【ライブレポート】杏里、「疲れを音楽で吹き飛ばして!」仲間たちと共有した美しく尊い時間

2026.04.07 12:00

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昨年大好評のうちに幕を下ろしたツアーのアメリカ版<ANRI LIVE 2026 U.S.A Timely!!>を5月に控え、9月には<ANRI LIVE 2026 Heaven Beach>の開催が発表された。杏里のライフワークであるビルボードでのライブ。杏里のBillboard Live公演のチケットは発売と同時に即完売。いま最も入手困難なステージとして、多くのファンの熱い支持を集めている<ANRI with #bestbuddies Ⅸ>が、横浜、大阪に続き、東京でも2デイズで開催。2日目の3月21日にファイナルを迎えた。(レポートは1部の模様)

ミディアムアップのビートにサックスが響きわたり、会場の空気は春を飛び越え一気に夏になった会場。オープニングナンバーは「SURPRISE OF SUMMER」だ。杏里は大歓声に応えるように手を振りながら、客席の間を塗って歩きステージへ駆け上がると「皆さんこんにちは! 元気ですか? 最後までよろしくね!」と一言。パーカッシブなリズムに身を委ねながら、澄み渡る青空に流れる一筋の飛行機雲のように、爽快なボーカルで会場を沸かせた。続く「センチメンタルを捨てた人」では一転、ピンク/パープルのライティングで会場はムーディーな雰囲気。杏里のボーカルも、春に舞う桜の花びらのように、どこか切なさをはらんだものへと変わった。

「先週はお疲れだったでしょ? いろいろあってストレスも溜まったと思うので、今日は音楽でそれを吹き飛ばしてください!」と杏里。ここからはバラードコーナー。美しいピアノをメインにしたサウンドに乗せて、胸に手を当てながらしっとりと歌った「LOVERS ON VENUS」では、語りかけるような歌声で観客を癒やしの空間へといざなう。曲の冒頭部分をピアノと歌だけで届けた「夏の月」は、乾いた砂が風に吹かれて、サラサラと流れていくような儚さが会場に広がった。また杏里が作曲した「SUMMER CANDLES」は、キャッチーさもあるエモーショナルなメロディーで、観客それぞれのなかの思い出の琴線に触れた。

そして、「Last Summer Whisper」では、まずは小松秀行(B)のベースをメインにしたグルーヴ感あふれる演奏が心を揺さぶり、熱く火照った体を冷ましながら感じるような、心地よいけだるさが会場に満ちあふれた。このコーナーでは杏里の歌声によって、きっと観客それぞれのなかに眠っていた、セピアに色褪せた思い出が頭によぎったことだろう。いつかの恋を思い出し、それを愛でるように懐かしむ。それもまた、大人の恋愛の愉しみ方なのかもしれないと思わせた。

MCでは、今回で18回目を迎えたビルボードでのライブを始めたきっかけについて語った。17歳でデビューして、20代前半までは海外でレコーディングすることが多く、海外に行ったときは現地のビルボードで好きなアーティストのライブを観ていたとのこと。「音楽とお酒や食事を一緒に楽しめる環境はほかになかったから、ステキだな、私も出たいなと思っていた」と杏里。しばらくして日本にビルボードライブができたものの、当初は来日アーティストばかりで日本人が出演するのは稀で、杏里が初めてビルボードのステージにたったのも2008年だった。

また、ビルボードでのライブを重ねるごとにいいメンバーが揃ったことを話し、ライブのタイトルにも入っている、サポートバンド“BEST Buddies”を紹介。「そろそろ自分たちだけの音楽を作ったら?」という杏里の発案から正式に結成され、昨年10月にオリジナル曲を配信リリース、さらに11月には神奈川・ビルボードライブ横浜でのワンマンライブも成功させた。

