【ライブレポート】ペンライトで盛り上がれる三味線奏者・蜷川べにのライブ。ソロ初ツアー完遂で「一人たりとも置いてけぼりにはしない」

蜷川べにが5月17日に東京・青山RiZMにて<春ね。はじめまして、蜷川べにですvol.3>ファイナル公演を開催した。
和楽器バンドの津軽三味線奏者として活躍し、バンド活動休止に伴いソロ活動を本格活動させた蜷川べに。4月3日にはシングル「春ね。」をリリースし、この楽曲を提げて開催したのがこのツアーだ。事前のインタビューで本ツアーについて「“蜷川べにってこういう音楽をやります”という第一歩の初戦だと思っていて」と語っていたが、まさにその言葉を体現した公演となっていた。本項ではファイナル公演昼の部の模様をお伝えする。
◆ ◆ ◆
開演時間になり、SEとともに幕がゆっくり上がっていくとそこには三味線を構えたべにが。登場にして圧巻のインパクトだ。満員の会場を笑顔で見渡すと、早速「春ね。」からライブをスタートさせた。モニターには桜吹雪が映し出され、その中で歌いながら三味線を弾く凛とした佇まいに、早速目が釘付けになる。ライブハウスという会場だけに、指の動きや撥捌きもバッチリ見えて、改めて奏者としての凄さも実感。
もはやハイライトのような一曲目だったが、その盛り上がりをさらに増幅するように続けて届けられたのは、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」カバー。きらめく照明に照らされ気分がどんどん高揚し、フロアには大きなクラップが湧き起こる。
「さて始まりました! いい眺めやわ〜。今日は最高ですね!」とご機嫌なべに。「120%のエネルギーを持ってきたか!」と会場に問いかけると、ファンも大きな声で応える。あいにくの雨模様となってしまった今日だが、そんなことをものともしない熱さだ。
MCでは、ファンがデコったうちわを紹介する場面も。直接ファンからうちわを借りて紹介したりと、ファンサの鬼。どこから来たかとファンに問いかける場面でも、ファン同士がお互いにツッコミあったり大きな拍手を送りあう場面もあり、「下手すると全部トークで終わっちゃいそう」と本人も語っていた通り、大盛り上がり。ツアーに複数回来ているファンが多いのも頷ける楽しさだ。
そんな楽しい雰囲気から一転、Creepy Nuts「よふかしのうた」カバーへ。ビートの上で自在に跳ねまわる三味線の音色に自然に体が揺れる。そんな温まったフロアに投下されたのがAdo「ドメスティックでバイオレンス」カバー。今度は三味線を弾きながらボーカルも取る。野太いロウの効いた声とがなりがかっこよくて、「春ね。」とはまた違うべにの声の魅力を堪能。
その雰囲気を受け継ぐように、続いて披露されたのは「ルパン三世のテーマ’78」。モニターに足を乗せて歌う姿がセクシーで、最前のファンのハートはガッツリ盗まれたことだろう。ペンライトの色をオレンジに変えさせると、今度はテレビアニメ『ドラゴンボール』の主題歌である、高橋洋樹「魔訶不思議アドベンチャー!」カバーが始まる。誰もが知るアニソンだけに、フロアから上がる合いの手の声も一際大きく盛り上がる。三味線のアレンジが面白い。
ここで三味線を置き、二度目のMCタイムへ。ツアーを振り返り、今日の東京公演に関しては「すでに仕上がっている」という。ちなみにMCはプロンプターもイヤモニも使わず、そのときそのときのファンの顔を見て、思ったことをそのまま伝えているという。アットホームなこの感じ、とてもいい。
ここからはシングル「春ね。」に収録されている楽曲を披露する。カップリングの「迅吹雷影」は激しい三味線インスト曲だが、力強い撥捌きでフロア中の空気を圧倒していく。ファンクラブ数量限定豪華版のみの収録「ひぃ、ふ、み、よ、いつ、む。」はべにの艶っぽさや芯の強さが存分に発揮される楽曲で、歌詞にある《弥栄(いやさか)》を体現するかのように、曲終わりにはファンから大きな拍手が巻き起こった。さらに、べにのモチーフであるリコリス(彼岸花)をタイトルに冠した「Lycoris」も。
激しい3曲を経て「腕ちぎれるか思った(笑)」と笑うべに。なんと衣装が破損してしまうというトラブルまで。だがそんなことにも大盛り上がりするファンたち。なんなら、べにが水を飲むだけで大歓声が上がるのだから、心からみんながこの場を楽しんでいるのがわかる。今回でソロライブは3回目とのことだが、そんな風にはまったく思えない一体感だ。

