【インタビュー】Lenny code fiction、ニューアルバム『ハッピーエンドを始めたい』にバンドの根本と願い「第2章が始まった」
■一般的な“ハッピーエンド”とは一致してないかもしれない
──無意識だったモノに気づき、そこへフォーカスしたとき、出てくるアイデアや方向性は変わりましたか?
片桐:歌詞は全部変わりました。以前は抽象的な言い方も多かったんですけど、もっと突き詰められるようになって、それは大きかったですね。あと、もっとワガママでいいんやとも思って。アレンジ面でもいろんなフレーズを混ぜたりとか、一貫して自由にさせてもらいました。
ソラ:だから、いわゆる一般的なハッピーエンドと僕らが今から始めたいハッピーエンドは一致してないかもしれなくて。それこそ、陽キャたちの……
──陽キャに何か恨みでもあるんですか?(笑)
一同:ハハハハ(笑)。
ソラ:まあ、そういう人たちの酒飲みパーティーみたいな感じではなくて(笑)、もっとこう、ジワジワと噛みしめる感じだと思うんですよね。そこにはちょっと湿り気もあるし。
▲ソラ(Gt)
──でも、ロックバンドとしての意地みたいなところも感じましたよ。ニュアンスとしては柔和さがあれど、バチバチと攻めてるフレーズも多くて。
kazu:でも『Montage』と比べたら、僕自身のエゴは減ったんですよ。ただ、個々の音作りがUSからUKになったのもあって、ひとつひとつの隙間が大きく、だいぶ空間があるようになってる。そのダイナミクスがあるから、より個々のプレイのニュアンスやクセが出てるのかなと思ってますね。
KANDAI:コロナ禍は自分のプレイを見つめ直す機会にもなりましたね。ホントに基礎からやり直したり、細かいところまで突き詰めて、多少なりとも上手くなった状態ではあるし。かつ、バンドの方向性もUSからUKに寄せるとなったとき、また違ういい音があるんだなと気づいたんですよね。そこを踏まえて曲に合った音を選んでいったら、結果的にはなんだかんだ攻めてるっていう(笑)。
──バンドとして新しいページをめくったような感覚も?
片桐:制作中にも“再スタート”みたいなフレーズが出てきてたし。やっぱり、新しくスタートしてるなっていう感覚はありました。
──そういった意識は「夢見るさなか」でアルバムが幕を開けることからも感じました。1曲目にはキャッチーでインパクトの強い曲が選ばれがちですけど、そうじゃない視点なんだな、と。
片桐:もともとは違う曲を1曲目にしようとしてたんですが、最後の「幸せとは」へ繋げるには最初にいちばんリアルな言葉を聴かせたいと考えて、この曲からスタートすることにしました。
──幸せを掴みに行くという決意だけじゃなく、苦悩も同時に綴ってて、リアリティがあり血が通ってるなと思いましたよ。また、サウンドとしても壮大ながら綺羅びやかになりすぎず、バランスがいいですよね。
ソラ:キレイなメロディーだから、ポップスに全振りするのが正解だったかもしれないんですけど、やっぱりこう、バンドとしてのアイデンティティを保つべきだし、サビの頭のコードがメジャーだったのをマイナーに変えたりとか、らしさは意識しましたね。明るくなりすぎないようにと。
──実際、バンドは変化したわけじゃないですもんね。より研ぎ澄まして伝えたい部分を押し出しただけですし。
ソラ:まさにそうですね。
──そういう曲から始まったと思えば、次には「DURARA」みたいな曲がくるのがレニーらしいと思います。ライヴならではの良さを歌い、舞うような歌声とスリリングなアレンジが印象的です。
片桐:コロナ禍の真っ最中、自分がコロナに罹ってしまって。この経験は曲にしてやろう、と思ったことから始まったんです。だから、余計にライヴを意識できたのかもしれないですね。
──求めるモノをより明確化したという。作品からは少し逸れますが、今年は3月から5月にかけて、声出しOKで対バンも迎えたシングル「SEIEN」のリリースツアーを開催しましたよね。感触としてはいかがでしたか?
kazu:声が出せない時期のライヴって、いろんなバンド仲間が難しいと言ってたんですけど、僕たちはじっくり曲を聴くお客さんも多いし、そこまで大きな差異は感じてなかったんです。わりとすんなり受け入れられたというか。ただ、声出しがOKになって、MCに対するリアクションだったり、コール&レスポンスで声が聴こえたときに「やっぱり、ライヴはこうだよね」と結局は思っちゃって(笑)。
──やっぱり、これだよな、と(笑)。
kazu:あれは強がってたんだな、と思いましたね。
KANDAI:やっぱり、コロナ禍を経て、最初に歓声を聴いたときは感動しました。ウチのお客さんは大人しい方も多いので遠慮があるのかなと思ったんですけど、「声を出してもいいんだよ」って投げかけたらバーンって返ってきて。オレたちもパワーを貰ってるなって感じます。
▲KANDAI(Dr)
──作品に話を戻すと、「Memento」は不思議な魅力があるなと思ってて。浮遊感のあるサウンド、自分自身が見つけた目標や答えに向かうべきというメッセージですけど、曲自体が生命体みたく動いてる印象があります。
片桐:サウンド面から作ったんですけど、ヒップホップとかではループトラックにオルタナのフレーズとか、昔の曲をサンプリングしてたじゃないですか。それがカッコよく思えて、自分らのリフにループ感を混ぜる逆輸入をしたらどうだろう、っていう発想から始まったんです。
──曲が進むにつれてニュアンスも変わりつつ、終盤では思いっきり躍動してます。
片桐:構成的に「ここでこうしよう」っていう縛りがなかったので、結構自由に組み合わせられましたね。
──ということは、以前だと固定概念みたいなモノがあったような。
片桐:そうですね。『Montage』だとサビを聴かせたいっていうテーマがあったんで、Aメロ、Bメロ、サビっていう構成を正義としてたところもあったし。もちろん、それが良かった部分もありつつ、そこを取っ払って自由にしたら上手くハマったという印象がありますね。
kazu:デモの段階のとき、(片桐が)曲調はR&Bみたいだけど展開はEDMみたくしたい、って言ってて。今までにない展開だし、そこをピークに持っていくんだったら、どれだけ音数を減らしたらいいかな、とかは考えましたね。
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