【インタビュー】KIRITO、『SHIFT』が物語る固定観念の崩壊と劇的な変化のその先「扉を開くか開かないか。自分次第で世界は変わる」

2026.04.22 18:00

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KIRITOが4月22日、1stミニアルバム『SHIFT』をリリースした。2024年のPIERROT再集結、2025年のAngelo再始動、そして2026年にリリースされるソロ最新作はKIRITOの次なるフェーズを印象づける仕上がりだ。

KIRITO名義によるソロアルバム『NEOSPIRAL』(2022年11月)、『ALPHA』(2023年11月)、『CROSS』(2024年11月)は、研ぎ澄まされた思想性とアグレッシヴなサウンドを融合し、表現者としての進化を次々と提示してきた。そしてリリースされる『SHIFT』は“パラダイムシフト”を象徴するように、固定観念の崩壊と、その価値観の革命的な変化がリリックやサウンドに凝縮されて靭やかで美しい。

「歌詞やサウンドも含めて今回、自分がつないできたストーリーが次に進むための劇的な転換点という意味合いが、自分の中では大きかった」という『SHIFT』にKIRITO本来のメロディセンスが昇華された理由は? PIERROT〜Angelo〜KIRITOソロという世界線で描き続けてきた一連の物語の行方は? KIRITOの美学と覚悟を刻んだ『SHIFT』に、未来への破壊と創造、そして止まることを知らない進化が見えるロングインタビューをお届けしたい。

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■宗教的なものと量子力学的なものが同居している
■その相互関係を意識しているから世界線なんです

──『SHIFT』は、2024年のPIERROT再集結、2025年10月のAngelo再始動という動きを経て作られた作品ですが、制作前はどんなことを考えていましたか?

KIRITO:大前提として僕は、自分が作る音楽を通してストーリーをつなげているんです。つまり、PIERROT、Angelo、KIRITOソロといった全てを、“それぞれが違う世界線”という言い方をしながら、どうつなげていくのか、どう並行させていくのか。そういう作業も含めて、ここ数年は壮大なストーリーを構築している感覚がありました。

──それぞれ異なるプロジェクトでありながらも、一貫したストーリー性が感じられますので。

KIRITO:そういう数年を経て、アルバム『SHIFT』は“パラダイムシフト”や“シフトチェンジ”といった意味合いが強い作品になりましたね。

──固定観念の崩壊やニューノーマルへの転換だったり、当然のことと考えられていた認識や思想、社会全体の価値観などの革命的/劇的な変化ですね。それはサウンド的にも言えることでしょうか。

KIRITO:今までの3つのソロアルバムは、ヘヴィな分野を開拓してきた作品だったんです。それまでの自分は、メロディアスなものが得意な一方で、全編にわたるシャウトとかパワーで押し通すボーカルスタイルは不得手だと見られていたかもしれない。でも、Angelo活動休止以降のソロを通して、そういう見られ方を覆すように、パワー重視の3枚のアルバムを制作したことで、自分なりのスタイルを突き詰めることができた。であれば今回は、一度原点に立ち返ろうという気持ちになったんです。結果、アルバム『SHIFT』はメロディーを聴かせることに変化した作品という感覚があります。

──収録された全6曲がメロディアスという点で共通していながら、テイストの異なる楽曲が並んでいて、どの曲もクオリティーが高いという印象です。

KIRITO:曲作りに関しても、これまでの3作は自分が得意とするものを敢えて封印していた部分があるんです。だけど今回は、これからKIRITOというミュージシャンが、どこに向かっていくのかを分かってもらおうという思いがあった。それは1曲単位の話ではなくて、KIRITOはこういうふうになっていくんだよという意思をアルバム全体やスタンスを通して表明したいなと。同時に、楽曲クオリティーの高さや引き出しの多さを見せようという思いも強くあったので、そういうアルバムにはなったかな。

──最初にアルバムの全体像をイメージして、それに沿って楽曲を制作する、という感じですか?

