【インタビュー】Lenny code fiction、ニューシングルと変革「花束は相手に絶対に届かないといけない」

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コロナ禍を乗り越え、今年7月にリリースした2ndアルバム『ハッピーエンドを始めたい』で歌詞においても、サウンドにおいても新境地を印象づけた4人組ロック・バンド、Lenny code fiction(以下Lenny)。その彼らがアルバムのリリースツアーの最中、新しいシングル「花束」をリリース。TVアニメ『新しい上司はど天然』のエンディグテーマとして、10月8日に先行配信しただ表題曲の「花束」は裏打ちのダンス・ビートが心地いいミッドテンポのポップ・ナンバー。イントロから鳴るアナログシンセの音色もさることながら、“言葉は花束 素直な気持ち贈りあって”と片桐航(Vo, G)が今現在の心境を正直に綴った言葉も耳に残る。Lennyには珍しいラブソングに挑んだ2曲目の「チープナイト」はアーバンなサウンドとラップが『ハッピーエンドを始めたい』収録の「Sleepless Night」と同路線と思わせながら、その延長上に加えた予想外のアレンジが聴きどころ。そして、3曲目の「それぞれの青」はLenny初の2ビートのメロディック・パンク──と、「花束」にはバンドのアプローチが『ハッピーエンドを始めたい』からさらに1歩も2歩も進んでいることを想像させる3曲が収録されている。

その3曲について話を聞かせてもらったところ、変化することにまだまだ前向きなメンバーそれぞれの意欲を知ることができた。ロック・ミュージシャンとしてのステートメントやシネフィルらしいストーリーテリングを、ドラマチックな言葉使いで歌詞に落とし込んできた片桐が弱さも含め、自分を曝け出した歌詞を書くことから始まったLennyの変化、いや、変革は、彼らのライブ・パフォーマンスにも影響を与えながら、今も現在進行形だということが重要だ。

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■今回のツアーは、対バンを含めたみんなで掴んだ勝利

── 「花束」のお話の前に現在行っているツアー<ハッピーエンドを贈りたい>について聞かせてください。久々の対バンツアーですが、東京、大阪、名古屋と3か所やってみて、どんな手応えを得られていますか?

片桐航(Vo/Gt):3マンで回ってきたんですよ。(対バン相手には)先輩がいたり、後輩がいたり、いろいろなバランスがあるんですけど、先輩からは学ぶことがあるし後輩には新しい発見もあるので、両方から影響されたことがそのまま自分たちのステージに反映されることもあって。ここに来てまた、新鮮と言うか、自分らだけでやっていた頃からだいぶ(パフォーマンスの)幅が広がってきたと思います。

▲片桐航(Vo/Gt)


── どんなふうに幅が広がりましたか?

片桐:今までのLennyは“見せるライブ”を意識していたんですけど、ちゃんと届ける心遣いとか、ライブに来てもらってることに対して、どれだけパフォーマンスで返せるかとかみたいなところが先輩であればあるほど自然にできている。キャリアを積み重ねてきた実力がそこに出ている気がして、それを目の当たりにしたとき、「あぁ、自分らは未熟だった」と感じたんです。そこから気持ち的には、だいぶ変わりました。しっかりライブを届けて(オーディエンスに)受け取ってもらうという姿勢が、一発目の東京公演でFLOW先輩のライブを見てからできあがっていったと思います。

── それは対バンツアーならではですよね。

ソラ(G):そうですね。対バンツアーという意味で、友情っていいなと改めて思いました(笑)。年齢を重ねれば重ねるほど見失いがちだと思うんですけど、今回のツアーは、対バンを含めたみんなで掴んだ勝利みたいな感覚もあるんですよ。

▲ソラ(G)


── リズム隊のおふたりも手応えを聞かせてください。

KANDAI(Dr):対バンのお客さんの中には初めて僕らを見る人もいると思うですけど、回を重ねるごとに、僕たちを見にきたわけではないフロアの後ろにいるお客さんもちゃんと僕らのライブを見て、反応を返してくれるようになってきたことを実感しています。

kazu(B):対バンにいいライブをされたら、あいつらを超えなきゃいけないとも思うんですけど、ピークをずっと更新していると思えるライブができているので、早くライブをしたいと思えるようなツアーになっていて。ライブするのが今は本当に楽しいんですよ。

KANDAI:そうですね。お陰で1本1本、自分らの成長を感じられるものになっていますね。

── この間、『ハッピーエンドを始めたい』のお話を聞いたとき、「アルバムのリリースツアーは久しぶりだから、アルバムのどの曲が人気曲になるのか楽しみだ」とおっしゃっていましたが、実際、ツアーを始めてみていかがですか?

