【インタビュー】vistlip、約3年ぶりアルバム『THESEUS』に“嘘や矛盾”と“希望や美しさ”のパラドックス「ひとつの旅を表現したかった」

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■瑠伊さんはコードの響きにもすげえこだわる
■“そこの小指は絶対にしっかり鳴らして”とか


──瑠伊さんの「Fairy God Mother」は、ラテンやスパニッシュ系の乾いたギターフレーズで始まりますが、一気にアルバムの空気が変わりますね。

智:そうなんですよ。困りましたもん。“こんなの作ってきちゃったか~”って。

瑠伊:なんでだよ(笑)。最近、ラテン調の曲が好きでよく聴いているので、そういう要素を入れ込んでみたかったんです。

智:ラテン調の曲って、郷ひろみの「GOLDFINGER'99」みたいな感じ?

瑠伊:ちょっと違うね(笑)。リズムの話だから。

──近年の海外のトレンドとして、ラテンミュージックが盛り上がっていましたよね。

瑠伊:そうですね。そういう洋楽アーティストのラテンな曲を聴いていて、家でアコギを弾きながら作っていきました。今までのvistlipの楽曲にはなかったテイストかもしれない。

智:新鮮だったんですけど、ブラッシュアップしていく工程でラテン要素を削いだら全然よくなくなってしまって、結局戻したんです。僕は、そのラテン要素にマジカルな空気を感じて、呪文をかけられているようなイメージが浮かんだことで、歌詞のテーマが決まりました。


▲智(Vo)

──それで“どの作品のヒロインも、魔法で化けて幸せ勝ち取っているワケじゃない”という歌詞になったと。アコギはどちらが弾いてるんですか?

Yuh:海ですね。僕はアコギを弾きたくないんで(笑)。

智:弾けよ~(笑)。

瑠伊:僕も、なんとなくアコギは海のイメージがあったので、最初から海のパートというイメージで作ってました。

海:瑠伊の曲は弾いていて楽しい曲が多いんですよ。“このコード何?”みたいなややこしい時もあるんですけど、それも含めて、弾いていて楽しいフレーズが多い。雰囲気は新鮮でしたけど、この曲も楽しめましたね。

智:Yuhもアルバム『M.E.T.A.』(2022年3月リリース)の時に瑠伊の曲にハマってたよね。

Yuh:「蟻とブレーメン」とかね。ああいうコード感も含めて、“やっとこういうギターが弾ける!”みたいな曲を瑠伊が持ってきがち。

海:しかも、瑠伊さんはコードの響きにもすげえこだわるんですよ。「そこの小指は絶対にしっかり鳴らして」とか。

──テンションノートをあててるんですね。

海:そう。しかもローポジションのほうが簡単に弾けるからと思って同じコードをローポジションに置き変えると、「その響きじゃない!」とか(笑)。

瑠伊:音楽理論的にはよくわかってないんだけどね(笑)。感覚だけど、“この押さえ方のこの響きがいい!”みたいなこだわりが毎回出ちゃうんです。


▲Yuh (G)


▲海(G)

──理論と響きは別物ですし、聴感上のニュアンスって大切ですよね。歌詞で気になったんですが、“イルミの針を引き抜いて”というのは、マンガ『HUNTER×HUNTER』のキャラクターですか?

智:そうです。最近、そういうワードも気にせず歌詞に放り込んでいこうと思っていて。「Ceremony」も『僕のヒーローアカデミア』のトガ(ヒミコ)が出てきたから、“ワンフォーオール”ってワードも入れようって。ちょっと遊んでる感じですね。

──わかる人にはわかる遊び。

智:そうそう。知らない人は調べるんだろうけど、“まさか漫画のキャラじゃないよな?”と思うかもしれない(笑)。

──そして、「Matrioshka」は海さんの曲です。ストレートなギターロックになっていますが、最初からこういうイメージで?

海:僕は自分でシンセアレンジがつけられないので、シンセとかがほしい時はTohyaさんに頼んだりするんですけど、この曲はもともと、隙間のあるバンドサウンドをイメージしていました。実は以前、大元のデモを智に聴かせた時、「これは然るべき時に使うから、タイミングを見計らってまた出して」と言われたんです。今回の曲出しで「前にも聴かせた曲だよ」って言ったら、「記憶にない」って答えでしたけど(笑)。

智:まったく記憶になかったから、新鮮に感じちゃって(笑)。曲の選考会時のメンバーの反応は薄かったんですけど、僕が気に入ったんで収録しちゃいました。

Tohya:いや、海のデモの作り方の問題なのか、なかなか曲のイメージが掴みづらいんですよ、いつも。完成した時に一番化けたのがこの曲だと思います。

智:最終的にすごく哀愁感がある曲に仕上がりましたね。


▲瑠伊(B)


▲Tohya (Dr)

──哀愁といえば、ハーモニカが効いてます。

海:ハーモニカパートは、もともと歌を入れる予定だったんです。歌のレコーディングをしている合間に、智とTohyaと話してたら「ここ、ハーモニカ欲しくね?」ということになり。“たしかに合うかも”と思って、その場でTohyaにハーモニカのメロディを作ってもらって、レコーディングもTohya君に吹いてもらってます。

智:あんまり上手じゃないけどね。初心者が吹いてる感じが伝わってくる。

海:やめてあげて(笑)。

Tohya:いやいや、僕、そもそもハーモニカを通ってきた人じゃないから! 初心者だから!

瑠伊:逆に、それがいい味出してるよね。

海:そうそう、綺麗に吹くより、そのほうがよかったから。

──Tohyaさん的には、結構なムチャ振りだったんですか?

Tohya:いや。若い時に、いわゆるアコギを抱えてハーモニカを首から提げる弾き語りスタイルに憧れて、練習したことがあったんですよ。だから、“吹けるんじゃないかな?”って。

智:何に憧れてたの? ゆず?

Tohya:THE 虎舞竜の「ロード」を吹きたくて。それだけで終わったんですけど。

──渋い。

Tohya:今回、レコーディング前に練習しようと思って、ハーモニカを預かったんですけど、結局レコーディングの日まで一切触らず。当日、ブースの中で一生吹いてました。

海:吹いてたね、一生(笑)。ライヴでは智に吹いてもらおうと思ってます。

智:僕は幼稚園の時にちょっと触って以来ですからね。できるのかできないのか、というレベルですよ。

──ライヴで注目ですね。もしかしたらTohyaさんが首から提げてるかもしれない。

智:あはははは! ドラム叩きながらはヤバイ(笑)。

Tohya:絶対息切れするから。面白すぎる(笑)。

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