「水と魚のあるところならどこでも釣りをやるんだ」。K-Ci Haleyは、ざらついた声で北カリフォルニアなまりの調子を上げて話した。「ホワイティング、トラウト、フラウンダー、バス。何でも1日中釣り上げてるよ。なまずを捕まえるのはいやだけどね。噛みついてくるしさ」 兄弟デュオ、K-Ci & JoJoの片割れで、まもなく再結成される予定の4人組Jodeciのひとり、Haleyは最近ではすっかり見かけなくなった昔ながらの地道なソウルシンガーである。彼のストーリーはまるで古典的な物語だ。説教壇からペントハウスへ、つまり厳格なゴスペル教育がR&B界での成功へと彼を導いたのである。現在の彼はハリウッドでいい生活を送っているが、心の中は今も昔と変わらないカントリーボーイで、Al Greenの曲をハミングしながら自分のラインを作り出すのが至上の喜びであることを知ってほしいという。 K-Ciはまた、オールドスクールのソウルシャウターに適した経歴を持っているようだ。Mary J. Bligeとの激しい恋愛やパーティ好きの大酒飲みという一面は、キャリアを傷つけることこそなかったものの、この数年間にわたってホテル支配人、ビジネス関係者、グルーピーからの信頼を危うくしたのみならず、言うまでもなく自身の肝臓にもダメージを与えた。 「なあ、俺も大人になったもんだぜ」とK-Ciは請けあった。「いろんなことをやったし、いろんなことも見てきたよ。ときには間違いも犯したけどね。この業界に入ったのは19歳と若くて、馬鹿なことやパーティもたくさんやったさ。ビジネスの面でもひどい会計士を雇っていたよ。でも、まだ俺はここにいて、こうして話をしているんだよ」 そのとおり。兄弟、JoJoとの3枚目のアルバム『X』も出たばかりだ。Babyface、Teddy Riley、Timberlandといった超大物ソングライター/プロデューサーをずらりとフィーチャーし、女王Aretha Franklinや殺害されたラッパーの2pac(最新の録音技術によって復活した)とのデュエットを収録した『X』には、まだまだ語るべきストーリーが秘められているようだ。 「俺たち兄弟が業界に入ってからの10年間で6枚目のアルバムになる」とK-Ci。「だから、こうした大物連中とスタジオに入るのだって、友達を大勢集めるようなものだよ。俺のお気に入りの1曲はTeddy Rileyの作った“Wanna Do Right”だ。ユニークなのは、まるでGuyとJodeciをミックスしたようなサウンドになったことだね。Guyは俺たちが最初に契約を結んだころに大きな影響を与えてくれた」 言うまでもなく、K-Ciのもうひとつのお気に入りは、オールドスクールR&Bの「Can't Find The Words」だ。これは彼に由緒正しいオールドスクール派ソウルの聖火を引き渡したと思われる、彼にとっての永遠のヒーロー2人を思いださせる。「たしかにBobby Womackと今は亡きJohnnie Taylorのミクスチャーだよ」と彼は熱く語る。「あれはおふくろの好きな曲でもあるんだ。R&Bなんか聞かないゴスペル一筋の人なのにね」 K-Ciが激動の音楽業界で生き抜くための水先案内人を務めたのが、往年の質実剛健なソウルシンガーだったということが判明しても驚くには値しないだろう。「(O'Jaysの)Eddie Levertは、会えばいつでも何かアドヴァイスをくれる。Bobby WomackのことはUncle Bobbyと呼ぶくらいのクールな仲で、連絡を取り続けているよ。ある夜セッションに来てくれて、スタジオで友人たちのために“If You Think You're Lonely Now”を一緒に演奏したんだ(この曲は'81年の『The Poet』に収録されたWomackの作品で、Haileyは'94年の『Jason's Lyrie』のサウンドトラックでカヴァーしている)。彼は“顔をまっすぐ前に向けて、ありのままの自分を表現するんだ”と言ってくれたよ」 だが、ひとつの方向をまっすぐに見続けるのは、時としてHaileyにとっては大きな問題である。多くのアーティストと同様に彼の精神も浮薄なもので、極端から極端へと移ろいやすい傾向があるからだ。一方で彼は「俺は仕事が好きだ。金のためにやっているわけじゃない。もちろん一般の人と同じように支払わなくちゃいけない経費はあるけどね。本当にただ歌うのが好きなのさ」と誇らしげに宣言する。しかし次の瞬間には「イライラしている時なんてとくに、俺はひどい怠け者になるんだ。俺は心配性で、いつもマネージャーに相談しているから、ずいぶん悩ませてると思うよ。リラックスして心配しないようにしょっちゅう言われているのさ」 むこう12か月の間は、Haileyも自分の労働倫理を全開にしなければならないだろう。兄弟で『X』をプロモートするのはもちろんのこと、すでに大宣伝されているJodeciの再結成アルバムの制作のためにスタジオにまっすぐ戻らなくてはならないからだ。 「待ち切れないよ!」と彼は叫ぶ。「毎日のように4人全員がお互いに話し合っているんだ。Devanteはすでに4、50曲のプリプロダクションを済ませている。'01年にはJodeciが戻ってくるんだ。待ってろよ! 俺たちは別に離れていたわけじゃなくて、ブレイクをとっていたのさ。ロバだって水飲み休憩をするだろ? これまで以上にファンキーな作品になる予定だ。俺たちは昔通りにJodeciに留まっていくつもりさ。K-Ci & JoJoはひとつの役割で、Jodeciがもうひとつの役割だよ。俺はそうした異なる役割を簡単にこなせる歌い手なんだ。どっちも自分に違いはないんだからね」 “役割”という話では、もしK-Ciに銀幕へのクロスオーヴァーを果たすチャンスがあったとすれば、理想の役は彼の音楽と同様に古典的オールドスクールに属するものとなるだろう。 「俺こそ本物のShaft(訳注:最近映画化された米TVドラマの主人公。ちなみにドラマの邦題は『黒いジャガー』)だぜ!」彼は笑って言った。「Samuel Jacksonなんかよりうまくやれたはずさ。アイツが聞いたら俺のケツを蹴飛ばしに来るだろうけどね。あの映画は好きだけど、Shaftは俺様の役だ!」 わかったかい? |