KIRITO:アルバムは1曲目から最後の曲にかけてのストーリーという感覚で作っているから、ストーリーのプロットが頭の中にあったうえで、それを表現する楽曲を綿密に作っていくという感じです。もちろん具体的に1曲1曲をどういう楽曲にするかは後からはめていくんだけど、最初にストーリーとして1曲目はこういうもので、ラストにかけてこういう感情のグラデーションをサウンドで作る、というような概要的なものは最初に考えますね。

──ストーリーという言葉が出ましたが、ダークなヴァースと開放するようなサビを配した「PARADIGM SHIFT」や、多層的な展開を活かした「SIGNAL」など、楽曲単位でもストーリー性を感じさせるものが『SHIFT』には揃っています。

KIRITO:これまではアルバム全体としてどうあるべきかということを分かりやすく伝えるために、バラエティー重視というよりはアルバムの方向性にふさわしい曲で固めていたんです。だけど、今回の『SHIFT』に関してはそういうことではなくて、6曲それぞれで6つの全然違ったシーンを見せていきたかった。できるだけ引出しの多さを見せたいなというところで、1曲1曲自体の流れもすごく考えました。

──「蒼く浮かぶ月」というバラードも、AメロやBメロを経てサビがくるかと思いきや、そこはCメロで。その後のDメロにあたるサビでさらに深まるという流れが秀逸です。

KIRITO:今までいろいろな曲を作ってきたので、“曲構成はこうあるべき”みたいなスタイルも自ずとできてきたわけですが、セオリーありきではなくて、歌詞の世界観や感情を踏まえた考え方。たとえば、サビにいく手前のメロディーはサビよりも重要ではないのかというと、そうではないわけで。Bメロと呼ばれる場所だけどBメロではないとか、サビともいえるけどサビでもないみたいな、すべてのセクションのメロディーが主役になり得る感覚ですよね。

──すべてがサビみたいに。

KIRITO:内面的な感情がむき出しになったものが完成度の高いサビというわけでもないですし。別の言い方をすれば、Bメロからサビにいくという考え方ではないんです。本来のサビからさらに感情を取り出した得体の知れないなにか、それがこの曲に存在するサビなのかもしれない。僕はそういう捉え方をしていて、いわゆるロックやポップスの曲構成の定義は無視しているところがあります。

──だからといって、曲構成が破綻しているわけでなく、説得力を持って仕上がっています。ストーリーを感じさせながら、サウンドとリリックのバランス感覚や情報量が素晴らしい。

KIRITO:歌詞やサウンドも含めて今回、自分がつないできたストーリーが次に進むための劇的な“転換点”という意味合いが、自分の中では大きかった。そういう意味での“SHIFT”なんです。ただただ、“KIRITOというミュージシャンが転機を迎えて、こういう方向にいきました”ということでは決してない。アーティストとしてのKIRITOは、語り部でありサウンドを作る上でのコンポーザーでしかなくて。ストーリーは別で進んでいくものだから、ある意味ストーリー自体が生き物みたいな感覚ですよね。

『SHIFT』初回盤

──大きなパラダイムシフトを迎えて、ストーリーはどこに向かっていくんでしょうか?

KIRITO:僕は語り部であり作り手でもあるから、わかっている部分が多少はあるかもしれないけど、ストーリーは有機的、段階的、あるいは自律的に前進するから、どういう展開になるかは予測がつかない。そういう中で『SHIFT』は、“ここがパラダイムシフト”なんだということを告げる作品なんですね。歌詞の世界観でも“パラダイムシフトを迎えました”という転換点を描きたかった。そうなると、楽曲の見え方だったりが今まで以上に大きく変わってきて、それがおっしゃっていただいた「バランスのよさ」みたいなものにつながった気はします。かといって、『SHIFT』を機にこの先、完成度の高い歌ものになっていくということでもないし、全く予想外のところにいくかもしれない。今の段階でそれは言わないし、それでいいんじゃないかなと思います。

──どういう方向性であれ、常にクオリティーの高い楽曲が生み出されることも感じます。では、続いて歌詞について。今作の歌詞は“リピート=永遠”というテーマが全体を覆っていると感じました。

KIRITO:冒頭で話したように、前提として、ずっと続いている大きな流れがストーリーとして存在しているんです。だから、リピートを生まれ変わりや永遠みたいな捉えてもいいんですけど、今回は宗教的な意味合いではないんですね。今までは一度終わってもまた次のストーリーが始まるという、いわゆる輪廻的な感覚の歌詞だったけど、自分の中には宗教的なものと、それとは一見相反しているサイエンスな量子力学的なものが同時に存在しているんです。その相互関係をすごく意識しているから、世界線という言い方をしているんです。

──宗教と科学の並行世界であり分岐点というか。

KIRITO:生と死を繰り返すことが輪廻だとしたら、世界線を分岐させて作っていくというのは量子力学でいうところの“時間を刻む”ということなんです。1秒1秒を今過ごすことが、無数の選択と観測によって新しい世界をつくっていくということであり、分岐を選んでいくこと。つまり、量子力学的に世界線を終わらせて、またつくってという膨大な無限の繰り返しが、いわゆる“生きることそのもの”と解釈すれば、それも終わりと始まりの繰り返し、つまりリピートですよね。

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