【インタビュー】fuzzy knot、新機軸「Imperfect」に覚悟「完璧なんてない世界で、だけど完璧を夢見て戦う美しさ」
■その曲が持っている主役みたいな音がある時は
■ギターはシンプルなアレンジに徹するべき
──Shinjiさんは、田澤さんが書かれた歌詞の世界観をどう感じていますか?
Shinji:先ほど田澤がサナギと言っていましたけど、不完全だからいいことって結構ある気がするんですよね。みんなが皆完璧だったらきっと面白くないと思うし、不完全な中にすごいことがあるからこそ、すごいと思える。だから、“不完全でいいんじゃない?”と思いますけどね…なんか、すごく難しい歌詞じゃない?
田澤:分かりやすさはゼロ(笑)。
Shinji:スタジオで訊いた気がするんだけど、歌詞冒頭のベロニカって花なんだよね?
田澤:そう。これもベロニカっていう言葉が先に浮かんできて。
Shinji:花言葉は何だったっけ? 自分で調べて“なるほどね”と思った覚えがある。
田澤:名誉とか忠実が花言葉。どのタイミングで語られるのが美しいのかなと考えて、今までお話ししていなかったんですけど、ツアータイトルを付けた時に僕がイメージしたのは、実は蝶々なんですよ。蝶々は死の象徴とか、命の象徴といわれるんですね。サナギの中で、生まれた時とは全く違う姿になるという。創造は破壊から、みたいな。その辺を、ツアーが終わる頃に上手く表現できていたらいいな、という想いもあったので。それで蝶々が歌詞に出てきたというかね。
▲田澤孝介 (Vo)
──ツアータイトルを付けたのも田澤さんですか?
田澤:今まではShinjiが決めてくれていたんですけど、今回は僕です。繋がっていくものにしたいと思ったので、ツアータイトルを先に出して、“その心は?”という部分をツアーを通じて、この曲を通じて打ち出していけたら、一つの物語ができるのかなと。これまでのfuzzy knotは、そういうコンセプトを持って活動するというより、都度都度で完結をしていくやり方だったんです。けど、今回のツアーが終わったらその続きがあって、どんどん繋がっていく、転がっていくみたいな。そうしたいという意図がありまして、今回はその走りです。
──今、お話を伺いながら、fuzzy knotの進化のありようは、完全変態の果てに最終形態になる蝶とシンクロするなと感じました。曲調も毎回驚くほどガラッと変わりますし、曲に合わせてビジュアルも変わりますし。fuzzy knotを象徴する曲なんですね。
田澤:今回はギターソロがないんですよ。昨日もShinjiとこの話になったんですけど。今までもそういう曲はあって、珍しくはないんですけど、ギターとヴォーカルの2人のユニットでって考えると、ギターソロがないって結構なトピックだという気が僕はしていて。
──たしかにそうですね。
田澤:“ソロ、あっても良かったじゃん”とは思うんですけど、入ってこなかった。たぶんShinjiとしては、不要だったら普通に入れない、みたいなことだと思うんです。
▲Shinji (G)
──Shinjiさんに躊躇はなかったですか?
Shinji:全然ないです。長いことバンドをやってきて、“ギターソロがなきゃダメ”みたいな意識は早い段階からなかったですし。もちろんあったらあったで、絶対いいものにしたいと思って考えますけど。それよりも僕は時間を結構気にしていて。分数が短く感じられればいいんですけど、ただ長いだけなのはあまり好きじゃない。この曲はDメロがあるので、それにプラスしてギターソロが入ると、全体としてちょっと長いなと僕は思ったので。だから、リフ程度にしてすぐにDメロにいっちゃうみたいな。という意味でソロは、“必要じゃなかったらなくていいよね”精神ですね。
──たとえギターとヴォーカル、2人きりのユニットであっても?
Shinji:“この1曲しかないです”ということなら、ぜひとも入れたいという願望が湧くかもしれないですけど、これまでにもいろいろな曲を出しているわけで。やっぱりその曲が持っている雰囲気に寄り添うのが一番だと思いますね。これはギターソロだけの話ではなく、ギターアレンジ全体についてもそうです。その曲が持っている“主役”みたいな音ってあると思うんですよね。例えばストリングスが主役の曲だったら、ギターまでゴリゴリに動き回ってしまうと“どっちを聴いていいのか分からない”となってしまう。そういう時は、ギターはシンプルなアレンジに徹するべきかなと。一応、アレンジの段階ではいろいろと動いてみたりしますけど、“邪魔だな”と思ったら躊躇なく消します。ギター中心ではなくて、なるべく全体で見たいから。
──この曲は、fuzzy knotとして今後、よりバンド感のある活動をしていこうという決意と覚悟も感じました。5月2日のライブツアー<fuzzy knot Tour 2024 ~3 years knot~>のファイナル/東京・Spotify O-WESTでギアが変わった印象を受けましたし、そういう変化のタイミングなのかなと。
田澤:本当にそうなんです。僕はこれまでツアータイトルはShinjiにお任せしてきたし、何だって良かったんです。でも、fuzzy knotに何か足りないものがあるとしたら、きっとそこかなと。メンバー個々ではなく、“fuzzy knotとしてメッセージしていきたいもの”というか。それまでの僕は“いや、メッセージしたいものは歌詞に込めてるんで”みたいなスタンスでいたんですけど、そうではなく、やっぱりそれを表現する方法論として、物語がないといけなくて。でも僕は、そこまで踏み込めていなかったかもしれない部分で。
──fuzzy knotの活動に対して、遠慮もあったのかもしれないですよね。
田澤:まさに。言葉を紡ぐ人間としての自覚と責任は持っていましたけど、fuzzy knotという一個のプロジェクトが動くにあたっての土台を、果たして自分が司っていいのかなみたいな。そこには踏み込めていなかったので。でも今は、そういう遠慮は不要だったかもなと思います。だから今回は、完全体に向かって切磋琢磨していきたいよね、という、羽化(=Emergence)をテーマに掲げて。加えて、それには自分一人の力ではなくて、ファンの皆さんの存在が必要ですよねというところを、今まで出したことのないような楽曲とか音像に落とし込んで、このタイミングで出したと。
▲<fuzzy knot Tour 2024 ~3 years knot~>
──ツアーとこの曲が、しっかり絡み合っているんですね。
田澤:だから、歌詞もあからさまに僕、今回はオチを付けているんですよ。今までだったらもう少し分かりにくくしたはずなんですけど。「“私”の隣にいてよ」の、私に鍵カッコを付けたりしなかったんです、今まで。でも、私(I)の横に“’”(アポストロフィー)があることで、不完全(Imperfect)だったものが、「私は完璧です(I’m perfect)」になりたい、という。あくまでも“いつか言わせてほしい”であって、完璧はないし、完璧なんて嘘だと知っていながらも、“それを共有できる関係値だったらいいですね”ということを歌いたかったんです。ここまであからさまに書いたことはなかったけど、それでもまだ足りないかもしれない。パッと見て“分かる人には分かるやろ”というレベルだとは思います。
──仕掛けに気付くには、歌詞を凝視する必要がありそうですが、曖昧な表現にせず明示しているのは、田澤さんの作詞において新機軸ですね。
田澤:もしかしたら、扉を一つ開けようとしているのかもしれない。そこはまだ自覚できてないレベルですけどね。
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