【インタビュー】大柴広己、6部作の最終章に8年間の足跡と新たな始まり「僕は一生音楽をやりたいんですよ」
■全然違う生き方をしてきた人間と
■何かを共有するために音楽を作っていく
──「さよならグローリーデイズ」は温かくてメロディアスで、とてもいい曲。ただ、派手でキャッチーで、というタイプとは違う気がします。
大柴:全然違います。ほかにもっとパンチの効いた曲がたくさんあるんですけどね。今回はサウンド的にはめちゃめちゃ面白く、サンプリングもばりばり使ってるし、スクラッチとかも入れてるし、ベースもけっこう自分で弾いたりとか、いろいろやりましたけど、それはそれとして。アルバムの本質として、まず伝えたいのは「さよならグローリーデイズ」なんですね。
──大事な曲ですよね。
大柴:前回の『光失えどその先へ』というのは、パズルで言うと、“ここにはこのピースがハマりますよ”というものを、全部こっちで決めてたんで。ただ今回は、道筋だけ決めたけど、中身は何も入ってない。要は“想像してくれよ”という、“この曲は何とでも取れるよね”という曲ばかりなんですよ。「ベーコンエピ」という曲を書いたんですけど、この間ラジオに出た時にDJさんが、「自分よりも若い世代に対しての応援メッセージだなと思いました」みたいなことを言ってくれたんですね。 確かに、“おまえもおまえのための歌を書くべきだ”という歌詞を聴けば、そうとも取れるよねと。
──そうですね。
大柴:だけどほかのところを聴くと、“ふるさとの母親に会いたい”でもいいですし、“戦争反対”でもいいですし、いろんなとらえ方があっていいよなと思うので。答えはたくさんあっていいはずなのに、自分が必然性を求めすぎると、答えが一つになっちゃうなと思うし、そこはあえて答えを用意しないで、いろんな形で考えてほしいなと。だから言葉のパワーとしては、強い言葉をたくさん入れていて、たとえば“WAR IS OVER”という言葉と“ベーコンエピ”というパンの名前は、一つの曲の中では普通は交わらないんですよ。ただどちらも強い言葉だと思うし、そこから想像できるものを超えてゆくための、ギミックじゃないですけど、言葉としての遊び方はけっこう真面目に考えて作ってます。
──はい。なるほど。
大柴:それと、前作ぐらいから始めた手法として、最初にオケを作っちゃって、あとで何を入れるか考えるという作り方をしてるんですね。「なに( ゚д゚)しとん?」もそうだし、「がらんどう」もそう。こういうタイプの曲だと、絶対カッコよさげな感じの歌詞が入って来るなというのはわかってたんで、そこをあえて全部変えようと。だから普通に聴いたらカッコいいけど、歌詞を聴いたら“何言うとんのこいつ?”という、そういう感じにしました(笑)。
──トラック先行って、イメージが広がるんですね。
大柴:めちゃくちゃ飛べるんですよ。何の制限もないんで、いくらでも行ける。トラックはめちゃくちゃカッコよくして、ファンクに寄せていって、でも歌詞では遊ぶ、みたいなところはありますね。
──つい歌詞の話が多くなるけれど、大柴広己はサウンドも大事。毎回自分が使ったギター中心に、レコーディングで何を使ったか全部クレジットしてある。今こういう人ってなかなかいないです。
大柴:いないですね。今回はね、あえて今まで使ってたギターを使わなかったりとか、比較的新しめなギターとか、普通はファンクのカッティングでは使わないレスポールをメインに、ワウを踏んだりとか、いろいろやってます。あと、前まではリバーブ系の伸びる音をよく使ってたんですけど、今回は一切やめて、ボーカルにもリバーブがほとんど入ってないんですよね。パキパキにしてます。けっこうこだわって、エンジニアにもいろいろ言って作りました。
──それはなぜ?
大柴:前までは、基本的に弾き語りで再現できるものしか作らないというのがあったんですけど、今回はあんまりそんなことを考えずに作ろうと思ったんですね。弾き語りでできることの範囲が自分でわかってくると、面白くなくなってくるんで。でも作ってみて、「がらんどう」とか、弾き語りで絶対できないだろうと思うんですけど、一度作ると、弾き語りでできるようになるんですよ。不思議なんですけど、“こんなのできねぇだろ”って思うものが、普通にできる。だから、自分ができないことを探してやったほうが面白いですね。だって、もの作りしている人間が自分の想像を超えてこないなんて、意味なくないですか? 新作が前と一緒なんて、絶対に嫌なんで。そう思いますね。
──という、様々な思いのこもったニューアルバム『LOOP 8』。これで6部作が完結しちゃったわけですよね。
大柴:完結しました。
──気が早いですけど。どうしましょう、次は。
大柴:実はもうあるんですけど、まだ言わないほうがいいなと思ってます(笑)。ただちょっとだけ言うと、世代を飛び越えるためのものを、次からは探していくことになると思います。ワードを一つ出すとするならば、“共有”ですね。全然自分の知らない世界、全然違う生き方をしてきた人間と、ちゃんと何かを共有するために音楽を作っていく。自分の世界から抜け出て、自分以外の感性に照準を合わせてバン!と撃つ。そんなことを考えてます。
──楽しみです。次にまたお話するのが。
大柴:なんだかんだ、次の曲も録り始めているところなので。自分でも楽しみにしています。
取材・文◎宮本英夫
■フルアルバム『LOOP 8』
Label:ZOOLOCATION
1. がらんどう
2. さよならグローリーデイズ
3. ピアノマン
4. なに( ゚д゚)しとん?
5. ねこが来た
6. ベーコンエピ
7. 1秒でも⻑く
8. 愛に戻る
9. LOOP 8
Music Writing:⼤柴広⼰
Vo, G, Piano:⼤柴広⼰
B:荻野⽬諒
Dr, Per:沖⽥祐輔
▼RECORDING GUITAR & BASS
・FENDER TELECASTER “DON SNOW” 1966
・GIBSON HC LES PAUL STANDARD “ALL GOLD” 2010
・GRETSCH JET FIREBIRD CUSTOM 2018
・FENDER JAZZMASTER 1962
・FENDER PLAYER JAGUAR PINK 2020
・GIBSON J-45 1956
・MARTIN D-28 1982
・ESP JAZZBASS 1970s
・ELVIS TENOR UKULELE 1970s
▼RECORDING AMP
・FENDER DEVILLE 1990s
■イベント<ACADE MEIA LABEL PARTY>
open18:00 / start18:30
▼出演
KOJIRASE GIAL'S / WAMI / Jerry Somic / FOOLISH BOYS / NISE ᙏ̤ PROJECT
ゲスト:作人 / 大柴広己
▼チケット
ペア:3,000円 (1Drink別途)
https://eplus.jp/sf/detail/3753480001
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