【ライヴレポート】Petit Brabancon、ROTTENGRAFFTYを迎えてツアー<CROSS COUNTER -01->開幕

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Petit Brabanconが3月8日、愛知・名古屋THE BOTTOM LINEにてライヴシリーズ<CROSS COUNTER -01->の火蓋を切った。その初日公演はROTTENGRAFFTYを迎えたツーマン形式となるもの。同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。

◆Petit Brabancon (プチ・ブラバンソン) 画像

2024年夏リリースの2nd EP『Seven Garbage Born of Hatred』では、ジャパニーズハードコアとインダストリアルコア、そしてサイバーパンクの世界観を混濁させたサウンドで、さらなる暴音を提示したPetit Brabancon。リリース直後にはツアーも行なわれているが、同ツアーの最終地だった名古屋を皮切りに、2025年最初の公演<CROSS COUNTER -01->がスタート。狂乱の初日を迎えることとなった。

初日公演は、同地を代表する名門ライヴハウスTHE BOTTOM LINE(※前ツアーの最終会場はDIAMOND HALL)。ここでの共演者として声をかけたのがROTTENGRAFFTYだ。彼らはPetit Brabancon初の対バン相手として過去に激闘を繰り広げるなど、ファンの垣根を壊していった重要な存在でもある。

また、Petit Brabanconの京とROTTENGRAFFTYのNOBUYAとN∀OKIはともに京都府出身という共通点があり、東京発のPetit Brabanconと京都のROTTENGRAFFTYとがその中間地点とも言える名古屋にて対バンを行なうのだから、この公演はライヴシリーズ初日以上の意味を持った夜になったと言えるだろう。会場に集まったファンもそれぞれのバンドTシャツを着込み、動ける出で立ちでスタンバイ済みだ。


先陣を切るROTTENGRAFFTYのステージは、「PLAYBACK」で始まった。初っ端からツインヴォーカルがまくし立てまくる強烈なタテノリチューンだ。コード&リフで責め立てるMASAHIKOのギター、低音をグイグイと押し付けてくる侑威地のベースの圧も、最初から強烈。両バンドのファンが入り交じるフロアからは、大きな歓声と手拍子が飛ぶ。

バンドはすかさず2曲目「秋桜」に突入。当日の時点では最新既発アルバムに当たる7th『HELLO』収録の、スピード感満載の一曲。突進するHIROSHIのドラムがファンをさらに煽っていく。そしてフロアには早くもクラウドサーフが発生。サーファーに男女の差はなく、次々とステージ前に向かって転がり進んでいく。そしてそこにはPetit BrabanconのTシャツを着たファンも多く含まれており、そのあたりからも両バンドの親和性の高さとともに、プチブラファンのパンク/コア系ライヴへの高い順応性も感じられる。


この光景こそ、プチブラメンバーが結成当時から目論んでいたひとつの形なのではないだろうか。NOBUYAの「ロットンTシャツのヤツ、プチブラTシャツのヤツに負けるな!」というセリフからも、どちらのファンも一様に熱狂していたことがわかるだろう。

「D.A.N.C.E.」や「THIS WORLD」など定番人気曲をはじめ、3月に発売される最新8thアルバム『わびさび』からサワリが披露された「・・・・・マニュアル07」などROTTENGRAFFTYの勢いが止むことはなく、会場に熱気と蒸気を溜め込んでいく。


ヴォーカルに導かれてオーディエンスも一緒に歌った「金色グラフティー」、そして爆走チューンである「暁アイデンティティ」にて、彼らのステージは幕となった。

ステージングでのエナジーとは対象的に、楽曲が終わった瞬間にひと言もなくステージ袖へと消えていくメンバー。このコントラストも、年間100本近いショウを行なっているライヴバンドならではのカッコよさだ。


どちらのバンドのご贔屓に関係なく、会場に集まったすべてのオーディエンスが十二分に汗をかいていたことだろう。これこそ、対バンの醍醐味だ。セットチェンジのために張られた黒幕の前では、モクモクと湯気が立ち昇る。

   ◆   ◆   ◆

その熱が冷めるよりも早く場内は暗転し、オープニングSEが鳴り始める。『Seven Garbage Born of Hatred』の1曲目でもあるyukihiro作曲のインストゥルメンタルナンバー「move」だ。

