【レポート】三味線奏者・蜷川べに、チャリティーオークション<For NOTO>贈呈式で新たな文化交流の可能性も「挑戦していくきっかけに」

4月20日、三味線奏者・蜷川べにが、チャリティーオークションによって落札されたエレキ三味線の落札金を漆芸のスペシャリスト集団“彦十蒔絵”へ贈る贈呈式が行われた。
両者の関係の始まりは2020年まで遡る。和楽器バンドのライブ会場に設置した樽募金を通じて、当時から国内の伝統芸能文化をサポートしていた蜷川は、“KOGEI Next”という日本の一流の職人たちが作品を展示する共創プロジェクトを通じて、約2年という歳月をかけて世界に一丁しかないエレキ三味線“Lycoris”を完成させた。そのとき“Lycoris”に印象的な漆塗りを施したのが彦十蒔絵だった。

2024年、能登半島地震によって輪島に本拠地を構えていた彦十蒔絵は大きな被害を被った。そんな彼らの窮地を救うために蜷川は動いた。それが今回彼女が開催したチャリティーオークション『~日本と台湾を繋ぐ~BENI NINAGAWA CHARITY AUCTION ~For NOTO~』である。出品されたのは、蜷川がこれまで和楽器バンドで使用してきた津軽三味線のうちの一丁。自身の活動を支えてきた楽器を手放すという決断には、彦十蒔絵を助けたいという想いはもちろん、日本の文化、技術、音楽を次世代へつないでいくという意志、現在彦十蒔絵の2代目代表を務める高禎蓮(読み:タカテイレン)との友情、そして高の故郷・台湾への想いが込められていた。
贈呈式を終え、蜷川は「関わってくださった方や落札してくださった方、みなさんが喜んでくれる形になったことがすごく嬉しかった」と語り、「今回の経験が、これからもっと大きなことに挑戦していくきっかけになった」と、今後への意欲をにじませた。

一方、先代・若宮隆志の意思を引き継いで彦十蒔絵の代表を務める高禎蓮は、台湾出身という背景から、日本文化を外から見つめてきた立場にある。「日本には本来とても強い文化があるが、外に目が向きすぎている部分もある」と語り、こういった視点を持つ高のような存在が大事だと蜷川は言った。
今回の取り組みは、日本国内にとどまらず、台湾をはじめとした海外との文化交流の可能性も示している。高は「海外にも日本の工芸や文化の魅力を伝えていきたい」と意気込む。高は、“Lycoris”から続くコラボレーションを通じて、漆芸が新たな接点を生み出していることを指摘する。「べにさんのファンの方々は、“Lycoris”の展示会に来てくださるだけでなく、作品の背景や技術にまで興味を持ってくださいます。このことからも、これまで伝統工芸だけでは届かなかった層にまで広がっていることを感じています」と、その変化を実感している。蜷川にとっても、複数の工程を経て作品が完成させる漆芸の現場に立ち会った経験は大きかったようだ。「それぞれの技術や役割が積み重なって一つのものができていく。その流れに触れられたことは大きな経験でした」と語った。


今回の贈呈式は、偶然の出会いから始まった関係が支援へとつながったことを示す場となった。しかし、これは蜷川にとってゴールではなく、スタートだという。「私個人としては、彦十蒔絵さんに恩返しができたのはこれが初めてなので。和楽器バンドの頃からいろんなチームの方々にお世話になってきましたけれど、これからもソロ活動の一環として文化の継承を続けていこうと思っていますし、高さんとの共鳴ももちろん、今後も続いていきます」と力強く宣言した。
実際、蜷川には大きな夢がある。「音楽だけに留まらず、日本の食文化、伝統芸能、そのほか様々な技術など、私が素晴らしいと思う日本のものを結集させて、お祭りのようなイベントができたらいいなと思っていて。さらにそれを日本国内だけではなく、海外へ向けて発信できるようなものにしたいですね」。
蜷川べにと高禎蓮による取り組みが、分野や国境を越えてどんなふうに広がり、どのような新しい文化のかたちを生み出していくのか、引き続き注目される。




