【インタビュー】ACIDMAN、ジャズやプログレを行き交う新曲の革新度と二面性「“白と黒”だからこそカラフルな曲にしたかった」

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ACIDMANが5月10日、新曲「白と黒」を配信リリースした。同楽曲はテレビ東京開局60周年ドラマ8『テレビ東京 × WOWOW共同製作連続ドラマ ダブルチート 偽りの警官 Season1』の主題歌として書き下ろされたものだ。テーマは“表と裏” “善と悪”という誰しもが抱える二面性にある。

◆ACIDMAN 画像 / 動画

“静と動”を巧みに同居させるバンドサウンドはACIDMANならではのもの。特筆すべきは、SOIL&“PIMP”SESSIONSのタブゾンビ率いるブラス隊によるダークでアダルトなトーン、さらにはジャズテイストをふんだんに盛り込んだセクションや、キング・クリムゾンを彷彿とさせるプログレッシヴなアプローチにもある。一見、斬新な混成と思えるこれらはしかし、二面性というテーマを持つ「白と黒」にとって自然な流れだったという。結果楽曲は、白と黒をイメージさせながらも色彩豊かなものに仕上がった。

BARKSは映画『ゴールデンカムイ』主題歌「輝けるもの」のヒットがACIDMANにもたらした影響をはじめ、現在開催中のツアー<ゴールデンセットリスト>の手応え、新曲「白と黒」に込められた現在進行系の彼らについて、大木伸夫(Vo, G)にじっくりと話を訊いた。


   ◆   ◆   ◆

■「白と黒」は間奏がキモですね
■自分でもよくできたなと思います


──<ACIDMAN LIVE TOUR“ゴールデンセットリスト”>が5月10日の京都・ロームシアター京都 メインホール公演を皮切りにスタートしましたが、手応えはどうですか?

大木:まだ序盤ですけど、いい感じですね。今回のツアーは昔の曲だったり、これまであまりライブでやっていないレア曲が多いので、自分たち自身も楽しみながらやれています。

──シングル「輝けるもの」リリース後(2024年1月)まで遡ってうかがいますが、2月6日にはTOKYO DOME CITY HALLで発売記念ライブ<New Single Release Live「輝けるもの」>がありました。こちらはスペシャルライブになりましたね。

大木:楽しかったですね。お客さんの前で初めて「輝けるもの」を演奏するという緊張感があったし、映画『ゴールデンカムイ』の久保茂昭監督がこの日のために特別映像を作ってくれたんです。それに、ゲストとして、友人であり『ゴールデンカムイ』出演者の玉木(宏)くんが駆けつけてくれたり。おめでたい1日になったな、やってよかったなと思いました。

──「輝けるもの」はBARKSインタビュー時に「キーが高くて大変」という話もありましたが、新たにツアーがスタートして演奏も重ねて、改めてどんな曲だと思いますか?

大木:ライブや音楽番組の収録もあったので、たくさん練習して歌いこなせるようになっているんですけど、実際、ライブですごく風圧のようなものを感じる曲なんです。イントロが始まった瞬間に強い風がブワーっと吹いてきて、それに吹き飛ばされそうになる感じを受けながらプレイしています。


──民放の音楽番組への出演は各方面からの反響も大きかったのでは?

大木:TBS系の音楽番組『CDTV ライブ! ライブ!』に出演したとき、Twitter(現X)で“ACIDMAN”というワードが日本のトレンド3位になったらしくて。僕はSNSをやってないから、実感はないんですけど、どうやらすごいことなんですよね。いろいろな方々が反応してくれた結果だと思います。

──長年追いかけてきたファンの方々にとっても、ACIDMANの民放音楽番組出演はレアで喜ばしいことであり、その興奮があってのトレンド入りだったんでしょうね。

大木:僕ら自身が思っている以上に、あまりテレビには出ない寡黙なバンドだと思われているようで。ただ、テレビ露出に対して積極的ではなかったというだけで、断っているわけでもないし、全然嫌いでもないですから。なので、皆さんがいい反応をしてくれたのは嬉しかったですし、出演時も演出や照明にすごく凝ってくれて、番組サイドの僕らに対する愛も感じました。

──今後、また音楽番組への出演も?

