『毒性/Toxicity』 Sony Music International SRCS-2487 2001年08月29日発売 2,520(tax in) 1 Prison 2 Needles 3 Deer Dance 4 Jet Pilot 5 X 6 Chop Suey 7 Bounce 8 Johnny 9 Forest 10 ATWA 11 Science 12 Shimmy 13 Toxicity 14 Psycho 15 Aerials | オフィシャルサイトはこちら | Sacramento Valley Amphitheatreの楽屋付近の中庭を、System Of A Down(以下、SODA)の面々がウロついている。待ち構える観客に声高な猛攻をかけるまで、あと20分。バンドは準備万端だ。それはファンも同じことで、モッシュピットに備えて早くも準備運動を始めている。SOADが新譜から、シリアスな“Science”や酔狂な“Bounce”、そして痛烈な“Needles”を放つ頃には、客席は興奮のるつぼと化し、締め括りに'98年のデビュー作から“Sugar”が繰り出されてもまだ、かろうじて満足したという程度。とはいえSystemには、ロサンゼルスへ向かう飛行機が待っているのだ。また戻ってくるさ。 これに先立つ1週間前、ロサンゼルスはビバリーヒルズのとあるレストランで、シンガーのSerj Tankianは『毒性/Toxicity』収録の15曲をながめていた。お気に入りの1曲を選び出そうと苦心しているのだ。「どれも大嫌いなんだ」と笑いながら認める彼。バンドは30曲以上を書いてレコーディングした中から、今作の収録曲を絞り出したのだそうだ。ということは、こぼれた15曲のほうが良かったのだろうか。Tankianは笑ってこう言った。 「次のアルバムを楽しみにしててくれよ……ってのが毎回、本音だよな。次のアルバムに期待してくれってさ。どの曲も好きだよ。1曲選ぶなんて無理だ。どれもタイプの違う曲だから、“Bounce”と“Aerials”なんて比べようがないじゃん。かたやとことんシリアスな曲で、かたやとことん笑える曲。かたやめちゃくちゃ弾けてて、かたやめちゃくちゃスムースだ。それぞれいいところがあるんだよ」 テーブルの向こうから、ベーシストのShavo Odadjianが口を挟む。 「俺は“Shimmy”が好きだな、“Needles”も好きだけど」。ここで一息入れて、彼はアルバムに思いを馳せる。「1曲なんて選べないから、今ここでいいと思うのを挙げとくよ。その時によって、何度も繰り返し聴きたい曲が変わってくんだ。“Chop Suey”の時もあったし、“ATWA”だった時もある。今は何だか壁でもブチ壊したい気分なんで、“Science”とか“Needles”“X”“Bounce”なんかがピッタリくるな」 ドラマーのJohn Dolmayanとは、その前日に電話で話したが、彼も1曲を選ぶことができなかった。 「決めらんないよ。そんなの、どの子が一番好きかって訊かれるようなもんだろ? マジで俺、どの曲も気に入ってんだ。曲単位じゃなくて、アルバム全体として楽しんでる。どの曲も、“あ、これいいな”って感じで、ホント、すごいよ。遠慮なしに言わせてもらうけど、このアルバム、半端じゃないぜ」 『Toxicity』はSOADを、スラッシュありハードコアありメタルありのバンドから、より完成されたロックを提示する集合体へと進化させた。その変化の一端を担うのが、各メンバーによる楽曲への貢献であり、ツアーに費やした2年間であり、初めて培われた体験である。 「レコーディングのやり方はわかってたんだ」とOdadjian。「でも今回は、さらに厚みを出すために、もっとがんばらなきゃいけないと思った。結果、このアルバムは前より立体的な音になった。ベーシックで平ったい音じゃなくて、そこら中から聞こえてくる感じだろ」 音楽にとどまらず、SODAは観客を楽しませつつ情報を提供している、とちょっとした評判だ。今作の“Prison”がその一例であり、「Souls ― A Benefit For Recognition Of The Armenian Genocide To Stop Crimes Against Humanity」への出演もまたしかり。いずれもSOADのリスナーをより多くの物事に触れさせようという試みの一環である。 「切り口の違うニュースみたいなもんさ」とOdadjian。「この国のマスコミは自分の国で起こったことを中心に動いていて、世界の動向や海外の反応は重視されていない。アメリカの諸外国に対する反応と、人々のアメリカに対する反応に終始してしまっている。Serjはインドネシアの東ティモールについても語るし、こっちのマスコミが取り挙げないことを色々と話題にしてる。これってかなり、鋭い音楽だと思うよ。俺がもしメンバーじゃなかったら、きっとこのバンドのファンになってるね。どれくらい入れ込むかは別として、とりあえずファンにはなると思う」 Tankianは胸を張り、笑顔でこう言った。 「“キッズのお気に入り”っていう言い方、俺は大好きなんだ。ちょうど今、Colombia(バンドの所属レーベル)の連中がブツブツ言ってる台詞さ。“キッズはこういうのが好きなんだよ。我々にはさっぱりわからんが、キッズのお気に入りなんだ”って」 そうだとも! By David John Farinella | |