【連載】Hiroのもいもいフィンランドvol.134「Temple Balls インタビュー:また早く日本に戻って今ライブやったらどんな感じか知りたいな」
2023年11月4作目となった待望のニューアルバム『Avalanche』をリリースしたフィンランドの若手ハードロックバンドTemple Ballsのヴォーカル、アルデ・テロネンが最新アルバムや今年春のツアーなどについて語ってくれました。
Pic : Joona Mäki / Huuru Media
──4作目のスタジオアルバム『Avalanche』が昨年11月に発売になりましたね。アルバムタイトル"Avalanche"の意味は”雪崩”ですが、このタイトルになった由来は?それからこのアルバムはコンセプトアルバムですか?
アルデ:コンセプトアルバムではないんだ。このアルバムに収録されてる曲「Avalanche」がアルバムタイトルになった。この曲はハンニバル将軍の物語について書いてるんだ。ローマに戦いに行く際150頭の戦像を連れてアルプスを越えたんだが、行き帰りの道中で多くの戦像を失い、最後は5頭ぐらいしか生き残らなかったのかな。とても信じられないような物語だ。まずこの曲のベースになるものができていて、ニコがギターリフのアイディアを持ってきて、そこからこの曲を仕上げていった。俺がこの曲にはこの物語が合うんじゃないかってことで、一番最初にデモをレコーディングした曲で一番最初に出来上がった曲でもある。そしてこの曲がそのままアルバムタイトルになった。雪崩のすごい勢いを俺たちの道のりの勢いにもかけてるんだ。
──この最新アルバムには11曲収録(注:日本盤には加えてボーナストラック収録)されていますが、曲は簡単に生まれましたか?主に誰が歌詞を書いているのですか?
アルデ:このアルバムの曲はわりと簡単に生まれた。ドラマーのアンッティは主にアレンジのみだけど、他のメンバーは皆一緒に作詞、作曲、アレンジとそれぞれ曲作りに参加してる。今回のアルバムの歌詞はイミ(ベース)とプロデューサーのヨナ・ティー(H.E.A.T.)がメインに書いて、歌詞が途切れていたヶ所とかを俺とニコ(ギター)が補ったりしたんだ。
──前作はソナタ・アークティカのパシ・カウッピネン所有のStudio 57でレコーディングしましたよね。今回はいろいろな場所でレコーディングしたと聞きましたが?
アルデ:大部分の俺のヴォーカルはスウェーデンでレコーディングしたんだけど、一部はヘルシンキのValimoスタジオでもした。他のレコーディングの一部はStudio 57でもしたし、例えばイリとニコのギターソロは自宅でレコーディングしたりもあるよ。いくつかのスタジオと他に可能な場所など5か所ぐらいでレコーディングした。
──自宅でもレコーディングできるんですね?
アルデ:あぁ、できるよ。ヴォーカルのレコーディングはちょっと無理なのと、ドラムも難しいかな。でもそれより小さい楽器なら可能だ。スケジュール的なものと予算とでこういう形になったんだけど、この方が簡単にレコーディングできたと思う。プリプロダクションであらかじめこっちのスタジオでヴォーカルのレコーディングしてたんだけど、いざスウェーデンにレコーディングに行ったら外が埃っぽかったのもあるし、疲れもあったりで声の調子がどうもいまいち良くなくて、プリプロダクションでレコーディングした方がよければそっちを採用したりもあった。これまでとはちょっと違う方法になったけど、それはそれでよかったと思うな。
──ニューアルバムから最初に先行シングルでリリースになった「Strike Like A Cobra」のMVではボクシンググローブをはめた女の子2人が空手をしてますよね。アメリカに「コブラ会」というウェブテレビシリーズがありますが、もしかしてこのシリーズからインスピレーションを得たとかありますか?
