アメリカンロックとイングリッシュポップの融合

ポスト

Brian Vander Ark、大いに語る

ポストグランジで、もっとロックしていて、
まさにアメリカンロックと
イングリッシュポップの融合さ


ミシガン州出身のVerve Pipeは、'96年に『Villains』をリリースし、熱くメロディアスなロックに対するポストグランジの情熱を表現した。
伝説の'70年代ロッカーKissのサポートをはじめ、大規模なツアーを経た後、彼らはついに『The Verve Pipe』と題された新作をリリース。Michael Beinhorn(SoundgardenMarilyn MansonHole )のプロデュースによるニューアルバムは、より緻密で、より大胆なVerve Pipeを映し出している。

フロントマンのBrian Vander Arkが、このほどLAUNCHのエグゼクティヴエディターDave DiMartinoのインタヴューに応え、ニューアルバムや、XTCのAndy Partridgeとの共作、俳優としての新しいキャリア、そしてGene Simmonsからのアドバイスなどについて語った。


LAUNCH:
『Villains』が大成功したおかげで、ニューアルバムへの期待が大きかったと思いますか?

BRIAN:
この作品に対する期待はすごく大きかったとも言えるし、そうでもなかったとも言える。俺たちが大傑作を完成させて、独自のサウンドを確立することなど誰も期待していないと思うよ。今の音楽市場はすごくシニカルだからね。'70年代みたいにはバンドをサポートしてくれない。あの頃は一時期に登場するバンドは20くらいしかなかったけど、今は何千ものバンドがいるだろ。反応は冷ややかにもなる。でもこの作品は期待どおりのはずだ。

LAUNCH:
あなたにとって、このニューアルバムは前作とどう違いますか?

BRIAN:
俺たち側から見れば、違っていると思う。レコード会社の思惑には関係なく、俺たちのやりたいこと、達成したいことを優先したからね。自分たちで話し合って、バンドとして何をやりたいかを決めたんだ。俺たちは年をくってる。今のまま続けるか、それとも自分たちでなく大衆の好みに迎合する音楽をやり始めるか? 迎合はしない。だから納得のいく音作りにたくさん時間をかけた。サウンドは似ていると思うよ。ソングライターもシンガーも同じだからね。4声のハーモニーが増えて、歌詞は前ほど悲惨ではなく、少しは楽しげなものになった。ラヴソングも書いているよ。新作にはラヴソングも何曲か入ってるんだ。初めての試みさ。

LAUNCH:
新作には特に際立った重要なテーマがありますか?

BRIAN:
1曲目の「Supergig」からラストの「La La」まで、テーマはバンド自身。だからアルバムを『The Verve Pipe』と名付けたんだ。ジャケットは解剖されたカエル。バンドの中身に迫っていくのさ。どの曲も何らかの形でこのバンドについて歌っている。ツアー中の生活とか、俺たちならではのおかしな振る舞いとかね。まさに俺たちと一体化しているアルバムなんだ。

LAUNCH:
成功してからあなたのプライベートな生活はどんなふうに変わりましたか?

BRIAN:
やっとベッドを買った。今までは寝袋に寝てたんだ。ベッドを買ったことが、俺のプライベートでの大きな変化だ。なんと自分でデザインしたんだよ。床から3フィートの高さにしてほしいって頼んだんだ。でも床から3フィートに枠が出来て、スプリングを入れて、それからマットレスなんかを置いたら、かなりの高さになっちまった! 俺は身長195cmだけど、ベッドは俺の胸の高さまで来る。万里の長城に登るようなもんさ。でもいったん上に上がると、俺は部屋の王様だ。変わったのはそれだけだな

LAUNCH:
しばらく売れなくて、突然成功しましたよね。それはあなたが予想していたような成功ですか?

BRIAN:
俺が予想していたものとは、何かもかも大違いさ! 5、6年前を思い起こすと、何もわかっていなかったってことだ。この業界のことも、ロックンロールバンドにいることがどういうことか、そしてそれが何をもたらすのかも、何も知らなかった。俺は、すごい曲を書けばラジオでかかるもんだと、ずっと思っていた。間違いだったよ。全くの間違い。そういうことじゃないんだ。ラジオで曲がかかるのには、政治的なことがたくさん絡んでるからね。俺たちは俺たちの音楽をどうしてもみんなに聴いてもらいたい。でも俺が予想していた世界とは全く違うんだ。もちろん、ライヴだけは思っていたとおりだけど、それ以外は全く不可解な世界さ。

LAUNCH:
レコード業界は好きですか?

