【インタビュー】10-FEET、TAKUMAが語る極上ギターサウンドの秘訣「魔改造が止まらない」

10-FEETが2025年夏も、凄まじいライブ本数と圧倒的なステージで全国各地のフェスやイベントを沸き立たせている。ライブシーンにおいては、人気や知名度、信頼感や爆発力の面で突出した感があるが、注目すべきは楽曲そのもののクオリティにあり、そのサウンドの心地好さこそ称賛に値する。たとえば、フェス等の彼らのステージ袖に多くのバンドマンが集結する光景はもはや定番だが、3人が放つ万感胸に迫るパフォーマンスはもとより、至高のサウンドを響かせるシステムもバンド仲間からの関心を集めている。
BARKSではTAKUMA(Vo, G)、NAOKI(B, Vo)、KOUICHI(Dr, Cho)が生み出す極上サウンドの秘訣に迫るべく、そのシステムに関するパーソナルインタビューを試みた。第一弾はTAKUMA。エクスプローラーは彼のトレードマークになった感があるが、同機種の所有本数は10数本におよび、現在のメインは愛知県に工房を構えるハイエンドギターブランドのモデルであることはあまり知られていない。加えて、TAKUMA自身は最高の音を引き出すために日夜ギターのピックアップ交換を繰り返す魔改造が楽しくてたまらないという。そのこだわりの音はぜひライブ会場で全身に浴びてほしい。
なお、10-FEETは本日9月24日、「第ゼロ感 (sequence ver.)」を配信リリースした。これはタイトル通り、「第ゼロ感」のシンセ等の同期音源であり、音源を流しながら生バンドでコピーすれば完全再現も可能となるというものだ。このリリースを記念して、インタビューの最後には全ギタリストへ向けたアドバイスも語ってもらった。

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■今、すごい数のギターを改造している
■ボディ鳴りに合わせてピックアップ交換を
──TAKUMAさんがエクスプローラーを使い始めたのは、メタリカのジェイムズ・ヘットフィールドが大好きだったから、とのことですが。
TAKUMA:はい。10-FEETが上京したとき、ギブソンのエクスプローラーとVHT Pitbullのヘッド/キャビ両方一緒に買ったんです。たしか2001年の春、渋谷のBIG BOSSで5年60回のローンを組んで。
──意外にも東京上京後に買ったんですね。音的にも満足いくものでした?
TAKUMA:めちゃくちゃ満足いってました。それまでライブでは、マーシャルのJCM900とかJCM2000を使ったり、ローランドのジャズコーラスをZOOM DRIVERで歪ませるっていう感じだったんですね。VHTはハイゲインで、当時、最強と言われていたメサブギーのレクチファイヤーとかピーヴィーの5150とかも凌ぎかねないぐらいの歪みとパワーだったので。エクスプローラーに搭載されていたピックアップもギブソン500Tというハイゲインめのやつで、VHTとの相性も良くてすごくいい音が出てたと思います。
──要するに、いかついサウンドですね。
TAKUMA:エクスプローラーは当時、メタルとかハードロック系のギタリストが持っているイメージが強くて、メロコアやパンクロックではあまり使わないだろうって時代だった。そんな中で自分がエクスプローラーを持つのは、逆におもしろいかなと思ったんです。メタリカ大好きな自分が、エクスプローラーを低くぶらさげて、パンクロックやメロコアやってるのもカッコええかもなって。

──今ではTAKUMAさんのトレードマークにもなっていますね。現在、メインで使っているエクスプローラーは?
TAKUMA:愛知県のBizen WorksというギターメーカーさんのBURNED EXP Naturalです。去年10月ぐらいから、ある楽器店に足繁く通い出して、何度も試奏して、どうしようかなと迷っていたんです。ちょうど自分の持っているギターの音をもう一度見直そうとしていた時期で、所有しているギターとは鳴りが違って、おもしろいと思ったんですね。自分のギターはそれまでにピックアップを換えて試したりもしていて。
──例えばどんな?
TAKUMA:まずセイモアダンカンのJBという、ハイパワーでミッドローの押しが強く、ギターの音が太いまま中距離まで飛んでいくような実戦向きピックアップを使ってました。それを経て、今度はギブソンのバーストバッカータイプ3という、ギブソンのピックアップにしてはハイゲインで、歪んでいる部分も芯がしっかりキープされた音で鳴ってくれるピックアップ。
──BURNED EXP NaturalにはBizen Worksのオリジナルピックアップが搭載されているそうですが?
TAKUMA:このピックアップは、過度にハイゲインでもモダンでもなく、でもヴィンテージ過ぎないというか。最近のピックアップに比べたら、ちょっとクラシックでヴィンテージ寄りで、ギターの木の鳴りを素直に出してくれるんです。でも今、使っているアンプが、コミューンでモディファイされたマーシャルJVM410Hなんですよ。これがどこまでも歪むし、どこまでもハイもローも出るという凄まじいアンプで。ギターのピックアップがハイゲインである必要がないぐらい。Bizen Worksのナチュラルなピックアップがおもしろいと思ったのは、ピックアップであまり歪んでいない分、アンプのポテンシャルも綺麗に引き出せるやろうなと思ったからです。輪郭が滲まずにハッキリ出るギターに、かなり歪むアンプ。その組み合わせが、大きい音で大きな会場でやる今の自分の音作りには、すごく向いている。直感的にそう思って、Bizen Worksを使い出したんです。
──エクスプローラーシェイプで、コリーナ材ですか?
TAKUMA:ギブソンのエクスプローラーって、ボディー&ネックにマホガニー材が多いんですけど、Bizen Worksのはコリーナ材で。マホガニーほど木の密度もそんなにギュッとなっていない印象で、軽やかなところやハイ域が綺麗に出る。決して音が細いとかじゃなく、しっかり出るんですよね。その代わり、マホガニーのエクスプローラーほどロー域は出ないけど、そこはアンプの音作りでいかようにもフォローできるので。いろんな意味でBizen Worksが今の自分にはマッチしているなと。一方で、この曲ではローがしっかり出るマホガニーで弾くべきやなとか、ライブやレコーディングで使い分けたほうがいいぞってところもあります。
──Bizen Worksはコントロールしやすい?
TAKUMA:コントロールしやすいってニュアンスもいろいろなんですけど、例えばハイゲインな歪みサウンドだったら、多少フレット部分でミスっても音が鳴ってくれる。でも、Bizen Worksはしっかり押さえないと鳴らない。ピッキングもしっかり弾かないと鳴らないんだけど、しっかり弾いたら弾いた分だけ、今までよりもすごい音が出るギターですね。丁寧なフィンガリングとピッキングが求められるけど、それがあまり苦にならない。楽しくさせてくれるいいギターです。だって、“ちゃんと鳴らしたら、すごく気持ちいい音が出るんだもの”みたいな(笑)。
──相田みつを的に言うなら(笑)。レコーディングでも使っているんですか?
TAKUMA:まだ使ってないかな。今、すごい数のギターを改造しているので、レコーディングでは使うギターをピンポイントで選んでいくことになると思います。