ファンの手拍子に合わせて、ひとりひとりメンバーが登壇。最後に現われた京の目が、まだ暗いステージでギラリと光る。このキリキリとした威圧感がたまらない。


そして「move」が止まると、一瞬の静寂を挟み、antzの単音リフが繰り出される。「dub driving」がプチブラのショウの開幕を告げた。これは『Seven Garbage Born of Hatred』と同様の流れであり、もちろんそれを知っているフロアは、イントロから早くもサーフが起こる。先の話とは逆に、そこここでロットンTシャツの姿も多く見受けられ、やはりどちらのバンドも楽しんでやろうという、両ファンのライヴ偏差値の高さが感じられた。

いや、そんな頭でっかちな話ではなく、純粋に強烈な音楽に体が勝手に反応したということなのかもしれない。ともかく、ROTTENGRAFFTYからバトンタッチされたエナジーは、1曲目から早くも爆発したということだ。

やはり京の存在感は凄まじく、スクリーム&グロウルを吐き出しながら最前鉄柵ギリギリまで詰め寄り、眼前のファンを威圧していく。ラフな出で立ちとも相まったPetit Brabanconでしか観ることのできない彼の姿と言えるだろう。

続くのは「Don’t forget」。ドラムンベース的同期に合わせて“オイ!オイ!”という歓声が上がり、ミヤ、antzの強烈なリフワークが炸裂する。7弦ギターならではの低音とハリの強さは、ROTTENGRAFFTYの6弦ローチューニングとはまた違ったパワーと魅力がある。決して大きなステージではなく、また足下にはそれぞれ大きなエフェクターボードが配置されているが、二人は左右で入れ替わるなど、ステージングでもファンを魅了していく。このあたりは、それぞれ主体とするバンドにて培われたものだろう。


高松浩史のベースに誘われて「Ruin of Existence」が始まると、フロアでもかけ声と手拍子が起こる。攻撃的なギターワークに対して、高松のベースは丸めの太いドライヴトーンに聴こえるが、ベースが大きい波を作ることでタイトでありながらとてもグルーヴィな楽曲になる。京のグロウルに合わせて、ギターの二人もギャングヴォーカルをとるのだが、これらが合わさると不思議とダンサブルなニュアンスも出てくるから面妖だ。

このように冒頭から猛烈な楽曲を繰り広げるPetit Brabanconだが、フロント陣を操っているのが、実はドラムのyukihiroであったりもする。ロー感バリバリのコア系にあって、決してパワーヒッターではないyukihiroだが、多彩なドラミングによって、ややもすると一辺倒になりやすいパンキッシュな音楽に表情をつけ、それでいて、とてもタイトに聴かせてくれる。「Pull the trigger」ヴァースのハネ感や「Mickey」のシャッフルフィールなどのリズム的な味付けは、バンドの楽曲の幅を音楽的に大きく広げていくものだ。

演出での幅という意味では、楽曲とはまた別の、ギターインプロヴィゼーションもそのひとつ。2本のギターとベースが主となるセクションで、ミヤとantzがエフェクティヴなサウンドを思い思いに鳴らしていく。このあたりはノイズ/シューゲイザー的でもあり、背後から当てられる青白いライトに映るシルエットは、異世界の模様を作り出しているようだ。やはりハードコアだけではないPetit Brabanconのスタイルがよく出ている。

そんなインタールードから始まったのは、地を這うようなグルーヴを持つ「非人間、独白に在らず」。ヘヴィな楽曲が並ぶセットのなかで、それでも、それまでになかったような重々しい曲調で、自らの首元に手を押しやる京の絶叫は苦悶に満ちていく。ファンもそのサークルリズムに合わせてぐらりぐらりと首を振っている。会場のサイズ感やストロボ照明の効果もあって、怪しいテント小屋で観る奇異で先鋭な視聴覚芸術とも表現できそうな様相だ。以前ミヤは「90年代のライヴハウスは何が起こっているのかわからない怖さがあって、それがバンドのカッコよさでもあった」という旨の発言をしていたが、Petit Brabanconのライヴは、本当に入ってみないことには体感できない無二の世界が広がっている。

その後もカオティックなショウは進み続け、ベースのグリスが唸るトラッドな大グルーヴからツインギターによるリードワークなど、Petit Brabanconだからこそのヘヴィなアプローチを刻印した楽曲が次々と披露されていく。客席のボルテージも落ちることはなく、ハードコアでありつつUKパンクなニュアンスもあり、スウィングのダーティなカッコよさも持つ「Mickey」では、さらに多くのオーディエンスがサーフしていったのだった。