BRIAN:
レコード業界にはいい人たちもいると思う。俺はレーベルにごまをするつもりはないよ。問題をかかえてるからね。でも、レコード業界にはやらなければならないことがあって、それは金をもうけることだというのはわかっている。理解しているよ。アーティストとしては、興味のないことだけどね。俺が興味を抱くのは、10年のうちに腰を落ち着けて、自分の音楽に誇りを持っていること。あるいは、道を歩いていて、俺を見た誰かが息を呑むこと。誰かの生活や趣味にインパクトを与える、それがちょっとした宝物なのさ。レコード会社に関しては、好きか嫌いかといえば、好きにならなければならない。うまくやっていかなければいけないし。強制的な関係なんだよ。俺はレーベルがやらなければならないことはわかっているし、レーベルも俺たちを理解してくれているとは思う。

LAUNCH:
前作のプロモーションのために、長い間ツアーしましたよね。特に印象や記憶に残るコンサートはありますか?

BRIAN:
特別変わったことは何も思いつかないな。バンドに入って、ツアーで350回とか400回プレイしていれば……Bob Segerが『Turn The Page』で歌ってるとおりさ。Bon Joviの例のカウボーイソングも同じ。つまり“どの街も同じに見える”。

LAUNCH:
Kissとツアーをしていた時期がありましたよね。ユニークな大先輩たちから何かアドバイスや知恵を授かったのでは? 特に何か思い出せることはありますか?

BRIAN:
Geneは俺たちの楽屋に来ては、あれこれ言ってくれた。俺たちが言い争っているのを聞きつけると、彼はやって来て言うんだ。「それでいい。それが、お前らがやらなきゃいけないことなんだ」って。一度彼が楽屋に入ってきた時、俺たちはホームタウンのライヴで古い曲をやるかやらないかを議論していたんだ。Geneは俺たちの議論を聞いて入ってきた。フルメークアップでね。ステージに上がる直前だったんだ。彼は身長2m以上あるから、背をかがめて中に入ってきて、こう言った。「ファンのために古い曲をやらなきゃだめだ。俺があのくそディスコ曲の「I Was Made For Loving You」をやりたいと思うか? 俺たちはファンのためにやってるんだ」。彼は10分ほどレクチャーをしてくれた。俺たちはアドバイスのお礼を言い、彼は部屋を出ようとした。ところが、かがむのを忘れて、頭をしたたかにぶつけてしまったんだ。
 可哀想に! 彼は上を見て「痕が残るぜ!」って言ってたけど、その通りだったよ。メークに線が見えていた。幸い大したことはなかったけどね。俺はGeneを笑い者にするつもりはないよ。GeneとPaul(Stanley)が俺たちをツアーに出してくれたんだから。それは俺たちにとって大きな大きな出来事だった。初めてのビッグな出来事だったんだ。それに俺たちは彼らのファンだったから感激したよ。


LAUNCH:
ニューアルバムについて、プロデューサーの話を聞かせてください。何故Michael Beinhornを選んだのですか?

BRIAN:
実は『Villains』もMichael Beinhornにやってもらいたかったんだ。Soundgardenの『Superunknown』が強力だったからね。あのアルバムは今でもすごく気に入っているんだ。レコード会社はMichaelについて恐ろしい話をたくさん聞いたと言ってきた。バンドのレコードじゃなくなるってね。俺は、サウンド的にはどれも素晴らしい作品だと思う。信じられないようなサウンドだ。彼はヴォーカリストにとてつもなく厳しいと聞いた。でもOzzyは彼とまた一緒にやる。Jerry Harrisonの名前も挙がったよ。俺の第一候補ではなかったけど、妥当な線ではあったんだ。ただ、俺の頭の中にはMichaelがいつもあり、彼はMansonやHoleのレコードもプロデュースした。Osbourneがそう教えてくれたんだ。Michaelは常軌を逸していて、エゴを捨てないと誰もスタジオには入れない。それも当然で、なぜならMichaelは誰よりも頭がいいからだ。彼は好戦的で、銃を携帯していて、葉巻を噛んでいる。そして彼は圧倒的にすごい。才能があるからこそエキセントリックなんだ。このアルバムを作るのに彼ほど相応しいプロデューサーはいなかった。俺たちをステップアップさせてくれるからだ。俺たちは何とか彼を感心させようとする。彼に「今日はよくやった」と言ってもらいたいんだ。そんな経験は久しぶりだった。普通なら俺は気にしないから。でも、すべての曲を彼が納得するまで100回でも歌った。今聴いてみると、俺たちの今までのどんなパフォーマンスに比べても、ヴォーカルパフォーマンスに大きな違いがあるのがわかる。今までのどんなパフォーマンスとも違うんだ。

LAUNCH:
前作のサポートでヨーロッパをツアーしましたね。あちらでの反応はどうでしたか?

BRIAN:
てんでバラバラだった。イギリスはとてもシニカルだと思っていたけど、受け入れてくれた。俺が読んだいくつかのレヴューは『Villains』に好意的だったよ。スペインでは、みんなとても気に入ってくれた。フランスでは本当に驚いた。フランス人が俺たちを気に入るとは思ってもいなかったのに、気に入ってくれたんだ。彼らも俺たちを受け入れてくれたのさ。場所によりけりだね。ライヴの反応はまちまちだった。ある晩は500人来ても、次の晩は20人だったりしたから。

LAUNCH:
ツアーやレコーディングでかなり忙しい日々が続いているのに、どうやってXTCのAndy Partridgeと一緒にやる時間を見つけたんですか?

