【インタビュー】BAND-MAID、『Epic Narratives』を経て生まれた新曲「Zen」リリース「ガンガン進んでいきますっぽ！」

◾︎『Epic Narratives』の優秀さについて改めて気付かされたところがある

──しかし、それにしても感心させられるのはBAND-MAIDの創作活動が一瞬たりとも止まっていないということ。ZEPP TOURの終了と同時にこのシングルが出ること、その先には新しいEPがリリース予定であることも公表されましたが、要するに『Epic Narratives』完成後もずっと止まっていなかったということですもんね。実際、あのアルバムを作ったことが、その後の曲作りにおいて変化をもたらしている点があるとすれば、どんなところでしょう？

小鳩：ひとつひとつの楽曲の幅というのが、狭まることなくどんどん広がり続けていってるのを感じますっぽ。ミドルテンポの曲の中にもいろんなバリエーションが出てきていて。KANAMI先生から出てくる曲の幅がさらに広がってきていると思いますっぽ。

──先生、いかがですか？

KANAMI：正直、「アルバム後の変化」というふうに考えると、わかりにくいところがあるんですけど……私のアレンジ、どこか変わったのかな？

MISA：アルバム後の変化というよりも、アルバム制作中の変化がまだ持続中というか、そこでの変化をさらに極めていってる最中にあるんだと思います。それが幅の広がりに繋がってるんじゃないかな。

AKANE：『Epic Narratives』の曲たちについては、結構ミドルの曲で聴かせる系というか、伝える系のものも多くて、そういう曲たちについては「音で伝えたい」っていう気持ちを重んじながら取り組んでたんですけど、実際そうやって完成した曲たちをお給仕でやってみると、お客さんの反応もとても良くて、そこですごく何かをつかめた気がするんです。「The one」とかは特にそうですね。以前の自分だったら伝えきれなかった部分、表現しきれなかった部分を、11月のツアーでは伝えられた気がして、みんなともそういう話をしていて。特にミドルの曲、バラードなどをきちんと伝えられるようになったことが自分たちとしては大きくて、その気持ちのまま今もレコーディングや曲作りをしてるんです。自分の中でのグルーヴもつかめたし、『Epic Narratives』のレコーディングの段階ですでに自分のドラムが変わってきているのを実感させられて、しかもその後のツアーでまたさらに自信がついてきたので、今、すごく楽しいんです。

SAIKI：良かった良かった（笑）。

KANAMI：この先もどんどんレコ―ディングが進んでいくんです。今現在も、仕上げなきゃいけない曲が2曲ある状況なんですけど、元々の予定どおりレコーディングもしつつ、曲作りもしていて。しかも『Epic Narratives』を経たことで、レコーディング進行中の曲についても新たにアレンジしたくなっちゃう部分が出てきたり。それこそこの先のEPのための曲というのも『Epic Narratives』と並行して作ってたんですけど、アルバム完成後にアレンジを変えたくなってきちゃったり。だから今やっている2曲についても、頑張らないと間に合わないよなあ、と……。


──今の発言の最後のほう、ボヤキみたいになっていましたが（笑）。

KANAMI：すみません（笑）。でも、確かに『Epic Narratives』があったことで、今後よりいっそうアレンジの幅も広がっていくことになるはずだし、この先、新たに作る曲に関しても、あのアルバムを経てきたからこその面白さのあるものにして、それを次のEPに入れられたらいいなと思っています。

──「アレンジを変えたくなった」と言われると、一度出た答えを否定してしまうようにも聞こえますけど、そういうことじゃないんですよね？

KANAMI：そうですね。あくまでブラッシュアップです。曲を転生させちゃおうかな、ということなんです。ある意味まさに全修ですね（笑）。

小鳩：ついさっきは「全修って言われたらショック」って言ってましたっぽ（笑）。

SAIKI：すでにドラムを録り終えてる曲は大変なことになるかも。

AKANE：確かに！

──というわけで、全修もほどほどにしましょう（笑）。それはともかく、先ほどの発言からも、11月のZEPP TOURが短いながらも収穫の大きなものだったことがうかがえます。

MISA：ずっとそう思ってました。公演本数は少なかったけど濃かったなって思います。自分たちの成長の速度が、これまでのどのツアーよりも速かったなって。そのことを今日はどうしても言いたかったので……言えて良かったです（笑）。

──そうなってくると、もっともっとやりたくなりますよね。2025年のお給仕は『番外編』からのスタートになるわけですけど、どんなことを考えていますか？

SAIKI：番外編は2日間、リキッドルームでやることになるんですけど……これはまだ誰にも言ってないんですけど、私がみんなに無茶振りをしようかなと考えておりまして（笑）。

