とことんまで世界観を突き詰め、生み出したサントラ『SONG FOR THE TALES OF ABYSS』インタヴュー

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――以前、藤原さんは“「天体観測」のメロディは木琴の音で浮かんだ”っておっしゃってましたよね。楽器音が喚起するメロディってあるんですか? というよりは、メロディが楽器の音質を選ぶ……ってのが多いですかね。あ、J45ってヴィンテージのアコギを買ったときはこのギターの音でメロディを書く!って思いがありましたね。それが「スノースマイル」でしたね。 ――思い描いたヴァイオリンの音そのものを使っていいとはいえ、実際サントラを作るって作業は難しかったでしょう? 僕にとってゲームは、曲よりもまずは映像があって、それが大事だって思うんですね。映像を喚起させるのが曲だと。その頭があったから難しくはなかったですよ。今までとは違う思考で、違うフンドシ締めて……って感覚ではなかったです。 ――とはいえ、作り出すとっかかりとしては、どこから? ゲームのディレクターさんとの話し合いで、最初「ゲームのなかで歌を中心に展開するものを作りたかったが、いろいろ問題が生ずるだろうと思うから半ば諦めている」とおっしゃっていて。いやいや、それってすごい面白い話だから、僕、作りますんで、聴いてみてくれませんか、それでよければ使ってくれませんかと。それが「譜歌」って構想だったんです。そこから僕はいろいろ想像を膨らませて、いろいろアイデアを持ち出しては話し合って……。素人ながらにゲームのシステム上のことまで言わせてもらってね。 で、最終的には、2小節ごとに完結するメロディが7つあって、14小節で全部の1曲になるものにしようと。それが「大譜歌」になったと。ゲーム上、1個1個のメロディに意味があって、効果があるものですよね。そうなると、僕としてはメロディとしてしっかり成り立たせるものを作りたかったし、最終的に1曲になるとはいえ、それぞれが同じようなメロディじゃいけないし、でもそれでその7つをつなげたら1つの曲にならなきゃいけなくて。で、登場人物の女性の声優さんが歌うからそれをイメージして……。もう最高のマジカル・ミステリー・ツアーでしたね(笑)。 ――なるほど。そして「譜歌」には歌詞といっていいのでしょうか、不思議な発音の言葉が乗ってますね。 歌詞も悩みましたね。「譜歌」がゲームに登場するってことは、その「譜歌」が生まれる理由があったはずだなと。なので、その経緯を知りたくて、ゲームのディレクターさんの地元まで行って深夜のファミレスで話をしてもらったんです。ゲームのストーリーの概要じゃなくて、主人公が出てくるまでの『TALES OF THE ABYSS』の世界の歴史を。3時間くらいかけてかなぁ、「譜歌」はいつ、誰が作ったのか、誰が歌ったのか、どうして歌わなきゃいけなかったのか、どう引き継がれたのか、その後歌に変化があったのか、そしてどう至ったのか……延々と聴いて。ディレクターさんも分からない部分は脚本家さんに電話して聞いてもらったり。で、背景が見えてきたときに、僕は音階で歌おうと思ったんです。譜歌の歴史や状況を考えたとき……突発的だけれど純粋に出てきた音楽だったんじゃないかと。音楽的にストイックなものだろうと。そうなったら音階だろうと。 

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