そんな“BEST Buddies”の重鎮二人、小倉泰治(Key)と鈴木明男(Sax)が似たアロハシャツを着ていることを見つけた杏里は、「お揃いみたいでかわいい!」とコメント。ファンからも「明男ちゃーん」など声がかかって会場に笑いが起きた。また、杏里の「初めて観て衝撃的だった!」とのムチャブリで、鈴木の特殊技能「サックス2本同時演奏」を披露。さらにKenny(Dr)が、70〜80年代に一世を風靡したディスコ“赤坂ムゲン”で歌っていたことも明かされ、「いつかKennyの歌も聴いてみたいな〜!」と杏里。

リラックスムードのトークを経て後半戦は、アップテンポと代表曲を連発して会場を愉しませた。まずは「皆さんが聴いたことある曲から!」と、「Fly By Day」を披露。フィンガースナップでリズムを取りながら歌った杏里。間奏ではギタリストの植田浩二が、エモーショナルなギターソロをプレイして会場を沸かせた。ディスコチューンの「嘘ならやさしく」では、観客が総立ちになってクラップしながら体を揺らす。赤坂ムゲンの話題を伏線に、Kennyが叩き出すアツいビートが会場に広がり、ビルボードがクラブに早変わりした。

本編は「悲しみがとまらない」「オリビアを聴きながら」の名曲2曲で締めくくられた。冒頭からマイクを客席に向け、観客の歌声で始まった「悲しみがとまらない」は、杏里が客席に降りて歌いながらファンサービスを繰り広げた。手を振ったりグータッチしたり、客席をぐるりと一周して大興奮の観客。最後は会場全体で「止ーまーらーなーいー」と大合唱になった。そして最後は、「オリビアを聴きながら」をしっとりと歌い上げた。美しくもソウルフルな歌声を、うっとりと聴いた観客。そして温かい拍手が会場に響き渡った。

オールスタンディングで迎えられたアンコール。ファンキーなビートで再び会場をディスコにした「BRING ME TO THE DANCE NIGHT」は、ハイウェイを駆け抜けるように爽快な疾走感。まるで水しぶきのように、音の粒が弾ける。ここからノンストップでラストナンバー「Cat’s Eye」へと突入。コーラスのGary AdkinsとArgie Martinの間に立ち、3人並んで軽やかにダンスステップや手の振りを交えて魅せると、それをまねして一緒に踊る観客も。サビの最後の「we get you…」で客席を撃ち抜くポーズをキメて、「サンキュー!」という言葉でライブを終えた。

このビルボードライブは、杏里と“BEST Buddies”を育み、気心知れた仲間が集まる、かけがえのない場所。いつもよりくだけてお茶目な表情を見せてくれるのも魅力だ。“あの頃”がよみがえり、音楽でつながる心地よい空間。会話を交わさずとも、共有することができる美しく尊い思い出。そんな時間が、いつも“ここ”で待っている。

取材・文◎榑林史章

ライブ情報
<ANRI LIVE 2026 Heaven Beach>
9月6日(日) 東京 たましんRISURUホール
9月13日(日) 新潟 新潟県民会館 大ホール
9月20日(日) 神奈川 カルッツかわさき
9月23日(水祝) 大阪 オリックス劇場
9月26日(土)秋田 あきた芸術劇場ミルハス 大ホール
10月3日(土)京都 ロームシアター京都メインホール
10月10日(土)茨城 水戸市民会館グロービスホール
10月12日(月祝) 宮城 タイハクホール名取(名取市文化会館)大ホール
10月18日(日) 福岡 キャナルシティ劇場
10月24日(土) 東京 SGC HALL 有明
11月1日(日) 埼玉 大宮ソニックシティ
11月5日(木) 広島 ふくやま芸術文化ホールリーデンローズ
11月10日(火) 北海道 札幌文化芸術劇場 hitaru
11月14日(土) 愛知 刈谷市総合文化センター アイリス
12月13日(日) 沖縄 沖縄コンベンションセンター劇場棟 

◆杏里 オフィシャルサイト