【インタビュー】Ken Yokoyama、8thアルバム『Indian Burn』完成「“雑巾絞り”は大変だけど、目いっぱいやらなきゃいけない」

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■そもそも俺はブーブー言わないもん
■生まれ持ってのShow Must Go Onなんです


──アルバムは「Parasites」から始まって、ラストナンバーの「Heart Beat Song」まで、幾つものストーリーも描いていると感じたんです。最後にグッと泣けるんですよ。

横山:僕は曲順をどうしたらいいかわからなくなって。でも、1曲目が「Parasites」で、最後が「Heart Beat Song」というのはイメージとしてあったんですよ。あとはバンドメンバーに決めてもらいましたね。

Jun Gray:「「Parasites」で始まって「Heart Beat Song」で終わりたい」と言う健に対して、違う意見を言うメンバーもいなかったんですよ。“まあ、そうだろう”って。あとはどういうふうにストーリーというか、流れを作っていくか。

横山:メンバーによって着目点も違うんですよ。「この曲とこの曲は曲調が違うから離したほうがいい」とか、それに対して「曲調が近いとは思わないよ」とか。

Jun Gray:そう。いろいろあったんだよね。「この曲をアルバム後半に持っていくのは、もったいないんじゃない?」とかさ。

横山:ストーリーの組み立てとまではいかないけど、“この曲を推したい”っていうのが、メンバーそれぞれによって違ったりして。

──それだけ思い入れある曲ばかりが揃ったということですよね? つまりクオリティ高い曲と歌詞ばかりっていう。

横山:そうですね、その証拠だと思います。


▲Jun Gray (B)

──1曲目「Parasites」は、やっぱり気持ちや涙腺にそうとう来るんです。でも悲しみに暮れてばかりではなく、力強く次に向かおうとしているところが、すごく横山さんらしいなと思いました。

横山:これは自分でも発見だったんです。この曲は要するに…物事の終わりを歌ったんですよ。たとえば“自分たちが終わるとしたら”──僕はよくそれをテーマに歌うんです。かつては「Let The Beat Carry On」みたいに、みんなを鼓舞するというか、みんなで共有できるような形までしか見えなかったんですね。

──「Let The Beat Carry On」も「Parasites」も、どちらもつながっていくことや残っていくことを歌ってますが、方法論が違うという。

横山:ついに今回は“誰かの中に入り込んで、寄生虫として生き延びてやるぜ”ってところまでいっちゃってる(笑)。なかなかの新発見でしたね。それを照らいなく言えちゃった自分も、いいことかどうかまだ分からないけど、自分の心境が次のステージに行ったなと。だから、「Parasites」はすごく好きな歌詞です。バンド内では「寄生虫って、お前、歌っちゃっていいわけ?」とか言われたけど(笑)。

Jun Gray:お前、俺の声色を物真似したいだけだろ? インタビューで(笑)。でも、おもしろいこと歌ってると思ったよ、俺も。最初に歌詞を読ませてもらったとき。

横山:自分のことだけじゃなくて、いろんな人やいろんなシチュエーションに重ねて書いたんで。俺自身、すごく好きな歌詞だな。

Jun Gray:自分が生き残るってことを表現しているけど、自分も寄生されてるってことだろ?

横山:そうそう。僕の中にも、きっと誰かが寄生しているわけです。過去のミュージシャンの想いだったり。ミュージシャンだけじゃないかもしれない。誰かの気持ちが寄生している。回虫って、寄生された本人は気づかないって話じゃないですか(笑)?

Jun Gray:サナダムシとかな(笑)。

横山:ギョウ虫もそうだけど(笑)。

──それで虫下しを学校から渡されて(笑)…といっても、それは昭和の話なのかな。今でもギョウ虫検査とかあるんですかね?

横山:上の子の小学校時代にはギョウ虫駆虫薬のポキールはあったから。

Jun Gray:あぁ、その時代の小学校にはあったよね。

横山:今、18〜19歳の子は経験してるんで、寄生虫の話はわかるはずです。


──というか「Parasites」は寄生虫の歌ではなくて(笑)。いろんな影響とか想いを受け継いで生きていこうってことで。

横山:ただね、そこで自虐的に寄生虫みたいに言えたことが、案外、自分にとってデカかったりするんですよ。今までは、人とシェアとか共感できるような言葉で表現していたから。

──歌詞は、健さんが書いたものを最終的に南(南英紀 [G])さんが英訳していますよね。英訳のワードの選び方を見ても、すごく楽しそうにやっている姿が想像できるんです。

横山:そうですよね。最初は誰のことを歌っているのかわからなかったみたいで、「これ、主語は“I”なんですか? それとも“HE”なんですか?」ってやり取りも、「Parasites」ではあった気がします。

──「Show Must Go On」は、いろいろあって誓いを立てたときのことですか?

横山:これはもうはっきりお話しておくと、ツネのことがあったから。ツネの曲です。でもJunちゃんは「お前、これは嘘じゃねえか」って(笑)。

Jun Gray:それこそが嘘です。お前、俺が言ってもいないことを、インタビュー中に捏造するんじゃないっての(笑)。

横山:いや、言ったよ(笑)。「“ガタガタになった体を引きずって”とか書いてるけど、お前、そうなったらライブやりたがらねえじゃないか」って(笑)。

Jun Gray:そもそもね、ツアー中に健はブーブー言ってるときがあるから(笑)。

横山:それで「嘘を書いてる」とJunちゃんが言ってきて(笑)。「いや、これは歌詞ですから」と。

Jun Gray:結局は、ブーブー言いながらも健はライブをやるからね。でも、そもそも俺はブーブー言わないもん。

横山:Junちゃんは確かに、不思議なほどブーブー言わない。僕と南ちゃんがブーブー言う(笑)。

Jun Gray:ツネの一件がなくても、俺は生まれ持っての“Show Must Go On”なんすよ。

横山:ドヤった表情で、それ言うかね(笑)。

Jun Gray:だって実際にそうだよ。浮き沈みがあって、お客さんが10人でも普通にライブをやったりしてたわけだからさ、Ken Yokoyamaをやる直前まで。“Show Must Go On”が俺には染み付いてる。

横山:リアルストーリーだ。


▲横山健 (G, Vo)

──そういう経験があるからこそ今が幸せだし、なおさら大切に思えるという?

Jun Gray:そう。

横山:これは文字にすべきことか分からないけど、僕らは昨日(2023年12月4日)、チバ(チバユウスケ/The Birthday)君の訃報を聞いたんですよ。やっぱり思いましたね、“Show Must Go On”って言葉を。でも寂しいよ、やっぱり…。

Jun Gray:昨日の今日だからね。

横山:人との永遠の別れという経験をすると、書くものに深みを増していくのもわかるんだけど、書いているときは、“こんなこと書かせるんじゃねえよ!”って思ったりもしますね。

──柄にもない言葉も出てきちゃいますからね。でも自分の想いを正直にさらけ出しているからで。

横山:そうですね。パンクスですから、甘い/辛いだけじゃないんですよ。

──歌詞をずっと読んでいくと切なさもあるけど、でも力強いですよ。

横山:うん、そうですね。今、せっかくミュージシャンとしてやれているわけだから、やれる限りはやりたい。思いついたことを全部やって、それでもやり残しは出ちゃうと思うんですよ。“雑巾絞り”の作業は大変だけど、目いっぱいやらなきゃいけないなって。

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