アルデ:そうなんだ。インスピレーションを直にうけてる。イミ、ニコと俺はこのシリーズの大ファンなんだ。最初にこの曲のギターリフを思いついたのが誰だったかは覚えてないけど、そのリフからストーリーをまわりに作っていってこの曲が生まれたんだ。MVに空手を入れたくて、そしたらMVの監督アンドレ・ロドリゲスがヨーロッパ選手権の空手チャンピオンの女性を地元で見かけて出演してもらうことになった。はっきりは知らないんだけど、もしかしたら今は世界選手権のチャンピオンになってるかもしれない。一人の女性はそうなんだ。ただMVとなると、この角度から撮るにはこう動くとよいとか空手の試合とは違って演じなくてはならなくて、撮影はそんなに簡単ではなかったようだけど、とってもいい出来になったと思う。
──最新アルバム収録曲の「Trap」はフィンランドのラジオ局Radio Rockでよくオンエアーになってますが、アルバム全曲通して好きな曲ばかりで捨て曲がなく、シングルを選ぶのが難しかったのではないか?と思うのですが、どうやってシングルを選んでいるのですか?
アルデ:まず最初にバンドで候補を選ぶんだ。ヨナの意見もきいた後でマネージャーに相談してみんなの意見をまとめて、レコード会社に提案するんだけど、シングル候補曲とそうでない曲、なんと今回はみんなの意見が一致した。これまでは少なくても1曲は意見が合わなかったりしたんだけど、今回みんな一致でびっくりしたよ。
──このアルバムには個人的に自分の経験をもとに生まれた曲とかありますか?
アルデ:「Stone Cold Bones」がそうかな。あと「Dead Weight」がそうかもしれないな。他の曲にも一部がそうであったりもあるけど、曲全体に直接そういうストーリーがあるってわけではない。
──個人的にヘヴィなアルバムに1曲入ってるバラード曲が大好きで、前作『Pyromide』には「If Only I Could」、最新作には「Stone Cold Bones」といったバラード曲がありますよね。でもこういうバラード曲はライブで演奏しないですよね。そのうちライブで聴ける可能性ありますか?
アルデ:メンバーの中にひとりそれに反対する奴がいて、そいつをまずうなずかせなきゃならないから時間はかかると思うけど、そのうち。ただ短いセットリストにいれるのは合わないように思うので、もしいれるとなると演奏時間が1時間以上とかの長いライブになると思うな。
──この春のフィンランドツアーでヘルシンキのKulttuuritalo(クルットゥーリタロ / 文化会館)公演がありましたね。フィンランドの有名な建築家アルヴァ・アールトが設計した歴史的な建物で、のちにビッグバンドにのし上がった世界的なバンドがそこでコンサートを開いてきた歴史がありますが、先日のライブでも少し語っていましたが一番最初にそこで観たアーティストは?
アルデ:ストレイ・キャッツのブライアン・セッツァーのソロコンサートだった。ドラマーもベーシストもいなかったけど、ブライアン・セッツァーがソロで出演したんだ。初めて観たコンサートで初めて観たロックコンサートでもあった。アルバムもその時点で何枚か持ってたんだ。そのうちの1枚がBest Of Stray Catsで、当時ブライアン・セッツァーの大ファンだったんだ。親父と叔母と彼らの友達2人と一緒に行ったんだけど、その時俺は8歳だった。ステージのすぐ前で親父に肩車されて観てたらブライアン・セッツァーにハイタッチされたんだ。その時のことは今でもとってもよく覚えてるよ。次にその会場に観に行ったのは20年以上たってからだった。ライヴァル・サンズってバンド。レッド・ツェッペリンタイプのすごくいいロックバンドだ。ジミー・ヘンドリックスやレッド・ツェッペリン、ディープ・パープル、クイーンといったバンドがそこの会場でコンサートやったことあるし、自分も将来いつかこの会場のステージに立つ!って8歳の時に心に決めたんだ。そして今回自分がそこのステージに立ってみて、昔この会場でライブやってビッグになったバンドのことを思い浮かべたら気持ちが高まったよ。ここでライブできたのはとっても素晴らしかった。
──そのKulttuuritaloでの自分たちのライブはどうでしたか?
アルデ:とてもうまくいった。おなじみのファンの顔や、俺とニコはホームタウンで知り合いや家族とかが観に来てくれてるのがステージから見えたりもして、自分のホームタウンのこの会場でライブできたってなんかとってもスペシャルに感じたな。
──ドイツの知り合いが観に来てたはずなのにライブ後に探してもいなくて、後で聞いたらテンプル・ボールズ目的できたので、その後のソナタ・アークティカを観ずに帰ったと言ってました。
アルデ:ヨエンスー公演でも、俺達のために観に来たってファンがいた。俺たちのライブだけ観るんだとチケット代高い換算になるけど、ジャンルがちょっと違うからファン層が全く同じってわけでもないんだと思う。でも俺たちを観るために来てくれたって話を聞くととっても嬉しいよ。
──<Loud & Metal Maniassa>で来日したのが2017年で、それからすでに7年近くが経ちましたが、その来日で今一番に思い出すことは何ですか?