『Seven Garbage Born of Hatred』ではアルバムのラストとして配置され、MVやメイキング動画も作成された「Vendetta」も、その重要度に違わぬライヴでのハイライトシーンのひとつだった。低音リフはある意味ストレートで、ドラムが倍テンになるセクションも入ったジャパニーズハードコア&ゴアらしい苛烈なナンバーだ。プレイに合わせて無数の手が四方八方から京に伸びていき、それを彼が上から睨みつける。同曲のラストにて弦楽器3人がドラムに集まり、かき混ぜを始めると、そこでやっと京はニヤッとニヒルな笑みをたたえたのだった。

ほぼノンストップで発射されていったPetit Brabancoのセット。当日すべての楽曲の演奏が終わると、京、yukihiroはステージを降り、ミヤとantzはそれぞれの足下でディレイのノブをイジり発振をさせ、その上で高松もベースをスライドさせていく。そして音を残したまま壇上は空となったのだった。

最後まで混沌としたステージを見せてくれたPetit Brabancon。肉体的には常時ハードでありながら、視覚的、音楽的には実験的でもあった彼らの最新形。スタジオ音源だけでは得ることのできない生の衝撃がそこにはあり、これこそが恐る恐るながらライヴに参加しなければわからない世界なのだ。確かに万人に迎えられるスタイルではないかもしれないが、ライヴに非日常を求めるのであれば、その扉を開けるべきもの。

この後もライヴシリーズは続き、また対バン相手も変わってくるので、その影響は彼らにも及ぶことだろう。きっと同じステージは二度と起こらない。Petit Brabanconのライヴとはそういうものなのだと感じた名古屋の夜であった。

取材・文◎岡見高秀
撮影◎河本悠貴/Yukihide "JON..." Takimoto

■対バン含むライヴシリーズ<Petit Brabancon CROSS COUNTER -01->

▼2025年
【愛知】
3月8日(土) 名古屋 THE BOTTOM LINE
open17:15 / start18:00
 ゲスト:ROTTENGRAFFTY
3月9日(日) 名古屋 THE BOTTOM LINE
open17:15 / start18:00
 Petit Brabancon Only
【大阪】
3月20日(祝) 心斎橋 BIGCAT
open17:15 / start18:00
 ゲスト:SPARK!!SOUND!!SHOW!!
3月21日(金) 心斎橋 BIGCAT
open18:15 / start19:00
 Petit Brabancon Only
【東京】
3月26日(水) 恵比寿 LIQUIDROOM
open18:15 / start19:00
 ゲスト:The BONEZ
3月27日(木) 恵比寿 LIQUIDROOM
open18:15 / start19:00
 Petit Brabancon Only



▼チケット
・一般スタンディング:6,500円(税込・整理番号付・D代別)
・一般スタンディング(オリジナルTシャツ付):10,000円(税込・整理番号付・D代別)
・U-30スタンディング:5,000円(税込・整理番号付・D代別)
 ※3月8日(土)名古屋公演 / 3月20日(祝)大阪公演 / 3月26日(水)東京公演のみ
【一般発売】
受付開始:2025年2月8日(土)10:00より〜
https://eplus.jp/pb/
【インバウンドチケット】
https://ib.eplus.jp/pb


▲ROTTENGRAFFTY


▲SPARK!!SOUND!!SHOW!!


▲The BONEZ

■Petit Brabancon Official Photo Book『The Howling of Underdogs -2025-』

販売サイト:https://petitbrabancon-thou.com/
※2025年4月ごろ発送予定
価格:7,700円(税込)
※送料込み
※お支払いには“クレジットカード決済” “コンビニ決済”をご利用いただけます。
●購入者特典
・2025年度(2025年4月〜2026年3月)のライヴに『The Howling of Underdogs -2025-』メンバーズ最速チケット先行申込みが可能
※『The Howling of Underdogs -2025-』有効期限は登録時期に関わらず2026年3月31日まで
※対象とならない公演もございます。
※イベント/フェスなどは受付対象外となります。
・『The Howling of Underdogs -2025-』メンバーズ限定メールマガジンの配信
・ライヴ会場特典あり


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