【インタビュー】Lenny code fiction、ニューシングルと変革「花束は相手に絶対に届かないといけない」
■ シングルに入れることになるとは
── 届けなきゃいけないという思いは、カップリングの2曲からも感じられるのですが、今回の3曲は「花束」の歌詞を借りると、“名作の映画にならないくらいの”日常を愛しく思う気持ちを歌っています。それはたまたまと言うよりは、片桐さんが今現在、そういう心境にあるからだと思うのですが、そういう心境になるきっかけってあったんですか?
片桐:やっぱり『ハッピーエンドを始めたい』を作ってからですよね。その後、冒頭でも言ったようにライブのスタンスも変化してきて、今までは見せるライブがかっこいいと思ってたし、そういうところに見惚れてくれって考えてたんですけど、シンプルでも本当に思っている言葉を歌えば、ちゃんと伝わるってことがここ2、3年でわかってきたんです。ライブを中心に考えた時にそれが一番、武器になっているし、今はこれがベストなんじゃないかって思ってますね。でも、これをやり続けて、また3年後ぐらいに元に戻る可能性も全然ないわけじゃないから、これが今の自分のターンみたいなイメージで、今回は3曲とも共通した素直さというところで作りました。
── 2曲目の「チープナイト」は今、おっしゃったように今現在の武器を存分に使いながら書いた歌詞ですね。言葉にすると、月並みになってしまうような思いを敢えて書いたラブソングなのですが、昔の片桐さんだったら絶対書いていないですよね?
片桐:そうですね(笑)。昔はそれを隠すことが美学だと思っていたんです。そこはかなり変わりました。
── 「チープナイト」はアーバンな曲調とラップが『ハッピーエンドを始めたい』に入っていた「Sleepless Night」と同路線の曲と思わせ、中盤から曲調ががらっと変わるところが意表を突いている上に、とてもかっこいいですね。
片桐:最初は「Sleepless Night」そのままみたいな流れで進んでいたんですけど、いろいろな人と話している中で、「Lennyはサビのメロディが強い」と言ってもらえることが多くて、だったら、それを組み合わせて、別の曲くらいの感覚でサウンドも変えたらおもしろいんじゃないかって思いついたんです。メンバーとアレンジする時も「1番とサビは別の曲と考えてほしい」と言っていたら気持ちもどんどん乗ってきて、それほど苦労せずに完成させられたんです。自分達の強みを全部生かした結果、こういう曲になりました。
── 展開が変わってからはフレーズが動き始めるベースがアレンジのキモなのかなと思いました。
kazu:展開が変わるまで、僕(のベース)、いないですからね(笑)。そこからは主張しておかないとって思いました。
KANDAI:この曲は(電子ドラム)パッドも多用しているんですけど、電子ドラムと生ドラムで、どう対比をつけるかという試みがばちっとハマりました。最近、自分の中の流行りなんですよ。生は生、パッドはパッドって割り切ってやったバランスがすごくいい感じに仕上がっていると思います。
── 「Sleepless Night」の時、ソラさんはアーバンな曲調にガレージ・ロック調のギターを乗せていましたが、「チープナイト」は歪みも加えつつ、「花束」の延長上と言えるギター・サウンドになっています。
ソラ:前半と後半をがらっと変えるなら、後半は「Sleepless Night」よりもライブでやっているイメージでやったほうがいいと思いました。前半は「花束」で掴んだエフェクティブなプレイを引き継ぎつつ、後半はそれこそ今までの良さというところで、はっきり分けたんです。
── そんなソラさんのギターも含め、新境地と従来のロック・バンドとしての魅力の両方を楽しませる曲になっていると思います。そして、3曲目の「それぞれの青」も、こういう2ビートのメロディック・パンク調の曲って今まであったっけ!?という驚きがあって。
片桐:そうですね。こういう曲は初めてですね。高校生の頃、メロディック・パンクが大好きだったんです。地元の滋賀のライブハウスの先輩バンドもほとんどメロデック・パンク・バンドばかりで、それこそ<イナズマロックフェス>以前は<京都大作戦>が一番近いフェスだったし、メロディック・パンクのフェスも滋賀でやっていて、高校生の頃は一番聴いていたジャンルだと思います。
── たとえば、バンドで言ったら?