MCを経て次のブロックでは、和楽器バンドのギタリスト町屋とのユニット・shirafuの公演で挑戦していた、ギターで曲のコードをとりつつ、民謡を三味線で弾き語りするという“新解釈民謡”を披露する。しかも、今回べにのソロツアーのために新たに音源を作って、“ハイブリット新解釈民謡”としてブラッシュアップされている。日替わりで曲目が変わるのだが今回は、まず「秋田おはら節」を披露。もとは鹿をテーマにした民謡だが、その良さを活かしつつエモカッコいいサウンドに仕上がっていて、さすがの町屋アレンジ。
ファンはもちろん、スタッフも和楽器バンドのときから支えてくれている人々のおかげで今もステージに立てていると語ったべに。そんなみんなに“福が訪れてほしいから”と、お祝いの民謡「南部俵積み唄」も届けてくれた。町屋のサウンドメイク、聴きやすいべにの声で、民謡のイメージがガラッと変わった。こういう風に聴けば、民謡もとてもポップスだ。ファンもペンライトを振って楽しそう。これはもしかするとかなり面白いかもしれない。なんとこの“ハイブリット新解釈民謡”は、パッケージ制作が予定されているとのこと。
そしてここからは、ファンお楽しみの“べにロト”。グッズのポーチにサインを入れたものを、抽選でファンにプレゼントする人気企画だ。べにが歌いながら抽選ボックスからファンの番号を引き、当たった人とコミュニケーション。この距離感はなかなかないと思う。ファンの笑顔が印象的な、楽しい一幕だった。
盛り上がったライブも、いよいよラストスパートへ。「全員行けるか!」という力強い煽りから始まったのはAdo「唱」カバーだ。津軽三味線の疾走感がとても似合う。ちゃんみな「ハレンチ」カバーも艶っぽさがべにの声にとても似合うし、日替わり曲のPSY「江南スタイル」カバーはクラブサウンドと津軽三味線という異種格闘技感が楽しい。津軽三味線って、いろんな可能性があるんだと驚かされた。

ここで、べにが思いを語る。
「和楽器バンドで10年間8人でやってきました。私一人では見られなかった景色であったりステージであったり、たくさん経験させていただきました。でも今はこうやって、この規模間でソロをやってます。その時には見えなかったみんなの顔が、この距離で、ひとりひとり全員見えます。ここにいるみんながずっといままで応援してくれて、推してくれて、ソロでライブをやるとなったらチケット買ってきてくれて……今はひとりひとりちゃんと顔が見えています。こうやってみんなが足を運んでくれて、一緒に歩んでいく、一緒に歳をとっていく、一緒に成長していく……そういうのが今の私にはすごく幸せなことだなと思っていて、すごく感謝しています」
「ひとりひとりと誠実に向き合って、いろんな思いを乗り越えてここに来てくれているみんなを、私は一人残らず、一人たりとも置いてけぼりにはしない。連れていくので、みんなと一緒にもっともっと楽しい景色をいっぱい見ていこうと思うのでよろしくお願いします!」そして最後に「だから私、今すごく幸せ」と噛み締めるように語ったべに。“どうしても言いたかった”というこれらの言葉は、心からのものだったと思う。
最後はもう一度「春ね。」を全員で合唱して、ライブの幕が閉じられた。ソロとして完全始動したべにの新しい一歩は、このツアーで輝かしいものになったに違いない。公演中には9月15日、バースデーライブ<はじめまして、蜷川べに呼び出し花魁中です vol.4>を二部制で行うことも発表された。一部はライブタイトル通り、花魁をコンセプトにしたバンドを入れたライブを行うとのこと。二部はファンクラブ会員を対象に、三味線あり、お悩み相談あり、トークあり、歌ありのキックオフイベント“スナックべに”を行うとのこと。チケット代金はファンクラブへの日頃の感謝も込めて、4500円で1部本編と同じボリューム感でのイベントだという。なお、こちらの“スナックべに”は、今後も定期的に続けていくそうだ。これからの活動も、楽しみに待ちたいと思う。
取材・文◎服部容子
【★お知らせ★】
先日の、東京ファイナルで発表いたしましたが改めまして。。。。
蜷川べにバースデーライブ開催決定!!!
1部
「はじめまして、蜷川べに呼び出し花魁中です vol.4」@赤羽 ReNY alpha
2025 年 9 月 15 日(月) ※敬老の日
★初のコンセプト系 花魁ライブ!
★BDバンドあり豪華ver.!…— 蜷川べに (@benina1225) May 21, 2025