【ライヴレポート】vistlip、2人のギタリストの誕生日公演に“ドレスコード=眼鏡”と“楽曲リクエスト”「いい1日になりました」
vistlipのYuh(G)と海(G)が7月に誕生日を迎え、それぞれ誕生日当日に記念公演を開催した。海の誕生日である7月20日は<DRESSCODE : EYEWEAR Third>、Yuhの誕生日である7月28日は<Butterfly Allure III>と題して行われた各々バースデーライヴのオフィシャルレポートをお届けしたい。
◆vistlip 画像
海(G)の誕生日7月20日に東京・渋谷Spotify O-WESTで行われたワンマンライヴ<DRESSCODE : EYEWEAR Third>には、彼のアイコンである“EYEWEAR=眼鏡”がライヴタイトルに据えられ、ドレスコードが明記されたタイトル通り「眼鏡を着用されていない方の入場をお断りします」という徹底ぶりだ。開演前、海による影アナが「ちゃんと眼鏡、かけてますか?」と問いかけたが、これに対して「はーい!」と答えた観客は見事なまでに全員着用。超満員のフロアすべてが眼鏡をかけているという光景は異様で他にみたことがない。
もちろん、メンバーもドレスコードに従って眼鏡をかけて登場。Tohya(Dr)によれば、「この日のSEは“誕生日だから俺が作る”と海が制作した」とのことで、そのSEに乗って“本日の主役=海”が最後に姿を現してフロアに一礼すると、<DRESSCODE : EYEWEAR Third>が「TELESCOPE CYLINDER」から幕を開けた。
序盤、「AFTER THE DIVE」「XEPPET」といったミクスチャーサウンドとグッドメロディが同居する楽曲が連なり、B-day (=Birthday)に準えて“新たな始まり”を表した「My Second B-day.」が披露されると場内のボルテージが急上昇。“♪yeah”に合わせて海がフロアに笑顔でダブルピースを見せたかと思えば、すぐさま中指を立てて挑発するといったギャップがオーディエンスに火を点けた。
「ウチの大切なリーダー、誕生日おめでとう!」とくMCでは智(Vo)が海を祝福。続けて「グッズも含めて振り切りましたね」と、オリジナル制作による“らーめん”がグッズにラインナップしていたことにも触れた。Yuh(G)がラーメン屋の店員の声色で「いらっしゃいませー! 下手側のお客さん、盛り上がってますかー!?」と呼びかける場面もあるなど、いつにもまして和気藹々としたトークセクションは誕生日ライヴならでは。
「ここからは激しく」と予告されたセクションの口火を切ったのは「Dr.Teddy」だ。久々の披露となった「La Vista」や、冒頭に智が海のマイクを指さしてシャウトを促し、独特のスリリングさを持った「the wonderland from LAB.」。智と海の歌声の掛け合いが激情を満たした「無音」と、じわじわ迫りくる緊迫感があまりにも激しい。
この「無音」ほか、海による作曲ナンバーの数々がラインナップされたのがこの日のセットリストだ。ツインギターのユニゾンが印象的な「Mob Character」や、瑠伊(B)が舞台の上手と下手を指さした先で2人のギタリストそれぞれがソロを奏でた「J's Melanchory」。「Act」はイントロのギターを長めにしたことで色彩が増したアレンジを披露。さらに「NEXT」では、Yuhが海の手を引いて舞台上手に誘導し、エフェクターペダルを操作させるといったシーンもエンターテイメントをもって届けられた。
このセットリストについて智は、「海が作ってきたセトリ。いろいろな要素が詰まってて、全然誕生日してません!」と触れたが、改めて選曲を見直すと、智の唯一無二な歌声が幅広く活きる楽曲や、プレイターとしてそれぞれのキャラクターが浮き彫りとなる楽曲など、バンドvistlipが持つポテンシャルが発揮された楽曲とアレンジが用意されていた。ある意味では、海による選曲はメンバーの好きな部分を堪能したかったようでもある。であれば、“さすがリーダー”と思わずにはいられない粋な計らいだ。
終盤に差し掛かった頃のMCでは、「整いました!」というYuhの合図で、瑠伊が両手に“お誕生日お祝いセット”を抱えてバックステージから戻ってきた。まずは海のメンバーカラーである緑色(※味はピスタチオ)のケーキを手渡し、パーティー帽を模したカチューシャとバースデー眼鏡などのアイテムを次々と装着させる。その後は、ケーキを食べたりスコーンを食べたり、緩やかな時間が流れたが、これも誕生日ライヴというご愛敬。智の「ライヴ、やろう(笑)?」の一声で再びライヴモードにシフトすると、「海、この曲好きだよね」と智が切り出し、これに対して海が「今日のハイライト」と豪語した「John Doe」へ。
選曲の多くが各メンバーにフォーカスしたものであれば、「John Doe」は海の本領が発揮された1曲だった。派手なプレイを持ち味としたギタリストではない海だが、ソリッドさや叙情的な部分を担う海のギターは、vistlipサウンドになくてはならないポジションであることを印象付ける。そしてラストスパートとなる「the surface」ではヴィジュアルシーンと親和性の高いダウナーチューンに、ラップやYuhのメタル調ギターソロといったvistlipテイストが満載。以降、「深海魚の夢は所詮、」ではモッシュの波を起こし、智の突き抜けるクリアな声が痛快に響き渡り、「LION HEART」が本編エンディングを飾った。
