2003/10/21 @横浜アリーナ 1. PROJEKT REVOLUTION INTRO 2. DON'T STAY 3. SOMEWHERE I BELONG 4. LYING FROM YOU 5. PAPERCUT 6. POINTS 7. RUNAWAY 8. FAINT 9. FROM THE INSIDE 10. FIGURE 9.0 11. WITH YOU 12. BY MYSELF 13. PUSHING REMIX 14. NUMB 15. CRAWLING 16. IN THE END 17. A PLACE FOR MY HEAD 18. ONE STEP CLOSER | 『LIVE IN TEXAS』 ワーナーミュージック・ジャパン WPZR-30036 3,400(tax out) メタリカが主宰し、リンキン・パーク、リンプ・ビズキットらが出演した、米国最大級のヘヴィロックの祭典<サマー・サニタリウム・ツアー>。その模様が、リンキン・パーク初のライヴ・アルバムCDとして、さらにDVD映像も収録したCD/DVDの2枚組でリリースされる。2003年8/2、テキサス州ヒューストンにあるリリアント・スタジアム、8/3ダラス郊外にあるテキサス・スタジアムという2ヶ所で、16台のカメラで撮影迫力の映像で、<サマー・サニタリウム・ツアー>の模様を収録している。 ●DISC 1(CD) 01. SOMEWHERE I BELONG 02. LYING FROM YOU 03. PAPERCUT 04. POINTS OF AUTHORITY 05. RUNAWAY 06. FAINT 07. FROM THE INSIDE 08. P5HING ME A*AY 09. NUMB 10. CRAWLING 11. IN THE END 12. ONE STEP CLOSER ●DISC 2(DVD) DON'T STAY SOMEWHERE I BELONG LYING FROM YOU PAPERCUT POINTS OF AUTHORITY RUNAWAY FAINT FROM THE INSIDE FIGHRE.09 WITH YOU BY MYSELF P5HNG ME A*WY NUMB CRAWLING IN THE END A PLACE FOR MY HEAD ONE STEP CLOSER 『Meteora』 ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-11440 2,400(tax out) 01. FOREWARD(INTRO) 02. DON'T STAY 03. SOMEWHERE I BELONG 04. LYING FROM YOU 05. HIT THE FLOOR 06. EASIER TO RUN 07. FAINT 08. FIGURE.09 09. BREAKING THE HABI 10. FROM THE INSIDE 11. NOBODY'S LISTENING 12. SESSION 13. NUMB | | 今年の春に発表された2ndアルバム『メテオラ』が世界15ヶ国でNo.1に輝き、日本でもオリコントップ5を記録するなど、もはや世界のロック・シーンを代表する顔となったリンキン・パーク。彼らの登場は、これまで過激で暴力的なイメージを持たれがちだったラップ・メタルを、誰もが歌える真摯な“うた”というクリーンなイメージに変えたことだった。そしてそんな彼らの歌は、アメリカ同時多発テロ以降の時代を表わすある種のアンセムとしてさえも機能するようになった。もはや今のリンキンには、かつてよく指摘されたような“リンプ・KORNフォロワー”的なイメージはほとんどないと言ってよい。そしてそのことは、この日の横浜アリーナに詰め掛けた観客の姿を見ても明らかだった。 photo by YUKI KUROYANAGI 2年前の春の初来日の際には、Tシャツ、短パン、白タオルの、いかにも「これから暴れてやるぜ」と意気込んだ風のスポーティな男のキッズが多かったのだが、2年経ってようやくリンキンがどんなバンドなのか理解されたのか、この日はそのテのキッズが予想以上に少なく、むしろ女のコやフツーのコンサートにどこでもいそうなおとなしそうな男のコの方が目立っていたほど。おそらくこの事実には、わざわざ椅子席のアリーナをオール・スタンディング用に開放した主催者側も肩透かしを食らったような気分になったのではないだろうか。 そして、そのことはライヴがはじまっても同様であった。アルバム『メテオラ』のはじまりと同じく、イントロ~「Don’t Stay」でスタートしたこのライヴだが、客席の側はいわゆるポップ・パンクやニュー・メタルのライヴで起こりがちな、モッシュやダイブの嵐にはなかなかならない。この日、僕はかなり前方の方で見ていたのだが、このテのライヴを見る際にいつも感じる身の危険が全く感じられない。いや、それどころか、ここに集まっている観客たちは、暴れることよりも、合唱することの方をエンジョイしたがっているかのようにさえ見えた。ヴォーカリストのチェスターから放たれる憂いに満ちた歌メロと、眉間とこめかみに皺を寄せ汗をかきながらの熱すぎる熱唱。これに合わせて拳をあげながら一斉に歌うこと。この日のライヴの肝はここにこそ置かれているような気がした。その光景は、'80sの頃のヘヴィ・メタルのそれにさえよく似ている。 photo by YUKI KUROYANAGI そんなライヴのカラーに合わせてか、バンド側のステージでのルックスも以前に比べさらに柔和になって来た。ラッパーのシノダやDJのハーンは以前からかなりソフトなイメージだったが、以前は多少はいかつかった他のメンバーもすっかり小ギレイになり、かなり親しみやすい感じになっている。彼らは自分たちの進むべきイメージをもうすっかり把握できているようである。 ストリートのバッドボーイだけに向けたのではない、普遍的なポップ・イメージ。リンキンはやはりそれこそが武器なのだが、サウンド・クリエイターとしても彼らはやはり非凡。ツアーを経て演奏技量自体が飛躍的に向上していることもたしかだが、とりわけ耳を惹くのがDJハーンのプレイ。『メテオラ』同様、彼はエレクトロニカの要素の強いトラックを繰り出していたが、この音像こそ、サウンドの軽量化が進む'00年代にとってはとても有効なもの。彼らは90年代後半に完成されてしまった、重苦しくなりがちなラップ・メタルという様式を次世代にどうシフトさせて良いか心得ているようだ。楽曲的にサウンド的に、ここまで完成度の高いことをやられると、リンプやKORNといった旧世代の代表も正直なところさすがにキツいだろう。 そしてライヴは大ヒット曲の「Crawling」「In The End」、そして「One Step Closer」などの大合唱で、終始ホットなまま幕を閉じた。一般的にバッドボーイ・イメージの強い音楽において、一体何がサヴァイヴして行くのか。その答を僕はここに見たような気がした。そしてそれと同じことは、ボン・ジョヴィやリップ・スライムにも当てはまることなのかもしれない……などと思ったりもした。 取材・文●沢田太陽 | |