【ライヴレポート】fuzzy knot、ツアー<時の旅人>ファイナルで「絶対にもう一回会おうぜ」
シドのShinji(G)とRayflowerの田澤孝介(Vo)によるユニットプロジェクトfuzzy knotのツアー<fuzzy knot Tour 2023 ~時の旅人~>最終公演が、11月19日に東京・新宿BLAZEにて開催された。同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。
◆fuzzy knot 画像
fuzzy knotが初めて新宿BLAZEでライブを実施したのは、2022年1月のこと。あの日、フロアには等間隔に椅子が用意されていて、マスク姿の観客は飛沫防止のために出したい声を堪えて、必死に拳を振り上げていた。ステージにいるメンバーも、ガイドラインを説明した上で安全にライブを全うしていた。
そして2023年11月19日、fuzzy knotの<fuzzy knot Tour 2023 〜時の旅人〜>ツアーファイナルで再び新宿BLAZEを訪れると、椅子はなく、床が見えないほど満員の観客が集まっていた。開演前からワイワイと賑わっていて、それだけで感慨深い気持ちになってしまう。
開演時間になり、青い照明が照らすステージに重たいピアノの音が流れた。サポートメンバーの与野裕史(Dr)と工藤嶺(B)に続いて、Shinji(G)、田澤孝介(Vo)が入場。荘厳なスケールの演奏が始まると、田澤はどこか遠くを見ながら何かを掴むように宙に手を伸ばし、首をぐるりと回し、マイクを握り口元へ運んだ。ゆっくりと口が開くのが見えた瞬間、第一声にして神聖な世界へ連れていかれたかのような錯覚を覚えた。
オープニングを飾った新曲「時の旅人」は、fuzzy knotの新境地を切り開いた楽曲であり、生で聴くと思わず息をするのを忘れるほど、見入ってしまう力があった。そして、寸時の沈黙のあと「ブルースカイ」で首元までとめていたシャツのボタンを引きちぎるかの如く、その場のテンションを一気に持ち上げる。フロアから無数の拳が上がった。1番を歌い終えて田澤が耳に手を当てると、爆音の中で確かに観客の声が聴こえる。サビで田澤とShinjiが同時に拳を天に突き上げた。眩しい照明、床が揺れていると思うほどドスンドスンと響くドラムとベース、本能的に体を動かさずにいられない高揚感のあるギター、耳ではなく心に入ってくるヴォーカル。こうしてfuzzy knotのライブは始まった。そして田澤がフロアを見渡してマイクを握った。
「今日はツアーファイナルですけれど、今回は何本まわったのかをあまり考えずに、ツアーをまわっておりました。というのも、今日がツアー初日で、今日がファイナルである。そういう心づもりでやっておりましたら、何本目かとかはいつの間にかどうでもよくなってしまい、今日が何本目かとかはこっちの都合だなと。〜中略〜 ただ、いい時間を過ごせてきたなと思っております。1本1本しかないと思いつつ、積み上がっているものは確実にあるから、それをみんなと楽しめたらいいかなと思っております。で、新宿BLAZEでfuzzy knotがライブをやるのも、今日がきっと最後だと思う(※2024年7月に閉館)。結構ね、ここはお世話になっているんですよ。一抹の寂しさはあるので、悔いが残らないように心底楽しんでいきたいなと思いますので、皆さんもしっかりと受け止めていただけたらと思っております」──田澤孝介
大きな拍手を受けながら「どっぷりと世界に浸っていただけたら」と言って、ヘヴィなギターから始まる「深き追憶の残火」へ。地鳴りのような、凄みのある振動が伝わる。何より改めて感じるのは、田澤というヴォーカリストは憑依型かと思うくらい、楽曲によって声、表情、佇まいが違う。それを4曲だけで圧倒的に魅せるのだから、さすが。
ここでイントロからダークで美しい世界観を創出する「Inferno」を披露。サビで田澤が腕を回すサインを出しても、腕を伸ばしているのはフロアにいる半数のみ。挙げなかった人の気持ちもわかる、圧倒されて手を挙げることを忘れるのだ。結成から約2年半でバンドが成長しているのは、誰の目から見ても明らかだった。