「いい1日になりました。ありがとうございます」──海
この夜の主役から飛び出した満足気な一言が、ライヴの充実度を物語っていた。「メガネをかけてライヴをやると、こんなに辛いんだということがわかってもらえたら、また1年頑張れます」と笑いを誘う場面もありつつ、Tohyaによる恒例の「お疲れヤンマー!」に替わって、Tohyaの音頭で「お疲れイヤッソイ!」で本編を締めくり、ステージを後にした。
客電がついても鳴り止まないアンコールに応えて再びステージへ登場したメンバーは、その場で演奏曲を相談。海の「明るい曲で終わりたい」という言葉と、ファンのリクエストも加味して「Hameln」をワンコーラス演奏したのち、「彩」へと展開していくスペシャルバージョンを披露し、<DRESSCODE : EYEWEAR Third>の幕を閉じた。誕生日ライヴというお楽しみ要素に加え、5人が絶妙なバランスを保った上でフルパワーを発揮したライヴはとても熱く、1つたりとも欠けてはならないvistlipを構成する大切なピースを確かめることができたライヴであった。
◆ ◆ ◆
前週の<DRESSCODE : EYEWEAR Third>に引き続き、vistlipのギタリストYuhの誕生日7月28日に東京・SHIBUYA THE GAMEで開催されたバースデーライヴが<Butterfly Allure III>だ。誕生日公演は主役本人がセットリストを組むことが通常だが、今回はファンからリクエストを募ったもの。Yuh曰く「俺の意思は曲順だけの、120%投票セトリ」で行われた。そのため、「いつにも増してバースデー感ないね、セトリが(笑)」という智のツッコミに頷ける部分もあったが、これもまたバースデーライヴならではの独特で、特別なものだ。
ライヴは、「New ERA」をSEにメンバーが登場。演奏を始めると、流れるように「Timer」へ繋いで会場の空気をグッと引き締める形で幕を開けた。ちなみに、この登場から1曲目の流れは過去2回の誕生日公演<Butterfly Allure>でも同じだったのだが、「Timer」に関してはYuh自身が「vistlipにおいて、俺がやりたかった音楽の理想に限りなく近いものができた」と自信作として挙げていた。言わば、彼のターニングポイントとなった1曲でもあり、そういった曲から自身のバースデーライヴを始めることに(その曲がファンからもセレクトされた)感慨深いものを感じた。
以降も、Yuhが作曲した曲の中からリクエストされた“みんなが思うYuhが映えるカッコいい曲”が続々と控えていた。「XEPPET」「Prey Shadow」と多彩なギターアプローチが際立つ楽曲が続く中、「The Other Side」は距離の近いライヴハウスならではの熱気あふれる空間に非常にマッチ。グッズとして販売されていたTシャツメンバーを全員が着用していて、その装いは普段のドレッシーな姿に比べるとだいぶシンプルだが、それもまた体当たりなライヴの雰囲気にも合っていて、いつにも増して男らしいvistlipをステージに降臨させていた。
「楽しんでますか!? 渋谷。<Butterfly Allure III>へようこそ。そして、ウチの上手ギターYuh、お誕生日おめでとう!」と智がお祝いの言葉を贈ると、「B.P.M. DIRECTION」以降は、Yuh自身が「大人になったんです」という言葉で表現した聴かせる楽曲も織り交ぜたセクションへ。「Avalanche」は、久しぶりの披露となったにも関わらず、このマニアックな展開にオーディエンスがしっかりついていき、「RED LIST」のような繊細さとダークな一面もアクセントとして披露。さらに、メロウな「aquamarine」や手拍子に沸いた「HONEY COMB」。そして「星一つ灯らないこんな夜に。」ではYuh自身も楽曲を口ずさむ一方、クリーンパートやタッピングも交えたギターソロが冴えわたった。
“みんなの願いを叶えたセトリ”は、いよいよクライマックスへと差し掛かり、その起点となったのが「DANCE IN THE DARK」だ。前述した「Timer」がターニングポイントならば、「DANCE IN THE DARK」はライヴで威力を増す形で完成させてきた1曲だ。そこから放たれるvistlipサウンドの真骨頂がオーディエンスのボルテージを高めると同時に、直前に智が放った「おまえらのノリがプレゼントになるんだよ!」という扇動が具現化された情景がフロアに広がった。「MONOGRAM」を演奏する頃には、ステージ上は熱さゆえに極限状態といった様子だ。
この日、ギタープレイの詳細やステージ上の細部、そしてライヴ全体を冷静に観ることができたかと問われれば、答えはNOだ。今回のライヴの真価はそこにはなかった。始終、ぐちゃぐちゃになりながら思うがまま音楽に溺れる空間こそが、<Butterfly Allure III>だった。ヴィジュアル系のライヴにはセオリーがあるが、そこから飛び抜けたライヴ空間を望んでいたのはYuhである。ファンのリクエストに応えるセットリスト。それによって生まれた空間がYuh自身が目指すライヴの姿だったのであれば、見事に相互にプレゼントを与えあっているようなライヴとなった。
