──プロフィールに“物心ついた頃から、自分はシンガーになるものだと思っていた”と書いてあるのですが・・・。
信近: そうなんですよ。覚えてないところで目覚めていたと思うんですけど。本当は、“誰かの歌を聴いて衝撃を受けて…”とかそういうエピソードも欲しいんですけど(笑)。ホントになるものだと思ってたので…。ただの思い込みの激しい人?!(笑)。本当に歌が好きだけでここまできた感じですね。
──では、デモ・テープを送ったのも積極的に?
信近: そうなんですが、住所を書くの忘れてしまったんですけどね(笑)。自分では書いてないなんて思ってもいなかったけど、名字だけで私を見つけてくださって本当に珍しい名前でよかったなと(笑)。
──今回は大沢伸一さんプロデュースということで、デビュー曲はダンスミュージック・トラックが印象的だったのですが…。
信近: バラードとかが好きだったので、あまりダンス・ミュージックとかは聴かなかったですね。小学校の時とかは普通にJ-POPを聴いていたんですけど、中学校に入ってから、ローリン・ヒルにすごく影響されまして…。それから洋楽ばっかり聴くようになりました。音楽好きの前に、まず歌好きなので…JAZZだったりR&Bだったり、歌いあげられるのが好きでした。
──なんと、ローリン・ヒルが好きだったとは…。カヴァーとかしちゃったり…。
信近: カラオケとか超大好きでした。地元が田舎すぎて他にやることも無かったですし、人の歌い方を真似するのとかが好きで。モノマネとかではなく、その人の声とか歌い方のクセとかを真似するのが好きでしたね。なので、カラオケにはかなり行ってました。
──このデビュー作「Lights」ができるまで、一年間デモ作りをしてたということで
すが…。
信近: デモ作りというか、「Lights」一曲に、レコーディングだけでも2~3ヶ月かけました。大沢さんが曲を作る段階から入れたらもっとなんですけど。
──それは何かすごく苦労したところがあったのですか?
信近: 「この曲に関しては余計なものを省いて、すごくストレートに歌って欲しい」って大沢さんに言われたんですよ。それまでR&Bとかばかり歌っていたので、しゃくって入ったりとか、自分の声で遊んだりとか、すごいクセがついていたんですね。本当はストレートに歌うことがスタンダードな歌い方だと思うんですけど、逆にそっちに戻すほうが私的に苦労してしまって…。できないというよりは、今までの歌い方を捨てきれないところがあって、リセットするのに時間がかかりましたね。
──プロデューサーの大沢さんはどんなアドバイスを?
信近: “歌い方がちょっと違う…”とか微妙な違いを伝えるのって難しいじゃないですか。それを、例えばアーティストで表わしてくれたり、毎回的確に指示してくれるのですごく分かりやすかったですね。すごい頭のいい方だなって。
──自身で書かれている歌詞については?
信近: この詞は今の状況を歌おうとか思って意図的に書いたものではなくて、曲を聴いてイメージしたものだったり、そういうものを再現しただけで。それがたまたま、デビューするという今の状態に当てはまって、気合いソングみたいになってしまったんですけど…(笑)。
──時間をかけて作った「Lights」を聴いて改めてどうですか?
信近: 今まで自分ではあまり声のこととか気にしたことがなかったんですね。でも、サイト(http://www.nobuchikaeri.com/)の掲示板とかでみんなが“声が…声が…”って書いてくれて。歌い方は変えられるけど、声ってどうにもならないものじゃないですか。だから「ありがとう!お父さんお母さん!」って思いましたね(笑)。
──デビュー曲を完成されて、これからは?
信近: 今は2ndの詞を書いています。一曲しかない時は、視野が狭いというか、この一曲しかない…という気持ちだけで書いてたんですけど。でも、だんだん先が見えてくると、こんな詞も書きたいなとか、今回はこういうのにしようかなとか浮かんでくるようになったので、本当に楽しいですね。“誰みたいになりたい…”とかはあまりないんですけど、常におもしろいことをやっていたいと思っていて…。これからいろんな曲を出していって私のイメージが定着してきてもあまり保守的にならず、その時々で、私が歌うからおもしろいんだ、ということを探してずっとやっていけたらいいなぁと思っています。
取材・文●イトウトモコ