【インタビュー】ACIDMAN、ジャズやプログレを行き交う新曲の革新度と二面性「“白と黒”だからこそカラフルな曲にしたかった」
■善と悪をはっきりさせちゃいけない
■悩んでいるひとりの人間の目線で書いた
──「白と黒」の曲展開は、まずDメロ始まりで、イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ→イントロ→Aメロ→ジャジーな間奏1〜プログレッシヴな間奏2→Dメロ→サビという構成ですよね。
大木:この曲でOKが出たときに、ドラマ制作サイドからひとつだけオーダーいただいたのが、「切ない部分がほしいです」ということだったんですね。曲冒頭は歌(Dメロ)から始めることで、切ない雰囲気を追加したという構成ですね。そこはオーダーに応える形で。ただそれだけではつまらないから、いろいろ曲を展開させたいなということで。
──いわゆるイントロ→Aメロ→Bメロ→サビを繰り返すようなJ-POPの定型とは異なる展開です。
大木:もちろんそういう曲構成もACIDMANの曲にはたくさんあるんですけど、今回の展開は間奏も含めて気に入っていますね。自分の中では自然な流れであり、フックを効かせることもできたという。
──ちなみに、Bメロが一度しか出てこないですよね。実は、「灰色の街」もBメロが一度しか出てこないんですけど、その際のBARKSインタビュー時にも「自然な流れ」とおっしゃってました。
大木:ああ、そうですね。この曲ではもう一回Bメロは聴きたくないというか、2番Aメロの後に新しい刺激がほしかったので。とは言っても、やっぱり自分では流れるように自然に作っています。
──なるほど。「灰色の街」もそうですが、一度しか出てこないから逆に印象付くというふうにも受け止めましたが。
大木:今回は、いろいろな要素が目まぐるしく展開することがアレンジ的な目標のひとつで。そのために、いろいろな要素を入れたかったから、一回わかりやすく1番サビまで行った後は、2番Aメロの次に間奏へ行ったりとか、その間奏も最初のジャジーなギターパートを後半でさらにぶっ壊したい感じがあったり、最後はユニゾンになったり。そういう意味でもプログレッシヴですよね。
──この曲にジャジーなイメージを印象付けているのが、Bメロと間奏前半部分です。
大木:なんちゃってジャズですけどね。僕の頭の中にあるイメージをメンバーに伝えて形にしたとき、「ここはスイングしてくれ」とメンバーに提案したんですけど、実は最初、少し普通に感じちゃったんですよ。ところが、こうして楽曲を俯瞰してみると、このアレンジで正解だったと思いましたね。おっしゃるとおり、全体を通して見たときに、Bメロと間奏前半部分がわかりやすくしている。
──「ここはスイングしてくれ」とかのキーワードをベースの佐藤さんやドラムの浦山さんに伝えて、それぞれがそれぞれのパートを構築していったんでしょうか? 大木さんのギターソロはもちろん、ベースのランニングフレーズやドラムの4ビートといったジャジーな要素が曲の中に緩急を生み出しているというか。
大木:ジャジーなギターソロに関しては、結構前から温めていたフレーズで。ベースは確かに「ランニングフレーズを弾いて」って言ったんですけど、「ランニングってどんなだったっけ?」という反応でした(笑)。この曲に関してはレコーディングまであまり時間がなかったこともあって、俺の言う通りにやってくれという感じで、細かく指導していましたね。だから彼らもレコーディングまではあまり理解しないまま挑んでいたと思います。どういう曲なんだろうって、探り探り(笑)。ただ、ジャズはメンバーみんなが通っているというか、好きだと思いますよ。僕も基本的に家ではほとんどジャズとポストクラシックしか聴いていないので。ジャズってずっと昔からとんでもないクオリティじゃないですか、あの時代からテクニックとしても半端ない。だからそれを聴くのは楽しいんです。
──大木さんのギターコードというかテンションの入れ方は普通のロックとは違うところがあります。
大木:最初にバンドを始めた高校生くらいの頃から、ジャズで覚えたものをロックやパンクで鳴らしてるから。結構みんなから「7thって何?」「その指どうやってるの?」って聞かれることも多かったりして。当時は誰もやってなかったんですよね、そういうバンドもあまりいなかったので。今や、それもデフォルトくらいになってみんな使っていますけどね。
──ジャズやプログレという言葉もありましたが、大木さん自身にこの曲のサウンド的なテーマとして、その2つはあったんでしょうか。お話を聞いているとジャズやプログレを意識して作ったという限定的なものではなさそうです。
大木:そう。ジャズではないし、かといってプログレということでもないですね。ドラマの雰囲気…とは言っても曲を作っている段階では映像を見れていないので、どういう空気感になるのかわからなかったんですけど、ちょっと怪しさの漂う、ダークな世界観がいいだろうなと思ってました。でも暗すぎると重くなりすぎてしまう。台本を読むとポップなところもあったし。ポップであり、でもちょっと怪しげな感じで作りました。だから、ジャンルありきではないんです。僕の勝手な印象ですけど、詐欺師が詐欺をするときってジャズが合うなとか。トランペットの怪しい感じが合うし、SOIL&“PIMP”SESSIONSは格好からして、そういう怪しさみたいなものが出ているから、“絶対これはタブ(ゾンビ)君に吹いてもらおう”と思ったんです。
──なるほど。曲としていろいろ展開したかったということですが、それを1つの曲として成立させてしまうACIDMANのバンドとしての懐の深さがあってこそですね。では、さらに内容についても聞いていこうと思いますが、今回の「白と黒」というタイトルは、主題歌のオーダーをもらった際にキーワード的にあったものですか。
大木:例えば“クロサギ”“シロサギ”じゃないですけど、詐欺師と言ったら“白と黒”でしょっていう考えで。シンプルにわかりやすくしたいなというのはありました。
──ただ“白と黒”では割り切れないものがあるというのが、ACIDMANがずっと描いてきたテーマでもあります。今回、「白と黒」を書くにあたって、書き方や表現として気をつけたことはありますか?
大木:そこはあまりなかったんですけど、善と悪をはっきりさせちゃいけないとは思っていました。ドラマもそうですけど、何が善で何が悪かは、目線によって変わってしまうから。主人公自身、僕自身も、善と悪というものがはっきりしていない、という感じはありました。正義のつもりで書いていないし、悪のつもりでも書かないようにしようと。あくまで、ひとりの悩んでいる人間の目線で書いたもので。
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