【インタビュー】Ken Yokoyama、90sパンクカバーアルバムを語る「愛しているんですよね、僕はこの頃のバンドとか曲を」

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■普通だったらゲストホーンを招いたりするんだろうけど
■ライブでちゃんとやりたいからギターでアレンジした


──オリジナルの楽曲やフレーズを愛しているのが溢れ出ている仕上がりです。そして当たり前ですけど、オリジナルより演奏が上手すぎる。

横山:あはは。

南:そうですか?

──オリジナルでは音階が分かりにかったギターソロも、“こうやって弾いていたんだ”って、すごくクリアに分かりますから。

南:分かりにくかったから、そう弾いたって部分もあるかもしれないですけど。

──それに当たり前ですけど、こだわりが細かいですね。このピッキングノイズも入れるの?とか、そこまでやるかと。もしかしたら、今までのオリジナルアルバムより時間が掛かったんじゃないですか?

横山:それありますよ、うん(笑)。楽曲を愛しているがゆえ、刷り込まれちゃっているものがあるんですよ。だから「ここはこれ入れようよ」とか、普段やらないアプローチをわざわざ。自分らのオリジナルだったら、あまりやらないようなことしてみたり。全て愛ゆえ、ですよ。


──Rancidの「Roots Radical」もティムとラーズのごとく、南さんと横山さんで歌い分けてますもんね。

横山:そう。この曲をやると決めた時点で、ラーズは南ちゃんにやってもらうしかないなって。カッコいいですよね。

南:歌うのも楽しかったな。

──Less Than Jakeの「All My Best Friends Are Metalheads」は、オリジナルはホーンもいる編成だからホーンフレーズも入ってますけど、Ken Yokoyamaはそれをギターでホーンっぽく弾くというこだわり。

南:普通だったらゲストホーンを招いたりするんだろうけど、Ken Yokoyamaのライブでちゃんとやりたいからギターでアレンジしたんですよ。

横山:どう弾いたら、ちょっとホーンぽいニュアンスが出るかなとか。そんなことを考えましたね。普通に弾くならフィンガリングで持っていくけど、ホーンのニュアンスだからスライドだよなとか。ギタリスト魂も刺激されたりして。



──Descendentsのピッキングも、かなりのオタクっぷりが炸裂してますよ。

横山:やっちゃってますね。「ここはハーモニクスか、こっちはブラッシングだね」とか、細かいところはいっぱい。

南:はい(笑)。「オリジナルでは、ここでなんか聴こえるよね」とか、細かいところまで分析しちゃったり。

横山:「南ちゃん、ここは全部ダウンピッキングで弾くよ」とかね。ダウンじゃないと、あのニュアンスが出ないから。でも楽しかったですよ、本当に。

南:アルバム制作で歌詞を考えなくていいって、すごくラクなんだなって思いました(笑)。人の書いた歌詞を覚えるのは大変ですけど。

横山:だから僕は今、死んでます(笑)。ライブをするにあたって、体に歌詞を入れ直しているんです。人が書いた歌詞ってのは、その人にしか分からないストーリーがあるから、順番とか覚えにくいんですよ。

──オリジナルの曲は聴いていても、ちゃんとコピーまではしてなかったですか?

横山:そうですね。歌ってみると、この曲の歌詞にはこの言葉が出てくるはずだけど、その前はどういう感じだったかなとか(笑)。

──細かいところまでこだわってカバーすることで、オリジナルの曲やカバーしたバンドたちの新たな魅力を発見することも?

横山:そんなこともなかったですね(笑)。どれもカッコいいな、いい曲だなってことは再発見したけど。あとサウンドプロダクションがバンドによって違うから、それはもしかしたら次に活きてくるかもしれないです。


──だいたい同時期のバンドたちであり、’90年代のパンクムーヴメントを形成したバンドたちですけど、どのバンドも、サウンドもアプローチもすごく違うんですよね。多彩なバンドがうごめいていた時代でもあったんだなと。

横山:それが一大シーンを形成していたっていうのが、今考えるとすごいことですよね。僕自身、当事者の一人でもあるから言うのは恥ずかしいけど、音楽的に豊かですね。例えばBad Brainsって、わずか1分余りの曲にいろんな音楽的エレメントが入り込んでいる気がするんですよ。知らない人からしたらBad Brainsの音楽はただのノイズだけど、激しい音楽を聴いている僕たちからしたら、ものすごいアイデアの宝庫で豊かに聴こえるんですね。バンドにもよるけど、パンクやハードコアパンクの楽曲たちはいろんなものが入り込んでいて、音楽的に豊かだなって改めて思いますね。

──Hi-STANDARDで活動を始めた時期、それらのバンドをライバル視していたんですか?

横山:ライバルって日本語で言うと、敵意みたいなニュアンスも含んできちゃうから、ちょっと違うんだけど。でも、しのぎを削ってた感はあります。

──切磋琢磨するような?

横山:うん。どっかのバンドが新譜を出すと、やっぱ聴くんですよ。「うわっ、こんなアプローチしてきた」とか、いちいちビックリしてましたね。アメリカでTen Foot Poleとのツアー中、Satanic Surfersが「Soothing」の入った『666 Motor Inn』をリリースして、みんなでツアーバスで聴いたり。Ten Foot PoleとSatanic Surfersはスプリットを出したことあったから、これはライバル心かもしれないけど、「俺はこれ聴くならアイアン・メイデンを聴くな」って、Ten Foot Poleのメンバーが言ってた。ちょっとした強がりを(笑)。でも、やっぱりしのぎを削ってた感ですよね。自分は特別な経験ができたなって、今振り返ると思うんですけど、当時はそれが日常だったんで。すごいところに身を置いてるなとは、それほど思えず。


──カバーしてみて、そんな日常も思い出すという?

横山:愛しているんですよね、僕はこの頃のバンドとか曲を。実は南ちゃんが「このカバーアルバムにHi-STANDARDの曲を入れたらどう?」って提案してくれたんですよ。僕はそのとき、ちょっとそれは違うんだよなと思って、「いや、それはいいよ」と言ったんだけど。むしろ入れておいたらおもしろかったかも。もっと見えやすかったかも、こうやって取材とか話をするときに。でもね、結局入れなくて良かったと思うけどね。

南:ねぇどっち!? どっちなの(笑)? 僕なんかは、ちょっと後追いじゃないけど、この90sのムーヴメントが既に生まれいてた時期からバンドに入ったんですよ。そのムーヴメントにはHi-STANDARDがいた。日本にもこういうバンドがいるんだ、みたいな。だから僕からしたら、このカバーしたバンドたちとHi-STANDARDが並ぶのは、普通にありなんですよ。

横山:そういうふうに提案されたのは、僕はすごく嬉しかったんですよ。でも入れるのは『The Golden Age Of Punk Rock Vol.2』でいいかなと(笑)。

南:Vol.2があるのか(笑)!?

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