片桐:(横山)健さんに一番ハマりました。あとはdustboxとか、OVER ARM THROWとか。
── それにしても、そういうルーツをこのタイミングで出したのはどんなきっかけがあったんですか?
片桐:この曲のデモを作ったのはデビュー間もない頃だから、6年ぐらい前なんですけど、今年の頭に<先行試写会>という新曲だけやるファンクラブ・ライブがあって、その時、遊び枠というか、ジャンルが違いすぎるから人気曲になることはまずないけど、箸休めとして入れておこうってやってみたら、ファンクラブの投票のかなり上位に食い込んできたんですよ。スタッフからも評判が良くて。ただ、メンバーだけ全然乗り気じゃなかった(笑)。
kazu:乗り気じゃないというか、僕たちがこの畑で闘っても、と思ったんですよ。でも、まさかの反応で、シングルに入れることになるとはという感じでした。
片桐:「自分たちを客観視できていない。絶対こういう曲はやったほうがいい」と言われて、ファンとスタッフが選んでくれた曲を入れてみるのもおもしろいかもしれないと思ったんです。
── 歌詞は新たに書いたんですか?
片桐:そうです。デモの段階ではまったく違ったんですけど、素直な生活感というテーマに寄せて、青春にスポットを当てて書き直しました。
── 片桐さんはメロディック・パンクを聴いてきたそうですが、3人は?
kazu:僕も航と地元が一緒なので、よく聴いてました。
KANDAI:僕も地元の秋田では、ライブハウスはメロディック・パンクが盛んで、先輩方はほぼメロディック・パンク・バンドばかりだったので、よく聴いてました。
── ソラさんは聴いてなさそうですけど(笑)。
ソラ:そうなんですよ。まったく通ってなくて、ただそれはまずいから、「それぞれの青」を、さっき言っていた<先行試写会>でやるためにリアレンジすることになった時にメロディック・パンクって“マインド”だと思って、マイドンセットから始めなきゃということで、ハイスタ(Hi-STANDARD)を1週間聴き続け、さらにレコーディングの時は健さんと同じ機材も使って、曲のド頭のフレーズはハイスタを意識しました。
── マインドセットから始めたとおっしゃっていましたが、1曲通してずっと鳴っているリード・ギターは、ソラさんなりのアイデンティティの主張なのかなと思いましたが。
ソラ:kazuも言ってましたけど、教科書を読んで、そのままなぞってたらそこでは勝てないと思ったので、この曲をLennyでやるんだったら、自分なりのアイデンティティはちゃんと残したかったんです。
── リズム隊のアレンジはいかがでしたか?
kazu:このビートでこんなベースのフレーズがあったら、僕が高校生だったらコピーするよなっていうのをいろいろなところに散りばめました。メロディック・パンクってトリオでツイン・ボーカルってイメージがあったので、歌わないベーシストしてどこでキャラを出すかと考えて、自由に手癖のフレーズをふんだんに詰め込みました。青春時代の俺ですってアレンジになりましたけど(笑)、それはそれで気に入ってます。
KANDAI:僕も1曲通してダダダダと叩いて終わるっていうのはLennyじゃないと思って、たとえば、仲のいい先輩のフォーリミ(04 Limited Sazabys)のKOHEI君はメロディック・パンクとJ-POPの間のちょうどいいところにいると思うんですけど、そういう現代のメロディック・パンクを取り入れつつ、今っぽく2ビートをやろうと思いました。ギター・ソロの裏で2ビートにしてもいいかなと思ったんですけど、そこはギターを聴いてもらったほうがうちのバンドはいいという差し引きも考えながら、後は全力でやりました。
片桐:結果、歌詞も含め、思っていたほどメロディック・パンクにならなかったですね。歌詞も全部日本語なので、想像していたよりは自分らっぽくまとまったと思います。でもまぁ、これを初めて聴く人には「Lennyっぽくない」と言われるかもしれないけど、ライブの定番曲になったら、ここからさらに自分らっぽくしていくと思います。
── 『ハッピーエンドを始めたい』が完成したとき、手応えがありすぎて、早く次のアルバムを作りたいとおっしゃっていましたが、ツアーを行いながら制作も始めているんですか?
