【ライブレポート】Sadie、20周アニバーサリーライブ<脈拍>開催「ここから始まる新たなストーリー、みんなと一緒に作っていけたら」

結成10周年を迎えた2015年に活動を休止し、2024年に9年ぶりの復活を電撃的に遂げたSadieが、3月16日に結成20周年のアニバーサリーライブ<脈拍>を東京・日比谷野外大音楽堂で開催した。
◆ライブ写真
10年前に出航した5隻の船は、それぞれの航海の果てに母港へと帰り、さらに大きなひとつの船となって新たな旅へと出発する──そんなイメージを湧かせるライブは、今、現在の彼らのリアルな想いが詰まったライブタイトル通りの“血の通った”ものに。
当日はあいにくの雨となったが、真緒(Vo)は「素敵な思い出になるひとつの演出として楽しんでほしい」と表明し、この20周年から続く新たなるSadieの未来を5人で誓ってみせた。
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まだ空は明るいままの午後5時。黒地に白字でバンドロゴを抜いたバックドロップが掲げられたステージに5人が現れるとクラップが起こり、真緒が「行くぞ、野音!」と号令をかけて、2008年にリリースされたシングル「Ice Romancer」でアニバーサリーライブは幕開けた。
メロディックなサビから曲が始まると、客席からは一気に拳があがり、身体を折りたたむオーディエンスの一体感は、本当に10年近くも活動休止していたのか?と疑いたくなるほど。亜季(B)の放つ硬質なベースもSadieらしく、懐かしさを掻き立てるが、そこに絡み合う剣(G)&美月(G)のツインギターとのアンサンブルは明らかに進化したもので、おのおのが活動休止の間も研鑽を重ねてきたことが十二分にうかがえる。
さらに霧雨のなか、赤ライトを浴びてセンターに集ったフロント陣と景(Dr)がヘヴィな音を鳴らして幻想的な空気感を漂わせるや、真緒が「<Sadie 20th Anniversary Live『脈拍』>血の通った1日にしようぜ! 行けるか!? 全員でかかってこい!」とシャウト。デスボイスと拳が吹き荒れる「心眼」を叩きつけるとスモークが噴き上がり、Sadie特有のアグレッシブなヘヴィネスが健在であることを証明していく。

そのままなだれ込んだ「Jealousy」では一転、キャッチーなメロの光るアッパーチューンで「心眼」とは異なる“らしさ”を表明。続く「Rosario -ロザリオ-」ではヘドバン三昧のダークネスでシアトリカルな世界観を展開と、三者三様の異なる個性は、しかし、いずれもSadie“らしい”もの。それらが絡み合い、混然一体となってSadieというバンドを築き上げてきたのだと実感させられる。
そしてオーディエンスからの止まない歓声もまた、Sadie名物のひとつ。唯一10年前と違うのは本編で真緒がMCをするようになったことだが、そこでも「雨にも負けんなよ! 最高の1日にしようぜ!」とテンションを爆上げて、まずはSadieの“明”で客席を楽しませていく。
「踊れ!」と始まった「HOWLING」では、厚さと正確さの増したユニゾンで軽快にリードし、幕開けとは種類の異なる一体感をクリエイト。さらに「イケるか? 20周年、頭振れるか!?」と美月が煽り立て、攻撃的なリフをブッ放す「Deadly masquerade」では、高速ビートでヘドバンと逆ダイを巻き起こし、オーディエンスに「声!」と求めて狂乱の宴を笑顔で繰り広げていく。

