクリエーションがその存在意義を決定的にしたのが'91~'92年のこと。その決定打の一つめがプライマル・スクリームの3枚目のアルバム『スクリーマデリカ』。このアルバムはストーン・ローゼズハッピー・マンデーズといったマンチェスターのバンドたちが起こしていたサイケデリック・ロックとハウスのレイヴを融合させた、

俗に“インディ・ダンス”とも称されたムーヴメントの最高傑作となり、今以て“'90年代ベスト・アルバム”と言われ続けるほどの衝撃作となってしまった。そしてマイブラが発表した『ラヴレス』はシューゲイザー・ムーヴメントにおける最高傑作とこれまた絶賛され、スコティッシュ・ギターポップ界が生んだ最高のバンド、ティーンエイジ・ファンクラブがアルバム『バンドワゴネスクからクリエーションへと転入。素朴な地点からスタートしたクリエーションは、ここでトップ・レーベルとしての足場を固めた。

そして'94年、時代はインディ・ダンスでもシューゲイザーでもなくなり、“UKロック・ルネサンス”とも言うべき“ブリット・ポップ”の時代が到来。

Oasis
インディ・ロック界から次々と新しいロックスターが登場したが、その時代を告げた存在こそがオアシスだった。'94年の1stアルバム『Definitely Maybe』からいきなり全英1位を記録し、翌'95年の2ndアルバム『モーニング・グローリー』はイギリスでのアルバム売り上げの記録を更新するほどの“現象”とも言えるセールスを記録。この余波はアメリカや日本にまで大きく飛び火し、オアシスは一躍世界を代表するバンドとなった。

また、プライマル・スクリームも『Give Out,But Don't Give Up』『Vanishing Point』といったアルバムで毎度違うアプローチを展開しUKロックファンに衝撃を与え続け、リバプール出身のブー・ラドリーズは95年に「ウエイク・アップ・ブー」の大ヒットを飛ばし、ウエールズ出身の曲者バンド、スーパー・ファーリー・アニマルズも後の“ウエールズ・ブーム”の火付け役となった。

こうしてクリエーションは'90年代半ば世界一のロック・レーベルへと成長して行った。

'97年以降、ブリット・ポップが衰退してもクリエーションは安泰であったが、しかしそんな'99年、アラン・マッギーは突如クリエーションの閉鎖を発表し、シーンに衝撃が走った。

この一件は斜陽するUKロックに一層の拍車をかけたと同時に、'90年代の時代の終わりを告げるものだった。

その、クリエーションの歴史をコンパイルしたファン待望のクロニクルなオムニバス・アルバム『International Guardians Of Rock'n Roll』が遂に1月11日にリリース。2枚組全30曲というヴォリュームは、この偉大なる歴史を刻んだ同レーベルの足跡を辿るには充分の厚さだろう。

ただ、この内容なのだが、これだけのヒットメイキング・レーベルとしては意外なほどに、ヒット曲集的なものにはなっていない。オアシスやプライマルやジザメリの曲は当然あるのだが、それぞれ2曲と抑え目。その代わりに存在するのは、パステルズやBMXバンディッツ、エドワード・ボールといった古くからの良き友人たちやフェルト、ウエザー・プロフィッツ、スロウダイヴ、スワーヴドライヴァーといった商業的には恵まれなかったバンドたち。一見意外な観もあるが、この選曲にこそ、クリエーションの本質やアラン・マッギーの視点が垣間見れるのだ。

自らの成長を支えたのは単なる商業的マーケティングだけではなく、音楽に対しての純粋な愛情であったこと。そして、幾多の日の当たらない隠れた名アーティストたちの存在があったからこそ、クリエーションの後年の繁栄があったこと。

時代・知名度一切関係なく平等に散りばめられた30曲には、アラン・マッギーのそんな思いがヒシヒシと感じられる。

そして、巨大になり過ぎてしまったクリエーションに幕をおろしてしまう背後の理由にも、そんなアランの人となりがおのずと浮かんでくるようだ。

音楽に対する溢れんばかりの愛情から草の根レベルでスタートし、刺激的な音楽センスでシーンの度胆を抜き、スーパースターを輩出しシーンの頂点へ、そして潔い引き際……。クリエーションの辿った道程ほど理想的なインディ・レーベルの道程、これは他ではちょっと思い付かない。

ここに並べられた珠玉の30曲(マイブラとアランのビフ・バン・パウ!が未収録なのだけが心残りだが!)を聴いて、そんなクリエーションの重みというものを改めて確認していただきたい。

(太澤 陽aka沢田太陽)

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