「Hello, Mr. Lazy」では「もっと! もっと!」と田澤が叫び、今度は全員が腕を思い切り振り下ろしてからのヘッドバンキング。そしてShinjiのギターソロで魅了した後の、「洒落せえ!」のサビが痛快爽快。「愛と執着とシアノス」は、Shinjiのブルース調のギターソロからスタート。特にこの曲は田澤とShinji、個々のスキルの高さを存分に堪能できた。
スリルなサウンドが素晴らしい「ペルソナ」では、田澤もShinjiもステージを縦横無尽に動く。夕日色のスポットライトの中で奏でられた「哀歌 -elegy-」は、切なくも一筋の希望や愛を求める情景がくっきりと浮かび上がる。ステージ上の5人の鬼気迫る演奏は、曲を重ねるごとにゾーンに入っていく。デビューライブから彼らのステージを見ているが、今回の凄みはこれまでと一線を画していた。再び、田澤が話し始める。
「いやぁ……なんちゅうかね、“没頭できる楽しさ”みたいなものに我々は取り憑かれておりまして。〜中略〜 自分らが“今、没頭できたな” “いい音を鳴らせたな”みたいな瞬間に、(皆さんが)立っていてくれている、聴いていてくれているというのが、とってもハッピーでございます。その音が鳴った証明をしてくれているのは、聴いてくれている人たちなので。集まってくれてありがとうございます」──田澤孝介
「(演奏しながら)今日がファイナルなのかと思ったら、切なくなったな」──Shinji
胸中を口にしたShinjiの言葉に田澤も賛同する。
「その気持ちはわかんねん。今日がツアー初日でありファイナル、という気持ちでやっていたけどさ、やっぱり今日が最後やん。毎週会ってたやん、俺たち。それがさ……あ、旅行で会うか!」──田澤孝介
と1人でボケツッコミをすると、フロアから大きな笑いが起きた。こうしてお客さんが気兼ねなく笑い声を出せることも、2人は嬉しいはずだ。田澤は喜びの笑みを浮かべてこう語った。
「今回のツアーからガイドラインが外れましてね。fuzzy knotってコロナ禍で生まれたグループなので、最初はね「膝を曲げて飛んでるふりをしろ」とか「頭から上は拳を上げるな」とか言って、当然声は出されへんし、マスクでみんなの顔をちゃんと見られへん状況から始まっている。そこから考えたら感慨深いです」──田澤孝介
ライブ後半はジャキジャキと弾くギターが印象的な「トリックスター・シンドローム」からスタート、サビのキメが気持ちいい「カミカゼスピリット」へと続く。スカロックな「Joker & Joker」でいつもよりテンポ感が加速していると感じるくらい、聴いている観客も思わず小刻みにステップを踏んでいる。
そしてデビュー曲「こころさがし」は、普遍性が高くてその場の景色をポップに変えてしまう力がある。また、青い照明に照らされたミラーボールが回り出し、雨粒のように会場をポツリポツリと照らす中で演奏したのは、バラード「キミに降る雨」。お客さん一人ひとりの顔を見ずとも、どんな表情を浮かべているのか想像できるほど素晴らしい。ここでライブが最終局面にあることが田澤から伝えられた。
「声を大にして言う。ラストスパートのゾーンは……すげえ短い! これを言われてみんなはどうしたらいいか? そう、残り3曲で燃え尽きるのだ」──田澤孝介
目を輝かせながら、一言一言を噛み締めるように放つ。「集中……濃厚……極熱の準備はよろしいでしょうかー!?」と問いかけると観客が一斉に手を挙げた。「やれんのかい!? 全部置いてけよ!」と発した言葉を合図にドーンと衝撃音が鳴り響いて、「Set The Fire !」が始まった。みんながジャンプをして、残っている体力をここに置くかの如く、ボルテージの火柱が上がっていく。そんな絶景を見て笑みを浮かべるShinji。「まだまだ行くぞー!」と叫び「ダイナマイトドリーム」をお見舞いして、全員が思い切り高くジャンプ。“興奮と熱狂の渦”という表現がしっくりくる。
