【インタビュー】蒼井翔太、「さぁここからはどんな目的地に行こうか!」
蒼井翔太が、6月28日にライブBlu-ray『蒼井翔太 LIVE 2023 WONDER lab. Garden』をリリースする。
◆撮り下ろし写真
本作は、今年1、2月に開催された同名のライブツアーのツアーファイナルとなった両国国技館公演の映像と、ツアーのドキュメンタリーが収められたもの。今回のインタビューでは、ライブツアー「Garden」を振り返ってもらいながら、今年デビュー10周年を迎えるアーティストとしての蒼井翔太に迫った。
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▪️やりたいことを受け入れてくださっているのは本当にありがたいこと
──今年1、2月に開催されたライブツアー<蒼井翔太 LIVE 2023 WONDER lab. Garden>を振り返ったときに、まず頭の中に浮かんでくるのはどんな景色ですか?
蒼井:これは、今回のツアーだけでなくコロナ禍になってからのライブやイベントと合わせてという形にはなってしまうんですが、<Garden>というライブツアーはまだ声出しができなかったんですよね。そういった制限の中でも、曲が終わった後に、みなさんが拍手で自分の気持ちを一生懸命伝えようとしてくれていた姿が、一番心に残っています。もちろんコロナ前から拍手はありましたけど、拍手の思いのレベルというものが、コロナ禍を経てパワーアップしているなと思いましたし、これはただの拍手ではないというのをステージ上で感じたツアーでもありました。
──今回リリースされるライブBlu-rayには、蒼井さんが「(開演前に)客席から自然と起こった手拍子に驚いた」という話をされていた場面も収録されていましたね。
蒼井:今回のツアーは地元の福井から始まって、各地を廻ってくる中ではあのタイミングで手拍子はなかったんですが、やっぱりみなさんがツアーファイナルをもっともっと盛り上げようとしてくださっている気持ちが、あの手拍子から伺えて。すごく心に残っているところですね。
──今回の<Garden>というツアーで蒼井さんが表現したかったことについて、改めて教えていただきたいです。
蒼井:今回のツアーに限らずいつも根本的に思っていることではあるんですが、やはり「感謝」ですね。蒼井翔太としては「変わらず変わる」という座右の銘があって。いろんな衣装を着て、幅広い楽曲をやらせてもらっていまして。そのとき自分が表現したい姿や、表現の仕方でみなさんに楽しんでもらいたいと思っているのですが、それをすべて喜んでもらえるというのは、難しいことでもあるんですよね。
──そうですね。確かに。
蒼井:自分の応援している方とか好きな人には、やっぱり理想があったりすると思うんです。「こういう形のほうがいい」とか。でも、蒼井翔太のファンのみなさんは、いろんな姿になる僕を楽しんでくださっているなとすごく感じていて、それは本当に奇跡に近いと思うんですよね。自分がやりたいことを受け入れてくださっているのは本当にありがたいことですし、これが当たり前だと思ったらいかん!と。だから、改めてしっかりと感謝を伝えたいなって、<Garden>の前に廻った<蒼井翔太 LIVE 2021-2022 WONDER lab. coRe>というツアーのステージ上で思ったんです。
──ステージの上で。
蒼井:もっとこういうことがしてみたいというものも浮かんではきましたけど、そのとき一番突き抜けていた気持ちは「感謝」でしたね。その気持ちを伝えるためには、歌もそうだけど、何かプレゼントを贈るのであれば花束かなと思って。それで最初にツアーのコンセプトをブーケにしようと思ったんですが、会議をしていくうちに、僕の感謝の気持ちが花束の領域を超えてしまって(笑)。だからもっと広げて、来てくださる方々お一人おひとりを、唯一無二の一輪の花、個性豊かな花に例えて、みなさんと一緒にガーデンを作り上げたいと思って、このタイトルにしました。
──ステージセットとしても大きな木が置かれていて、まさにガーデンな雰囲気でしたけども、衣装に関してはどんなコンセプトがあったんですか? 本編では3パターンご用意されていましたけど。
蒼井:衣装も「お花」と「ガーデン」をイメージしたものですね。1着目の白い衣装はブーケをイメージして、腰から全部花束で包んでいただいて。黒い衣装も、シンプルなジャケットスタイルではありますが、肩から腰にかけてグラデーションが、形や見方によっては黒い花に見えたりとか。元々は僕が個人的に好きなお花があって、それを衣装にしようと思っていたんですけど、とても個性的なお花なので難しくて。ブラックキャットというお花で、黒色で、かっこよくはあるんですけどね。
──見たことのない方は是非検索していただいて。
蒼井:あと、ブラックキャットの花言葉が「孤独な主張」なんです。蒼井翔太って、キラキラしているイメージを持ってくださる方もいると思うんですけど、「その奥に孤独が見える」と言わることもあるんです。でも、それってすごく深いなと思って。キラキラしているその奥に孤独があることで、世界観に奥行きが出るのかなと。だからこそブラックキャットを衣装に取り入れてみようと思ったんですけど、妙におどろおどろしくなってしまったので(笑)、これはやめようと思ってシンプルにしました。引き算して、結果的にはすごく素敵な衣装になりましたね。
──もう1パターンの腰の辺りに鮮やかな色の布をつけられている衣装も、同じくガーデンのイメージですか?
