| Zepp Tokyoは1Fオールスタンディングで前方から後方までびっしりの人。今回のライヴのチケットは一般発売されておらず、抽選で選ばれた幸運なファンだけが見ることができた。会場を見渡すと若い女性の姿が目立ち、リリックスが同年代の同性の支持を受けていることがよくわかる。司会者の進行で、まずはバンド紹介のスライド上映、続いてPVの上映が始まる。スクリーンにメンバーの姿が映し出されるとそれだけで会場全体から大歓声が上がる。ついにメンバーが登場すると、もう割れんばかりの大歓声。ただでさえすし詰めだったオーディエンスさらにステージ方向に圧縮される。そんな様子を見て、レイシーは誰に教わったのか「マジヤバーイ」のMC。今度は笑いで会場がどっと沸く。 (C)Christi Thompson そしていよいよライヴの開始。リリックスのライヴは、女の子4人組というメンバー構成、そして彼らのキュートなルックスから想像されるようなヤワなものではなかった。ターシャ、レイシーの2人は父親の影響で'70年代ロックに傾倒していたそうで、好きなバンドにレッド・ツェッペリンが上がるほど。ハード・ロックと呼んだらさすがに言い過ぎだろうが、ターシャのラウドでディープなギター・サウンド、キムとルイーズによる太い低音グルーヴが織り成すアンサンブルはかなり“ロック”している。それに、ときにイントロやソロで美メロを奏で絶妙のアクセントをつけるレイシーのキーボードが加わりサウンドのバラエティ感を演出する。アルバムは全体的に澄んだ高音のギター・サウンド、低音を強調し過ぎないアレンジでさらっと聴きやすくまとまっていたが、ライヴはまた別アレンジというわけ。 (C)Christi Thompson また、感じたのはヴォーカルが3人いる強みだ。そう、リリックスはドラムのキム以外全員メイン・ヴォーカルを取れるのだ。さすがに3人同時に歌う場面はあまりなかったが、たとえばAメロ、Bメロとヴォーカルをルイーズとレイシーがやり取りするといったシーンがある。CDで聴くとつい聴き流してしまうが、ライヴで聴いてみると曲の中でその時々のサウンド、メロディに合わせて声質やキーの高低が移り変わることでヴォーカルに厚みが出るだけでなく、メンバーが交互に歌うという視覚効果も手伝い、ライヴ自体の演出として非常に楽しいものだった。さらにコーラスも最大3人で行なえるわけだから、迫力あるものになる。ライヴ自体は「24/7」でオープニングを飾ると、2曲目のシングル曲「It's About Time」で大盛り上がり。最後はルイーズのメイン・ヴォーカルで「Quicksand」を美声で歌い上げた。 (C)Yuki Kuroyanagi ライヴを見る前には、素晴らしい仕上がりのアルバムを、生で再現できるのか不安に思わないでもなかった。しかし、CDの音をライヴで再現する必要などなかったのだ。有名プロデューサーを招き、緻密に美しく作りこんだアルバムと比べるとライヴはバンドの若さがダイレクトに反映された、荒削りな、しかし非常にパワフルなものだった。だが本当のリリックスの姿はここにあるのかもしれない。さらに感心させられるのはそこまでのプレイをしていながら、リリックスはそれでもキュートだったこと。激しいライヴのあまり女の子らしさを失うようなことはなく、いい意味でアイドルっぽさを保っているのである。才色兼備というのか、このキュートな魅力と確かな実力こそが人気の秘密なのだろう。 取材・文●末吉靖永 インタヴュー編好評掲載中!! | |