【インタビュー】GLIM SPANKYデビュー10周年記念、全28曲収録ベスト盤が集大成であると同時に最新アルバムな理由「とにかく魂の込められたものを」
■デリコとはロックの共通言語が同じ
■ピザパーティーを二回しました(笑)
──そして、「愛が満ちるまで feat. LOVE PSYCHEDELICO」。花譜さんを迎えた「ひみつを君に feat. 花譜」についてお話を聞かせてもらったとき、「ベストアルバムにはもう1曲、ベテランとのコラボ曲が入る」とおっしゃっていましたけど、まさかLOVE PSYCHEDELICOだったとは。でも、ライブで何度も共演しているLOVE PSYCHEDELICOなら、コラボの相手としてぴったりですよね。
松尾:そうですね。けっこう一緒にやってますからね。
亀本:基本的には<ARABAKI ROCK FEST.>で一緒にやることが多いんですけど、自分たちのワンマンに出てもらったこともあって。
──2023年の高崎公演ですね。
松尾:はい。知り合ったのは実はもう憶えてないくらい昔なんですけど、近年、すごくライブを一緒にやるようになって、すごく仲良くなったから、今回お願いしたんですけど、THE BAWDIESがビルボードライブ東京でやったライブにNAOKIさんも私もゲストで出たことがあって。
──観に行きましたよ。2024年の1月21日でしたね。
松尾:ありがとうございます。その時、楽屋でNAOKIさんと雑談していたら、「“グリム(GLIM SPANKY)とデリコ(LOVE PSYCHEDELICO)で何か一緒にやりたいね”ってKUMIと話してたんだよ」って言ってくれて。実はその時、ベストアルバムでデリコと一緒にやりたいって私達の中では決まっていて、正式にオファーしようって考えていたところだったんです。だから「本当に一緒にやってもらえるんですか?」って念を押したら、「本当にやろうよ」って言ってくれて、その後、正式にオファーしたら、改めてNAOKIさんもKUMIさんもOKしてくれて、今回のコラボが実現したんです。
──あの日、そんな会話が楽屋であったとは。ところで、この曲の作詞および作曲は?
松尾:デリコとグリムの共作です。最初にグリムがワンコーラスだけ作って、デリコに投げたんです。それがイントロからサビ前までの、いわゆるAメロで、実は最初はそこがサビだったんですよ。そしたらNAOKIさんが、「これ、すごくいいからAメロにしちゃおう」って、そこにBメロを加えてくれて、「さらに広がるサビを作ろう」ってサビを一緒に作っていったんです。
──なるほど。結果、GLIM SPANKYとLOVE PSYCHEDELICOらしさがうまい具合に混ざり合っておもしろい曲になりましたね。
松尾:ほんとそう思います。めっちゃ楽しかったです。
──パーカッションが入っていたり、ワウを掛けたギターのカッティングが入っていたりして、ちょっとラテンファンクっぽいと言うか、ドゥービー・ブラザーズっぽい魅力もありますね。
亀本:あー確かに。僕もドゥービー・ブラザーズ感、けっこう感じてます(笑)。
松尾:わかるわかる。それはわかるんだけど、ローリング・ストーンズの「悪魔を憐れむ歌」の。
──あ、ベースラインはまさに!
松尾:そこから派生して、でも、それをそのままやったんじゃつまらないから、電子音みたいなビビビビって音が実はよーく聴くと入っていたりとか。NAOKIさんの工夫がいろいろなところに施されているんですよ。だから、ファンキーなリズムもありながら、踊れるシンプルなロックを突き詰めていきましたね、制作的には。
亀本:そうだね。だから、ずっとリズムが途切れない。
松尾:「クラブ的なノリでも聴けるように、この気持ちいいノリがずっと続いていくようなリズムにしよう」とは言ってましたね。1サビの終わりの“I know It’s gonna be alright”ってところで、ギターとその他の音がブレイクするんですよ。ここはNAOKIさん的にはDJ的な感覚で、そうしたみたいです。クラブのDJが一回止めて、“Hoo woo”ってやるみたいな(笑)。だから、ロックなんだけど、踊れる、気持ちのいいものをかなり意識しながら、サウンドメイクもしてますね。
▲亀本寛貴(G)/2024年3月24日@日比谷野外大音楽堂
──この曲はもちろん生音なんですよね?