そしてステージが見えなくなるほどスモークが噴き出して、キャッチーにブチ上がったのは「クライモア」。激しさとメロディックのベストバランスという、これまたSadie特有の個性が発揮された人気のシングル曲で、場内の盛り上がりをマックスへと導いていく。そこで単なる勢い任せでなく、想いを込めながらしっかりと歌い上げる真緒のボーカル力の向上も顕著だ。
そして空が暗くなり始めた頃、ステージには青いライトが灯り、今度はSadieの“暗”で魅せるターンへと突入する。咆哮からメロディックなハイトーン歌唱という、真緒の幅広い歌唱技術と、景のダイナミックなドラミングが目まぐるしい曲展開を支え、ドラマティックな世界観を作り上げる「ドレス」に始まり、「Payment of vomiter」では弦楽器隊の強靭なユニゾンで圧倒。雨の勢いが増したところで“五月雨に舞う滅亡の花”という歌詞が歌われるのも、なんとも運命的だ。
そして雨足が強くなるなか、真緒の苛烈なデスボイスや叫び、ポエトリーリーディングまでをも交えて“嘆き”をフィーチャーしたのが「アゲハの亡骸」。逆光を背に、大きく手を振り上げる景のシルエットが視覚で魅せ、対照的に不動の剣が鋭いギターソロで聴覚に訴えかける。一転、クリーンな音色からの始まりで“切なさ”を刻みつけた「サイレントイヴ」では、重低音プレイで見事に繊細さを表現。すっかり陽が落ちた空から雨が降りしきり、スモークが立ち込めるという演出で、やまない雨をモチーフにした楽曲と奇跡的なマッチングを果たしていく。
「雨がゆっくり降ったり、激しく降ったりして、ここに来ている皆さんは、さぞ寒いでしょう。雨に濡れても声援をくれる姿、ここから見える景色は最高です。もう雨に濡れてるんだから、最後の最後まで暴れてくれるよな!? この空の下、声をくれるよな!? お前たちの“今”を見せてくれ! この20周年のSadie一緒に迎えてくれ! かかってこい!」
そう真緒が宣言してからはクライマックスへ。Sadieの代表曲の1つである「陽炎」では待ちかねたギターフレーズにイントロから拳が振り上がり、サビではオーディエンスの合唱が響く。お立ち台の上で美月が踊るようにギターを鳴らせば、真緒の「日比谷! ここに存在を証明しろ!」という指令に応えるかのように、亜季もステージ前方にせり出してプレイ。

「Clap your Hands!」とクラップで軽快に跳ねた「METEOR」から、拳が突き上がる「Grieving the dead soul」では「日比谷! 生きてるか!?」という真緒の声が響きわたる。さらに美月が「声! 声!」と懸命にオーディエンスに求めてからの「サイコカルチャー」で場内のテンションは頂点へ。サビでは弦楽器隊全員でコーラスを入れ、真緒は「用意はいいか? お前たちの居場所はここだ!」と凄まじいロングトーンシャウトを放って場内を圧倒。
そして「ここまで声を届けてくれるかい? 一緒に歌ってくれ!」と贈られた本編ラスト曲は、初期から愛されてきた名曲「a holy terrors」だ。自身の心情を素直に綴ったファンに向けてのメッセージソングで、真緒は“日比谷…分かるかい?”と歌詞を歌い替え、Cメロをアカペラで歌い上げて湧いた大歓声に「ありがとう、日比谷!」と真緒が感謝すると、銀テープが空を舞ってライブは感動的なフィナーレを迎えた。
アンコールでは、雨のなか懸命に暴れ続け、声を届け続けたオーディエンスを「メチャクチャかっこいい。本当に頼もしいです」と真緒が賞賛。「20周年の軌跡、未来へのSadie、ここから始まる新たなストーリー、みんなと一緒に作っていけたらなと思ってますんで、よろしく!」と挨拶し、さらに「この20年、共に切磋琢磨し、辛いこと悲しいこと、喜び共に味わったメンバー紹介を、あえてさせてください」と促して、1人ひとりが語り始める。