小鳩：実は、メンバー共有のスケジュール表には元々、“SAIKI無茶振り案件”って書いてあったんですっぽ（笑）。

SAIKI：内輪ではそういう呼び方になってたんです。そして実際の無茶振りとしてちょっと考えているのは、メドレーをやりたいな、ということで。

小鳩：なんだかすごいことになりそうっぽ。結構大変だっぽ。

SAIKI：そんなわけで今、BPMとの闘いを繰り広げてます。ちょっとぐらいテンポを変えるのがあってもいいかな、とも思っているし。


──セッションパートを挟みながら繋いでいくのも面白そうですよね。

SAIKI：それもいいですよね。みんな、いっぱい頑張ってもらうことがあるからよろしくね（笑）。

AKANE：楽しそう！　しかも番外編っぽくていいなと思う。

小鳩：そうですっぽね。メドレーは「いつかやりたい」とずっと言ってたことだったりもするんですっぽ。

SAIKI：単純にやりたい曲が多いというのもあるんですけど、『Epic Narratives』を出して、その後のZEPP TOURをセットリストを変えながら4公演やってきた中で、本当にあのアルバムの優秀さについて改めて気付かされたところがあるんです。いい曲が集まってるアルバムだからこそできたツアーだったと思う。ただ、番外編ということになったらご主人様お嬢様も「やっぱりあの曲も聴きたい！」というのが多々あるだろうし、自分たちもやりたい曲がたくさんあるので、いっぱいやっちゃおうかな、などと考えております。

小鳩：私たちも楽しみですっぽ！

──ZEPP TOURの際はZEPP HANEDAでの2公演を観させていただいたんですが、セッションパートがすごく活かされていると感じました。ソロを聴かせようという目的のものとは違っていたし、曲同士を繋ぐ面白さもありつつ、なにより皆さんが楽しそうに演奏しているさまが印象的でした。同じ曲を同じように解釈している人たちだからこそできることなんじゃないかとも思いましたし、ああいったセッションでの演奏が新しい曲のアイディアに繋がることもあるんじゃないかと感じたんですが、いかがでしょう？

KANAMI：そうなんですよね。以前、まだ公開してない曲について「この曲、横浜アリーナでやっていたセッションを思い出させる」と言われたことがあって。自分でも思いがけない指摘だったので、その時は「えっ？」と思ったんですけど、多分そういうセッションパートを作っていく段階で「こういうことをやったらお給仕で盛り上がるだろうな」みたいなことを考えていたことが反映されてるんじゃいかな、と気付かされたんです。

──無意識のうちに曲に反映されているというのが素敵ですね。「Zen」での動きのあるベース、フィルが豊富な展開などにも、セッションの光景を思い起こさせるところがあるし、そういった今現在のバンドの状態が活かされた曲でもあるな、と感じさせられました。そして、そうこうしているうちに2024年も終わってしまうわけですが、2025年はどんな年にしたいと考えていますか？

SAIKI：『Epic Narratives』ではこれからに向けての決意表明を出せたと思っているんですけど、それを出したところでおしまいというわけじゃないことは重々承知していますし、この先まだまだご主人様お嬢様にお届けできる曲が待っているので、そこを見逃さずにしっかりとついてきて欲しいなと思ってます。そして2025年はまたツアーも廻るし、MISAの故郷の岡山にも行きますし、まだ発表されてないこともあったりするので……。

小鳩：その前にBillboard Live TOKYO、Billboard Live OSAKAでのアコースティックなお給仕もありますっぽ。そういう意味では、また2025年も通常とは違ったBAND-MAIDを楽しんでいただけると思いますっぽね。

SAIKI：アコースティックはお盟主様限定だけど、楽しんでもらえると嬉しいです。私としては、Billboardは憧れてきた場所でもありますし。

小鳩：またちょっと違う雰囲気の場所で、ゆったりと食事とかを楽しみながら観ていただけたらと思いますっぽ。

SAIKI：そして、その先のツアーではまた新曲が登場するかもしれませんし、これまでとは違った輝きを放つセットリストになっているはずだと思いますし。気合を入れていきたいですね。

MISA：しかも次回のツアーは本数的にも今年よりいっぱいあるので、1本1本のお給仕を大切にしながら、さらに成長できるよう頑張っていきたいですね。

KANAMI：今、ちょっと思ったんだけど、インスト曲を練習しておいたほうが良さそうな気がする。

AKANE：確かに。最近やってなかったやつとかは特に。


──なんだか試験問題を予想しているかのようなやりとりですが。

小鳩：確かに、試験に向けての対策みたいな話になってますっぽね。

KANAMI：「せっかく練習しておいたのにこの曲はセットリストに入らなかった！」みたいなことになるかもしれませんけど（笑）。

AKANE：でもホントに、先ほどMISAも言っていたように、とにかく11月のZEPP TOURは濃いものになって、いろいろなものが吸収できたので、それを活かせる2025年にしたいと思いますね。これだけの機会があれば、またさらに成長できちゃうんじゃないかと思うし、短期間の中で掴めるもの、吸収できるものを増やしていきたいですね。

SAIKI：同時に、日本以外での活動についても積極的に取り組んでいきたいですね。2024年には行けなかったので。

小鳩：そうですっぽ。ガンガン進んでいきますっぽ！

──期待しています。実際、「Zen」のような新鮮な楽曲で新しい年が始まるというのも、とても象徴的なことじゃないかと思いますし。

SAIKI：そうですね。新しい風が吹いてるように思います、私たちに。なので、読者の皆さんも健康に気を付けながら、2025年もがんばりましょうね！

取材・文◎増田勇一
写真◎尾藤能暢