北米における初めてのヘッドライナー・ツアーの最終夜、Starsailorは誇大宣伝に見合うだけのバンドとして自信に満ちた演奏を披露した。NME誌によって“英国最高の新人バンド”と前宣伝されていたワリントン出身の4人組は、ロサンゼルスのEl Rey Theaterを満員にした聴衆からはそのとおりに熱烈な歓迎を受けたのである。
Starsailorはデビューアルバム『love is here』からの曲にスポットライトを当てていたが、彼らの空を舞うようなメロディはライヴでより迫力を増していた。前髪を目のところまで垂らした21歳のフロントマンJames Walshは、「Poor Misguided Fool」の情熱的なヴァージョンで幕を開け、続けて沈欝でダークな「Alcoholic」を繰り出す。WalshによるNeil Young風味のギターと魅惑的なヴォーカルは、残りのセットを通じて生々しい感情とともに輝きを放ち、バンドも彼の後ろでソリッドなバッキングを聞かせ、彼らは曲を追うごとに調子を上げていく。
Walshをサポートするメンバーの才能はもちろんのことだが、やはり、この夜の最も幻惑的な瞬間は、彼がひとりでアコースティックギターを持って立ち、Goffin/Kingのペンになる名曲「Goin' Back」と彼自身の「Coming Down」を美しいくらい無駄のない解釈で聞かせたときだった。ショウマンシップなど顧みないWalshではあったが、こうした甘く悲しい歌で静かに観客を虜にしたのである。
もはや英国の秘密兵器ではなくなったStarsailorのL.A.のショウには、音楽業界人(筆者はCapitol RecordsのAndrew Slater社長が楽屋口に向かうのを目撃した)タイプの人々や取り憑かれたようなファンも詰めかけていたが、後者の面々の多くは歌詞を口ずさんだりリクエストを叫んだりしていた。最後のアンコール(「Tie Up My Hands」)の頃には聴衆の熱狂は耐えられないくらいの極限にまで達し、最前列の少女たちは少年ぽい微笑みを浮かべるWalshに対して失神しそうなくらいにうっとりとしていた。こうした興ざめする事態も多々ありはしたものの、Walshの情感溢れるヴォーカルの圧倒的な説得力にまったく感動することなく会場を後にする者は、男女を問わずほとんどいなかった。
今回のようなショウを続けていけば、スターダムは遠くないだろう。だから、Starsailorがすぐにスタジアム級ツアーをスタートさせたとしても驚くには値しない。愛はまさにここにある。イギリス人であれアメリカ人であれ、今や我々はみなStarsailorの世界に生きている。
By John Ballon/LAUNCH.com