──「すごい数のギターを改造している」とは?
TAKUMA:全部言えないぐらいの数の改造をしてて(笑)。それぞれのギターの材質ごとの違いや重量感は、ようやく自分でも分かってきたんです。ピックアップの鳴り方は、ギターのボディ材にもよるわけで。それプラス、ボディの鳴りもピックアップの鳴りも分かってきた。前までは、ピックアップだけの情報を聞いて、“いいらしいから買ってみよう”ぐらいのやり方しかできなくて、実際に搭載してみて“良かった”とか“良くなかった”とか、もはや運試しだったところもあったんですよ。それが、自分で改造を重ねてきたおかげで、ある程度“このギターにあのピックアップは合いそうだな”とか、前より想像できるようになって。今、ライブやレコーディングのメインで使いそうなギターには、一番似合った音が出るように、改造を追い込んでみようかなって、いろいろやってます。要はボディ鳴りに合わせてピックアップを交換している感じです。
──沼にハマってますね、いい意味で。
TAKUMA:めちゃくちゃハマってます。その覚悟で入った沼なので。時間もお金もけっこう掛かるけど、これまでそういうことを僕はあまりしてこなかったので。“その辺のギターをバッと手に取って、ガンと弾いて、いい音出す”っていうのがカッコええやんと思ってたから。そうしてた時期も実際長かったし。でも“カッコいいこと言うには、自分の知識も技術もまだ全然それほどでもないな”と思いまして(笑)。興味を持っていて、改造する意味もある…そう思っているうちに、一回は沼の旅に出たいと思ってたんです。やってみて、本当に良かったし、これを20歳ぐらいのうちからやっていたら、ギターもアンプもこんなたくさん買わんで良かったんやろうなって思います(笑)。
──近年はステージでもいろんなギターをスタンバイさせていますよね? Zepp Haneda公演で使用したギターは2本でしたが、全8本のギターが用意されていました。
TAKUMA:4〜5年ぐらい前からいろいろ扱うようになったんです。所有ギターはどれも及第点を超えていて、その中でも、よりいいギターを選んでいこうっていうフェーズに入ってます。

──メイン以外のギターに関して、TAKUMAさんの中ではそれぞれどういう位置づけですか?
TAKUMA:ESP MX-2(ジェイムズ・ヘットフィールドモデル)は、今、アクティヴからパッシヴピックアップに改造しているところなんです。一度、セイモアダンカンのファットキャットというハムバッカーサイズのP-90に換えた時期もあったんですよ。というのも、そんなにギター自体の重量はないくせに、わりとしっかりしたローが出るギターなので。であれば、アクティヴの音圧もいいけど、パッシヴにして、アンプ側で調整したらいい音が出そうやなと思ったんです。ESPのギターは材や作りの精度もクオリティがめっちゃ高いと思ってるんです。なので、自分の思うマックスまで魔改造して、ポテンシャルを引き出したい。ってことで今、チャレンジしてます。
──ギブソンのエクスプローラーは76 Reissue Limited Editionと70s Explorer Antique Naturalの2本がセットされていましたが、どういう使い分けや位置づけですか?
TAKUMA:まだ改造の途中です。76 Reissue Limited Editionは持ち帰ってきて、撮影したときとは違うP-90タイプのピックアップに換えました。意外とボディが重くて、ブラウンのボディ表面は艶消し…アンフィニッシュドというんですけど、それが特有の音がするんです。表面のテカリがない分、音にもちょっとテカリがなかったりして、それがいいんですね。そのわりにボディ材の密度もしっかりしていて重いから、けっこう伸びしろがあると思っています。今は、音の輪郭がしっかり出るP-90タイプを載せていて、それでも音痩せせずにボディの質量もあってローも鳴ってくれる。でも、長い目で見て一番いいところに落ち着かせたいなと思ってます。


──アンティークナチュラルも改造中ですか?
TAKUMA:こっちも持ち帰ってきて、今、改造中です。埼玉にGRINNING DOGというピックアップを中心とした工房があるんですが、そこの岸本さんがピックアップを巻いてくれているんです。ローが多いやつ、多くないやつとか、いろいろ調整しているところですね。
──メイン以外は、カスタマイズを現在進行中ということですか?
TAKUMA:そうですね。半年以上、改造し続けています。







