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テナーサックスのDexter Gordonは、まさにジャズ界の異才の1人である。バップ奏者のパイオニアだっただけでなく、長らくヨーロッパで演奏活動を行なった伝説的人物であり、後年は世界的な映画スターとしても名を馳せた。

''23年、カリフォルニア州ロサンゼルスに生まれたGordonは、Lionel Hamptonと共に演奏し(''40~''43年)、Nat "King" Coleとのレコーディング(''43年)を経て、Billy Eckstine率いる革新的なバンドのメンバーとなる。その後もDizzy Gillespieのレコーディングに参加し、同じウェストコーストのサックス奏者 Wardell Gray(オクラホマ州出身)と、かの有名な「テナーバトル」を繰り広げた。''50年代はドラッグ問題でしばらく刑務所に服役(目ざとい人は''55年の映画『Unchained』に出てくる刑務所内ジャズ・バンドでプレイする彼に気がつくはず)。

''61年、音楽界に戻ったGordonは早速、Blue NoteレーベルでDoin'' Alrightのレコーディングに参加。これはBlue Noteの初期名盤の1枚である。それからGordonは、当時のジャズ・ミュージシャンの夢だったヨーロッパ行きを実行。ヨーロッパでは真のアーティストとして一目置かれ、数多くのギグを行なう。''62年から''76年まで米国を留守にしていたため、尊敬はされるものの過去の存在となっていたが、''76年、Columbiaレーベルからリリースした『Homecoming』で華々しいカムバックを果たす。

後年、Gordonのサックス・プレイは多少簡素に響くようになったものの、相変わらずの腕前に加え、落ち着いた音色が深まった。''86年、フランス映画『Round Midnight』に主演。落ちぶれた男がサックスを手にする時だけ本来の姿を取り戻すという、自分自身を描いたような役柄を演じて高く評価される。''90年3月25日、フィラデルフィアで死去。

Dexが率いるクインテットには、トランペッターのFreddie Hubbardが参加しており、オリジナルはPrestigeレーベルだが、昔ながらのタイトなBlue Noteのフィーリングにあふれている。