一番手は「俺、ステージで一番後ろにいるから絶対濡れへんと思っとったのに、メッチャ水くんねん! シンバルとか叩くやん? 水、自分に跳ね返ってくるからね!」と驚きを表した景。「……ごめん。なんか、ちょっと言葉わからんけど、もう一回Sadieで、こうやって20周年を迎えられたこと、本当に幸せでございます。マジで待っててくれてありがとう。愛してます!」と力強く想いを明かす。
亜季は「今日という日を、真緒と剣と美月と景と、ツアーを作ってくれたスタッフと。そして、あなた1人ずつと一緒に過ごせて、幸せに思ってます。ありがとうございます」と、極めて彼らしく簡潔に感謝。美月は10年前を振り返り「10周年ライブの1週間後に、僕ら活動休止を発表しました。なので、こうやってMCで話すときも感謝の言葉しか言えなくて、これからの話ができへんかったのがすごく心残りなんですけど、20周年はちゃんと“これからの話”できますので安心してください」と嬉しい予告を。
雨に濡れたステージが滑りやすくなっており「俺のカッコよさ、30%も出てないんちゃうん?」とこぼした剣は、「メンバーそれぞれの活動で知ってくれたファンもいると思います。最近は“Sadieというバンド名は知ってましたけど初めてライブに来ました”っていう方もすごく多くて、そうやって新しいみんなとも一緒に歩んでいける未来が待っている。ずっと応援してくれてるみんなもそうだし、これから好きになってくれるみんなも一緒によろしくお願いします」と未来を見据えた。
「たくさんの思い出、たくさんの悲しみ、たくさんの喜びを、この20年で僕たちは味わってきました。そして、どうなるかわからなかった未来を作ってくれたのがみんなです。だからこそ、今日という1日が作れました。改めてみんなに感謝してます。この雨の下、外に出て叫んだり暴れたりすることは普通ないと思います。この生きてる瞬間、この時間、最後まで共に生きてくれ! 最高の雨にしようぜ! やまない雨はないぞ! 明日も共に生きてくれてありがとう。ひとつになろうぜ、野音!」
最後にそう叫んだ真緒は、美月のアコースティックギターから始まった「Regret」で彷徨っていた日々を振り返ると、さらに言葉を重ねる。Sadieライブのアンコールといえばスッキリと暴れて帰るイメージも強いが、この日だけは完全にすべてのファンに向けてのメッセージを伝える場として用意されていた。
「改めまして、本当にみんなありがとう。先ほども美月くんのほうから話があったんですけど、僕たちは10周年のライブを大阪城野外音楽堂でやらせてもらいました。そのときは活動休止を僕たちの中で決めてました。すごく後ろめたい気持ちもあったし、今、活動休止をして必ず未来でまた再会できる……そんな自信もありました。ただ、時が経ち、約9年。みんなを待たせてしまいました。
たくさんの環境、たくさんの人生の中で、皆さん歳を重ねて、時間を重ねて、人生において移り変わるもの、見るもの、触れるもの、たくさんあったと思います。その中に幸せもあれば、辛さ、悲しみ、憤りもあったでしょう。もちろん、僕たちが再会を果たしたことで、僕たちを知ってくれて、今、一緒に生きてくれてるみんなもいると思います。
ただ、人間はいつだって時間と共に生きています。お互い、誰だってこの時間の経過で悲しみや喜びを味わう、平等な関係にあります。お互いに重ねた時間、そして、今日という時間──ここに繋がったこと、運命だと思っています。今日という日を作ってくれた、待っててくれた全国のファン、そして俺たち5人の絆──この感謝の気持ち、言葉に乗せて皆さんに届けたいと思います。聞いてください」
続いてコールされたロッカバラード「MESSAGE FROM HERE」では、舞台上のミラーボールが美しい白色の光を投げかけるなか、真緒は戸惑い苦しみながらも“この命は消えない”と歌い上げる。活動休止前最後のオリジナルアルバム収録曲に綴られた彼の真実の想いは、時を超えて確かにオーディエンスの心を震わせていった。
「時を重ねて辿り着いた今、こうして俺たちSadieと、みんなと、今を生きられて幸せです。活動休止前、僕たちは最後に「Voyage」という曲を出しました。あのときは別れを歌っていたと思います。そして、僕たちは1人ひとりの航海に出ました。ただ、次のVoyageは、俺たちSadie5人とお前たちで、また新たなる幸せな未来を作る航海になると思います。最後、この俺たちの想いを、君たちへの想い、受け止めてくれるかい!?」

