調和のための闘い
Bone Thugs-N-Harmonyのメンバー全員を1ヶ所に集めることは、至難の技だと常々言われていた。 しかし、今年は特に困難を極めている。主要な雑誌の記事やBETのインタヴューをはじめ、あの名高い『Soul Train』のステージでさえ、登場したのはKrayzie、Layzie、Wishの3人のみ。メンバーの中で最も人気の高いBizzyはいまだに活動休止状態、Fleshも刑務所暮らしが続いている。そして先週は、WishもClevelandで法廷に立たなければならなかった。 そんなわけで、例によってKrayzieとLayzieが、グループの地位を守るべくインタヴューに答えてくれた。 Layzie Boneはこの最悪の事態についてこう語る。 「Fleshのことが噂になってるのもな。ああ、その通りさ。兄貴は今ムショ暮しだ。だけど、奴だっていろいろあるんだよ。俺らみんな人間ってことさ。キリストだってブチ込まれたことあるじゃねえか。だから、Fleshのこともとやかく言わないで欲しいね」 Layzieはこう断言する。 「奴もほんの少し混乱しているだけなんだ。っていうか、俺たちみんな、ちょっと道を踏み外してたのさ。メンバー全員がちゃんと仕事をさばききれなかったんだ。俺は俺でバカやってたし、Bizzyもバカやってた。Krayzieはソロアルバムやってたしな。こうやってまた集まるのはすげえ大変だったけど、でも俺らはやったよ」 彼とLayzieとは中学1年以来の大親友だ。そのLayzieとFleshは実の兄弟であり、Wishは彼らの従弟。4人とBizzyは高校時代に出会っている。 「そんな喧嘩、単なる運動みたいなもんさ」Krayzieは続けて言う。 「俺たちを分裂させるものなんか、何もありゃしないんだよ」 この言葉を信じられずにいる人もいるだろうが、実際、彼らは今年中に次のアルバムをリリースする予定なのである。 「X-Tasy」という絶妙なタイトルが付けられたその曲は、その時のメンバーそれぞれの反応を赤裸々に告白したものとなっている。そのハードコアな姿勢と、以前からマリファナ常習癖があるという事実も手伝って、この禁じられた物質は彼らの新たなドラッグ選択肢の1つとなった。 「俺は試した/何度もやった/こいつで1人のニガーがハイになれる、アソコもすげえ良くなるって思ったんだ/確かに俺はハイになった、だがハイになりすぎちまった/誰かを痛めつけてえ/意識が無くなるまでボコボコに/こいつをやって/ハイになって/だけど俺はトリップ状態/誰も微動だにしねえ/結局、誰も傷付かねえままだ」 「もしわざわざ捕まるようなことをする奴がいるとしたら、それはそいつがバカだってことさ」 では、彼がそのドラッグに手を付けたのは何故なのか? 「同業者たちからのプレッシャーだよ、マジで」 Layzieが明かす。 「だけど、俺たちはもうこんなものに左右されたりなんかしない。あのゲームの中で、少しは成長したのさ。俺たちは勝った。もし何かのドラッグに溺れてる奴がいるなら、自分を強く持ってそこから抜け出さなきゃダメだ」 Easy-Eは「Dope Man」という楽曲でドラッグについて歌い、またN.W.A.時代のIce Cubeも「Gangsta Gangsta」という曲で、彼のクルーとセックスしてくれる女性を探しながら、酔っ払い運転で街を徘徊するさまをラップにしている。 BoneとRuthless Recordsの契約をまとめたEasyは、その後、大ブレイク直前の彼らに腹を割った話をしている。 「Easyは俺に言った」とLaysieが切り出す。 「正確に言うと、俺たちはキッチンテーブルを前に腰掛けてた。あの黒人と俺は知り合ってたった3週間。そいつが、俺たちと顔を突き合わせてこう言ったんだ。『いいか、お前ら。もしN.W.A.が解散してなかったら、お前らなんか鼻も引っ掛けてもらえなかったんだぞ。分かったか、世間知らず』ってな」。 5人の血気盛んな若者たちも、さすがにこの時は一言も返せなかったそうである。こうしてEasyに多大な衝撃を与えられた彼らは、オリジナルメンバーの Dr. Dre 、Ice Cube、MC Rentと新メンバーのSnoopによる新生 N.W.A.の曲「Chin Check」「Hell Low」にはあまり関心がないという。 「Easy-Eの声が聴けないんじゃな。あの少しきしんだ感じの、大人の男のラップが聴けないんじゃ、しょうがねえよ」とKrayzieが漏らす。 「それだけEasy-Eの影響が深いってことさ」とLayzieが相槌を打つ。 「個人的には別に誰にどんな感情を抱いてるってわけじゃない。むしろSnoop Doggは大好きだ。奴は俺と同じ天秤座だしな。つまり、バランス感覚が俺と似てるのさ。だけど、もし俺だったら、誰かにEasyの代わりをやらせるなんてことはしないね。DreとCube、Renだけで再結成させる」 その言葉が象徴するように、Boneもまた、まだラップの人気が低かった時代、街角で歌っていた頃から進化してきた、彼らのオリジナルスタイルを崩すつもりは全くないらしい。 『BTNHResurrecction』には、Ruthlessレーベルでの初のシングル「Thuggish Ruggish Bone」を大成功へと導いた、あの気楽でメロディックなヴァイブが満載されている。このアルバムでもロレックスの時計や高価な酒の名前などは聴かれないし、ビートも決して激しくはない。 シングルリリースが予定されている「Change The World」はBoneの「If I Could Teach The World」を思い出させる。また、「Resurrection」でフィーチャーされているメロディックな呟きは、かつて大ヒットした「1st Of Tha Month」と同様のものだ。彼らのスタイルは全く壊されてはいない。だから、修理の必要もないのである。 Krayzieはこう説明する。 「これが俺たちで、この音楽が俺たちの表現方法なんだ。それはこれからも変わりゃしない。俺たちは“調和のとれた悪党”(thugs in harmony)としてこの世界に入って来た。出て行く時だって、“調和のとれた悪党”のままだ。それが、俺たちそのものだからさ」 by Billy Johnson, Jr. |