そして爆音でアグレッシブな猛攻を見せる「#109」へ。いいライブとは誰もが悔いを残さないこと。“明日もこのライブが観たい”じゃなくて、“こんなライブを観られたから、しばらく日常生活を頑張れそう”と思えるもの。そんなことを彼らのステージを見ながら感じた。歌い終えた後も、何度もシャウトする田澤。一滴の体力も残さないようにしているように見えた。
「最後の曲になりました。さっきも言ったけどさ、コロナ禍でできたバンドなので、いろいろと願望を抱えながらも、それが叶わずに今までやってきたんですけど、今回のツアーからそれが叶うっていうことで……最後に俺のお願いを聞いてくれ。次の曲、イントロのほんの短い時間やけど、現状はシーケンスで俺の声でコーラスが流れているんです。本当はね、そこをみんなの声で聴きたかった。今日は声を出していいから、曲を知っている人は思いっきりでかい声で歌ってくれ。知らん人はこれを機に覚えて帰って、次にまたその機会があった時には、今日を超える熱量で一緒に鳴らしてくれたら嬉しいなと思います」──田澤孝介
ラストナンバーに選んだのは、「Before Daybreak」。いっぱいの光を浴びながら、みんなが声を上げる「おーおー! おーおー!」。それを見て嬉しそうな田澤。これまでのライブも十分よかったけど、やっぱり何かが欠けたままだった。“観客の声”というピースがハマって、初めてfuzzy knotのワンマンが完成したのだと思った。この日、田澤はこんな言葉で締め括った。
「絶対にもういっぺん会おうぜ。ここにいる全員、絶対にもう一回会いましょう!」──田澤孝介
取材・文◎真貝 聡
撮影◎今元 秀明
■<fuzzy knot Tour 2023 ~時の旅人~>11月19日(日)@東京・新宿BLAZEセットリスト
02. ブルースカイ
03. ダンサー・イン・ザ・スワンプ
04. 深き追憶の残火
05. Inferno
06. Hello, Mr. Lazy
07. 愛と執着とシアノス
08. ペルソナ
09. 哀歌 -elegy-
10. トリックスター・シンドローム
11. カミカゼスピリット
12. Joker & Joker
13. こころさがし
14. キミに降る雨
15. Set The Fire !
16. ダイナマイトドリーム
17. #109
18. Before Daybreak
■<fuzzy knot LIVE 2024 ~Shinji Birthday~>
open18:00 / start19:00
▼チケット
¥6,600(税込/ドリンク代別)
※スタンディング
※4才以上有料
【オフィシャルサイト最速先行予約】
受付期間:11月19日(日)20:00~11月28日(火)23:00
https://www.fuzzyknot.com/news/term/live/
この記事の関連情報
【ライヴレポート】fuzzy knot、ツアー<The Emergence Circuit>完走「田澤に出逢えて良かった」
【インタビュー】fuzzy knot、新機軸「Imperfect」に覚悟「完璧なんてない世界で、だけど完璧を夢見て戦う美しさ」
fuzzy knot、新境地となる新曲「Imperfect」を8月リリース
fuzzy knot、ツアー<The Emergence Circuit>を今夏開催+新曲リリース予告も
【ライブレポート】fuzzy knot、Shinjiバースデイ公演で「人生最大に嬉しい誕生日になりました」
wyse25周年イベント<ROCK BATTLE>、FANTASTIC◇CIRCUS、fuzzy knot、中島卓偉、石月努、THE MICRO HEAD 4N'Sを迎えて4days開催
fuzzy knot、東名阪ツアー開催決定
fuzzy knot、東京キネマ倶楽部公演<Shinji Birthday>を2024年2月開催
【インタビュー】fuzzy knot、始動から2年半の来歴と最新曲に込めたメッセージを語る「作品は時間を超えていく」