そうして贈られたのは、当時、涙を振り切るようなアッパービートと“いつまでも愛してる”のリリックが多くのファンの胸を詰まらせた「Voyage」。活動休止ライブのときと同じように、真緒は曲中“掲げてる未来図の配役はこの5人とお前たち!””と叫びながら周囲のメンバーをそれぞれに指差して、オーディエンスは“lalala…”と合唱を贈るが、そこに10年前のような嗚咽はない。ただ、楽曲に綴られた再会の約束が果たされた喜びだけがあり、締めくくりのリリックを引用して「君たちの未来に幸あれ!」と真緒が叫ぶと、湧き上がった大歓声はすぐにさらなるアンコールを求める声に変わっていった。
「最後の最後まで、ありがとうございます!」と再登場した真緒は、雨のなか「“はよ帰れ!”“はよ終われ!”と誰ひとり言わずに」ライブを楽しんだオーディエンスに改めて感謝し、風邪をひかないように「今日は最高のお風呂に入ってください」とリクエストする。だが和やかなMCから「最後まで一緒に生きてくれてありがとな! 最後はこの雨空のもと、狂っていこうか! 狂ってこれるか? ラスト!」と一転、叩きつけられたのはSadie最大の代表曲「迷彩」。
後進のバンドマンたちにも大きな影響を与えたナンバーのイントロが鳴るなりスモークが噴出し、剣と美月がステージセンターで挑発し合うようにギターをプレイすれば、そこに亜季と共に加わった真緒は“俺たちに幸あれ!”と歌詞を歌い替える。Bメロでは亜季がお立ち台の上で腕を振るおなじみの舞いで客席を沸かせ、2番サビで景の元へと向かった剣は間奏で激烈なソロプレイも。クライマックスでは演奏をブレイクしてオーディエンスのコールを5人で存分に浴び、フロント陣でお立ち台に足をかけて「俺たちの声、届いてるか!?」と真緒が強烈なスクリームを放って、20周年ライブを熱狂のうちに締めくくった。
「悪天候のなか、今日という日を待ち望んで一緒にSadieしてくれて、本当に感謝してます。これから続く未来へのSadie、君たちと一緒にずっとこの時間、この感覚、共に生きてること、実感できることがこれからの楽しみです。改めて、今日という一日、自分自身に感謝と“素晴らしかった”というエールを与えてください。そして、今日という一日を作ってくれたスタッフの皆様、今日はここに来れなかったけど応援してくれてるみんな、そして僕たち5人、何よりこの時間、この場所を一緒に共にしてくれたみんな、本当にカッコよかった。素敵でした。これから先も、よろしくお願いします。この<脈拍>というタイトルの通り、本当に血の通った素晴らしいライブだったと思います。改めて……」
そこまで話すと真緒はマイクを置き、客席の最後方まで届く声量で「ありがとうございました!」と叫んで、全方向に一礼した。楽器隊も誰ひとり先に帰らずにピックやスティックを投げ続け、剣は「また絶対会いましょう」と約束。景は「絶対風邪ひくなよ。ホンマに頼むで!」と念押しして、「また会おう! ウルトラスーパーサランヘヨ!」と懐かしい挨拶をしてくれる。その様子をお立ち台に座って眺めていた亜季も「またね」と告げ、最後に美月は「20周年の野音、ちゃんと未来用意してますんで、受け取ってください。ありがとうございました!」と伝えた。
その言葉の通り、終演後にはファンクラブ限定の東名阪ツアーが6月に、昨年行った主催イベント<THE UNITED KILLERD>の第2弾が9月20日・21日に行われることが発表。10年前の悲しみと心残りを完全に浄化し、昇華して、次なる未来への第一歩となった20周年ライブから、Sadieの新たなる“Voyage”は始まるのだ。
文◎清水素子
<Sadie Official Fanclub Tour「LIVING DEAD CIRCUS」>

-UNDEAD only-
2025年
6月3日(火) 名古屋ell.FITS ALL
6月04日 (水) OSAKA MUSE
6月11日 (水) 代官山UNIT
<Sadie present Sadie present>

2025年
9月20日(土) ジャパンパビリオンホール
9月21日 (日) ジャパンパビリオンホール
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