【インタビュー】ACIDMAN、大木伸夫が語る新曲「灰色の街」と現在「世界は歌に成っていく」

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ACIDMANが6月3日、約3年ぶり通算29枚目のシングル「灰色の街」をリリースした。表題曲「灰色の街」は<ACIDMAN LIVE TOUR “創、再現”>初日に初披露された新曲だ。カップリングには同ツアーのファイナル公演から全20曲のライブ音源を収録。加えて、ジャケットにキングコング西野亮廣の脚本&監督による絵本『えんとつ町のプペル』の新作イラストを採用するなど、濃厚なボリュームや高いアート性を持つ話題作の完成である。

◆ACIDMAN 画像 / 動画

全21曲が収録されたことや表現力豊かなアートワークは、それだけで十分注目に値するが、このシングルのコアはやはり「灰色の街」という壮大で感動的で生命力に溢れた楽曲そのものにある。「“いいメロディができた。これでまたひとつ何かが変わるかもしれない”っていう感覚がありました」とは大木自身の言葉だが、旋律と言葉がひとつのメロディとなり、果てしない感情の渦と研ぎ澄まされた音色が大きな意志へと導かれるようなサウンドプロダクションはあまりにもドラマティック。シンフォニック、アコースティックギターと強烈に歪んだエレキギター、エディットされた生のドラムサウンド、有機的に駆け巡るベースプレイなど、特筆すべきポイントは尽きない。しかしその中核を貫いているのは、あくまでもメッセージ性の高い“歌”にあり、現在の状況とシンクロする歌詞が心に希望の光りを灯してくれる。

ACIDMANの今について、シングルと同時リリースされるライブDVD『ACIDMAN LIVE TOUR “創、再現” in 新木場 STUDIO COAST』について、ギタリストとして、ボーカリストとして、そしてシングル表題曲「灰色の街」について。5月某日、大木伸夫(Vo&G)のプライベートスタジオと回線をつないで行ったオンラインによるロングインタビューをお届けしたい。

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■灰色という言葉を自分が使いたがっていて
■そこから紐解いて、ここに落ち着きました

──新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が発出されて、外出自粛生活も長くなります。今回のBARKSインタビューもWEB会議サービスZOOMを使ってのリモートとなりましたが、大木さんは自粛期間をどう過ごしていますか?

大木:ほぼ毎日、このプライベートスタジオに来て、曲を作ったりZOOM会議をしたり、いろいろ戦略を練っていますね。

──現在は5月半ばですが、先のことも具体的に見えてきましたか?

大木:リアルで行うライブがしばらくは難しい状況になっているので、配信ライブとかでいかに収益を上げるか、つまりマネタイズを考えたり、配信ライブとして熱量のあるものを届けるにはどうしたらよいかを考えたり。ライブが観られない代わりの配信というだけではなく、こちら側としても“配信って素晴らしいじゃないか”という見え方ができるものを模索していますね。

▲大木伸夫(Vo&G) <ACIDMAN LIVE TOUR “創、再現”>2019年12月12日@東京・新木場STUDIO COAST

──そこでは、一悟 (浦山一悟 / Dr)さんやサトマ (佐藤雅俊 / B)さんとのやりとりも多いんですか?

大木:メンバーはノータッチです、全然。震災のときもそうでしたけど、こういうときに震えて動けなくなっちゃう二人なので(笑)。だからある意味、任せてもらっているという感じなんです。3月11日に福島で無観客ライブ(カメラ一台にて“生配信ドキュメントライブ”を配信)をやったんですけど、それ以来、二人とは会ってないのかな。

──バンドとして音を合わせていないと心配になる、っていうのはないですか?

大木:うちの場合はあまりないんですよね。もう付き合いが長いってこともあるし、こうして毎日ひとりで曲作りしてる状況も、コロナ前とほとんど一緒だから。楽曲制作時は、ある程度まとまってからみんなにスタジオに来てもらうので、1ヵ月くらい会わないことはよくあるんです。そこで何かが変になるということもこれまでなかったし、もちろんそれぞれのスキルが落ちないように個々で努力はしてると思うので。

──では、今、二人がどう過ごしているのかは特に把握してるわけではないんですね?

大木:「ホウレンソウ (報告・連絡・相談)して」とは言ってるんですけど、一回もしてこないですね(笑)。逆に「何すればいい?」っていう連絡が一回きただけで。「それは自分で考えてください」っていう。相変わらずですね(笑)。

──ははは。この期間に何か新しく始めたことはありますか?

大木:ないですね。ライブやイベントが中止や延期になって、収入はまったくないけど、日常はまったく変わっていないんですよ。毎日、このスタジオに来て、曲を作って、夜に家へ帰って、海外ドラマを観て、寝て、また朝起きて、ここに来て、曲作り、という毎日の繰り返しがあって。それ自体はまったく変えずにできているので、逆に新しいことを始める時間もないという。

──ご自身のルーティーンは意識的に崩さないようにしているという?

大木:こだわっているわけではないんですけど、“毎日やることが多いな”と。やること多いけど、なかなか今は実入りにならないから、耕している最中というところですね。


──耕しているものが、今後、新曲として聴こえてきそうですね。では、6月3日にシングル「灰色の街」がリリースされます。この曲は、昨年末に行なった1stアルバム『創』再現ライブ<ACIDMAN LIVE TOUR“創、再現”>時に初披露した新曲であり、そのライブの模様はシングルのカップリングに収録されるほか、ライブDVDとして同時発売されます。「灰色の街」はいつ頃作った曲だったんですか?

大木:3年前です。実は1年前に“形にしようか”という流れというか、そういう企画があったんですけど、流れてしまって。そこからまたしばらく曲のアレンジとかを煮詰めていって、今回やっとリリースできるという感じなんです。

──3年前に曲ができたときのことって覚えていますか?

大木:最初は、まさにこのスタジオでギターを持って、Aメロの歌い出しの旋律から作ったんですけど、メロディと同時に言葉も出てきたんです。 “灰色 灰色の街”という冒頭から、言葉とメロディが一緒に出てきて。“これは「灰色の街」と歌いたがっているな”みたいなところをヒントに制作を進めて。この頃は別の曲でも、仮タイトルを“灰色”としていたことがあったんですけど……病んでたんですかね(笑)。響きなのかもしれないですけど、灰色という言葉を自分が使いたがっていて。そこから紐解いて、ここに落ち着きました。

──当時は、シングルリリースとかアルバムに向けてとか、そのための曲作りでもあったんですか?

大木:そうでもなかったんです。昔は1年とか1年半に1枚のペースでアルバムを作っていたじゃないですか。でも今はライブビジネスのほうが盛んだったり、自分たち自身の意識としても、アルバムを作ってそれが消化されないまま次のアルバム制作に取りかかるようなタイム感ではなく、期間を空けたいと思っていた時期だったので。ただ、制作欲はものすごくある人間なので、早くリリースしたいということと、でも前の作品もじっくり聴いてもらいたいということの狭間でせめぎ合っていました。

──メロディと言葉が同時に出てきたということもあって、曲が完成したときの手応えも大きかったでしょうか?

大木:それはすごくありました。Aメロから進んで、どんどんどんどん転がっていくようにサビができて。そのサビのメロディが……もちろんどの曲も大好きなんですけど、特に手応えがあった。“いいメロディができた。これでまたひとつ何かが変わるかもしれない”っていう感覚がありました。

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