【ライヴレポート】KIRITO、急遽ひとり弾き語りとなったアコースティック公演「できるかできないかではなく、やるかやらないか」

KIRITOが4月1日、大手町三井ホールにてアコースティックライヴ＜KIRITO Acoustic live 23’「Phantom III -Connected dots-」＞を開催した。同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。

◆KIRITO 画像

＜Phantom＞と冠したアコースティックライヴは2022年7月より始動。ライフワークとして継続していくことが公言されている公演であり、同年9月以来、約7ヵ月ぶりの第3弾となる。本来であればこれまで同様、ふたり編成で行われるはずだったが、サポートを務めるギタリストJOHNの新型コロナウイルス罹患により、公演3日前というタイミングで急遽KIRITOひとりでの弾き語り公演に変更されることとなった。

実は以前、「いずれ一人でステージに立つこともあるかもしれない」と自身が口にしていたこともあるが、その機会が思ったよりも早く思わぬ形で訪れたのだ。なんにせよ、元々予定されていたひとり弾き語りと、そうではないものとでは当然事情が変わってくる。KIRITOはこれまでの＜Phantom＞公演においても全曲ギターを弾きながらの歌唱であったため、それ自体は無謀なことではない。ではあるものの、様々な面で変更せざるを得ない部分があったはずだ。ただ、「緊張感や絶望感を楽しみに変えるマインド」というこの日の発言にもあったように、逆境や突発的な出来事にこそ燃えるのがKIRITO。その本領がステージで遺憾なく発揮されたのだった。


シャンデリアが煌めく舞台の中央にはKIRITOとギターのみ。Angeloの「BUTTERFLY」で幕を開け、KIRITOソロ名義、Angelo、PIERROT、それぞれから選出された楽曲たち全16曲が披露された。単純に言えば、これまでツインギターだったアレンジがひとり弾き語りになったわけで、音数が減ることはもちろん、装飾的なギターフレーズが省かれることとなる。この夜KIRITOは、主に弾き語りの基本であるギターストロークを奏で、歌ったのだった。＜Phantom＞公演においては、KIRITO曰く「ギターは歌のために最低限あるという感覚」とのことで、まさにそれがわかりやすい形で示される結果にもなった。すなわち歌で勝負する極致と言っていいだろう。

いつにも増して感情が溢れていた歌の表現は、少ない音数の中ダイレクトに響くこの状況下と、オーディエンスに届けようとするKIRITOの思いが表れたものであった。様々な楽曲を通して示した、“生かされる理由”、“道を切り開いていくこと”、“選んだのはここに立つこと”…その全ての根本にあるのは深い愛情であり、それらがよりリアリティをもって、熱量高く、まっすぐに届けられた。なお、名義を問わずあらゆる時代に自身が生み出してきた楽曲を演奏するのがKIRITOのアコースティックライブのスタイルで、この日はAngeloの「Lotus bloom」が久々の披露となったことも付記しておきたい。


ステージで語られたKIRITOらしい数々の言葉も印象深く、それらの内容こそ本公演が実現できた大きな要因であったに違いない。最新作『NEOSPIRAL』収録曲「I BLESS YOU」を本編最後に演奏する直前、KIRITOはこう語った。

「できるかできないかではなく、やるかやらないか、この2択だけで生きてきました。やると決めた以上、それ以外の選択肢はなく、やると決めたらやるんです。それがKIRITOです」──KIRITO

短い準備期間でこの日を迎えることになったスタッフへの思いを述べる場面もあった。

「決して一人で戦っているわけじゃない。一緒に戦ってくれる仲間がいるんです。ファンの皆もそう。僕にできることはステージで音を届けること。最高をどんどん塗り替えていきたいなと思います。これからもよろしくお願いします」──KIRITO

そしてピンスポットがKIRITOを照らす中、“強く響け僕の歌声よ 行き場を無くした君のもと、届くように”とアカペラで歌う場面があまりにも胸を打ったPIERROTの「CHILD」をもって、＜KIRITO Acoustic live 23’「Phantom III -Connected dots-」＞は幕を閉じた。

KIRITOは5月1日より全10公演にわたる全国ツアー＜KIRITO Tour 2023「REBUILDED NEOSPIRAL」＞を開催する。また、7月22日および23日に東京・KANDA SQUARE HALLでシリーズ第4弾＜KIRITO Acoustic live 23'「Phantom IV -A line of conviction-」＞を実施することが新たに発表となるなど、2023年も継続的な活動が約束されている。最後に今後に関するKIRITOの言葉を記しておきたい。

「春も夏も秋も冬も、暴れたり泣いたり笑ったり、一緒に過ごしていきましょうね」──KIRITO