片桐:アルバムの1曲目の「夢見るさなか」は、ミドルテンポの曲だからライブでどう映えるかな?と思っていたら、新しいライブ曲と言うか、今のライブの軸になっている気がしています。今までのライブの作り方だと、たぶんバラード枠に入れていたと思うんですよ。そこでじっくりと聴かせて、「最後は盛り上がって終わりましょう!」みたいな流れになっていたと思うんですけど、「夢見るさなか」がたとえば最後から1個前に入ってくると、その余韻を残したままライブが終わるというか、最後の曲でダーンと締めるというよりは、「夢見るさなか」の熱量が強く伝わって、ライブが終わる。それは新しい発見でした。

── そういうところでも確実にライブが変わってきている、と。さて、そんなツアーの最中、リリースするシングル「花束」はタイトル曲のみならず、カップリングも含め、『ハッピーエンドを始めたい』の延長上にある曲と思わせつつ、さらに新しい境地を印象づけるものになりました。まず表題曲の「花束」はアナログシンセのフレーズを効果的に使った演奏が新鮮で、おおっとなりました。



片桐:最初はもっとバンド・サウンドだったんですよ。ブリッジもギターでがっつり弾いて、今シンセで入れているフレーズもピアノで入れていたんです。ピアノとバンド・サウンドみたいなイメージだったんですけど、「花束」がエンディングテーマとして流れるアニメのジャンルが新しかったので、歌詞も含め、新しい方向に挑戦してみようというところから、今っぽいサウンドをみんなで探しながらプリプロしていったら、どんどん変化していったんです。

── シンセの音色は以前から使っていましたが、どんなきっかけから今回、アナログシンセの音色を選んだんですか?

片桐:最初のリファレンスはザ・ウィークエンドだったと思います。あの人のサンプリングもリバイバルしていて、最初のイメージとしては、そういう音色とシンプルなリズムを組み合わせたらおもしろいんじゃないかっていうのがありました。

── ベースはシンベですか?

kazu:そうです。最初は生ベースでやろうと思ったんですけど、80年代や90年代の雰囲気を再現するならやっぱりシンベが合うよねってことになって、鍵盤を弾いてレコーディングしました。『ハッピーエンドを始めたい』の時、「Sleepless Night」で1曲丸々、シンベを使っていたので、今回もやっちゃえって。

▲kazu(B)


── Bメロから裏打ちのシンセが入ってきて、レゲエっぽくなるというか、リズムが跳ねてダンサブルになるところが、いいアクセントになっています。スネアを含め、ドラムも軽やかで。ドラムは(電子ドラム)パッドを使っているんですか?

KANDAI:いえ、生なんです。

── えっ、それはちょっと驚きです。

KANDAI:今回のレコーディングからドラムテックを入れずにやるということに挑戦していて、個人練習でも音作りに時間をかなりかけたんですよ。その甲斐あって、理想通りにチューニングできて、いい音で録れたと自分では思っていたんですけど、そういうふうに言ってもらえたってことは、ちゃんと成果が出ているってことですよね。

▲KANDAI(Dr)


── 出ていると思います。それにしても、なぜドラムテックを入れずにやることに挑戦しているんですか?

KANDAI:自分でチューニングできるようになったら、将来、いろいろなところでドラムを叩けるようなれるよとアドバイスされたんです。もちろん、そのためにってわけではないんですけど、ドラマーとして強くなるにはできたほうがいいと思って、シンバルやドラムを買ったり、友だちから借りたりしながら、いろいろ試しているところなんですけど、ドラムってまだまだ奥が深くておもしろいと改めて感じています。

── そういう面でも新たな挑戦があるわけですね。シンセの音色が前面に出た曲なので、ソラさんがギターを弾く上ではひと工夫、ふた工夫があったんじゃないでしょうか?

ソラ:『ハッピーエンドを始めたい』を作り終えた時にはギタリストとしてできることはすべてやったという感覚になっていたんですけど、そこからどうしていこうかと考えていたタイミングで「花束」を作ることになって、80年代を薫らせるなら、(エフェクターの)コーラスは必要だろうって買ってきたら、どハマりしちゃって。今までずっと生のギターの音というところにこだわっていたんですけど、そこはもうやりきったので、そういうエフェクティブなギターというところを追求してみようという気持ちにはなっていて。ただ、自分のアイデンティティはなくしたくないので、取捨選択のバランスは考えていかなきゃとは思っているんですけど。

── コーラスを使った80年代風のギター・サウンドという意味で何かリファレンスはありましたか?

ソラ:アメリカの映画かもしれない。80年代のアメリカ映画のBGMって、ほとんどギターにコーラスが掛かっているんです。『フットルース』や『フラッシュダンス』、『ゴーストバスターズ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』とか。そういうイメージを参考にしつつ、やっぱり僕はUKロックが好きなので、その色も残したいと思った時にちょうどTHE 1975の来日公演を見にいったんです。そこで、この人たち以上のコーラスの使い方をしているバンドはいないと思って、彼らのサウンドも参考にしました。『ハッピーエンドを始めたい』からのUKロックの流れもありつつ、80年代のエッセンスを加えたという意味で、アルバムの延長上でもあるけど、新しいと思ってもらえるものになったと思います。

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