蒼井:そうです。ガーデンにあるのは花だけではなくて。木々から差し込む光とか、そよぐ風とか、そういうものも含めて世界観を表現したかったんです。ただ、風は目に見えないものですから、風をみんなに感じていただけるにはどうしたらいいかなということで、こういう軽い布を使ってみたいなと思って、この形にしました。
──いつも衣装のイメージって結構すぐに湧きます?
蒼井:湧きます。ライブはまずコンセプトを決めて、セットリストを決めて、そこから衣装の順で考えていて。セットリストが決まると、「このエリアはこういう感じかもしれない」みたいに、曲から考えていくこともありますし、いろんなアーティストの方々とか、ファッションショーとか、世界各国のショーを見てインスピレーションを受けることもありますね。
──セットリストは、デビュー作の楽曲から最新曲までを幅広く網羅されていましたが、「感謝」というコンセプトで考えると、この形がいいだろうと?
蒼井:そうですね。みんなにありがとうを伝えるのであれば、みんなが喜んでもらえる曲はなんだろうというところから考えていきました。あとは新曲もあるので、それをどこに入れようというパズルをしていく感じでしたね。僕としてはギャップがあるものがすごく好きなので、こういう衣装では絶対にこういう曲は歌わないだろうと思っているところの不意をつきたい思いもあったりして。それで、おしとやかな布を纏うような衣装のときに、あえて激しいロックを歌ってみたりとか。
──ギャップでいうと「ずっと...」から「秘密のクチヅケ」の変わりっぷりが凄まじかったです。
蒼井:まさか「秘密のクチヅケ」を真っ白な衣装で歌うとは思わないじゃないですか。たとえばですけど、僕、女性アーティストがウェディングドレスを着崩してロックを歌うのがすごく好きなんですよ。ドレスをハサミで切り刻んで、泥で汚して、ロックを歌うみたいな。
──かっこいいですよね。
蒼井:もちろんドレスを着て綺麗なバラードを歌うことも全然ありですけど、それとはまた違う美しさがありますし、そういう世界観がめちゃくちゃ好きなんです。それに、そういったギャップを取り入れていないと、自分がつまらなく感じてしまうというか。「なんかこれって型にハマりすぎじゃないの?」と思ってしまうんですよね。王道もすごく素敵なんだけど、「マジか……!?」と思うものが好きなので。
──蒼井さん的に、今回のセットリストで特に好きだった流れというと?
蒼井:ギャップで言うのであれば、先ほど言っていただいた「ずっと...」からの「秘密のクチヅケ」とか、「HEAVEN!」からの「Melodia」とか。激しいところからゆっくりしていく緩急の付け方が、僕は好きだなと思いました。王道であれば「MURASAKI」からの「零」みたいな、盛り上がり曲を2曲続けてというのもすごくいいなって感じましたね。
──ギャップも王道もしっかりと見せるし、どちらもやっていて楽しいし。
蒼井:やっていて楽しいんですけど、自分の喉は悲鳴を上げてます(笑)。「ずっと...」は可愛く、ちょっとガーリーに歌うんだけど、その後の「秘密のクチヅケ」はシャウトも入るので、喉のチャンネルを変えないといけないですから。やっぱりいくら素敵な衣装を作っていただいても、素敵なセットや照明にしていただいても、自分の歌がダメだったらすべてが無駄になってしまう。なので、そのすべてを自分の歌で繋げていくんだという気持ちで歌っています。
──声のお仕事をされているとはいえ、この人はどれだけ喉のチャンネルを持っているんだろうと思いながら観ていたんですが、蒼井さんって何パターンぐらいの声を出せるんですか?
蒼井:さすがにそれはわからないですよ! AIみたいに「ボイスA」「ボイスB」って設定しているわけじゃないですから(笑)。
──はははは(笑)。失礼しました。
蒼井:でも、やっぱり感情の分だけ声はあると思っていますね。そこは本当に微々たる差だとしても。日頃声優としてやっているときもそうですけど、ひとりのキャラクターだからといって、その声は1パターンだけじゃなくて。人間も、ひとりの人間の声質は同じかもしれないけど、そのときの気持ちによっていろいろな声が出るじゃないですか。蒼井翔太の楽曲も、結構幅が広くていろいろな楽曲があるので、曲の分だけ声も歌い方もあるんじゃないかなって思います。今でも新しい楽曲を歌うと、自分の中で新しい発見があったりしますし。だから、自分もまだ自分のすべてを知っているわけではないというか。
──常に新しいものを開拓できている。
蒼井:そうですね。意識していなくてもそういう歌い方になっていたりするときもありますから。不思議な現象ですけど。
──今回のツアーはバイオリニストの渡邊達徳さんを招かれていましたが、一緒にライブを作っていく中でどんな感覚を得られました?
蒼井:バイオリンの音色が入ることで、みなさんに感謝がより伝わりやすく、一曲一曲がより沁み込むように生まれ変わりましたし、今回のツアーにバイオリンはすごくぴったりだったなって感じましたね。先ほど、衣装で物理的な風の話もしましたけど、バイオリンが重なることによって軽やかになって、音色でも風を感じていただけるようなアレンジにもなったんじゃないかなと思いました。
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