【インタビュー】DIR EN GREY、3年10ヶ月ぶりニューアルバムがついに完成。Shinya「貫禄と経験値」

2022年の『PHALARIS』以来、約3年10ヶ月ぶりとなるニューアルバム『MORTAL DOWNER』が完成した。これまでアルバムをリリースするごとに唯一無二の領域を広げてきたDIR EN GREYが、孤高の道へとさらに一歩踏み込んだ作品だ。
重苦しいノイズが響く「ISOLATION」で幕を開け、骨太なギターリフで突き進む「灰燼に帰す」や「蜿蜒」、スピードチューン「There’s nothing else」、空間系のサウンドが新鮮な「歪と雨」、京の歌心を堪能できる「Bloodline」「Void」など多様な楽曲が揃っているのだが、当然のごとくすべてが一筋縄ではいかない。リフもリズムもメロディも、DIR EN GREYにしかできない色づけが施してあり、そのすべてがより力強く濃密に仕上げられている。『PHALARIS』の複雑で重厚な世界観と比べると、ソリッドに削ぎ落とされたアレンジによって1曲ごとの個性が際立っている印象だ。
長い時間をかけて熟成したことが伝わってくる今作は、どんなふうに出来上がっていったのか。華やかかつ独創的なリズムワークでDIR EN GREYの音楽を支えるShinyaに、アルバム完成までの長い道程やドラムアプローチについて話を訊いた。
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◼︎“何も考えずに作る”ということを意識していました
──待望のニューアルバムがついに完成しました。そもそもは、去年のうちにリリースして、ツアーもアルバムをひっさげてのツアーになる予定だったそうで。
Shinya:そうですね。予想よりは1年ぐらい延びたと思います。
──振り返って、どういう部分に時間をかけたんですか?
Shinya:曲がめちゃくちゃいっぱいあったんですよ。何十曲とあるデモに対していろいろ作業していったので、最終的には全然時間がなかったです。
──曲ができないんじゃなく、できすぎていたと。
Shinya:そうです。前作アルバム『PHALARIS』のツアーが終わって、まずシングル「The Devil In Me」が出て。そこからアルバムに向けて動き出そうというタイミングで選曲会の日程が決まったんですね。おのおの作ってきた曲を選曲会に出して、そこで選ばれた曲に対して少しずつアレンジを始めるんですけど、また次の選曲会が決まって。そのあともまた選曲会があって、曲だけがどんどん溜まっていったという。

──もっといい曲ができるだろうとか、楽曲の幅を拡げようという狙いだったんですかね? もしくは、アルバム曲として絞り込むのに時間がかかったとか。
Shinya:目的はよくわからないんですけど。僕も選曲会のたびに何曲か出していたので、“なんでこんなに曲をいっぱい作ってるんだろう?”と思っていました(笑)。結果的に曲がいっぱいありすぎて、手をつけたくてもどれから始めたらいいのかわからなくなっていて。京さんにいたっては、全部のデモにメロディを入れてました。
──なるほど。「この10曲を仕上げていこう」ではなく、ゴールが見えない状態で個人作業を進めていたということですか。
Shinya:そうですね。特にメンバー間では何の会話もなく、おのおのがいろんな曲のアレンジに手をつけているだけの状態が何ヶ月も続いたという感じです。
──今までのアルバムでもそうだったんですか?
Shinya:いや、今まではそうでもなかったんですよ。3曲ぐらいに絞ってレコーディングして、また次の3曲をレコーディングして、みたいな感じでした。今回も去年の前半に5曲くらいレコーディングして、そこまでは今までと一緒だったんですけど、そこからちょっと止まったというか。
──どこに向かうのか?という空気が漂っていたような。
Shinya:そうです。
──完成形が見え始めたのはいつ頃だったんですか?
Shinya:もう去年末ですよ。発売日的に“ここで録らないとまずい”というレコーディングの日程だけ決まっていたんですけど、ドラム録りの前日くらいまでどの曲になるか決まってなかったので、僕としてはかなり厳しかったです。前日に曲が決まって、一応フレーズは作ってあるけど覚える時間が全然ないから、譜面を見ながらちょっとずつレコーディングしました。
──なかなか壮絶ですね。この14曲が出揃ったタイミングは年末ですか?
Shinya:年始ですかね。
──年始! ようやくゴールが見えたという感覚もあったのでは?
Shinya:いや、ホッとする暇もなくドタバタな感じで終わりましたね。つい最近録ったような気がしてます。
──昨年のツアーで先に披露していた新曲は、去年に録っていたものですか。
Shinya:そうです。その時のレコーディングも結構バタバタだったので、録ったものからライブに向けてフレーズを調整した部分も結構ありますね。音源として出る前に、すでにライブバージョンになっているという。
──珍しいパターン(笑)。未発表の新曲をライブでやることに関してはどうでした?
Shinya:全然緊張はなかったです。覚えるのが大変というだけで、特別な感覚はないですね。
──去年のツアーをやっている頃は、まだアルバムの全体像が見えていなかったんですね。
Shinya:“5曲録ったけどどうなるんだろう?”みたいな状態でしたね。
──プレッシャーや焦りの気持ちもあったんですか?
Shinya:全然。出ないなら出なくても大丈夫なので。
──新曲やニューアルバムを作っていかなきゃ、というモードはバンドの中で必須課題ではない感じなんですか。
Shinya:他のメンバーはわからないですけど、僕はそうです。定期的に出さないと、みたいな感覚は全然ない。出ないならもう一生出なくても大丈夫です。