アルデ:思い出がいっぱいありすぎてひとつだけとか上げるなんて無理だな。まずライブの反応がすごくよかったこと。それからライブ前にサイン求められたり、プレゼントもらったり当時はまだそういうことに慣れてなかったしな(笑)。
──デビューした年に来日でしたよね。
アルデ:あぁ、そうだった。また早く日本に戻って今ライブやったらどんな感じか知りたいな。そのためには俺たちを観たいって日本のプロモーターに伝えてもらえると、観たいファンがたくさんいるってのが伝わって実現に近づくんじゃないかと思うな。
──この春のフィンランドツアーが終わったとこで、今週末はスウェーデン公演も予定されていますが、夏は国内外のフェス出演がありますが、その後の予定は?
アルデ:少なくても今わかってるのでフィンランドとスウェーデンでライブ予定が入ってる。まだ発表できないんだけど、他にも国外で予定がある。
──では最後にメッセージをもらえますか?
アルデ: ハーイ!BARKSの読者のみんな、Temple Ballsのアルデだ。日本のみんなからのいつも変わらないサポートありがとう。アルバムのセールスもいいみたいで、俺たちみんなの前でまた早くライブしたくてたまらないよ。それにはみんなの協力が必要だ。現地のプロモーターに俺達のライブをみたいって伝えてほしいな。楽しい日を!楽しい週を!そして楽しい月を!もうすぐ会えることを祈ってるよ。
テンプル・ボールズはこの春ソナタ・アークティカのサポートでフィンランドツアーを行いました。今回ヘルシンキ公演の会場は有名な建築家アルヴァ・アールトが設計したKulttuuritalo!インタビューでも話に出てましたが、ここの会場に出演したあとビッグに成長したバンドもいる歴史を持つ会場です。
オープニングナンバーは「コブラ会」にインスピレーションを得たという最新アルバムから「Strike Like a Cobra」でスタート!続いて同じく最新アルバムから「Lonely Stranger」。今回のツアーはサポートだったので、持ち時間が少なかったのもあったと思うけど、最初っから最後の「Thunder From the North」までエンジン全開でぶっ飛ばし、キャッチャーなメロディとギターリフが心地よく耳に飛び込んでくる!ここは横長のステージでヴォーカルのアルデは元気に端から端まで行ったり来たりしながら声をはりあげパワフルに歌いあげる。途中のMCで昔この会場で大ファンだったブライアン・セッツァーのライブを観て、将来自分も同じステージに立ちたいと思ったことを語っていました。
途中ギターソロがあり、ギタリストの2人イリとニコがステージ中央前にでてきて2人のギターが炸裂!そこからファーストアルバム収録曲「Let's Get It On」に入るのはお決まりになりつつあるようだ。「Trap」は最新アルバムの中でもキャッチャー度が半端なく、ライブで見ても自然にからだがリズムをとってサビの部分を一緒に口ずさんでしまう。「Bad Bad Bad」は日本のバンドLOUDNESSからインスパイアを受けた曲と以前語っていましたが、短めのセットリストにこの曲が入っていたのはなんだか嬉しかった。最新アルバムからは5曲で、捨て曲がないアルバムなのでもう少し他の曲もライブで聴きたかったなと思いましたが、それは秋に期待することにします。そしてそのうちバラード曲もやってくれるといいな。
初来日公演から早いものですでに7年近くになり、その後キャリアも積んで成長したTemple Balls、この最新アルバムで再来日が実現することを祈っておきます。
<Temple Balls : Kulttuuritalo 2024 /3 /23>
2. Lonely Stranger
3. Hell and Feelin' Fine
4. Dead Weight
5. Prisoner in Time
6. Guitar Solo
7. Let's Get It On
8. Trap
9. Bad Bad Bad
10.Thunder From the North
文&写真(アーティスト写真を除く):Hiromi Usenius
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