亀本:ドラムだけ打ち込みなんですけど、デリコって自分たちのスタジオを持ってるんで、そこで録ったドラムのサンプルがいっぱいあるんですよ。だから、それを使ってますね。だから、音は生なんですけど、打ち込んで張り付けてるっていう。
──そうなんだ。でも、ギターとベースは、そのスタジオで。
亀本:そうです。そこで全部録りました。
松尾:もうずっと入り浸ってました(笑)。
──けっこう長めのアウトロが終わった後に手グセで弾いたようなアコギの音が残っていて、スタジオの雰囲気が伝わるなって思いました。
亀本:NAOKIさん、いつも演奏が終わった後もマイクを残しておくんですよ。ずっと止めないんです。録り方も曲ができてからというよりは、録りながら作る、作りながら録るみたいにやっているんで。“これ、使うかわからないけど録る”とか、“録ったやつを違うところに使う”とか、いろいろやりました。そういうのが自前のスタジオだからできる楽しさですよね。時間貸しのスタジオだと、フレーズも全部決め込んで、デモをみんなに渡して、「さあ録ります」ってやらなきゃ莫大なお金がかかっちゃうから、全然違いますよね。曲はできてないのにレコーディングする、なんてことはできないじゃないですか。
松尾:曲を作るとき、私は基本的に誰もいないところで、ひとりで作りたいタイプなんですよ。だから、そういう作り方はちょっと苦手といえば、苦手なんですけど、デリコはロックの共通言語が同じというか、OKとするロックのマナーが同じというか、亀本もそういうことをよく言ってるんですけど、「この音はダメだけど、これだったらいいよね」っていう感覚が本当に共通してるから、マジでストレスなくできるんです。
▲松尾レミ(Vo, G)/2024年3月24日@日比谷野外大音楽堂
──なるほど。
松尾:NAOKIさんもKUMIさんもアイデアを出してくれるし、私達のアイデアも全部一回受け入れてくれる。「それは違う」みたいなことを絶対言わないから、本当にアイデアを出しやすいんです。ぱっと思いついたアイデアを出しても全然恥ずかしくない。そういう感覚で歌詞もメロディーも「それいいね」って作っていけたんで、なんならアルバム1枚、デリコと一緒に作りたいって思うぐらい私は楽しかったです。本当にみんな仲良くて、曲を作っている最中、ピザパーティーを二回しましたもん(笑)。
──曲を聴いていても、お仕事的なコラボには全然思えない。
亀本:そう言えば、いい意味で、ちゃんとやろうって感じはなかったよね。
松尾:そうだね。「デリコとグリムでちゃんとカッコいい曲を作ろう」って言ってたね。だから、本当に純粋な音楽に対する愛が詰まってます。
──アコギのリフから始まって、そこにエレキのスライドのフレーズが加わるんですけど、亀本さんはどちらを弾いているんですか?
亀本:両方とも僕がフレーズを考えて、弾いてます。作り始める前は、どうなるかわからなかったから、叩き台になるようなものは作っておいたほうがいいと思って、最初にワンコーラスだけ作ったんですよ。さっき松尾さんが言った通り、それをAメロにして、サビをみんなで作っていったんですけど。そこも単に、いいメロディーのサビじゃなくて、KUMIさんと松尾さんが別のラインを歌ってるサビにしようっていう、けっこう難しいテーマを掲げて。
松尾:みんなでがんばったね。一緒に歌ってもぶつからない、二人の歌声が一つになるメロディーや言葉を探ろうってことで、そこはかなり考えました。“I know it’s gonna be alright 愛が満ちるまで”は、“I” “愛”で繋げることによって、英語から日本語に切り替わった時に違和感がなくなるとか、そういう細かいところまで考えながら、みんなで作っていきました。
▲2024年3月24日@日比谷野外大音楽堂
──ギターソロは亀本さん? それともNAOKIさんですか?
亀本:僕です。「じゃあソロを録ろうか」ってなって、「サウンドチェックがてら弾きます」って適当に弾いたら、NAOKIさんが「これ、カッコいいよ。これでいいじゃん」って言うから、「いや、これは練習なんで、さすがにハズいです」って言ったんですけど、「いや、これがいいよ。これがいい。これ、弾ける奴はそうそういないよ」ってゴリ押しされて、適当に弾いたやつが使われることになったっていう。
松尾:試し弾きがね。でも、このソロ、私も好き。スタジオに行ったら、「めっちゃいいソロが録れたんだよ。これ、絶対好きだと思う」ってNAOKIさんが聴かせてくれて、確かにヘンテコだけど、弾こうと思っても、これはなかなか弾けないと思いました。
──そのギターソロの裏で、もう1本ギターが鳴っていますよね?
亀本:それはNAOKIさんが付け足したんですよ。「もしライブで一緒にやることがあったら、尺を延ばして、自由に掛け合いしたら最高だよね」なんて話しながら。
──それは聴きながら、想像しました。今度のツアーでぜひ(笑)。
松尾:デリコ呼べるかなぁ(笑)。でも、やりたいですね。
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