大木:もちろんです。ただ、やっぱりライブでお客さんを目の前にやるほうが何百倍も健全だな、ということは思いました。テレビって誤解を招きやすい面もあると思っているんです。たった一回の出演でトレンドになるかもしれないし、まったくならないかもしれない。その割にすごく労力が高かったりもする。すごく危ないことだなって思うからこそ、今回はいいヒリヒリ感を味わいましたけど。

──番組内のわずか1曲、数分間だけでバンドを伝えるわけですしね。

大木:伝わるわけがないですからね、1曲で。

──さらに、テレビ朝日系音楽番組『EIGHT-JAM』出演は演奏ではなく、『あの大ヒット曲の作り方とは!?』をテーマにしたトークでした。

大木:こちらのほうが楽でしたね、僕としては(笑)。


──「輝けるもの」を通じて、いろんな方々にACIDMANというバンドを知ってもらっているなかで、最新曲「白と黒」がリリースされました。今回は、テレビ東京×WOWOW共同製作連続ドラマ『ダブルチート 偽りの警官 Season1』主題歌として書き下ろされた楽曲ですね。制作はどんなふうに進んでいきましたか?

大木:曲自体は数年前から1コーラス分だけあったんです。“いい曲だけど、どんな世界観にしようかな”って頭の中に置いていた状態で。今回のドラマ主題歌の話をいただいたときに、先方のオファーとしては最初、“「FREE STAR」(6thアルバム『LIFE』収録)みたいな静かで切ないメロディとポップなサウンドで”という感じのオーダーがあったんです。ただ、まず台本を読ませていただいたんですけど、詐欺師の話だったりもするから、もう少しダークな部分をみせるというか、そういう雰囲気が合いそうだなと思って。そのときに、ストックの中の曲が合うだろうなと直感して、言葉を乗せてみたり。“これはドラマに合うな”って僕が勝手に思っただけなんですが、その曲をもって先方にプレゼンさせてもらったんです。

──バンドからの提案だったんですね。

大木:最初、監督は不安そうでしたけどね、僕がまずプレゼンから入ったので(笑)。「皆さんの要望とは違うかもしれませんが、僕はこっちじゃないかなと思うので、屈託のない意見をください」って。そのプレゼンを聞いて、“そうなのか?”って最初は険しい表情だった皆さんも、曲を聴いてもらったら一気に表情が晴れやかになって。「むしろこっちのほうがいいです」と言っていただけたという。ホッとした瞬間でしたね、よかったなって。

──大木さんが温めていた1コーラス分には歌詞も乗っていたんですか?

大木:ストックの時にはサビの部分だけ少しありました。そこは、完成形でもほとんど変わってないです。この題材にすごく合うストーリーでもあったので。台本を読み進めていくと、ただのエンターテインメントではなく、主人公・多家良さんの切なさみたいなものが根底に流れているから、その部分も曲に乗せていこうという感じでしたね。

──ドラマ制作サイドからの好評を得て、楽曲制作が本格化したという?

大木:先方OKが出たので、そこから全体の展開を作っていきました。ドラマのストーリーに寄せながら、もちろん僕のアイデンティティも入れながら、言葉を紡いでいった感じです。


──サウンド的な手がかりみたいなものはありましたか?

大木:ジャズはかじってる程度ですけど、間奏はジャズ風なものから一気にプログレッシヴなものにしたいなと思って。キング・クリムゾンの「21st Century Schizoid Man」の感じをいつかやりたいなと思っていたので、それがこの曲に合うだろうって。

──「21st Century Schizoid Man」っていうテーマもあってブラスを導入しているんですか?

大木:ブラスに関してクリムゾンは関係なく、イントロのテーマ部分とかサビのメインフレーズにブラスが入ってくるイメージはずっとあったんです。で、間奏はギターフレーズで作っていたんですけど、“間奏の最後にブラスとのユニゾンリフがハマったら、さらにクリムゾンだな”と思って…まあ自分のなかでの話ですけど、ワクワクしながら作ってました。

──確かに、間奏パートは曲がドラスティックに変わっていく感じがあって印象深いです。

大木:間奏がキモですね。自分でもよくできたなと思います。ドラマ同様、主題歌も裏切っていくというか。ヒリヒリとしたダーティな部分とかワイルドな部分が間奏で表現できたら、というイメージはありましたね。

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