【インタビュー】Lenny code fiction、ニューシングルと変革「花束は相手に絶対に届かないといけない」

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■ ライブでも体を揺らしてもらうだけの曲では終わらない

── ところで、歌詞も含め、新しいことに挑戦してみようと思ったそうですね。「花束」の歌詞はLennyのファンに向けて、“ただ、君が思う君のままが良い”と歌っていると同時に、映画で言うと、群像劇とかマルチプロットだと思うのですが、1番の主人公はLennyなんだけど、2番、3番はまた別の主人公がいる──そういう歌詞の作り方になっているんじゃないかと聴きながら想像したのですが。

片桐:主人公が違うわけではなくて、1番、2番、3番でシーンが違うんですよ。『ハッピーエンドを始めたい』からの流れで、自分のことを素直に書くというところはブレてはいないから、主人公は同じなんですけど、日付とか年代とか、いつの自分を切り取るか。それによってシーンを変えているという書き方ですね。自由で素直で、軽やかな感じってやっぱりどこか1か所だけになってしまうと表せないと思うので、旅をしているイメージと言うか、海とか、カフェとか、いろいろな場面を描きたかったんです。

── なるほど。そういう書き方が新しい取り組みなんですね。

片桐:そうですね。あとは具体的な言葉を使ってます。今までだったら“コンビニ”なんて言葉は使ってなかったと思います。“電車”とか、“名作の映画”とか、日常では使うけど、歌詞にはしてなかった言葉や、それこそ生活感を意識しながら書きました。どういう日常を過ごしているのか、ちょっとでも伝わればいいなというのが新しいところだと思います。



── おもしろいと思ったのがメンバー4人の日常を描いた「花束」のMVで。映像的には「花束」よりも今回、3曲目に入っている「それぞれの青」の歌詞のほうが合うのかなと思うんですけど、このMVがあることで、「花束」の歌詞の間口がより広がるというか、片桐さんがセルフライナーノーツで書いている“素直でいいんだよと言えるようになった花束。これを言い合える関係”というのは、Lennyの4人のことでもあるのかなと想像できるところが秀逸ですよね。

片桐:MVを作る時は、まず僕が設計図みたいなものをスタッフに渡すんですけど、「花束」はそれがそのまま通ったんです。自然体で飾らないMVを作りたかったんですよ。“素直な気持ち贈りあって”という歌詞で表現している関係を一番表現したかったので、そういうふうに言ってもらえると大満足です。

――あのMVは片桐さんのアイデアだったんですね。

片桐:大本はそうですね。いろいろなところに行って、それぞれに好きなことをして、楽器はNGみたいな。『ハッピーエンドを始めたい』に入っている「幸せとは」「ビボウロク」の時もそういう等身大のMVを撮りたいと思いながら、演奏シーンも含め、まだバンド感が残るものだったので、「花束」は敢えてバンド感を出さないものを作りたかったんです。



── そこは思いきった判断だったようにも思います。「花束」のMVに対して、アニメ(『新しい上司はど天然』)から来ましたという声がけっこう多かったんですけど、Lennyのことを全然知らない人が見たら、もしかしたらバンドじゃないと思うかもしれない。それぐらいのことをやらなきゃダメだと考えたということですよね?

片桐:そうです。それぐらいのことをやったつもりだった『ハッピーエンドを始めたい』がまだLennyの既成概念にひっぱられて、まだまだ出し切れてなかったというのがあったので、120%の計画を言えば、100%表現してもらえるかなと思って、「花束」のMVに関しては思いきって、そうしました。

── MVの撮影はいかがでしたか。自然体を演じるって実は難しかったんじゃないですか?

ソラ:おっしゃる通り、監督の苦笑いはけっこう見ましたね(笑)。自然体を演じることをやってこなかったから、自然でいることの難しさは、メンバー全員が感じたと思います。苦肉の策なのか、メンバー全員でジェンガをやるという力業もあったので、そういうところで何とかなったのかなって思います。あれがなかったらどうなってたんだろうってちょっと怖くなりますけどね(笑)。

── メンバーでジェンガはやらないですよね?(笑)

片桐:やらないですね(苦笑)。

kazu:メンバーそれぞれの趣味や、やりたいことというコンセプトの個人のシーンを、僕が最初に撮ったんですけど、「ここは、にこやかに笑ってください」と言われたんですよ。僕は花に水をやるシーンだったんですけど、花に水をやりながら、笑ったことなんてないですからね(笑)。

── 確かに(笑)。

kazu:「はい、行きます。笑ってください」と言われて、できなくて、「もっと楽しいことを考えましょう」って言われながら4回撮りました、最後は「うーん、大丈夫です」ってあきらめのOKが出ました(笑)。 

KANDAI:その時、僕は控室にいたんですけど、スタッフがざわざわしているから、「どうかしたんですか?」って聞いたら、「kazuさんの笑顔待ちです」って(笑)。どういう撮影してんだ!?って思いましたよ。

片桐:僕は絵を描いているシーンだったんですけど、「描き終えた絵を見て、にこやかに笑ってください」と言われたんですけど、kazuと同じで、そんなことしたことないですからね。1人で家にいて、自分がそんなことをしている場面を想像したら、それがおもしろくて笑えましたけど(笑)。

── そんな「花束」。Lennyにとってどんな曲になったという手応えがありますか?

片桐:新しいと言えば、新しいところもあるけど、『ハッピーエンドを始めたい』を聴いていたら自然に入ってくるというか、徐々に変化してきていることは気づいている人もいると思います。その変化の中心にあるのが歌詞で、しっかり伝わる言葉が強く出ているので、ライブでも体を揺らしてもらうだけの曲では終わらないと思うんですよ。今、言いたいことがちゃんと伝わる強い1曲という意味で、激しくて、汗かいて、手を上げて、盛り上がるという今までのライブ曲とはまた違うライブ曲になるのは間違いないと思います。そこを自分らがしっかり打ち出しながら、しっかりと受け取ってもらえるところまで持っていけたら大満足ですね。

── セルフライナーノーツの中で2016年11月にシングルとしてリリースした「Flower」について言及していました。「Flower」も「花束」同様、ファンに向けた曲でしたが、「Flower」に比べると、「花束」の歌詞はかなりわかりやすい、より伝わるものになりましたね。

片桐:「Flower」は決意というか、自分を鼓舞するところが大きかったので、自分に伝わればいいと思っていたんですけど、花束はやっぱり贈る時にしか作らないものというか、花と花束は贈る相手がまったく違うので、絶対に届かないといけない。届けるためだけに作るものという意識があったので、タイトルに合った歌詞でなきゃいけないと思って、最後まで細かいところを書き直したんです。

▲シングル「花束」初回仕様限定盤


▲シングル「花束」通常盤


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