BRIAN:
『Villains』ツアーの最後はオーストラリアだったんだ。Andyが俺たちの音楽出版社に電話してきて、俺が彼の所へ行って、一緒に曲を書けるかどうか聞いてきたというので、俺は「もちろん!」と答えたよ。3日間の曲作りセッションという感じだった。俺たちは彼の庭の物置小屋にいて、彼は2人の間にマイクを置いた。彼は全然もったいぶらなくて、控えめな男だ。古いコンピュータやドラムマシンやなんかがある物置小屋に2人きりでこもり、俺はギターを持って、彼もギターを持って、ただのんびりとプレイした。12~13曲作ったよ。歌詞は全部ナンセンス。彼はばかばかしい歌詞を歌ってた。韻も踏まずにね。彼はそれを切り刻んでクラシックなポップソングの構成に当てはめ、俺はそのテープを持ち帰った。その中に「Blow You Away」という曲があって、『The Avengers』のサウンドトラックに売り込んだら、気に入られたんだ。あとは俺が時間を作ってアレンジするだけだった。Andyは自分がやり終えたあとは「君の好きなようにしてくれ」という調子だったし。彼は凝り性で、自分のレコードの制作で忙しかったんだ。彼はただ、アメリカで成功した誰かを呼んで、一緒にやりたかったんだと思う。『The Avengers』のサウンドトラックがベストの選択だったかどうかはわからないけど…映画は公開されたかと思うと打ち切られてしまったから…でもサウンドトラックはとても気に入っている。

LAUNCH:
あなたは俳優にも挑戦したと何かで読みました。そのことについて聞かせてください。

BRIAN:
『Roadkill』という独立系映画に出たんだ。台本がとても素晴らしくて、すごくおもしろかったよ。製作者が誰かは知らなかったけど、Miramaxから予算をもらっていた。俺は自腹でこの映画に出たんだ。下手だけど親しみやすいカントリーシンガーの役でね。俺にはこの男のことがよくわかった。歌の途中で中断して、歌の意味を説明するような奴さ。実に楽しかった。同じ役でもう1本、『The Space Between Us』という映画もやったよ。つい最近は『Mergers & Acquisitions』という映画に出て、もみあげを剃った短髪の悪徳銀行員を演じた。とても『Wall Street』っぽくて、すごくおもしろかった。

LAUNCH:
バンドについて評論家が書いていることを読みますか? バンドについて書かれたもので、あなたが音楽的に目指していることに近いものは?

BRIAN:
俺はバンドについて書かれているものはすべて読む。すごく知りたいし、気になるんだ。俺たちについての論評で一番近かったのは、ひどいアルバム評の中に書かれていたことだね。筆者は、俺たちがアメリカングランジとイングリッシュポップの隙間を埋めようとしていると書いたんだ。俺は当たってる、と思ったよ。彼は、俺たちがそれに失敗したとして、ひどい評価を下したけどね。でも、俺はこのアルバムで絶対に成し遂げたと思っている。ポストグランジで、もっとロックしていて、まさにアメリカンロックとイングリッシュポップの融合さ。

LAUNCH:
コンピュータやインターネットはどのくらい使っていますか?

BRIAN:
この前のツアーからラップトップを使わなくなって、いまもそのままさ。俺は必死にインターネットを受け入れようとして、振り回されたんだ。ひとつの場所から別の場所に移る。あっという間に時間がたってしまう。ヴォイスメールだけでなく、今やEメールもインスタントメッセージもある。返事をしなくちゃならない人たちから攻め立てられて、俺はもうあれ以上は出来なかった。バンドではA.J.がインターネットをやっていて、バンドのページも持ってる。MP3はすごいことになるだろうね。音楽の様相を変え、マーケティングの方法も変えるだろう。俺たちはいつもそういう動きの先頭に立っているつもりさ。でも個人レベルでは、俺はついていけない。非難するつもりはないけどね。

LAUNCH:
今の音楽で一番つまらない流行は何だと思いますか?

BRIAN:
一番つまらないのは、白人少年のポップラップ系の音楽。Third Eye Blindみたいなやつさ。四六時中、耳に入ってくるけど、くだらないよ。

LAUNCH:
一番最近買ったCDは?

BRIAN:
Radiohead『OK Computer』。ただし、これを買ったのは2度目。それからTom Waitsの『Rain Dogs』も買ったよ。

LAUNCH:
さて、あなたはある程度の成功を手にしたわけですが、何か大物ロックスターらしい行為に走りましたか?

BRIAN:
そういうことはしないようにしていたけど、ニューヨークで、フラストレーションから自分のギターをテレビに投げつけた。それが俺にとっての大物ロックスターっぽい瞬間だったね。火花が見たくてリモコンで電源を入れたりしなければ、本当にロックスターっぽかっただろうけど!

by dave dimartino

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