──改めて、無事完成してよかったです(笑)。具体的な制作過程を振り返ると、デモに対してアレンジを加えていく順番は決まっているんですか?
Shinya:まずメロディが一番先に入っていましたね。京さんのメロディが入ったデモが、とりあえず全員のところに一斉に届くので、僕がドラムを自分のフレーズに直して送り返して、そこからはひたすら待ちです。
──ボーカルが最初に入るというのは、DIR EN GREYの特徴ですよね。メロディは、やっぱりドラムを打ち込むうえで意識するポイントになるんですか。
Shinya:それはかなりポイントになりますね。歌が入る部分と入らない部分もわかりますし、歌のリズムに合わせたシンバルを入れたり、いろいろ考えます。
──メンバーからまた戻ってきた時に、それがガラッと変わっていたりすることも?
Shinya:あります。リズムやフレーズを変えられるというより、曲の後半ができあがったり、展開が増えていたりするので、そうなるとまたそこにフレーズを打ち込んでいくという。逆に、誰も何も入れない曲もあります。デモにボーカルとドラムが加わって、そのままギターとベースが何も入らないまま消えていく曲もある。
──京さんとShinyaさんはひとまず全部にちゃんと考えるわけですね。
Shinya:僕はデモが来たらその都度考えますね。意識しなくても勝手に思いつくので、フレーズを考えるのに困ったことはないです。僕の作業自体はめちゃめちゃスムーズだから、制作期間中のほとんどは見守る時間なんです。
──“この曲を進めてほしい”と伝えてみたり、“せっかく考えたのにな”と思ったりはしないんですか。
Shinya:一切ないです。どの曲でも大丈夫なので。
──実際にドラムを叩くのはレコーディングのタイミングですか?
Shinya:そうです。
──データで打ち込んでいたら人間で叩けないフレーズになっていたという話を聞いたりもしますが……。
Shinya:人が打ち込んできたものはそうなっていることも多いですけど、僕はちゃんと全部直すので。逆に、他の人が打ち込んだものを「そのまま叩いて」と指定されることはないです。
──全員が納得するまで完成しないという、改めてアーティストらしい曲作りですよね。ちなみに、今回Shinyaさんが原曲を担当した曲はあるんですか?
Shinya:「Bloodline」がそうです。作った時は別に自信や手応えがあったわけでもなく、実際最初は選ばれていなかったんですよ。ただ、京さんが間違えて歌メロに取りかかって、できたメロディを気に入ったらしくて。そこから推された結果、アルバムに入ることになりました。
──そうだったんですね。作った時は、何かイメージがあったんですか?
Shinya:むしろ“何も考えずに作る”ということを意識していましたね。他にも、メロディが乗りそうな曲も作ったし、乗らなそうな曲も作ったし、思いついたものを作って持っていっていました。