ここで一旦ブレイクを挟んで、バースデーソングと共にケーキが登場。ライヴハウスの入っているビルに“GOLD RUSH”というハンバーグ屋が存在していることから、「ケーキの代わりにハンバーグにしようかと思った」という冗談も飛び出したが、「ケーキでよかったです(笑)。でも、口の中がパサパサするね」と言いながら、一口ケーキを頬張ったYuh。過度に白熱したライヴの間にも、こうしたハートフルな時間が生じるのもvistlipらしいところ。こうして本編ラストは、「最後、みんなで歌いましょう」と智が誘導して、「Idea」で大団円。「今日はチャンユーをお祝いしにきてくれてありがとう! おめでとうを込めて、おつかれヤンマー!」とTohyaがお決まりのあいさつで本編を締めくくった。
鳴りやまないアンコールに応えて「LION HEART」を披露。その後Yuhは祝祭感に溢れたライブをこう語った。
「今日はすごく熱い中、いろんなところからお祝いに来てくれたり、ライヴを観に来てくれて、本当にありがとうございます。ワンマンツアー<PRE-ORDER>が始まるので、9月からいろんな地方に遊びに来て、ライヴを観て楽しんで、美味しいものを食べて、いいところを観光して、充実した日々を送って、クオリティ・オブ・ライフをあげて、お仕事に戻りましょう。いろんな地方で待ってます。今日はありがとうございました!」──Yuh
それでも途切れないアンコールの声が再びメンバーをステージへと引きずり出し、「偽善MASTER」を披露。「これが本当に最後!」とすべてを出しきる形でライヴを終えたのだった。
ライヴの定義はさまざまだが、最後の最後までYuhが理想とし、生きがいを感じられるライヴの在り方がそこにあった。Yuhの首元に自由と決意を意味する形として刻まれた“蝶”は、いわゆるシンボルでもある。<Butterfly Allure>とは“魅力的な蝶”という意味であるが、少しだけ意訳するとAllureはフランス語で“足どり・成り行き”という意味も持つ。この日「大人になった」という言葉で今を表していたが、これからも自由を愛し、決意を持ったギターヒーロー像を歩み続けていくことだろう。
それぞれのバースデーライヴ中にも語られたが、vistlipは約1年半ぶりの全国ワンマンツアー< PRE-ORDER>を9月から開催するほか、各会場ではニューシングルの会場限定仕様盤も販売される。7月7日に迎えたvistlip17回目の誕生日に続き、メンバーのバースデーづくしだった1ヵ月を経て、18年目が華々しく幕開けた。
取材・文◎平井綾子
撮影◎Lestat C&M Project (2024年7月20日(土)@東京・渋谷 Spotify O-WEST)
■海(G) Birthday Live<DRESSCODE : EYEWEAR Third>2024年7月20日(土)@東京・渋谷 Spotify O-WEST セットリスト
01. TELESCOPE CYLINDER
02. AFTER THE DIVE
03. XEPPET
04. My Second B-day.
05. Dr.Teddy
06. La Vista
07. the wonderland from LAB.
08. 無音
09. Mob Character
10. CHIMERA
11. Act
12. J's Melanchory
13. NEXT
14. John Doe
15. the surface
16. MONOGRAM
17. 深海魚の夢は所詮、
18. LION HEART
encore
en1. Hameln〜彩
■Yuh(G) Birthday Live<Butterfly Allure III>2024年7月28日(日)@東京・SHIBUYA THE GAME セットリスト
01. Timer
02. XEPPET
03. Prey Shadow
04. The Other Side
05. B.P.M. DIRECTION
06. Avalanche
07. Princess Dizzy
08. RED LIST
09. closed auction
10. aquamarine
11. HONEY COMB
12. 星一つ灯らないこんな夜に。
13. DANCE IN THE DARK
14. [glider]
15. Good girl gone bed.
16. MONOGRAM
17. Idea
encore
en1. LION HEART
W. encore
en2. 偽善MASTER
■<vistlip ONEMAN TOUR [PRE-ORDER]>
09月15日(日) 宮城・仙台darwin
09月21日(土) 石川・金沢AZ
09月22日(日) 長野・長野CLUB JUNK BOX
09月28日(土) 千葉・柏PALOOZA
10月13日(日) 京都・京都ARCDEUX
10月19日(土) 北海道・札幌SPiCE
10月20日(日) 北海道・札幌SPiCE
10月27日(日) 福岡・福岡DRUM Be-1
▼チケット
前売:6,500円(税込)
※スタンディング
※ドリンク代別途
https://www.vistlip.com/posts/ticket/stdyum
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