片桐:さっき言っていた新曲だけ10曲やる<先行試写会>というファンクラブ・ライブを来年もやろうと計画中なんですけど、世に出ていない、全然違う10曲を今、同時アレンジしているんですよ。『ハッピーエンドを始めたい』と今回の『花束』で、だいぶ曲の幅も広がったと思うんですけど、そこからさらに全然凝り固まってない10曲がまたできあがりそうなんです。来年はたぶんその10曲を軸に動き始めると思うんですけど、制作は今、自由にできていますね。
── なるほど。その10曲が今後、シングルとして世に出たり、次のアルバムに収録されたりするかもしれないし、そこにさらに新曲が加わるかもしれない、と。とても楽しみです。最後に来年1月と2月に大阪と東京で開催する<ハッピーエンドを贈りたい>ツアーのワンマン・シリーズの意気込みを聞かせてください。
片桐:アルバムのツアーと言いながら、『花束』をリリースして、カップリングも含め、ワンマン・シリーズから披露するので、3年ぶりにワンマンを見る人にとっては、まったく新しいセットリストになっているというか、曲の感じはもちろん、僕らの気持ちの部分でも、全然変わっていると思うんですけど、それが今一番、自分らに合っているという自信があります。新しいとは言いながらも、ベストなLennyを出せるという気がしていて、実際、今回のツアーはここまでベストの自分らを出してきているので、久しぶりに来た人はもちろん、初めて来た人にも「まさにLennyのイメージにぴったりだ」という感想をもらえるライブを目指したい。MCを含め曲の繋ぎ方も変化はしてきていて、その意味でも、今一番いい形の答えに向かっているツアーの真っ最中なので、ワンマン・シリーズではそれをしっかり見せたいと思っています。
取材・文:山口智男
撮影:大橋祐希
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Lenny code fiction「花束」
配信サイト:https://kmu.lnk.to/Hanataba
■シングル「花束」
タイトル:「花束」
CD発売日:2023年12月6日(水)
販売サイト:https://kmu.lnk.to/kJU8Zk
初回仕様限定盤:CD+DVD \1,800+税 / KSCL-3477
<収録内容>
-CD-
M-1 「花束」…TVアニメ『新しい上司はど天然』エンディングテーマ
M-2 「チープナイト」
M-3 「それぞれの青」
-DVD-
M-1 「花束」Music Video
M-2 TVアニメ「新しい上司はど天然」ノンクレジットエンディング映像
M-3 とつげきLenny’s Room presents「ハッピーエンドで旅したい」
<CDショップ先着購入者特典>
アニメイト:ましかくブロマイド(アニメJK写絵柄)
楽天ブックス:アクリルキーホルダー
セブンネットショッピング:缶バッチ
Amazon.co.jp:メガジャケ(アニメJK写絵柄)
応援店舗特典:ステッカー
※特典は数量限定・予約優先での先着順配布となり、なくなり次第終了となります。ご予約ご購入の際は、特典の有無を必ず店頭/ECサイトでご確認下さい。
※上記記載のあるチェーンでも一部取り扱いのない店舗がございます。
<Lenny code fiction presents 2nd Album release tour 『ハッピーエンドを贈りたい』>
2023.10.21(土)大阪3MAN 梅田 Shangri-La
2023.11.09(木)名古屋3MAN 名古屋 ell.FITS ALL
2023.12.02(土)福岡3MAN 福岡 DRUM SON
2024.01.20(土)大阪ONE MAN 梅田 Shangri-La
2024.02.11(日)東京ONE MAN 渋谷WWWX
チケット
オールスタンディング
◆ 一般販売(先着) ¥4,500-(税込) ※ドリンク代別 ※入場整理番号付
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